校門を入ると、目に飛び込んできたのはアカエゾマツのクリスマスツリー。その横には広々とした畑やビニールハウスが広がっています。
廊下を歩くたびに「何してるんですか?」と生徒が声をかけてくれる。先生と生徒が仲良さそうに話し、穏やかで居心地の良い空気に満ちた恵泉女学園中学校を、学校インフルエンサーのがくパパと共に取材しました。

- 恵泉女学園中学校の基本情報
- └ 入試情報
- 恵泉女学園はどんな学校?
- └ 私服OKに込められた「そのままでいいよ」の文化
- └ 毎朝の「礼拝」と、自分を語る「感話」の文化
- └ 生徒と先生の距離が、びっくりするほど近い
- 恵泉女学園だからできる「ならではの学び」
- └ 園芸は「科目」でなく、人生を豊かにする“芸術”
- └ 入学後、理科を好きになった子が多い
- └「英語の恵泉」——塾なしで大学受験に挑む子も
- 恵泉女学園中学校の「面倒見の良さ」とは?
- └ 家族のように手厚く見守る
- └「気になるから、放っておけない」先生たち
- 恵泉女学園中学校の気になる施設
- └ メディアセンター
- └ フェロシップホール
- └ カフェテリア
- └ 生徒たちが集まる広い廊下(メディアスペース)
- 学校選びのアドバイス
- 保護者の皆さんへのメッセージ
著者:がくパパ
「偏差値だけで学校を選ばない」をモットーに首都圏の中学受験校100校以上を独自に調査し中学受験校を分かりやすく解説しているインスタグラムを運営中。学校が好きすぎて、私立校の講師も経験した学校ヲタク。今は3児(5歳・2歳・1歳)のパパ。
≫ がくパパInstagram
恵泉女学園中学校の基本情報

恵泉女学園中学校は、1929年に河井道(かわいみち)によって創立されたキリスト教主義の学校。「聖書」「国際」「園芸」を柱にした教育方針で、生徒たちは主体的に生きる力や世界へ目を向け多様性を受け入れる心、感謝の心を身に付けます。
| 住所 | 156-8520 東京都世田谷区船橋5-8-1 Googleマップ |
|---|---|
| アクセス | 小田急線「経堂駅」または「千歳船橋駅」より徒歩12分 |
| 生徒数 | 中学校598名 高等学校561名(2025年5月1日現在) |
| 中高一貫校 タイプ |
女子校・完全一貫校 |
| クラス編成 | 5クラス |
| 文化祭 | 恵泉デー(11月3日開催) |
| 土曜授業 | 無し |
| クラブ活動 | 運動系10クラブ、文化系10クラブ |
入試情報
入試の形式は、国・算の2教科と、4教科の2種類。
受験生は、学校が行うキリスト教教育への同意を確認するために、質問カードを記入します。毎朝の礼拝や聖書の授業などに、きちんと参加する気持ちを確認するためのものです。
- 2月1日…国算
- 2月2日…4科(国算理社)
- 2月3日…国算
恵泉女学園中学校はどんな学校?
取材を通じて感じたのは、先生も生徒も、ありのままでいられる空気。その源にあるのは、創立以来続く「自由服」文化、そして毎朝の礼拝と「感話」でした。
私服OKに込められた「そのままでいいよ」の文化
校内を歩いていると「こんにちは」と朗らかに挨拶してくれる生徒たち。みんな、思い思いの服に身を包んでいます。トレーナーにジーンズの子、流行を取り入れた子、あえて「制服っぽい服を着ている」という子もいて、本当にさまざま。学校として決まりがあるのは、校章をつけることだけです。

高校1年生の生徒さん。恵泉の魅力について聞くと真っ先に「自由服!」との答え
恵泉女学園中学校では、「服装は個性を表す手段のひとつ」との考えのもと、創立時から自由服という制度が続いています。実際、服装自由な学校に憧れる子は多く、この学校も自由服だから選んだ生徒は決して少なくないのだとか。
ただ、自由服が認められていると、服装によって仲の良いグループで分断してしまったりもめごとの原因になったり、女子学生特有の敏感な出来事に発展しかねないのでは?と思うかもしれません。
今回お話を聞いた花岡先生によると、「そんなことはなくて、みんな等身大のまま、お互いを認め合っています」とのこと。

入試広報部の花岡先生
「『私はイラストを頑張る系』『私はスポーツ系』『私は掃除をちゃんとやる系』みたいに、誰が一番ということはなく、それぞれの”得意”でつながっているんです」

校内には恵泉らしいコーナーがそこかしこに!
たまに、派手な服装をしてきた生徒に先生から声掛けをすることもあるそうですが、生徒たちは学校に通うのにふさわしい服装を自分で考え、そのなかでそれぞれの個性を発揮しています。だから無理に誰かと合わせる必要はない。「違っていい、そのままのあなたでいい」——そんな空気が、恵泉には自然と流れています。
毎朝の「礼拝」と、自分を語る「感話」の文化

恵泉女学園はキリスト教主義の学校。毎朝25分間の礼拝があり、生徒が順番に「感話(かんわ)」を担当します。
感話とは、日常で感じたこと・考えたことを自分の言葉で語る時間のこと。中学1年生は原稿用紙3〜4枚から始まり、高校生になると7〜8枚にもなります。
「最初は『家族で旅行に行って楽しかった』くらいの話から始まるんです」と、花岡先生。
「でも学年が上がると、家族関係の悩みや、ずっと抱えてきた辛い気持ちを話してくれる子もいて。こちらが聞きながら号泣してしまうこともあります」
驚いたのは、先生たちも感話を担当すること。クリスチャンではない先生であっても、自分の中学時代の話や、子育ての悩みなどを語ります。
ある先生は「息子が学校に行かなくなっちゃって、困っている」と話したことも。すると礼拝のあと、生徒から「先生、大丈夫?」「こう言ってみたらどうですか?」と声をかけられたそうです。

入試広報部長の鴨田先生
「神様の前では、先生も生徒も関係なく、みんな同じ人間なんです。弱いところも見せ合うから、『先生も私たちと同じなんだ』とわかる。それが信頼関係につながっていると思います」
辛いことも飲み込んでしまうような多感な時期に、思いの丈をさらけ出す。尻込みしてしまいそうですが、毎日、生徒たちは先生も含めて誰かの感話に耳を傾けています。「自分もみんなに本心を話してもよい場所がある」と思えるあたたかな環境と安心感から、学校が居心地の良い場所になっているのでしょう。
生徒と先生の距離が、びっくりするほど近い
花岡先生曰く、
「私が廊下を歩いていて、生徒から声をかけられない日は、絶対にないですね」
とのこと。

花岡先生が生徒とすれ違うと、「何してるんですか?」と声をかけてくる生徒たち
実際に校内を歩いていると、その意味がよくわかりました。お昼休みの教室で、先生と生徒があちこちで楽しそうに話し込んでいます。面談スペースの机はいつも埋まっていて、とてもにぎやか。
生徒たちも、先生との距離感を「学校のイチオシポイント!」と話してくれました。

「先生が優しくて面白い先生もすごく多い。生徒と先生の仲がみんないいなって思います」

先生と生徒の距離の近さについては、こんな話も。
「授業終わりに先生を捕まえて話しかけにいくとか、廊下を歩いてる先生に話しかけるとか。そういうことが気軽にできる雰囲気なんです」
別の生徒も「どんな先生にも話しかけられる」と教えてくれました。先生って怖い存在じゃないの?と聞くと、「全然そんなことない。大丈夫です」とあっさり。

こちらの生徒さんは、好きな野球選手について先生たちと語り合うのだそう!
恵泉女学園ならではの学び
恵泉女学園中学校の生徒たちに好きな授業を聞くと、驚くほど多くの生徒が「園芸!」と答えます。
園芸は「科目」でなく、人生を豊かにする“芸術”

校舎から見下ろすと、グラウンドとともに手入れされた畑が目を引く
恵泉女学園中学校の「園芸」は、ただの農業体験ではありません。業(仕事)ではなく芸(アート)という位置づけです。
「農業は、いかに少ない投資でたくさん収穫するかが大事。でも園芸は、失敗も含めて過程を楽しんで、できたものを生活に取り入れる。そこが違うんです」
取材当日、ちょうど高校生が立派な大根を収穫していました。

「2ヶ月くらいかけて育てました。今日持って帰って、家で料理します!」
中学1年生はリースを作り、高校生は花壇の設計にも挑戦。花の色、背丈、咲く時期を調べて、どう植えるか自分で考えます。この学校の卒業生でもある鴨田先生によると、何十年経った今でも、実家の花壇を手入れするとき、『確かこうやって植えたな』と体が覚えているそうです。
入学後、理科を好きになった子が多い
恵泉女学園中学校では、近年、理系に進む生徒が増えています。

校舎のすぐ横には水田があり、お米を育てているとのこと
決して理科好きばかりではなく、かつては理数系が苦手だった生徒も多いそう。この学校で理科の面白さを知ったことで、現在理系の大学に通っている卒業生や、塾に行かず、学校の授業だけで国公立大学に合格する子も増えているのだとか。
理科好きの生徒たちが続出するきっかけは、理科にふれる機会の多さです。
中学3年生では、物理・化学・生物・地学から班ごとにテーマを定めて実験をおこなう「探究実験」を実施。自分たちで実験方法から模索し、最終的には自分たちでプレゼンテーションまでおこないます。

理科クラブとサイエンスアドベンチャー生物班の合同で実施された夏休み合宿
2017年から活動がはじまったのは、放課後に開催される課外活動「サイエンスアドベンチャー」。生物、物理、化学、コンピュータ・サイエンスの4班に分かれて研究に取り組み、分野ごとに指導する先生がつくほか、外部発表する機会もあります。最近は「サイエンスアドベンチャーが面白そうだから」と入学する子も増えているそうです。

日本動物学会でのポスター発表
ほかにも、ムササビを見に行く自然観察会や、東京理科大学の先生による特別講義、「どれだけ大きくてきれいな結晶を作れるか」を競うコンテストなど、ワクワクするイベントが盛りだくさん。
接点をとにかく増やすことで、理科への興味をもつ生徒が少しでも多くなればいい。それが学校の思いです。
「英語の恵泉」——塾なしで大学受験に挑む子も
恵泉女学園中学校は「英語の恵泉」という言葉を掲げるほど、英語の教育に力を入れています。
授業は、クラスを半分に分けた少人数制。中学3年生の教室を覗いてみると、ちょうど英語の授業が終わったところ。「キング牧師の文章を読んでいた」と教えてくれました。キング牧師の文章は2年生で習った英文だそうで、3年生になっても全員がスラスラ言えるのは、体で覚える英語教育が根づいている証ですね。
更にスピーチコンテストは全員参加。英語で作文し、発表する力を6年間かけて育てます。
そして驚いたのは「大学受験は、塾に行かなくても学校の英語で十分だった」という卒業生が多いとのこと。「英語は学校でしっかりやるから、塾に行くなら数学や理科に絞る」という作戦で難関大学に合格する子もいるそうです。
恵泉女学園中学校の「面倒見の良さ」とは?
家族のように手厚く見守る

提出された宿題。先生たちが空き時間を見つけて一冊ずつチェックします
中学1~2年生のうちは、宿題を出すと先生がひとつひとつチェック。丸つけが間違っていたら「ここ、直しが違うよ」と付箋を貼って返し、次の日にまた見せてもらうところまでサポートするそう。毎回テストのあとは「直しノート」を提出させて、先生がコメントを書いて返します。
「よく頑張ったね」「前回できなかったここ、今回はできてるね」。そんな言葉が、生徒の学習の励みになっています。
「気になるから、放っておけない」先生たち

昼休み、職員室前で面談が行われている様子。毎日の光景とのこと
印象的だったのは、ある先生のエピソード。なかなか宿題が終わらない生徒に、夏休み中ずっと「今日やった宿題の写真を送ってね」と連絡し続けたそうです。その生徒は「人生で初めて、夏休み中に宿題が終わりました」と嬉しそうに話していたとか。
「気になるから、やっぱり話したくなるんです」と花岡先生。面談も、高校3年生になると年間7回ほどと、より綿密になります。でも回数よりも大切なのは、「必要なときにすぐ話せる」空気感。廊下でちょっと声をかけて、そのまま面談になることも日常茶飯事です。
恵泉女学園中学校の気になる施設
校舎を歩くと、ここで6年間過ごしたら楽しそうだな、と思える空間がたくさんありました。その一部をご紹介!
メディアセンター

こんな学校の図書館は見たことがない!
生徒にこの学校を選んだ理由を聞いた時、前述した理由のほかにたくさん聞こえてきたのは「メディアセンターがすごく綺麗だったから」「本が多いから」という声。
メディアセンターは、いわゆる図書館ですが、雰囲気は普通の図書室とまったく違います。そこにあるのは1~4階まで吹き抜けの開放的な空間です。
2階からはほどよい話し声が降ってきて、本を読む子、課題をする子、友達とおしゃべりする子が自然に混ざり合っている。「図書室では静かに!」という雰囲気ではありません。静かに勉強したい子は奥のキャレル席へ、という住み分けができています。

ぬいぐるみがいる、くつろぎスポットも
蔵書は約10万冊。毎週どっさり新刊が入り、生徒が「読書ノート」で感想を書いて教室のポケットに入れておく仕組みもあります。

新着図書を紹介するコーナー
「あの子が読んだこの本、私も読んでみようかな」と、クラスに新たな図書ブームが広がるきっかけにも。
大きなガジュマルの木の下で、本を開く生徒の姿が印象的でした。
フェロシップホール

毎朝の礼拝が行われる「フェロシップホール」は、恵泉の精神的な中心。パイプオルガンの音色が響き渡る荘厳な空間です。
生徒に「恵泉の好きな時間は?」と聞くと、「讃美歌を歌う時間が気持ちいい」「最初は毎日の礼拝がちょっと面倒だったけど、今は大切。一日が始まる感じがする」という声が返ってきました。「鼻歌が讃美歌になっちゃう」のは”恵泉あるある”だそうです。

希望すればパイプオルガンのレッスンを受けられるのも恵泉ならでは。ある年は、芸大のパイプオルガン専攻の合格者3名のうち2名が恵泉生だったそうですよ。
(100周年に向けてフェロシップホールは改築予定)
カフェテリア

昼時にカフェテリアを覗くと、焼きたてパンのいい香りが漂ってきました。なんとカフェテリアでパンも焼いており、とにかく大人気。
もちろんフードメニューも充実しており、ある生徒からは「ミートソースの温玉のせ」がおいしいという情報が。値段も480円とリーズナブルです。
お弁当を持ってきてもいいし、カフェテリアで買ってもいい。テイクアウトして教室で食べることもできます。お弁当を作れない日があっても大丈夫なのは、保護者としては助かりますよね。
生徒たちが集まる広い廊下(メディアスペース)

これほど広い廊下でも、休憩時間になると生徒たちでいっぱいに
校舎を歩いて驚いたのは、とにかく廊下が広いこと!
教室にはベランダがあり、どの教室からでも外に出られます。中学校舎の窓を開けると中庭の緑や畑が目の前に。

クラスの名前は「水仙」「葵」など植物の名前がつけられています。この学校らしいクラスネームです。
学校選びのアドバイス
「生徒に自由に話しかけてください。むしろ、そうしてほしいんです」
恵泉女学園中学校の学校説明会では、必ず生徒が登場。高校2年生は生徒全員が説明会に参加し、何かの役を任されます。ある説明会では、感話で自分の弱さを語った生徒が登壇し、参加者から「飾らない姿が見られてよかった」という感想が寄せられたそうです。
説明会の後はクラブ活動を自由に、好きなだけ見学OK。生徒に何でも質問できます。
授業見学会も特徴的。「どの授業でも、自由に回ってください」というスタイルで、先生が案内するのではなく、保護者が自分の足で校内を歩き回れます。
「ありのままを見てもらいたいんです。いいところも、そうでないところも含めて。それで気に入っていただければ」と先生は話します。
保護者の皆さんへのメッセージ

鴨田先生と花岡先生はなんと恵泉女学園の同級生同士!現在は一緒に広報のお仕事をしています
取材の最後に、先生からこんなお話がありました。
「偏差値で学校を選ぶ時代は、そろそろ変わってきていると思うんです」
恵泉には、毎朝25分の礼拝があり、園芸の授業があります。正直なところ、大学入試や進学実績だけを追い求めるなら、その時間を別のことに使った方が効率的かもしれません。
「でも、礼拝も園芸も、これからも絶対に変えません。一周回って『これがいい』って言われる時が来ると、ずっと信じてやってきましたから」
花岡先生はそう話してくれました。
「学校説明会で私たちの話を聞くより、卒業生や在校生に話を聞いた方が何倍も役に立つと思いますよ。正直なところが聞けますから」
この言葉が、恵泉女学園という学校の生徒への信頼感と懐の深さ、あたたかみをよく表しているのではないでしょうか。
<がくパパの取材コメント>
「第一志望じゃなかったけど、今は大好き」と笑う生徒たちの言葉が、この学校の居心地の良さを何より証明しています。 とある卒業生の方が、以前、恵泉での日々は「人生の財産」と言っていたのですが、その言葉も納得できる空気がありました。偏差値や序列ではなく、わが子が6年間でどう育つか。その「人生の土台」を作ってくれる場所だと確信しました。ぜひ現地で、この温かい空気を肌で感じてみてください。

