ヘアドネーション、医療用ウィッグとは?寄付した髪が患者さんに届くまで 小学生のワークショップ体験

ヘアドネーション/小学生のワークショップ体験

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日本人の2人に1人ががんになる時代(※)、現行の学習指導要領では、小中高での「がん教育」が必修化されているのを知っていますか? つらい治療と戦うがん患者のために、わたしたちにもできることがあります。ヘアケアブランドの「フィーノ」が小学生を対象に開催した、ヘアドネーションと医療用ウィッグを学ぶワークショップに参加してきました。ヘアドネーションとはどんなこと?髪の毛がどんな工程や技術を経て、誰のもとに届くのか?を教えてもらいました。
※国立研究開発法人国立がん研究センター 「最新がん統計」より

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目次(index)

ヘアドネーションとは?医療用ウィッグって?

人毛で作られた医療用ウィッグ|ヘアドネーション/小学生のワークショップ体験

人毛で作られた医療用ウィッグは、軽くてやわらかい!

ヘアドネーションとは?

ヘアドネーションという言葉は知っているし、興味はあるという人は多いのではないでしょうか。ヘアドネーションとは、「病気やけがで髪の毛を失った人に、髪の毛を寄付すること」。寄付された髪の毛で医療用ウィッグ(かつら)をつくります。

医療用ウィッグとは?

医療用ウィッグは、抗がん剤の治療中の方や脱毛症の方などに使ってもらうことを想定してつくられたウィッグ。おしゃれ用のウィッグと違い、長時間着用するため、着用時の快適さや通気性が重要です。また、地肌を傷つけないような素材や、着用したときにより自然に見えることなどを考えて作られています。

また、化学繊維ではなく、人毛でていねいに作られた医療用ウィッグは、パーマをかけたり、カラーリングをしたりなどのヘアアレンジをすることもできます。

ウィッグユーザーの体験談 元SKE48 矢方美紀さんのお話

ヘアドネーション/小学生のワークショップ体験

アイドルグループSKE48の元メンバーで、現在はタレント・声優として活躍されている矢方美紀さん。25歳のときに乳がんがわかり、1年以上医療用ウィッグを使用していました。

矢方さん直筆のイラスト|ヘアドネーション/小学生のワークショップ体験

矢方さん直筆のイラスト

ご自身で描かれたイラストを使って、治療中のつらさやその時々の思いを、子どもたちに向けてわかりやすく話してくれる矢方さん。

「抗がん剤治療を始めると、体にいろいろな変化がおきます。10日ほどたつと、髪の毛もどんどん抜け始めました。事前にわかっていても、想像以上の変化にとまどいました。そんなときに、医療用ウィッグに出合ったことで、気持ちがとても救われて、前向きに治療に臨めるようになったんです」
最初は通販で買った化学繊維のウィッグをつけていたそうですが、脱毛した頭にかぶるとかゆみが出たり、皮膚に毛が刺さったりして肌荒れに悩まされてたとのこと。

「そんなとき、『ふくりび』(全国福祉理美容師養成協会)さんの医療用ウィッグに出合いました。
かぶってみると、人毛で作られているのでとても自然で、ネットの内側も肌を傷つけないように作られていて感動しました。自分の頭にフィットするので、仕事でダンスをしてもずれることがなく、安心でした。ショートにしたりロングにしたり、洋服に合わせてヘアスタイルを楽しんでいましたよ」

好いこと尽くしの人毛の医療用ウィッグですが、人毛であるがゆえに、お手入れも必要です。

「ウィッグを外して洗面器につけ、シャンプーとコンディショナーを使って普通の髪の毛と同じように洗い、ドライヤーも使います。毎日お手入れをすると、自分の髪の毛と同じようにいつも一緒の相棒のように感じることができて、愛着が深まりましたよ」

ヘアドネーションの実演 どんなふうにカットするの?

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ヘアドネーション用の髪をカットする方法は、普通の美容院でのカットの仕方とはかなり違います。この日のために2年間、髪を伸ばし続けてきたりいさちゃん(12歳)の髪をカットしてくれるのは、日本初のショート・ボブ専門美容師であり、ヘアドネーションカットを多数行ってきた大野道寛さん。実際に行っている方法を実演してくれました。

「10歳のときに、ただ髪を切るのではなく、なにか記念になればと思っていたところ、通っている美容師さんにヘアドネーションを教えてもらったことがきっかけで知りました。今回は2回目のドネーションです」と話すりいさちゃん。

ヘアドネーションのカット

①髪の長さを測る。31㎝以上が必要

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まず髪の長さを測ります。ヘアドネーションをするには最低でも31cmの長さの髪の毛が必要です。

②髪の毛を束にわける。

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最初に31cm切っても余裕があるかどうか確かめたあと、髪を5〜6束に分けてヘアゴムで留めます。ヘアゴムで留めるのは、大切な寄付する髪を床に落とさないようにするため。

③髪の束をカット

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ヘアゴムのすぐ上くらいの位置で1束目をカットします。ヘアドネーション用のハサミは通常のものよりパワーが強いもの。大野さんは、最初のカットはいつも本人にしてもらうそう。大切に伸ばしてきた髪の毛だからこそ、まずご本人がハサミを入れることを大事にしています。

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残りの束を1つひとつカットします。ヘアドネーション用にカットしたあとは、形を整えるためにさらにカットしていくので、なりたい髪の長さに加えて、3〜5cm以上の余裕が必要です。

ヘアドネーションはどこの美容院でも行えるわけではありません。事前にヘアドネーションに対応しているか問い合わせてから行くようにしましょう。

髪の毛の仕分け体験

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ヘアドネーションで届いた髪の毛は、仕分けをして、工場へ届けられます。ワークショップでは、2人1組になって仕分け作業を体験しました。色も髪質も長さも違う髪の毛がいっぱい!

ヘアドネーションの仕分け

①寄付された髪の長さを測る

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束ごとに長さを測ります。長さが31cmに満たない髪の毛は、残念ながら医療用ウィッグとして使えません。

②髪の束を仕分けする

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長さの基準をクリアしたら、ダメージがある髪、くせのない髪(31〜41cm /41cm以上)、カラーをしている髪、くせがあるまたはパーマをかけている髪、白髪がある髪に分けて、箱に入れていきます。

「いろいろな髪があるね!」ワークショップに参加した子どもたちがにぎやかに仕分けをしてきます。この1つひとつが、その人の個性に合ったウィッグになっていくのです。

医療用ウィッグの試着体験

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ワークショップでは、子どもたち一人ひとりが、気に入った医療用ウィッグを試着することができました。今回は大人用の大きさのウィッグだったので、サイズが少し大きめ。でもみんな、お姫様のように見えたり、ちょっとお姉さんのようになったりして、恥ずかしくもうれしそうな顔。

矢方さんにウィッグをつけてもらった小学校1年生の女の子みなちゃんは、「こんなに長い髪はじめて!軽くてびっくりした。なわとびしても鉄棒しても大丈夫そう。色もきれいで嬉しいな」。
ヘアスタイルが変わるだけで、気分が大きく変わることを実感した様子。病気の治療で髪が抜けてしまうことの悲しさにも思いをはせていました。

自分にもできることを考える

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ワークショップに参加した子どもたちは、みんな熱心に話を聞き、自分の考えをメモしていました。そして、それぞれの思いを書いた付箋を、壁一面に貼っていきます。

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「わたしもかみの毛をながくして、きふしたいです」「ぼくものばして、おてつだいしたいとおもいました」など、自分にも役に立ちたいという思いがあふれています。

ヘアドネーションや医療用ウィッグを知ることで、病気の人がどんなことに困っているかを知り、どんな手助けができるのか。自分で考えたり、人に伝えていくことはその第一歩ですね。

ヘアドネーションで寄付をするには?

ヘアドネーションには31cmの長さの髪の毛が必要ですが、だからといって、31cm伸ばせばいいわけではありません。ウィッグは1本1本、髪の毛を折り返してつくるため、たとえば30cmのウィッグをつくるのに必要な長さはその1.5倍〜2倍ほど。髪の毛はひと月に約1cm伸びるので、寄付するにも長い年月が必要になるのです。

「finoウィッグBank」の場合、寄付する髪の毛の用意ができたら、髪の毛がバラけないようにゴムで縛ったまま、封筒に入れて送ります。封筒のサイズや重さによって送料が違うので、確かめてから送りましょう(送料は自己負担になります)。寄付した髪の毛は、返送することはできないので注意しましょう。

  • 【fino ウィッグBank ヘアドネーション受付ページ】
    希望者には、髪を送る封筒やゴムがセットになった「finoオリジナルドネーションキット」を無料配布。申し込みはこちらのページから。
    https://brand.finetoday.com/jp/fino/hair_touch_you/donation/

髪の毛が届くと、髪を仕分けし、殺菌・消毒などをしてくれる工場に送ります。次にウィッグの製作工場に送られ、最終チェックをしたあと仕上げのカットをして利用者に届けられます。

※ヘアドネーションの受付基準は各団体によって異なります。カラフルなカラーの髪の毛は受け付けていないところもあります。

ヘアドネーションができる長さに髪をのばすのには、3年以上かかります。医療用ウィッグは、寄付した方々の「困っている人をたすけたい」という心からの思いが込められているものだとわかります。また、そうした一人ひとりの思いが、病気と闘っている方々の力になるということーーワークショップに参加した小学生の子どもたちも、「自分にできること」を真剣に考えている様子がうかがえました。