ゲームの勉強への良い影響/悪い影響 成績低下はゲームのせいではない⁈ 

ゲームの勉強への良い影響/悪い影響 成績低下はゲームのせいではない⁈ 

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ゲームばかりしていると成績が下がる…?ゲームが学力低下に影響するのか、気になる家庭は多いのではないでしょうか。そこで、ある東大生の小学生時代のゲーム事情の調査データと共に、脳科学者の瀧靖之先生に「ゲームと学力」について教えていただきました。

瀧 靖之(たき やすゆき)先生監修:瀧 靖之(たき やすゆき)先生
東北大学加齢医学研究所教授
医師。医学博士。東北大学加齢医学研究所および東北大学東北メディカル・メガバンク機構で脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究に従事。読影や解析をした脳MRIはこれまで16万人以上にのぼる。

目次(index)

ゲームと学力・成績の調査研究から

ひまわり教育研究センター調査/2022年

ゲームと成績・学力の関連性には、さまざまな調査や研究があります。なかでも、東大生に関する興味深い調査をご紹介しましょう。

東京大学新聞社が現役東大生(院生も含む)の357人を対象に実施したアンケート調査(東大新聞オンライン調査 2016年)によると、小学生の時からゲームに興じていた割合は約80%。さらに、「最長12時間以上、ゲームで遊んだ経験がある」のは20%以上という結果でした。また、「好きなゲームソフト」という質問では、「ポケットモンスター」「大乱闘スマッシュブラザーズ」「モンスターハンター」と一般的にも人気が高いエンタメ系タイトルが1~3位にランクイン。意外にも知育ゲームが上位ではありませんでした。

2022年に現役東大生に対して実施された別のアンケート(ひまわり教育研究センター調査)では、「小学生の頃によくした遊びは?」という質問に対して、もっとも多かった回答が「パソコン、携帯、テレビなどのゲーム」(約37%、82人)。次いで「スポーツ」(約34%、75人)、「外遊び」(約32%、72人)、「オセロ、将棋」(約26%、59人)、「トランプ」(約25%、55人)という結果に。東大生にとっても、ゲームは小学生時代から身近な遊びであることがよくわかります。

これらのアンケート調査からは、「ゲーム=成績が下がる、頭が悪くなる」とは必ずしも言えなそうです。

脳科学者に聞く!ゲームは勉強に悪影響?

「ゲームと成績・学力の関係」について、ご自身も「ゲームが大好き!」という脳科学者の瀧先生に詳しく伺いました。

「ゲームも好き、ゲーム以外も楽しい!」が大事

「ゲームをする=学力・成績が下がる」では決してありません。ゲームをやりすぎて勉強する時間が少なくなり、その結果、成績が下がるということはあります。長時間のゲームは、目だけでなく頭も疲れ、暗記力や集中力の低下に繋がります。

一方で、上記の東大生の小学生時代に関する調査では、ゲームを長時間遊んでいたと回答した方も多いですね。子どもにとっては、好きな遊びに好きなだけ夢中になって、ある程度「やり切った」という満足感を得る体験はとても大切。それがゲームだけでなく、「スポーツも楽しい、トランプも楽しい、外遊びも楽しい」と幅広く熱中体験をしていたことがうかがえると思います。さまざまな体験ができる環境にあり、好きなことがたくさんあれば、ゲーム依存に陥るリスクはさほど高くありません。

「勉強も楽しい!」となるには?

勉強が楽しくなってくれば、ゲーム時間がもったいなく感じるようになり、必然的にプレイ時間は減少します。また、ゲームはもうある程度満足したな…となれば、ほとんどゲームをしなくなる時期がくることもあります。 それには、ゲームに夢中になった時期に、無理やり「ゲーム禁止!」とせずに、親子でルールを設けるなどして折り合いつけ、ある程度の満足感を子どもが得られることも大切です。

「勉強も楽しい」と思える子に育てるのが難しい…と思う親もいるかもしれません。それには、子どもまかせではなく、親の働きかけが不可欠です。脳の発達が著しい幼児~小学生までの時期に、いろいろなことを体験をして知的好奇心を育むこと。ゲーム一択にならない環境を与えてあげることがとても重要です。また、子どもはもっとも身近な人のまねをするミラーニューロンという脳の仕組みがあります。もっとも身近な人は、ずばり親です。親が一緒に勉強したり、「勉強は将来に役に立つもの」と伝えてあげたりすることがとても大事な素地を育みます。

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ゲームで頭は良くなる?

ゲームに知育を求めすぎない

ゲームで遊ぶことによって、空間認知能力や反射神経が育つという論文が発表されています。実際の地形などを駆使したゲームであれば、地理や歴史を学ぶ入口にもなるでしょう。RPG(ロールプレイングゲーム)は、俯瞰能力や考察力が高まることもあります。

しかし一方で、ゲームはあくまでも「多々ある遊びのツールのひとつ」にすぎません。地理や歴史が学べるのは決してゲームプレイだけではなく、リアルに旅行に行ったり博物館に出かけたりすることでも自然と学べます。親はつい「どうせやるなら知育ゲームを」と考えがちですが、無理に遊びと学びを結びつけるよりも、ゲームは遊びとして思いっきり楽しむことに徹し、学習は学習でしっかりと向きあう方が、生活としてもメリハリがつき、良い相乗効果が望めるでしょう。

ゲームきっかけの好奇心は伸ばせる!

ゲームは音楽、キャラクター、ストーリー、舞台設定がミックスした優れたエンターテインメントツールです。ゲームを通して、映像や音楽など創作の世界や、登場する生き物などに興味をもつこともあるでしょう。ゲームをきっかけに膨らむ興味関心を、リアルな体験で深堀していくことは、知的好奇心を大いに育める方法です。例えば、ゲームでバーチャル昆虫採集を楽しんだら、昆虫館に本物を見たり、リアルな昆虫採集に出かけてみたり、図鑑で他の昆虫の種類を調べたり…。子どもの脳は、新しいことを知ったり体験することで、ぐんぐんと発達していきます。「知ることが楽しい!」という経験こそが、やがて「勉強が楽しい!」と思える土台となるのです。

勉強とゲーム、スケジュールの順番は?

勉強のご褒美としてゲーム時間を与える、という家庭もありますが、脳科学の観点では、勉強後のゲームはあまりおすすめできない方法です。

人がものごとを忘れるメカニズムは、記憶がどこかに行くのではなく、上書きによるもの。頑張って日本史の年号を覚えても、そのあと刺激的なゲームをすると、せっかく覚えた内容が上書きされてしまうのです。

よって、ゲームを楽しんだあとに、勉強時間を設けるが理想。例えば休日の場合は、午前中にゲーム、午後は勉強、というようにメリハリをつけて取り組むのが良いでしょう。

夜眠る直前にゲームをするのが楽しみ、という方も多いでしょう。子どもに限らず、大人の方もそういう楽しみ方をされてる方が多いのでは?しかし、これは上記のとおり、その前の記憶が整理されてしまううえ、ブルーライトの影響や、ゲームの刺激によってドーパミンが分泌され脳が興奮状態になるため、もっともおすすめできません。

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