オカピという動物をご存じでしょうか? 西日本のかたには馴染みが薄いかもしれませんが、神奈川県横浜市の2つの動物園で見られるシマウマのような、キリンのような、見た目がとってもキュートな動物です。世界でも個体数が少ないという希少なオカピについて、どんな動物なのか、カラダの不思議、そして2つの動物園のオカピたちについて紹介します。
オカピってどんな動物?
まずは、オカピはどんな動物なのか、キホンから生態・繁殖、日本の動物園におけるオカピの歴史などについて解説しましょう。
オカピのキホン
オカピは、野生ではコンゴ民主共和国にしか生息していない動物で、お尻と足には、シマウマのような縞模様があり、体型や体色はウマに似ています。その美しさと上品さから“森の貴婦人”といわれています。また、はるか昔から姿を変えていないことから“生きた化石”といわれることもあります。
- 【学名】Okapia johnstoni
- 【分類】鯨偶蹄目 キリン科 オカピ属
- 【生息地】コンゴ民主共和国
- 【体の高さ】約1.5m
- 【体重】200~300kg
- 【寿命】飼育下で15~30年
画像提供:横浜市立金沢動物園
オカピは熱帯林に生息しています。日本の動物園でも緑の多い環境で飼育展示しています
オカピは世界三大珍獣のひとつ
世界三大珍獣といわれている動物は、ジャイアントパンダ、コビトカバ、そして、このオカピです。それほど、珍しくて希少だということなのです。
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
ズーラシアのオカピ。オカピは見られること自体が貴重なのです
オカピの現在の数は?繁殖は?
希少で絶滅危惧種にも指定されているオカピですが、現在、地球上にオカピは1~2万頭くらいと推測されています。コンゴ民主共和国には「オカピ野生生物保護区」があるほどです。妊娠期間は400~500日くらいで、赤ちゃんは生まれて30分くらいで立ちはじめ、授乳期間は約半年から1年、生後約2~3年で成熟します。日本では、よこはま動物園ズーラシアで初めて繁殖に成功しました。
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
ズーラシアで繁殖に成功して生まれたメスの“ララ”
オカピはシマウマでなくキリンの仲間
お尻と足を見るとシマウマ、つまりウマの仲間ではないかと思いますが、実はオカピは「キリン科」に分類されるキリンの仲間です。あとで、カラダの解説にて紹介しますが、蹄(ひづめ)や角(つの)、舌、そして胃袋などにキリンと同じ特徴が見られます。
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
日本の動物園でのオカピ飼育展示の歴史
1997年、オスの“キィァンガ”とメスの“レイラ”が、よこはま動物園ズーラシアにやって来たのが、日本の動物園でのオカピ初公開でした。2000年に2頭はアジアで初めて繁殖に成功し、メスの“ピッピ”が誕生。レイラは、2003年にはメスの“ルル”(2021年に死亡)も出産し、多大な功績を残して2014年に亡くなりました。
その後、ピッピとアメリカから来た“ホダーリ”との間に、2006年“トト”(恩賜上野動物園にいましたが2023年7月に死亡)、2014年“ララ”が生まれました。ピッピは2020年に亡くなりました。
そして2024年7月、よこはま動物園ズーラシアにいる“ララ”と、アメリカから恩賜上野動物園経由でやってきた“バカーリ”の間に赤ちゃん“フラハ”が誕生! 2024年10月現在、日本では5頭のオカピが飼育展示されています。
画像提供:横浜市立金沢動物園
現在は横浜市立金沢動物園にいる“キィァンガ”
オカピのカラダに注目
次に、シマウマのような縞模様、蹄・角・舌など、オカピのカラダについて、いくつか解説しましょう。
シマウマのような美しい縞模様
“見返りオカピ”ショットなどで見られる、お尻と足の縞模様がオカピの一番大きな特徴です。白と黒・茶色の模様はとても美しいですが、これは、オカピが暮らしているジャングルでは保護色の役割を果たしているようです。また、オカピの子どもにとっては母親を見つける目印にもなっているようです。
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
本当に美しい白と黒・茶色の模様。“見返りオカピ”ショットです
オカピはネイルケアが欠かせない!?
オカピは2つに分かれた蹄を持っています。2つの蹄の場合「鯨偶蹄目」に分類され、1つの蹄であるウマやシマウマの「奇蹄目」とは異なっています。動物園では、蹄の管理は大切で、運動量が減ると自然に削れる程度では足りなくなってしまいます。そのため、ヤスリで削って整えたりします。つまり、オカピの蹄はネイルケアが大切なわけです。
画像提供:横浜市立金沢動物園
ネイルケア中の横浜市立金沢動物園の“キィァンガ”
キリンのような角が特徴的
頭に、皮膚で覆われた2本の角があるのもキリンと同じです。ただ、オカピの角はオスにはありますがメスにはありません。そこはキリンと違うところですね。
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
よこはま動物園ズーラシアのオス“ホダーリ”には立派な角があります
オカピの舌もキリンのよう!食べ物は?
とても長~い舌を持っているのもオカピとキリンの類似点です。大好物は木の葉で、舌を使って枝から巻き取るようにして食べます。また、反芻動物で胃袋が4つに分かれているのも、キリンと同じです。
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
オカピは木の葉を上手に食べます。そんなシーンが動物園で見られるかも
オカピはオスよりメスが大きい
大きさはメスのほうがオスよりひと回り大きいんです。メスは300kgを超える場合もありますが、オスは200kgくらいから大きくて300kgといったところです。
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
よこはま動物園ズーラシアのメス“ララ”
オカピに会える2つの動物園
ここからは、オカピを飼育展示している動物園を紹介します。2024年10月現在、各動物園にいる個体を名前や生年月日などを含めてチェックしましょう。
よこはま動物園ズーラシア(神奈川県/横浜市)
よこはまどうぶつえんずーらしあ
日本におけるオカピ飼育展示のパイオニアがココ。1997年から飼育展示をスタートし5頭の繁殖にも成功しています。「アフリカの熱帯雨林」ゾーンで、オス2頭、メス2頭の計4頭を飼育展示しています。
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
2024年7月に生まれた“フラハ”とお母さんの“ララ”
●フラハ
- 性別:メス
- 生年月日:2024年7月30日
- 生まれた場所:よこはま動物園ズーラシア
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
メスの“フラハ”は好奇心旺盛で、お父さんの“バカーリ”に似てお尻の縞模様が細かいんです。愛称は来園者による投票により決定。スワヒリ語で“幸福”という意味です
●ホダーリ
- 性別:オス
- 生年月日:2001年6月21日
- 生まれた場所:アメリカ
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
若い頃は木の壁に穴をあけるほど激しい一面もありましたが、20歳を超え、性格もおっとりしてきました
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
鼻先に白い模様があるのが“ホダーリ”の特徴
●ララ
- 性別:メス
- 生年月日:2014年12月10日
- 生まれた場所:よこはま動物園ズーラシア
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
メスにしては小柄で顔も小さいため大きな耳が目立ちます
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
母親が眠りながら出産したため、スワヒリ語で“眠る”という意味の“ララ”という名前に
●バカーリ
- 性別:オス
- 生年月日:2015年9月24日
- 生まれた場所:アメリカ
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
“バカーリ”とは、スワヒリ語で“有望”の意味です
画像提供:よこはま動物園ズーラシア
小柄ですが好奇心旺盛な“バカーリ”。2020年に恩賜上野動物園からやって来ました
問合先 | 045-959-1000 |
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住所 | 神奈川県横浜市旭区上白根町1175-1 |
料金 | 【入園料】大人800円/高校生300円(土曜は無料)/小・中学生200円(土曜は無料)/未就学児無料 |
横浜市立金沢動物園(神奈川県/横浜市)
よこはましりつかなざわどうぶつえん
「アフリカ区」で見られるオカピは1頭。日本で最初に飼育展示された“キィァンガ”が、2012年より、よこはま動物園ズーラシアから横浜市立金沢動物園に移動して10年を超え、もう高齢ではありますが(日本のオカピの最高齢更新中!)まだまだ元気。日本のオカピ界の重鎮“キィァンガ”には、長生きしてほしいと応援したくなりますね。
●キィァンガ
- 性別:オス
- 生年月日:1996年5月7日
- 生まれた場所:アメリカ
画像提供:横浜市立金沢動物園
美しいビロードのような皮膚と模様に、森の緑がよく合います
画像提供:横浜市立金沢動物園
飼育員さんに耳かきしてもらったり、顔や首をかいてもらうのが大好きだそうです
問合先 | 045-783-9100 |
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住所 | 神奈川県横浜市金沢区釜利谷東5-15-1 |
料金 | 【入園料】大人500円/高校生300円(土曜は無料)/小・中学生200円(土曜は無料)/未就学児無料 |
オカピが見られるのは日本で横浜だけなんです。その美しい縞模様やカラダの特徴などを2つの園でチェックしてみてください。特に“キィァンガ”は、オカピの日本最高齢をいつまでも更新してくれることを願っています。
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