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教えて深海水族館の飼育員さん! 深海魚&深海生物10のギモンQ&A

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ダイオウグソクムシ/沼津港深海水族館(静岡県)

いまや、もっとも有名な深海生物となったダイオウグソクムシ。写真提供:沼津港深海水族館

子どもから大人まで、近年人気急上昇中の深海魚&深海生物。「ぜひとも、深海魚がいる水族館へ出かけたい!」というファミリーも多いことだろう。
ただ、お父さん・お母さんとしては、出かける前に深海魚の基礎知識くらいは知っておきたいところ。そこで、今さら聞けない&知っておくと子どもに自慢できる(親の威厳を保てる?)、そんな“10のギモン”をピックアップ。深海魚の専門家、つまり水族館の飼育員さんに聞いてみた。
深海魚を見に行く前に一読をおすすめしたい“深海魚&深海生物10のギモンQ&A”です。

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目次(index)

「沼津港深海水族館」の飼育員さんに聞きました

“深海魚&深海生物10のギモン”をぶつけてみたのは「沼津港深海水族館」の飼育員・安東彩華さん。2015年より「沼津港深海水族館」の飼育員となり、お話をおうかがいした2019年時点で4年目というキャリアだ。

飼育員の安東さん/沼津港深海水族館(静岡県)

深海魚や深海生物のことに詳しい飼育員の安東さん

安東さんは、もともと水族館が好きでドルフィントレーナーに憧れ、養成学校で学ぶ中、今度はさまざまな魚たちに興味を持つようになり、4年前に飼育員の道を選んだという。いまでは「沼津港深海水族館」でも有数の深海生物に詳しい飼育員さん。では、深海魚好きの気になる質問を聞いてみました。教えて安東さん!

ヌタウナギについて話をする安東さん/沼津港深海水族館(静岡県)

ちょうどこの日、イベント「飼育員のここだけの話」でヌタウナギについて興味深い話を聞かせてくれた安東さん。とってもわかりやすく&興味深く、しっかり準備していることがよくわかりました。

深海魚と水深・水圧

Q1:「深海」とは水深何mから?

一般的には水深200m以上を深海と言っています。なので、水深200m以上の深海が主な生息区域の生きものを深海魚・深海生物と呼んでいます。ただ、深海魚も成長過程で暮らす環境を変えたりする生きものもいます。大人になったら深海で暮らさないとか、エサを求めて海の中を垂直移動する深海生物もいるんです。

質問にていねいに答えてくれる安東さん/沼津港深海水族館(静岡県)

身振り手振りを加え、質問にていねいに答えてくれる安東さん

Q2:深海魚や深海生物はなぜ水圧に耐えられるの?

浅い海と深い海で棲息している生きものってカラダの構造が違うんです。
深海魚は浅いところで生まれて、成長に伴って深いところに移動していくんです。これは、浅い海のほうがエサがたくさんあるから。でも、そのぶん、食べられてしまうなどのリスクが伴います。なので、浅いところで多くの子孫を残して、徐々に深いところへ。深海のほうが積極的に泳ぎ回る生きものが少ないので、少しのエネルギーで生活することができるんです。あまり闘いたくない性格の魚たちが深海へ移動してきた、ということのようです。

深海の水圧に耐えられるのは、一般的にはカラダの水分が多いから、と言われています。でも、いろいろな説があって、逆に水圧に完全に影響を受けない固い深海生物もいます。タカアシガニなどの甲殻類がそうです。つまり、カラダがカチコチの深海生物もいれば、逆にブヨブヨの水分を多く含んで受け流すという深海生物もいるわけです。

深海魚と水圧についての詳しい解説/沼津港深海水族館(静岡県)

「沼津港深海深海水族館」内にも、深海魚と水圧についての詳しい解説が!

水族館で深海魚を展示するには

Q3:「沼津深海水族館」の水槽は深海と同じ水圧なんですか?

全ての水槽に深海と同じ水圧をかけているわけではありません。もちろんかけたほうがいいですが、深海と同じ水圧に耐えられる水槽はお金がかかり過ぎるんです。なので、深海生物が水族館にやって来るときに“いい状態”で保管して連れてきてもらうこと、プラス水族館で状態を整えることで、最低限、水圧をかけてなくても暮らせるようにしているんです。

駿河湾大水槽/沼津港深海水族館(静岡県)

タカアシガニなどがいる「沼津港深海水族館」の駿河湾大水槽。写真提供:沼津港深海水族館

Q4:深海魚や深海生物はどこから連れてくるの? 水槽にはどんなヒミツがあるの?

「沼津港深海水族館」では、駿河湾で深海魚を食用として獲っている漁師さんにお願いしています。もともと、深海魚を獲るのは食用がメインで、そのついでにお願いしているんです。

水深200~500mくらいの底引き網漁によって深海魚&深海生物を捕獲するわけですが、事前に「この深海生物がほしい」と伝えてます。もちろん、漁師さんも理解されてますが、私たちも、水を冷やしておくとか、ガンガン光が当たらないようにしたほうがいいとかを伝えています。

そして、よりいい状態で海から港に持って来てもらって、そこで私たちが受け取ります。すぐにそれを展示できるわけではなく、裏の水槽などで環境に慣れさせたりエサをあげたりなど、状態を整えて展示に出すというのがおおまかな流れです。本当に、漁師さんあってこその「沼津港深海水族館」なんです。

受け取ってから展示までは、早いものだと1日で展示できることもありますが、傷が多かったりすると、裏の水槽で薬をエサや飼育水などに混ぜて与えたりとか、けっこう長くかかる深海生物もいます。残念ながら展示に至らない場合もあるので、かなり神経を使いますね。

また「沼津深海水族館」では加圧水槽は使用していません。代わりに捕獲するとき、徐々に網をあげるようにお願いしたり、水族館内では、水温を深海生物にあわせて変更し、照明の色や暗さを変えることによって飼育を可能にしています。

底引き網漁の模型/沼津港深海水族館(静岡県)

深海魚を捕獲する底引き網漁の模型。「沼津港深海水族館」の深海の世界エリアで見られる

深海魚のおもしろい特徴

Q5:光る深海魚や深海生物がいるのはなぜ? どうして光るの?

深海生物によって光る理由はまちまちなんです。例えば、光ることによって、ほかの生きものをおびき寄せてエサとして食べたり、光ることで自分の影を消し、上を泳いでいる魚の捕食対象にされないようにするとか。

ただ「沼津港深海水族館」でも展示しているヒカリキンメダイは、実はまだ“なぜ光るのか”はっきりとわかっていないんです。仲間とのコミュニケーション? エサをおびき寄せる? 諸説あるのですが…。

ヒカリキンメダイの発光についての解説/沼津港深海水族館(静岡県)

「沼津港深海水族館」のヒカリキンメダイの発光についての解説。どこが光っているか、どうやって光っているかなどがわかる

Q6:深海魚や深海生物はなぜグロテスク?

私が思うのは、例えば、生きものを丸呑みするとなったら口は大きくないといけないし、捕獲のために手が長くなったり、どこかの部分がすごく大きくなったり、発光してエサをおびきよせたり…。つまり“過酷な世界で生きるため”じゃないのかなと思います。

冷凍シーラカンス/沼津港深海水族館(静岡県)

「沼津港深海水族館」の冷凍シーラカンス

Q7:深海魚や深海生物には何色が多い?

赤って目立つ色に思えますが、深海に行けば行くほど赤色が吸収されて暗く見えるんです。つまり、赤色は深海では保護色。黒く見えるとか、まりの風景に溶け込むことができるというのがあるので、どちらかといえば赤系の深海魚が多いんです。やっぱり、闘いたくない魚、逃げたり隠れたりする生きものが深海には多いんです。

ミナミクルマダイ/沼津港深海水族館(静岡県)

まさに赤い深海魚、ミナミクルマダイ。写真提供:沼津港深海水族館

Q8:深海魚や深海生物の目は見えるの?

深海魚に限らず、魚は人間に比べたら視力はよくないです。ヌタウナギのように、目がないように見える深海生物も、実はないように見えて、退化しているだけで、小さくですが、あったりします。もちろん視力はよくないです。ただ、そのぶん嗅覚は鋭くなるようです。

逆に、目が大きい深海魚もいます。これは、少しでも多くの光を取り込むためです。同じ深海魚でも逆の現象が起こるのがおもしろいですよね。目が退化している深海生物の目がどれかを探してみるのもいいですね。だいたい「これ多分、目かな」とわかる感じの目が多いです。

目が退化したヌタウナギ/沼津港深海水族館(静岡県)

ヌタウナギの退化した目を探してみよう。写真提供:沼津港深海水族館

深海魚を食べる

Q9:深海魚は食べるとおいしいの?

おいしいのが多いです(笑)。泳ぐのが速くないので、脂ののりがいいんです。逆に、脂がのりすぎて食べてはいけないと指定されている深海生物もあるんですよ。食べてもいいけど、食べ過ぎると危険というものものもあります。

味がいいことで有名なのはメヒカリかな。唐揚げにされることが多いです。あとはカサゴ類。これも唐揚げがおすすめです。もちろんキンメダイも高級食材として有名です。漁師さんが深海魚を獲るのは、もともと食用が目的なので、それが商売になるということは“深海魚はおいしい”ということですよね。

韓国のヌタウナギ料理/沼津港深海水族館(静岡県)

安東さんが「飼育員のここだけの話」で紹介していた、韓国のヌタウナギの料理

Q10:沼津港で深海魚が食べられるお店を教えてください

「沼津港深海水族館」がある「港八十三番地」内に、深海魚メニューがたくさんあります。「沼津バーガー」の深海魚バーガーや深海サメバーガー、「浜焼き しんちゃん」では深海魚を焼いて食べられるし、深海丼、メヒカリの唐揚げ、深海魚のお寿司など、どれも身がやわらかくておいしいですよ。

「浜焼き しんちゃん」の駿河湾深海おまかせ盛り/沼津港深海水族館(静岡県)

「浜焼き しんちゃん」の駿河湾深海おまかせ盛り1480円

「港八十三番地」についての記事はこちら:沼津港深海水族館へ行ったらランチはここで! その他周辺おすすめスポットも

10のギモンQ&A、いかがだっただろうか? 深海魚のことが少しだけわかったら、今度は親子で水族館へ出かけてみよう。子どもたちに教えてあげたり、家族で一緒に学んだり、そして深海魚グルメも堪能したり。沼津で“とっても深海魚な1日”を楽しんでみては?

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