
勉強も部活も全力で取り組む、文武両道校の淑徳巣鴨中学校。生徒だけでなく先生が率先して「楽しくなければ学校じゃない」と話します。生徒の主体性を伸ばし、将来を大切にする学校の様子を、学校インフルエンサーのがくパパと共に取材しました。
著者:がくパパ
「偏差値だけで学校を選ばない」をモットーに首都圏の中学受験校100校以上を独自に調査し中学受験校を分かりやすく解説しているインスタグラムを運営中。学校が好きすぎて、私立校の講師も経験した学校ヲタク。今は3児(5歳・2歳・1歳)のパパ。
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淑徳巣鴨中学校の基本情報

淑徳巣鴨中学校は、1919年創立の浄土宗系仏教校として100年以上の歴史を持つ中高一貫校です。近年の教育改革により受験者数を増やし、大きく成長を遂げています。
住所 | 東京都豊島区西巣鴨2-22-16 |
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アクセス | 都営三田線「西巣鴨駅」より徒歩3分、JR埼京線「板橋駅」より徒歩10分、東武東上線「北池袋駅」より徒歩15分 |
生徒数 | 約1543名(中学校386名、高校1157名)※2025年9月現在 |
中高一貫校 タイプ |
併設型(高校からの入学者あり) |
クラス編成 | 中学3クラス→4クラスへ拡大(2025年度より)、 スーパー選抜クラス・特進クラス 入学説明会:年10回程度(要予約) |
文化祭 | 淑鴨祭(9月開催・一般公開あり) |
土曜授業 | あり(週6日制) |
部活動 | 運動部16クラブ/文化部14クラブ(週1〜6日活動) ※高校のみ、中学のみの部活も含める |
URL |
入試情報(2026年度)
2つのコースがあり、受験科目が異なります。特進コースの「未来力入試」は、計算問題を速く解く力・文章や図を正確に理解する力をはかる「思考の基礎力」と、ものごとを深く考える力・課題を解決する力・自分の言葉で表現する力を総合的にはかる「思考の展開力」の2つの適性検査を実施します。
- 受験科目:
4科入試(国算理社)
3科入試(国算英)
2科入試(国算) - 受験科目:
2科入試(国算)
未来力入試(思考の基礎力・展開力または算数1科目) - その他:帰国枠あり(4科目または3科目+面接)
【スーパー選抜コース】
【特進コース】
淑徳巣鴨中学校はズバリどんな学校?
明るく元気な雰囲気は「感恩奉仕」の校訓から

感恩奉仕の言葉から生まれた学校マスコットキャラクター「おかげさまくん」
取材をおこなったのは夏休み中。自主学習や部活動で、多くの生徒が登校していました。
校内を歩いていると、本当にたくさんの生徒が元気に挨拶をしてくれます。「もちろん学校が強制しているわけではないですよ」と、学校案内をしてくれた石原先生は笑顔で話します。
「生徒たちに『学校の校訓である感恩奉仕(かんのんほうし)を実践していることって何かある?』と聞くと、多くが『挨拶!』と答えるんです」
校訓である「感恩奉仕」とは、自分をとりまく全ての存在に「ありがとう」と感謝する心を持ち、身につけた知識や能力を社会のために生かしていこうという意味。
「挨拶が感恩奉仕の実践だと思っている子たちが多い学校なんです。校訓は学校のカラーや雰囲気を作るものだと思っていて、うちが明るい学校、楽しそうな雰囲気だと言っていただけるのは、この精神が今の時代に合った形で表現されているからだと思います」
この理念が自然と生徒たちの日常の行動に息づき、習慣として根付いている。だからこそ校内には “明るさ”や“わくわく感”があふれているのです。
生徒たちが語る学校の楽しさ

「学校の雰囲気がよくて、毎日楽しいんです」と答えてくれた生徒さん。本当に楽しそう
廊下で出会った生徒たちに「淑徳巣鴨のいいところは?」と聞いてみました。
「先生との距離が近くて、毎日楽しいんです」
「行事がめっちゃ本格的で、全員本気なところがいい」
「文化祭がにぎやかで楽しい。飲食店もあって、アリーナ発表も盛り上がります」

現在ソングリーダー部に所属している高校1年生の生徒さん。小学生の時、説明会で見たダンス部の動画がかっこよかったのが印象深かったとのこと。また、この学校全体の雰囲気にも惹かれて進学を決めたそうです。
「楽しくなければ学校じゃない」。この言葉を、校長先生をはじめ、学校全体でその校風を作り上げており、どの生徒も学校生活を心から満喫している様子が伝わってきます。
淑徳巣鴨中学校に伺う「面倒見の良さ」とは?

室内で、マンツーマンで教える中学野球部の伊藤先生
「先生との距離が近いことが魅力」と生徒も語る、淑徳巣鴨中学校。その近さは先生と生徒という強固な上下関係ではなく、先生が生徒を見守り、生徒が自立しながら時に先生を頼りにする、対等な様子に見えます。
気づきの教育

ロビーにはトロフィーや賞状がいっぱい!
「(8年前から)教え方を180度変えて、『どう思う?』と生徒に考えさせる方法にしたんです」と石原先生。
「ラグビー日本代表を強豪チームに導いたエディー・ジョーンズ監督と同じ方法なんです。監督は選手に答えを与えるのではなく、映像を見せて『どう思う?』と考えさせる。それと同じです」
この、淑徳巣鴨中学校で「気づきの教育」と呼んでいる「生徒に考えさせる教育」は、いまや同校の中心となっている教育方針。探究学習や理数教育、グローバル教育などさまざまな授業や場面で「なぜ?」と疑問に気づく仕掛けを随所に用意しています。
授業に留まらず、部活動などでも実践されています。例えば石原先生が顧問を務めるサッカー部の試合ではハーフタイムに監督が「前半どうだった?」「どうしたらいいと思う?」などと問いかけ、選手たちに考えてもらいます。そうして学校生活全体を通して、生徒の主体性や個性を伸ばしているのです。
そして、「気づきの教育」は突き放す教育ではありません。学習面のサポートは手厚く、部活動と勉強を両立するための「SSEDプログラム(放課後自習支援)」が展開されており、20時(高校2年生の3学期からは21時)まで学校に残って学習できるのが大きな特徴です。学習拠点の「感恩館」には、常駐するチューターに質問もできるので安心。1コマ50分の集団学習や定期試験・受験対策用の個別指導も充実しています。
生徒を見守り「気づき」を促す姿勢と、困ったときには手を差し伸べられる手厚いサポート体制のバランスの良さ。生徒が安心して成長できる環境は、学校の風土自体が織りなすこうした面倒見の良さであるのではないでしょうか。
「生徒ファースト」で生徒を伸ばす!
日常の成長を認める表彰制度

中学校は「ベストスチューデント」、高校は「希望の星」として表彰
ロビーに「ベストスチューデント」や「希望の星」と掲げられた表彰ボードがありました。学年ごとに表彰されており、よく見ると表彰理由が面白いのです。
「いろいろなことを任せられる安心感が出てきた」
「チャレンジできることが増えた」
ここでは成績や部活といった身に見える成果だけでなく、努力していることやちょっとした気遣いなども表彰対象になります。日常の小さな成長を認める。これも淑徳巣鴨中学校の「気づきの教育」の特徴のひとつです。
表彰された生徒は「自分では当たり前だと思っていたことを認めてもらえて、すごく自信になりました」と話すそうです。学校側も「ほめる教育がうちの特徴だ」と自負しており、この取り組みが生徒の自己肯定感を高めています。
部活も勉強も諦めない文武両道

淑徳巣鴨中学校が誇る、強豪の女子剣道部。全国大会にも多数出場の経験をもつ
文武両道校として知られている淑徳巣鴨中学校。部活動は運動部22クラブ、文化部15クラブあり、全校生徒の約90%が参加しています。多くの部活動が週6日、つまり学校のある日はほぼ毎日活動があり、また多くの生徒が高校3年生まで積極的に活動を続けているそう。
「勉強も頑張る、部活も頑張る。その努力は社会に出たら強みになります」
サッカー部で10番をつけていた生徒は、高校3年の秋の大会まで活動し、志望の難関大学に現役で合格。保護者からは、「(3年の)4月で部活を辞めていたら受からなかったかもしれない。10月まで続けたから最後まで頑張る力が身についた」と話されたそうです。
この文武両道を支えるのが、前述した「SSEDプログラム(放課後自習支援)」。このプログラムを通じて部活動のあとに勉強にも集中して取り組むことができ、多くの生徒たちが部活と勉強の両立を果たしています。
生徒の未来を一番に考えた進学先選び
校内を案内してもらいながら、先生から印象的な話を聞きました。
「学年トップの成績だった生徒が、ある大学の指定校推薦を選んだことがありました。実力的にはもっと上の国公立大学も狙えたのに」
なぜそれを認めたのでしょうか?
「それは、本人がその大学に行きたいと言ったからです。生徒は学校のために受験するんじゃない。自分のために受験するんです」
当たり前のことのように聞こえますが、特に進学校の場合、合格実績を上げるために実力のある生徒に更なる難関大学を受けさせたり、指定校推薦を取らせてもらえなかったり、というケースもあります。ここではもちろん生徒の行きたい学校が最優先。どこまでも生徒たちの未来や成長を、学校全体で、第一に考えているのだと実感できます。
淑徳巣鴨中学校ならでは!気になる施設
感恩館

創立100周年を記念して建てられた「感恩館」。1階は授業や部活動に活用されている多目的ホール、2階には7つの選択教室が並び、電子黒板やプロジェクターなど最新設備が整っています。

放課後はSSEDの教室となり、入口には数人のチューターが常駐して生徒の学習をしっかりサポート。
スジャータ(食堂)

校内には食堂完備!ラーメンやカレーライスなどさまざまなメニューが提供されています。中学生も利用可能で、「中学生弁当」という3種類のメニューから選ぶことができます。お値段も学食価格でリーズナブル。夏休み中は部活動の合宿にも利用されています。
職員室前の勉強スペース

生徒たちが学習に集中できるよう、学校内には複数の自習スペースが設けられています。
そのひとつが職員室前。ここにあることで、自習中に分からないことがあれば先生に気軽に質問できる環境が整っています。
屋上庭園

生徒たちの憩いの場となっている屋上庭園。都心の学校でありながら空がひらけており、開放的な気分を存分に感じることができます。昼休みには多くの生徒が集まり、リフレッシュの場として賑わっています。
どんな子が向いている?
- 部活も勉強も両方頑張りたい
高校3年生まで部活を続けながら、難関大学を目指せる環境と手厚いサポート体制があります。 - 自分で考えて行動したい
「どう思う?」「どうすれば良い?」と考えさせる「気づきの教育」で、自分で考えて行動する主体性を育ててくれる環境があります。 - 明るく楽しい学校生活を送りたい子
生徒も先生も、みんなが楽しそう。それが一番の魅力です。
先生がお伝えする学校選びのアドバイス

進路指導部長の石原先生
中学受験は親子にとって大きな決断です。石原先生から、学校選びで大切にすべきポイントについてアドバイスをいただきました。
「説明会での校長先生の話も大事ですが、一番は生徒たちの雰囲気を見てください。私学は個性だから、その子に合った私学が必ずあります。ご本人が『この学校だったら楽しそう』とイメージできたり、保護者の方が『うちの子が通ったら楽しそう』と思えたりする学校が、相性の良い学校だと思います」
保護者へのメッセージ
先生が強調したのは、お子さんが生まれた時の気持ちを思い出してほしいということ。
「『生まれてきてくれてありがとう』と思った気持ちを忘れないでください」
時々、親のプライドのための中学受験になっているケースを見かけるそうで、「誰のために」受験するのかを立ち止まって考えることが大切だといいます。中学校入学はゴールではなく、その先の成長こそが重要。日常のコミュニケーションでも「こうしなさい」と指示するのではなく、「どう思う?」と問いかけることで、お子さん自身が考える力を育むことができるそうです。
「受験には合格・不合格がありますが、どちらも成長のチャンス。前向きにチャレンジする姿勢があれば、必ずお子さんに合った学校とご縁があるはずです」
「気づきの教育」をはじめ、先生方が生徒一人ひとりをしっかりと見つめ、その成長を認め続けてくれる風土が魅力の淑徳巣鴨中学校。入学後6年間の成長を学校全体で見守ってくれる。そんな温かさを感じる学校です。
<がくパパの取材コメント>
淑徳巣鴨中学校の最大の魅力は、「生徒ファースト」を徹底している点です。進学実績を上げるために生徒を型にはめるのではなく、一人ひとりの個性や希望を尊重する姿勢がとても印象的でした。特に心に残ったのは、取材で出会った生徒全員が「先生が気さくで話しやすい」と口を揃えていたこと。「楽しくなければ学校じゃない」という言葉通り、生徒たちが本当に学校生活を楽しんでいる様子が伝わってきました。文武両道を本気で実現できる環境があり、部活も勉強も頑張りたいお子さんには、ぜひ一度、足を運んでほしいと思います。