小田急線「玉川学園前」駅から正門まで徒歩約3分。門をくぐると、校舎よりも先に木々の緑が目に飛び込んできます。広大なキャンパスを歩いていると、まるで海外の大学を訪れたような、ゆったりとした空気に包まれました。
玉川学園中学部の教育と、生徒たちが自分の「好き」を見つけて深めていく仕組みについて、「るるぶKids」編集部が、がくパパとともにお話を伺いました。

- 玉川学園の基本情報
- └ 入試情報(2027年度)
- 玉川学園はズバリどんな学校
- └ 幼稚部から大学・大学院までが揃う、61万平方メートルのキャンパス
- └ 6つの価値をバランスよく育てる「全人教育」
- └ 宗教の時間はあっても、押しつけない
- 玉川学園ならではの教育内容
- └ 6年間かけて深める探究学習「自由研究」・「学びの技」
- └ 創立以来こだわり続ける「本物に触れる」学び
- └ 手を動かして学ぶ「労作教育」
- 玉川学園に伺う「面倒見の良さ」とは?
- └ 職員室がなく、先生はいつも教室にいる
- └ 学びたい本人が能動的に動ける見守り方
- キャンパスで見た「本物に触れて、感じて、表現する」学び
- └ アートセンター(アートラボ)で、生徒がバイオリンをつくる
- └ サイテックセンターで続く、サンゴの研究
- └「好き」が進路につながっていく
- 玉川学園ならではの施設を紹介
- └ 講堂
- └ 野外体験施設「TAP」
- └ MMRC(マルチメディアリソースセンター)
- こんな子が向いている
- 学校選びのアドバイス
- 保護者へのメッセージ
著者:がくパパ
「偏差値だけで学校を選ばない」をモットーに首都圏の中学受験校100校以上を独自に調査し中学受験校を分かりやすく解説しているインスタグラムを運営中。学校が好きすぎて、私立校の講師も経験した学校ヲタク。今は3児(5歳・2歳・1歳)のパパ。
≫ がくパパInstagram
玉川学園の基本情報

玉川学園は、1929年に小原國芳(おばら くによし)によって創立された共学の総合学園。「全人教育」を教育理念に掲げ、6つの価値(真・善・美・聖・健・富)をバランスよく育てることを大切にしています。幼稚部から高等部(12年生)までを一つの学校としてとらえる一貫教育をおこない、2029年に創立100周年を迎えます。
| 住所 | 東京都町田市玉川学園6-1-1 |
|---|---|
| アクセス | 小田急線「玉川学園前」駅 北口より正門まで徒歩3分 |
| 生徒数 | 中学部628名・高等部652名(2026年5月1日現在) |
| 中高一貫校 タイプ |
共学・高校募集あり |
| クラス編成 | 1学年5〜8クラス・1クラス35名程度 |
| 文化祭 | Tamagawa Ground Festival(9月開催)、探究学習発表会、玉川学園祭(3月開催) |
| 土曜授業 | なし |
| クラブ活動 | 運動系17クラブ・文化系10クラブ |
入試情報(2027年度)
4教科型のほかに、国算・算理・英語型など、得意を活かせる試験科目の組み合わせから選べるのが特徴です。面接(志望理由が中心)があり、複数回受験する場合は初回のみ実施されます。
- 受験科目(一般クラス):
└・第1回…4科入試(国算理社)/国算入試(国語・算数)/算理入試(算数・理科)/英語型入試(英語+国語または算数)
└・第2回…国算入試(国語・算数)/英語資格利用型入試(国語または算数)
└・第3回…4科入試(国算理社)/国算入試(国語・算数)/算理入試(算数・理科)
└・第4回…国算入試(国語・算数)/英語資格利用型入試(国語または算数) - 募集人数:第1回、第2回…65名程度/第3回、第4回…45名程度
- 試験時間・配点:国語・算数・英語 各50分/100点、理科・社会 各30分/50点
※このほかに国際バカロレア(IB)クラスの入試があります。最新の詳細は学校公式サイトでご確認ください。
玉川学園はズバリどんな学校?

迷子になるほど、とにかく広い敷地
取材に伺ったのは、よく晴れた夏の午後。道の両側は木々の緑に囲まれ、目的とする中学部校舎はなかなか見えてきません。道を歩く大学の先生に中学部の場所を聞きながら、学校内で迷子になるというはじめての体験もしつつ、この学校の規模が普通ではないことに気がつきます。
幼稚部から大学・大学院までが揃う、61万平方メートルのキャンパス
玉川学園のキャンパスは、町田市・横浜市・川崎市の3市にまたがっており、その広さはなんと61万平方メートル。この広大な敷地に、幼稚部から小学部・中学部・高等部、そして玉川大学・大学院まで集まっています。敷地は起伏に富み、奥には農場や牛のいる一角、竹林の残る裏山まであります。
「もっと奥に行くと農場もあって、そこまで迷ったら大変なんですよ」
一緒にキャンパスを回りながら笑顔で取材に応じてくれたのは、髙津先生、土屋先生、遠藤先生。
同じキャンパスに大学の研究者がいるので、生徒たちが自由研究でわからないことがあれば大学の先生に聞きに行ったり、大学の施設を使ったりすることもできるそうです。
6つの価値をバランスよく育てる「全人教育」
玉川学園が創立以来もっとも大切にしているのが、教育理念の「全人教育」です。
「一言でいえば、バランスのよい人に成長してもらいたい、ということです」
その土台にあるのが、真(学問)・善(道徳)・美(芸術)・聖(宗教)・健(健康)・富(生活)という6つの価値。勉強だけに偏らず、芸術もスポーツも生活の力も、調和的に育てることを理想としています。

6つの価値を刻んだ碑がキャンパス内にあります
例えば「富(生活)」には、得たお金をどう使い、誰のために役立てるかという考え方まで含まれます。開校当時から受け継がれてきた教えなのだそうです。
子どもの成長に寄り添いながら個性を伸ばす。この全方位的な成長を「360°成長」と呼び、実現に向けてさまざまな取り組みをしているのだそう。
宗教の時間はあっても、押しつけない
玉川学園のキャンパス内には礼拝堂やチャペルがあります。いわゆるミッションスクールではありませんが、子どもの成長に宗教観は大切という考えから、週に1度、礼拝の時間が設けられています。讃美歌を歌い、聖書の朗読や講話に耳を傾ける時間です。
一方で、仏教のお坊さんを招いて話してもらうこともあり、講話は先生自身がすることも多いのだとか。信仰が入学の条件になることもありません。
玉川学園ならではの教育内容
自然豊かな環境に囲まれながら、玉川学園は独自の学びを積み重ねてきました。柱になるのは、6年間の探究学習「自由研究」・「学びの技」、創立以来の「本物に触れる」経験、そして手を動かす「労作教育」です。
6年間かけて深める探究学習「自由研究」・「学びの技」

校舎に展示されている自由研究の作品
玉川学園の学びの核が、6年間を通じて取り組む「自由研究」と「学びの技」です。
中学1年生・2年生(玉川学園では小学1年生は「1年生」、高校3年生は「12年生」と呼びます)では、教科の延長として開かれる講座から自分の研究テーマを選び、1年間かけて研究して3月に発表します。学年縦割りで、中学1年生と2年生が一緒に一つのテーマに取り組むこともあります。
「探究学習といっても、机の上でずっと考えていては探究になりません。まずは体験してみる、自分でやってみるということを、とても大事にしています」
中学3年生ではいったん自由研究を離れ、「学びの技」という特設授業で1年間、研究の進め方そのものを学び、最後には論文を書き上げます。問いの立て方、データの集め方、論文のまとめ方といった「研究の型」を身につける授業です。10月には中間発表としてポスターセッションをおこない、中学2年生や高校生から質問を受けて、研究をさらに磨いていきます。
高校では、この型をもとにより深い自由研究へ。中学生が書いた論文が高校生対象のコンクールで入賞したり、研究テーマがそのまま大学の学部選びにつながったりする例もあるそうです。研究を進めるうちに数学の統計や国語の力が必要になり、教科横断的な力がついていきます。

校舎の廊下には、何度も練習を重ねて書き上げたという中学2年生の書道作品が飾られていました。作品の一つひとつから、1年間かけて取り組んだ時間の厚みが伝わってきます。
創立以来こだわり続ける「本物に触れる」学び
玉川学園の教育で大きな特徴のひとつが、「本物にふれる」経験です。
創立翌年の1930年、スキー学校で「習うなら、世界で一番うまいスキーの先生に習いたい」という子どもの声を受けて、学校はオーストリアのアルペンスキーの名手ハンネス・シュナイダーを日本に招きました。1931年には、デンマーク体操の創始者ニルス・ブックも来園。デンマーク体操は今も体育の授業で扱われ、体育祭の集団演技のもとになっています。
その姿勢は、約100年経った現在も変わりません。ベルリン・フィルやウィーン・フィルの奏者による弦楽四重奏を、小学生が聴きながら絵を描く。そんな鑑賞の機会もあるのだそうです。
中学2年生は標準よりも多めに統計の時間を取り、データを使って説明する練習を一人ひとりがおこなっています。取材に伺った日の3時間目には、IBMのデータサイエンティストが中学2年生の統計の授業に登壇。統計が実社会でどう役立つのかを、本物の専門家が語ってくれたそうです。
手を動かして学ぶ「労作教育」

間伐材を使って生徒がつくった集いのスペース
玉川学園中学部のもうひとつの特徴が「労作(ろうさく)教育」。畑で季節の野菜を育てたり、花壇やベンチを子どもたちの手でつくったりと、実際に体を動かして学ぶ活動です。
中学1年生の希望者が裏山に入って竹林を保全する活動もあり、取材で歩いたキャンパスには、間伐材や裏山の竹を使い、デザインから制作まで生徒の手で仕上げたという集いのスペースがありました。

こちらも、生徒がカラスの被害をおさえられるよう工夫したゴミ箱。子どもたちの「労作」の跡が、キャンパスのあちこちに残っています。
学びを支える仕組みも徹底しています。台風などで登校が難しい日は、前日のうちに小学部から大学まで一斉にオンライン授業への切り替えを決定。合言葉は「学びを止めない」。12の教育信条の一つ「24時間の教育」を、日常の中で実践しています。
玉川学園に伺う「面倒見の良さ」とは?
職員室がなく、先生はいつも教室にいる
玉川学園の中学部には、いわゆる職員室がありません。先生一人ひとりが担当の教室にデスクを持ち、教科ごとに決まった教室で授業を受ける「教科教室制」をとっているためです。
「先生たちが常に子どもたちと一緒に時間を共有できているところも、本校の面倒見のよさの一つの側面だと思います」
朝から放課後まで、いろいろな先生と関われる環境が、「自分のことを知ってもらえている」という安心感につながっているようです。案内された教室では、黒板の横に先生のデスクコーナーがあり、教科の準備室も教室のすぐ近く。高校生になると、この準備室に質問に行くスタイルになるそうです。
学びたい本人が能動的に動ける見守り方

学務主任の髙津先生
「私は絶対に、面倒見がいいです、という言い方はしないようにしています。『面倒を見ます』ではなく、『自分の得意なもの、好きなものを見つけさせます』と、あくまで本人が見つける、本人が学ぶ。という言い方をしたいんです」
髙津先生がそう話すのは、生徒を面倒を見てもらう「受け身」の姿勢にさせないためです。学ぶのはあくまで本人。質問も、困りごとの相談も、自分から動いて学びを勝ち取ってほしいという考えが根っこにあります。
とはいえ、放っておくわけではありません。提出物を出さない、やるべきことをやらない、といったことには厳しく向き合います。
「読み書きそろばんは、探究をやる以前の問題として、きちんとやらせたいんです」
どんな一流の選手でも、基礎のトレーニングを積み重ねている。だからこそ基礎基本の徹底には妥協しない。玉川学園の「面倒見」は、自律を育てるための厳しさと伴走の両輪でできています。
キャンパスで見た「本物に触れて、感じて、表現する」学び
先生たちがキャンパスを案内してくれながら見えてきたのは、「本物にふれて、感じて、表現する」が日常になっている現場です。
アートセンター(アートラボ)で、生徒がバイオリンをつくる

ものづくりの拠点、アートセンター(アートラボ)。3Dプリンターやレーザー加工機、コンピューター制御で木を削り出す機械といった本格的な機材が並び、生徒たちが自分の手で作品を生み出しています。

生徒が製作中のバイオリン。もちろん完成したら本当に弾けます!
中でも目をひいたのが、生徒が一からつくっているバイオリンです。世界に1本しかないバイオリンで、3年がかりでつくり上げるのだそう。ほかにもステンドグラスや陶芸など、幅広い制作がおこなわれています。

焼き物で自分の表札を作成
陶芸では、三浦市から陶芸家の先生が毎週来校して指導にあたっているそうです。本物の作り手のそばで、じかに学べる環境があります。
サイテックセンターで続く、サンゴの研究

サイテックセンターの水槽で育つサンゴ。この規模の水槽が壁一面にあるからすごい!
キャンパス内にあるサイテックセンター(理科専用校舎)では、生徒がサンゴの養殖研究に取り組んでいます。水槽一面に広がるサンゴは、水族館と思えるほどの光景でした。水槽で育てたサンゴを、生徒たちが沖縄の海に植え付けるところまでおこなっているのだそう。
温度や濃度などの条件を変えながら、どうすればうまく育つのかを一人ひとりが研究テーマを立てて進めていて、テレビの報道番組で取り上げられたこともある取り組みです。
「好き」が進路につながっていく
自由研究やクラブで打ち込んだことが、そのまま将来の道につながっていく生徒も多いそうです。高校3年生の研究テーマが大学の学部選びに直結するケースも珍しくなく、ヨーロッパのプロオーケストラに入団した卒業生もいるのだとか!
中学・高校時代から専門の先生に教わっているからこそ、「この先生のもとで学びたいから」と大学を選ぶ生徒が多いのも特徴です。
「本校は、どこの大学に何人入れるかを旗を振って勉強させる学校ではありません。子どもたちの興味関心は生徒の数だけありますから、それを学校が応援するんです」
一人ひとりの「好き」を、環境と時間をかけて進路まで育てていく。キャンパスで見た制作や研究の現場は、その言葉の裏づけになっていました。
玉川学園ならではの施設を紹介
キャンパス見学で案内してもらった場所から、玉川学園らしい施設を紹介します。
講堂

学年の生徒が集まって礼拝や講演会をおこなう場です。堂内には本物のイタリアの宗教画があしらわれ、パイプオルガンも設置されています。
野外体験施設「TAP」

キャンパス内には、高いところに登るアドベンチャー型の野外体験施設があります。命綱をつけ、仲間同士で支え合いながら課題に挑む「TAP(Tamagawa Adventure Program)」の舞台です。
アメリカ生まれの体験学習プログラムを玉川学園向けに発展させたもので、専門スタッフが玉川大学にいて、大学の教育学部の学生も手伝いに入ります。中学1年生の入学して間もない時期に、仲間づくりのプログラムとして活用されています。
MMRC(マルチメディアリソースセンター)

幼稚舎~高校に在籍する全ての子どもたちが利用できる図書館。図書館機能に加えて、中央にはマルチメディアシアターなどが配置されており、授業でも活用されています。
どんな子が向いている?
好奇心のある子
まずは好奇心。せっかく入ってきたなら、何かやってみたいなという気持ちがあると、この環境をより楽しめます。その好奇心がいかなる好奇心であっても、学校として受け止められる幅がありそうです。
何か一つに夢中になった経験がある子
鉄道でも昆虫でも、スポーツでも音楽でもいい。「小学校までに、勉強以外のことで何か一つ夢中になった経験がある子は強いですね」と先生は話します。
自分の「好き」を大切にできる子
女子はひとつに決まった制服ではなく、12種類の「玉川学園標準スカート」やスラックスから自分に合うものを選ぶスタイル。「みんな同じ」より「みんなそれぞれ違う」を大切にする校風なので、自分らしさを持てる子がのびのび過ごせます。
学校選びのアドバイス

プログラミングの授業の様子
学校を訪れたときには、授業内容や施設だけでなく、先生が生き生きと楽しそうに子どもたちと関わっているかにも目を向けてほしいといいます。
「子どもたちは、先生のことを好きになることで、その教科自体も好きになってくれると思うからです」
先生自身が学ぶことを楽しんでいる学校では、その空気が子どもにも伝わります。
また、保護者だけで学校の評価をするのではなく、子どもと一緒に実際の学校へ足を運ぶことも大切です。親が感じる魅力と、子どもが心を動かされる場所は、必ずしも同じとは限りません。
学ぶことを楽しめる場面がどのような形で用意されているか、先生や生徒の表情はどうか、その学校で過ごす自分の姿を子ども自身が想像できるか。親の目と子どもの目の両方で「合う・合わない」を確かめることが、学校選びの出発点になります。
保護者へのメッセージ

取材に応じてくれた髙津先生・土屋先生・遠藤先生
最後に、小学生の保護者に向けたメッセージを伺いました。
「子どもの小さな変化や成長を見逃さないでほしいです。よくないところは目につきやすい。でも、少しでもよくなったことを見逃さずに、きちんと言葉にしてあげてほしいと思います」
玉川学園では、できていないことを指摘するだけでなく、少しでもよくなった部分を見つけ、言葉にして認める「正の強化」を大切にしています。
それは、学校だけでなく、家庭でもできる関わり方です。
昨日より少し早く準備ができた、自分から挨拶できた、苦手なことにもう一度挑戦した。そんな小さな変化に目を向けて言葉にすることが、子どもが次の一歩を踏み出す力につながっていくのでしょう。
<がくパパの取材コメント>
正直、これほど「広い」学校は初めてでした。駅から3分の正門を一歩入ると、そこはもう森。幼稚部から大学・大学院までが同じキャンパスに揃い、生徒がバイオリンをつくり、サンゴを育て、6年間かけて自分の「好き」を研究に育てていきます。
取材でずっと頭に残っているのは、「面倒を見ます、とは言わない」という先生の言葉です。その裏には、子ども自身が学びを勝ち取れるように、というぶれない考え方がありました。基礎基本には厳しく、そのうえで一人ひとりの興味関心を応援する。玉川学園が掲げる「本物に触れて、感じて、表現する」は、この両輪があってこそだと感じました。
偏差値では測れないものを、この森はたっぷり用意して待っています。ぜひ一度、説明会やイベントに足を運んで、自分の目でこの学校の空気を感じてみてください。

