かえつ有明中学校を取材!安心感の土台で生徒がチャレンジできる環境【個性を伸ばす中学校選び】

かえつ有明中学校(東京都/江東区)

るるぶKidsライターのアイコンるるぶKidsライター

商品開発に取り組む生徒、ものづくりに夢中になる生徒、自習室で自分の課題に向き合う生徒。かえつ有明中学校には、それぞれの興味やペースを大切にしながら、次の一歩を応援する空気がありました。今回は2026年3月に卒業した生徒さんの生の声とともに、学校の魅力を「るるぶKids」編集部が学校インフルエンサーのがくパパと共に取材しました。

» 子どもの個性を伸ばす進路・学校選び

目次(index)

がくパパ著者:がくパパ
「偏差値だけで学校を選ばない」をモットーに首都圏の中学受験校100校以上を独自に調査し中学受験校を分かりやすく解説しているインスタグラムを運営中。学校が好きすぎて、私立校の講師も経験した学校ヲタク。今は3児(5歳・2歳・1歳)のパパ。
≫ がくパパInstagram

かえつ有明中学校の基本情報

外観/かえつ有明中学校(東京都/江東区)

かえつ有明中学校は、1903年の私立女子商業学校が前身。2006年に嘉悦女子中学校・高等学校からかえつ有明中学校・高等学校に改称し、男女共学化を実施しました。

「生徒一人ひとりが持つ個性と才能を生かして、 より良い世界を創りだすために 主体的に行動できる人間へと成長できる基盤の育成」を教育理念に掲げ、思考力を育むサイエンス科や英語による哲学対話など、対話と探究を軸にした学びを続けています。

住所 東京都江東区東雲2-16-1
アクセス りんかい線「東雲」駅より徒歩約8分/東京メトロ有楽町線「辰巳」駅より徒歩約18分/東京メトロ有楽町線「豊洲」駅から都営バス利用、「都橋住宅前」バス停下車徒歩約2分
生徒数 中学校:646名 高校:605名(2026年8月現在)
中高一貫校
タイプ
共学校・中高一貫校(高校募集あり)
クラス編成 中学校6クラス編成
文化祭 9月下旬 
土曜授業 あり
クラブ活動 運動系10クラブ・文化系11クラブ・同好会3クラブ

入試情報(2027年度)

国語・算数の2科または国語・算数・理科・社会の4科で受験する入試のほか、探究型の入試として「テオリア」「ポリフォニー」、英語力を生かす「Honors / Advanced選考」などが実施されます。帰国生入試では、Honors / Advanced選考、Regular選考、ニューヨーク現地入試なども設けられています。

  • 2科・4科入試(特待入試)
  • 個人探究「テオリア」
    対象をじっくり観察し、そこから自分なりの問いや考えを深めていく入試です。
  • グループ探究「ポリフォニー」
    他の受験生との対話を通して、考えを広げていく入試です。
  • 帰国生入試(Honors/Advanced選考、Regular選考、ニューヨーク現地入試)

※最新の詳細は学校公式サイトでご確認ください。

かえつ有明中学校はズバリどんな学校?

商品開発やものづくりに積極的に取り組める環境

企業の担当者による出張授業/かえつ有明中学校(東京都/江東区)

商品開発に向けて、企業の担当者が出張授業をおこなっていました

カフェテリアを覗くと、中学3年生の生徒たちが、とある企業の新商品開発に関するアイデア出しを進めていました。「学内のプレゼンでクラス1位になると、今度は本社に呼ばれてプレゼンします」とのこと。

また、その隣のスペースでは、中学2年生たちが段ボールでヒーローの仮面を制作中。発表会は、近所にある有明のショッピングモールで実際に行うとのこと。

生徒さん/かえつ有明中学校(東京都/江東区)

「今日はどんなヒーローを作っていますか?」と尋ねると、「僕は水を操るヒーローです」と笑顔で答えてくれました。

制作したお神輿/かえつ有明中学校(東京都/江東区)

こちらはデザイン会社と協働で取り組んで制作したミコシ。タワーマンションを表現したパーツや、海が近い土地を意識した波のデザインなど、生徒がフィールドワークを行ったことで見出した有明・東雲地区の魅力がたっぷり込められています。

かえつ有明中学校では、こうした企業や地域と直接つながる学びが日常的に行われています。そしてなにより、生徒たちが楽しそうにのびのびとしているのが印象的です。

個性と才能を伸ばす、居心地のいい学校

学年主任の篠原先生は、取材の冒頭で「本校は生徒一人ひとりの個性と才能を伸ばす、居心地のいい場所ですね」という言葉を口にしました。

篠原先生/かえつ有明中学校(東京都/江東区)

学年主任でもあり、テニス部顧問でもある篠原先生

ここで言う「居心地のよさ」は、ただ自由に過ごせるという意味ではありません。生徒が安心して考え、挑戦するための土台として、意図的につくられているものです。

「居心地がいいからいろいろなことに挑戦できるんです。失敗しても戻ってこられる、傷ついても癒やせる場所があるから、生徒たちはもう一歩踏み出してみようかなと思える」

安心の場をまずつくり、その先にチャレンジできる環境を置く設計が学校全体にあるといいます。

卒業生の手塚さんが、母校で働いて初めて気づいたこと

2026年の春に卒業し、海外大学へ入学した手塚さんも、学校がつくる安心感について話してくれました。

卒業生の手塚さん/かえつ有明中学校(東京都/江東区)

卒業生の手塚さん

手塚さんは海外大学進学に向けて準備をしながら、同校で教育活動のサポートをしていました(取材時点)。生徒として過ごした6年間と、生徒の学びをサポートする側に回った直近の数か月とで、見える景色が変わってきたそうです。

先生達の見守りのかたち

手塚さんが在学中に取り組んだプロジェクトのひとつが、アーツセンターBLOOM(ブルーム)の壁画づくり。最初はものの測り方や材料の選び方、何を表現すればいいかなど先生が細かく教えてくれて、一緒に動いてくれていたそうです。

ところが、活動が進むにつれて、先生は少しずつ関わりを減らしていきます。最後の3〜4か月は、外部から学校見学に来た人への説明の仕方も、壁画を今後どうやって保存していくかも、生徒たちが自分で考えるようになっていました。

「当時は『なんで先生たち、もう手伝ってくれないんだろう』『勝手にやれってことかな』と思っていました」と笑います。生徒の目線では、ちょっと放っておかれているように感じていたそうです。

BLOOMの壁画/かえつ有明中学校(東京都/江東区)

ただ、手塚さんは、後輩たちのプロジェクト活動のサポートをしているうちに、あることに気が付きました。

最初は手塚さんも、生徒たちに細かく説明や手助けをおこなっていたとのこと。「ものの測り方は」「材料を選ぶときには」──。けれど、後輩が徐々に自分たちでできるようになってきたら、少しずつ手を引いていきました。

「あれ、これって、僕の担任の先生がやっていたことと、まったく同じだな」

そう気づいた瞬間があったそうです。生徒の頃には見えなかった先生たちの動きの意味が、サポートする側に回って初めて、輪郭をもって見えてきたといいます。

「先回りで決めてもらうことも、行動を細かく管理されることもなかったけれど、学びのサポートをする側の立場に立ってみると、先生達はすごく僕達を見てくれていたんだな、と」

先生の存在が心の支えになっていたし、アドバイスも、自分で考えて動けるようなかたちで出してくれていた。

「それって実は、ものすごく面倒見がいいってことなんじゃないかと思っているんです」

「安心できる」から「挑戦できる」教育

では、「居心地のいい場所」「安心できる場所」をつくる取り組みは、具体的にどのようなものなのでしょうか?

安心して過ごせる空気づくり―コンフォートゾーン

「中学1年生の4~5月や、クラス替えの直後、高校でコースが分かれるとき。そうした各学年・各学期のはじめに、安心して関係を築く時間を意図的に設けています」

かえつ有明中学校で最初に取り組むのは、心理学や教育の現場で「コンフォートゾーン(安心して過ごせる領域)」と呼ばれる土台づくりです。

新しい環境に入ったばかりの生徒にとって、まず安心を確保する時間が設計されているかどうかで、その後の6年間の学校生活が大きく変わります。何かしら失敗したり傷ついたりしたときにも、ここに戻ってくれば癒せる。その安心感こそ、生徒たちが次の挑戦を支える土台になるという考え方です。

また、学校が生徒にとって安心して過ごせる場所であるために、時間だけでなく、物理的な環境にも配慮しています。NEST(ネスト/巣)と呼んでいるウェルネスセンターもそのための一つ。心身の疲れや不調を感じた時に羽を休める場所が、きちんと設けられているのです。

挑戦づくりの領域―ストレッチゾーン

この「安心の場」の少し外側には、「ストレッチゾーン(少し背伸びをして挑戦する領域)」と呼ばれる領域が広がっています。同校では、生徒たちが授業、プロジェクト、部活動、学校行事などで自然とこの領域へ踏み出し、挑戦の幅を広げられる仕掛けをつくっています。

冒頭に紹介した企業連携もそのひとつ。その時々で、生徒にどんなことを感じて何を学んでほしいかを先に考えて、プログラムを選んでいます。

大切にしているのは、「やらせる」ことではなく、生徒の内側から生まれる「やりたい」を引き出すこと。

「『突然、留学したい』と言い出す生徒もいるんですよ」と篠原先生。

日々の小さな挑戦を積み重ねていくうちに、生徒は自分のなかに「やってみたい」を膨らませ、自分の意思で次の一歩を踏み出せるようになるのだそうです。

テニス部活動からも見える、結果より成長を大切にする姿勢

篠原先生はテニス部の話もしてくれました。
かえつ有明中学校のテニス部は、スポーツ推薦のない学校ながら、全国大会出場を重ねている部活動です。

全国中学校テニス選手権大会の表彰盾/かえつ有明中学校(東京都/江東区)

2022年には全国中学校テニス選手権大会にて優勝!!

「うちでは『結果』ではなく『成果』と言っています。『成る果実』と書いて成果、ですね」

と、篠原先生。

「勝ってよし、負けてよし」「成長・感動・感謝・敬意・挑戦」の循環を大切にしていて、結果を求めるよりも、生徒自身が挑戦そのものを楽しめているかを見ているといいます。のびのびとしてさまざまなことに取り組む生徒たちの様子を見ていると、こうした部活動の話ひとつとっても深く納得できます。

映画や商品開発から始まる、かえつ有明中学校ならではの学び

かえつ有明中学校では、先生が答えを与えるのではなく、生徒が自分の言葉で考えていく授業がいくつもあります。

映画や身近なものから、答えのない問いを考える

例えば、ネイティブの先生が英語で進める「フィロソフィー(哲学対話)」の授業。卒業生の手塚さんが印象に残っていると話してくれたのは、映画『カールじいさんの空飛ぶ家』を題材にした回でした。

「『人はなぜ旅をするのか』『そもそも旅とは何か』を考えていくんです。先生が答えを教えてくれるわけではなくて、友達の意見を聞きながら、自分なりに考えていきました」

さらに、「和牛と人間」というテーマで、「丁寧に飼育され、いい食事をもらえる代わりに命を終える日が決まっている世界をどう考えるか」を、人間の人生に重ねて考えた回もあったといいます。

「絶対に普段考えないことを、授業として考えさせてくれる場所だったので、面白かったんです」

中学の間はいわば導入で、いろいろなテーマを楽しく扱ってくれるし、生徒も最後に「楽しかったな」と思えるのだそう。

思考力を育む「サイエンス科」

かえつ有明中学校が20年前から続けてきた独自の教科に、「サイエンス科」というものがあります。

「いわゆる理科のことではなく、自ら問いを立てて探究するための“学び方”や“思考のスキル”を育む教科なんです」と篠原先生。国語、数学、理科、社会といった教科の枠を越えて、ものごとを多面的に見たり、問いを立てたり、自分なりに考えたりする力を育てる時間として、大切にしてきたといいます。

図書室/かえつ有明中学校(東京都/江東区)

授業形態もさまざま。中学生と高校生が一緒に図書室で学ぶこともあるそうです

フィロソフィーの授業で答えのない問いに向き合うこと。企業との商品開発でアイデアを形にし、相手に伝えること。有明の街を見つめ直し、神輿という形で表現すること。取り組みの内容はそれぞれ違いますが、その根っこには、「一つの正解を覚えるだけではなく、自分で問いを持ち、考えてみる」という姿勢が共通しているように感じました。

海外大学も。目指したい進路に進んでいける

これらの学びを経て、生徒たちは自分の目指したい進路を選んでいきます。そのなかでも他校と比べて多いのが、海外大学への進学です。

手塚さんが選んだ進路も、そのなかのひとつ。もともと帰国生としての入学であり、海外大学にはぼんやり行ってみたい気持ちはあったものの、行き先までは決めていなかったといいます。

転機になったのは、英語の大会に出場したときに訪れたボストンでした。街の雰囲気に魅力を感じて、「アメリカで学びたい」と思うようになったのだそう。

実際の出願では、英語のスコアだけでなく、課外活動の実績や、大学ごと・共通のエッセイなど、自分の経験を言葉にしてまとめる作業が必要だったそうです。フィロソフィーやプロジェクトで「自分の言葉で考えを伝える」経験を重ねてきたことが、こうした準備にもつながっていったといいます。

かえつ有明中学校の学びを支える施設

教室の外にも、対話と探究を支えるユニークな空間がいくつもあります。特に印象に残った3つの場所を紹介します。

ドルフィン――授業と探究の核になる図書館

ソファや小部屋などもある広々とした図書館。個別学習やグループワーク、国語のリーディングワークショップ、ネイティブの先生による英語フィロソフィー、中学1年生の地理など、さまざまな授業の舞台になっています。

ブルーム――靴を脱いで対話できる空間

BLOOMの壁画/かえつ有明中学校(東京都/江東区)

アーツセンター「ブルーム」の1階は、木を基調にした土足禁止のスペースです。靴を脱いで上がると、家のリビングのような落ち着いた空気が流れます。

クッションやピアノのあるブルーム/かえつ有明中学校(東京都/江東区)

クッションやピアノもあります

「対話を大切にしたい」という学校の考え方が、空間の設計そのものに込められていました。

タートル――手塚さんが「めちゃくちゃ使った」自習室

セルフラーニングセンター、通称「タートル」。「めちゃくちゃ使いました」──案内のなかで卒業生の手塚さんが、笑顔で振り返ってくれました。

カフェのような落ち着いたインテリアの自習室で、毎日、大学生・大学院生のメンターが交代で常駐しています。教科の質問に答えてくれるだけでなく、「どう勉強したらいいかわからない」という相談にも乗ってくれる場所です。

どんな子が向いている?

自分でやりたいことを見つけたい子

最初から何でも自分でできなくても大丈夫。安心できる場所で支えてもらいながら、少しずつ自分で決めていきたい、という子に合う学校です。安心の場を意図的に整えてから、挑戦に送り出す設計が、土台にあるからです。

映画、ものづくり、商品開発、神輿、部活動──。いろいろな入り口から自分の興味を見つけたい、という子も楽しめそうです。「やりたいことが決まっている子」だけでなく、「これから好きなことを見つけたい子」にも開かれています。

自分で考えることが好きな子

正解がすぐに出ない問いについて、自分なりに考えたり、人の意見を聞いたりすることを面白がれる子にも向いています。フィロソフィー、サイエンス科、プロジェクト活動など、答えがひとつに決まらないテーマに触れる時間が、日常のなかにたっぷりとあります。

いろいろな人との関わりを楽しめる子

英語力や海外経験の有無は問いません。むしろ、自分とは異なる背景や考え方を持つ人と出会うのを楽しめるかどうかが、この学校の空気となじむかどうかの軸になりそうです。

先生が伝える学校選びのアドバイス

偏差値より先に、「ここで過ごしたい」を探す

「偏差値や点数だけを軸にせず、子どもにとってどの環境がいいのか、親と子で話しながら決めてほしいです」

いろいろな学校を見てまわるなかで、教育プログラムだけでなく、校内で過ごす生徒や先生の様子を実際に見てみてほしい、とのこと。子ども自身が「ここで過ごしたい」と感じる学校が、きっと出てくるといいます。

中学受験そのものをゴールにせず、その後の6年間をどう過ごしたいかを考える──そんな学校選びにつなげていくと、子どもにとっても無理のない時間になりそうです。

保護者へのメッセージ

「小学生の娘がいるんです」と篠原先生。親としての目線も交えながら、こう続けます。

「人は、見たもの、聞いたもの、味わったもの、触ったもの、感じたもので思考と想像が広がります。だからこそ、五感を使った体験をできるだけたくさんしてほしい」

自然に触れる、友達ともめる、何かを作ってみる、知らない場所や人に出会う。そうした見て・聞いて・触って・感じる時間が、その後の思考力や想像力の土台になっていきます。

「中学受験の勉強だけに特化してしまうと、人間的な厚みや感性を育てる時間が削られてしまう。低学年から中学年のいまだからこそできる体験を、ぜひたっぷり積んでほしい」と、話してくれました。

<がくパパの取材コメント>

今回の訪問で印象に残ったのは、手塚さんの「生徒の頃は気づかなかったけれど、今になって、本当によく見てくれていたとわかります」という言葉でした。

先生が何でも先回りするのではなく、できるようになったら少し手を離す。でも、それは放っておくのではなく、生徒が自分で歩き出せるように見守っているということ。そこに、かえつ有明中学校らしい面倒見があるのだと感じました。

その背景にあるのは、生徒が安心して過ごせる空気です。自分の考えを受け止めてもらえる、失敗しても戻ってこられる。そんな場所だからこそ、生徒たちは商品開発やものづくり、部活動、進路選択にも、自分なりの一歩を踏み出せるのだと思います。

子どもの個性を大切にしながら、必要なときには支え、歩き出したらそっと見守る。そんな学校の様子が気になる方は、学校に足を運んで、この空気を感じてみてください。