大きくて、の~んびりしていて、見ているとなんだかホッとする、水族館の癒やし系「マンボウ」について探ってみましょう。日本最大の専用水槽を持つアクアワールド茨城県大洗水族館の飼育員さんに「マンボウってどんな魚」なのかをうかがってみました。キッズ注目の観察ポイントも見逃せません。そして現在、日本でマンボウを常設展示している7つの水族館をご紹介。飼育・展示の苦労や工夫などもたずねてみました。
※この記事は2020年11月現在の情報です。マンボウの展示は内容変更、中止・休止する場合がよくあります。事前にご確認ください。
- 教えて飼育員さん! マンボウってどんな魚?
- キッズ注目! マンボウの観察ポイント
- マンボウのキホン
- マンボウの名前
- マンボウのカラダ
- マンボウの生態
- マンボウの性格
- マンボウの食事
- マンボウの繁殖と寿命
- マンボウの種類
- マンボウに会える7つの水族館
- アクアワールド茨城県大洗水族館(茨城県)
- 鴨川シーワールド(千葉県)
- 横浜・八景島シーパラダイス(神奈川県)
- 志摩マリンランド(三重県)
- 越前松島水族館(福井県)
- 海遊館(大阪府)
- 下関市立しものせき水族館 海響館(山口県)
教えて飼育員さん! マンボウってどんな魚?
まずは、アクアワールド茨城県大洗水族館のマンボウ担当の飼育員さんに、マンボウとはどんな魚なのか、そしてキッズにおすすめの観察ポイントなどもうかがってみました。
●西田 和夫(にしだ かずお)さん
アクアワールド茨城県大洗水族館の魚類展示課係長。子どもの頃から海洋生物に興味があり、水族館に就職して2020年で19年目。マンボウ担当してから3年。好きな魚はもちろんマンボウですが、深海魚のフォルムにも惹かれるそうです
キッズ注目! マンボウの観察ポイント
ヒレの動きをチェック! 横にしたらペンギンと同じ泳ぎ方!?
『ヒレの動きと泳ぎ方に注目してみてください』と西田さん。『「背ビレ」と「尻ビレ」を同じ方向に動かして前に進んでいるんです。方向転換は「舵ビレ」、そして「胸ビレ」でバランスをとっています』。確かにヒレを同じ向きにパタパタさせて泳いでます。『これ、マンボウを横に倒したら、水中を羽ばたくように泳ぐペンギンの泳ぎ方と同じなんですよ』と西田さん。なるほど~! ペンギンと同じ…目からウロコでした。
写真上部が「背ビレ」、下部が「尻ビレ」、左部分が「舵ビレ」で、目の左側にあるのが「胸ビレ」です
マンボウのキホン
マンボウはフグの仲間! 正面から顔を見てみましょう
では、マンボウのキホン情報を。学名は“Mola mola”、英語名は“Ocean sunfish”、和名が“マンボウ”といいます。『日本でもなじみの深い魚で、実はフグの仲間なんです。エラ孔が小さく腹ビレがないところはフグと同じです』と西田さん。そういえば、顔を正面から見ると「あっ、確かにフグっぽい」と思いました。
- 【学名】Mola mola
- 【分類】フグ目 マンボウ科 マンボウ属
- 【生息地】全世界の温帯から熱帯域の外洋
マンボウを正面から見たアングルです。ねっ、ちょっとフグっぽいでしょ?
マンボウの名前
名前の由来は諸説あり! 地方独自の名称がおもしろい
マンボウの名前の由来は諸説あり、漢字で「満方」「円魚」「万宝」からきているといわれています。また、地方で呼び名がいろいろあるのもマンボウの特徴です。例えば、海面に浮かんでいる姿から「浮木」、マンボウの身がイカのように白くてやわらかいことから「雪魚」、また魚の形の後半部分が切れたように見えることから「尻切」など、なかなかもしろいですね。
確かに、魚の下半分が切れた「尻切」という名前もわかりますね
マンボウのカラダ
成長すると全長約3mにもなる!? 一番の特徴は舵ビレ
『マンボウは成長すると全長約3mにもなるといわれています。そして、普通の魚のような尾ビレがなく、方向転換のための舵ビレをもつのが大きな特徴です』と西田さん。そして、丸い目、小さな口が可愛いですね。歯はアゴの骨と一体化し、板状なんだそうです。
鴨川シーワールドでマンボウ“モンタン”の全長を測定しているところです(2002年頃)
マンボウの生態
マンボウはジャンプする! そして意外とアクティブ!?
『マンボウはジャンプするんですよ』と西田さん。えっ、そうなんですか? 水族館でも? 『いや、当館ではジャンプすると危ないので対策をとっています(⇓ アクアワールド茨城県大洗水族館の部分で展示・飼育の工夫も紹介)。だから、ほとんどジャンプはしません』とのこと。ほかに『マンボウは餌をとるために深海まで潜ることがあるんですよ』と西田さん。マンボウ、意外とアクティブなんですね。
アクアワールド茨城県大洗水族館の「マンボウ水槽」を上から見たところです。ちょっとジャンプしそう…
マンボウの性格
見た目どおりの、のんびり屋さんなの?
マンボウの性格について西田さんにたずねると『魚の性格、というのもなかなか難しいんですが…攻撃的ではないですね。個体によっての違いもありますが、おおむね、おとなしく、のんびりはしています』とのことでした。
なかには子どもたちに興味をもって近づいてくるマンボウもいます
マンボウの食事
マンボウの好物はクラゲやイカの仲間
マンボウは『クラゲの仲間や甲殻類、イカの仲間などを食べています。深海まで潜って餌を食べること、そして水面まで戻ってくることを繰り返しているようです。水族館では専用の食事を、飼育員の手から直接あげています』と西田さん。
水族館でマンボウに餌をあげているところ。鴨川シーワールドにて
マンボウの繁殖と寿命
まだまだ分からないことが多いマンボウ
『水族館でのマンボウの繁殖は難しく、産卵のスタイルも定かではありません。寿命もよく分かっていませんが、水族館での飼育の最長記録は8年2カ月です』と西田さん。最長記録は鴨川シーワールドの“クーキー”ですね。『はい。普通の魚であればウロコなどで年齢がわかるんですが、マンボウは何を見て年齢を決めていいかわからないんです。性別も外見からはわかりません』。まだまだ謎が多い魚なんですね。
謎多きマンボウ…。たまたま、同じほうを向いていた2匹でした
マンボウの種類
マンボウ属は3種! ウシマンボウとカクレマンボウがいます
マンボウは、ほかにも種類があるのでしょうか?『マンボウ属には「マンボウ」「ウシマンボウ」「カクレマンボウ」の3種があります。日本近海で見られるのは「マンボウ」と「ウシマンボウ」です』と西田さん。『ただ、マンボウ属が3種とされたのは、ここ数年のことなんです』とのことでした。
日本の水族館で見られるのは「マンボウ」だけ
マンボウに会える7つの水族館
2020年11月現在、日本の水族館でマンボウを常設展示しているのは7カ所。ほかに、マンボウを季節によって展示する水族館もいくつかあります。ただ、マンボウの飼育は難しく、いなくなってしまう場合もあるので、会いに行くときは事前に公式サイトなどで確認してから出かけてくださいね。
アクアワールド茨城県大洗水族館(茨城県/大洗町)
あくあわーるどいばらきけんおおあらいすいぞくかん
日本で一番多くのマンボウを展示している水族館です。巨大なマンボウ専用水槽は日本最大で、マンボウたちが気ままにゆ~っくり泳いでいる様子を観察できます。
- マンボウを初めて展示したのは:2002年
- 会える場所は:世界の海ゾーン「マンボウ水槽」
- 現在の飼育数は:6個体
- サイズは:全長約70cm~1.4m
西田さんにいくつか質問してみました。Q&A形式で、Aは西田さんの回答です。
Q1:どうして多くのマンボウを展示できるのですか?
A1:国内最大のマンボウ専用水槽があるから数多くのマンボウを飼育できるんです。小さい水槽ではぶつかって傷ついたりしてしまって、飼育は難しいんです。ただ、ネットなどで“マンボウは弱い”と、かなりオーバーに広がってしまったのですが、そこまで弱くはないですよ。あとは、地元茨城県の定置網によくマンボウが入るので補充が可能ということもあります。
大きな水槽がマンボウの複数飼育・展示には必須
Q2:飼育・展示で苦労したこと、工夫したことを教えてください
A2:マンボウは水槽の外に向かって泳ごうとするため、壁やガラスに衝突しないようビニールフェンスを設置しています。また、マンボウはジャンプをします。カラダについた寄生虫を落とすためと考えられているのですが、水族館の水槽でジャンプすると危ないので、淡水浴という方法で寄生虫を駆除しています。
写真の右のほうを見ると、ビニールフェンスがはってあるのがわかります
Q3:食事は何をどのようにあげているのですか?
A3:食事は1日に2回、アジ・エビ・カキのミンチにゼラチンを加えたマンボウ専用の食事をあげています。飼育員3人で分担して水槽の上の専用スペースから、直接、手でマンボウに与えていくんです。食事の時間以外に、ダイバーが清掃で潜っているときに餌をおねだりするマンボウもいます。清掃していて、気がつくと後ろにマンボウがいたり…つんつんしたり…可愛いですよ。
マンボウの食事シーンを水槽の上部から見せていただきました
これがマンボウの食事。1個体ずつ1日にあげる量を決めているため、餌は個体ごとでトレイに分けられています
飼育員さんが所定の場所へ向かうとマンボウたちも上部に反応
こんな感じで、それぞれの個体に食事を与えていきます。もう今日の分が終わったマンボウは「ちょ~だ~い」と、上部に行っても、もらえませ~ん
食事のシーンは下から水槽を見ていても分かります
問合先 | 029-267-5151 |
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住所 | 茨城県東茨城郡大洗町磯浜町8252-3 |
料金 | 【入館料】大人2000円/小・中学生900円/幼児(3歳以上)300円/2歳以下無料 |
鴨川シーワールド(千葉県/鴨川市)
かもがわしーわーるど
かつては飼育日数と飼育下サイズの世界記録を持つマンボウがいた鴨川シーワールド。現在も、メインゲートを入ってすぐ右にあるエコアクアロームにマンボウが1個体います。冬期、鴨川沖の定置網にマンボウが入るため、飼育員さんが漁船に乗ってマンボウを採集するそうです。
- マンボウを初めて展示したのは:1971年
- 会える場所は:エコアクアローム「マンボウ水槽」
- 現在の飼育数は:1個体
- サイズは:全長約1.68m
現在展示している個体。名前は特につけられていません
●飼育日数8年2カ月の世界記録を持つ“クーキー”
1990年に飼育期間8年2カ月の世界記録を達成。オスで全長約1.87m、体重325kgありました(現在はいません)
●飼育下でのサイズ世界最大の記録を持つ“モンタン”
2002年、水族館での飼育下で全長約1.93m、体重496kgと世界最大のサイズを記録。飼育期間は4年3カ月でした(現在はいません)
問合先 | 04-7093-4803 |
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住所 | 千葉県鴨川市東町1464-18 |
料金 | 【入館料】大人3000円/小・中学生1800円/4歳以上幼児1200円/3歳以下無料/60歳以上2400円 |
横浜・八景島シーパラダイス(神奈川県/横浜市)
よこはま・はっけいじましーぱらだいす
水族館「ドルフィン ファンタジー」の、イルカが泳ぐ「アーチ水槽」のそばにある「円柱水槽」にマンボウが2個体います。しばらく不在でしたが、2020年5月にやって来ました。個体ごとに性格が異なり、ダイバーを見ると寄ってくるものもいれば、まったく寄ってこないもの、常に上をむいて餌を待っている食いしん坊もいます。
- マンボウを初めて展示したのは:2010年
- 会える場所は:ドルフィン ファンタジー「円柱水槽」
- 現在の飼育数は:2個体
- サイズは:全長約1m前後
一緒の水槽にいるタカベという魚があまり好きでなく、タカベが近づいてくると目をつぶって見ないようにしていることもあるそうです
問合先 | 045-788-8888 |
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住所 | 神奈川県横浜市金沢区八景島 |
料金 | 【アクアリゾーツパス(4つの水族館入場)】大人3000円/小・中学生1800円/4歳以上幼児900円/3歳以下無料/65歳以上2500円 ほか |
志摩マリンランド(三重県/志摩市)
しままりんらんど
通年でマンボウを複数展示しています。現在は2個体ですが、年によっては5個体前後のマンボウを見られることもあります。普段はゆったりのんびり泳いでいますが、ときどき速いスピードで泳いだり、水面をジャンプすることもあるそうです。
- マンボウを初めて展示したのは:1980年
- 会える場所は:マンボウ館「マンボウ水槽」
- 現在の飼育数は:2個体
- サイズは:全長約80cm
仲が良さそうに同じ方向を向いているマンボウ
問合先 | 0599-43-1225 |
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住所 | 三重県志摩市阿児町神明723-1 |
料金 | 【入館料】大人1500円/中学・高校生1000円/小学生600円/3歳以上幼児300円/2歳以下無料 |
越前松島水族館(福井県/坂井市)
えちぜんまつしますいぞくかん
入口入って一番最初の水槽にマンボウがいます。現在は1個体で和歌山県沖にて捕獲したものです。のんびりと泳いでいるようで、お客さんの顔をちゃんと見ており、ときどき目が合ったりします。
- マンボウを初めて展示したのは:2008年
- 会える場所は:マンボウ売店棟「マンボウ水槽」
- 現在の飼育数は:1個体
- サイズは:全長約1.2m
初めて来館したときは体長約80cmでしたが現在は約1.2mあります
問合先 | 0776-81-2700 |
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住所 | 福井県坂井市三国町崎74-2-3 |
料金 | 【入館料】大人2000円/小・中学生1000円/3歳以上幼児500円/2歳以下無料/65歳以上1800円 |
海遊館(大阪府/大阪市)
かいゆうかん
2020年6月より展示している2個体が「特設水槽」にいます。毎日、ダイバーが潜って餌を与えていますが、飼育員が水槽の上に立っただけで餌がもらえると思って近づいてきます。大きいほうは静かにダイバーのそばで餌を待っていますが、小さいほうはグイグイ「お腹空いてます」アピールをしてきます。
- マンボウを初めて展示したのは:1995年
- 会える場所は:特設水槽
- 現在の飼育数は:2個体
- サイズは:全長約1~1.1m
餌の時間が終わっても「まだあるかも」とダイバーの様子をうかがうという、食いしん坊のマンボウ
問合先 | 06-6576-5501 |
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住所 | 大阪府大阪市港区海岸通1-1-10 |
料金 | 【入館料】大人2400円/小・中学生1200円/3歳以上幼児600円/2歳以下無料/65歳以上2200円 |
下関市立しものせき水族館 海響館(山口県/下関市)
しものせきしりつしものせきすいぞくかん かいきょうかん
下関という土地柄、フグの展示にも力を入れている海響館。そのフグの仲間であるマンボウも1個体展示しています。現在いるマンボウは、ダイバーが水槽に入っても怖がらないように餌をあげてトレーニングをしているのですが、少し気がのらないときは近寄ってこないときもあるそうです。これは健康状態を見極めるのにも役立っているとのこと。
- マンボウを初めて展示したのは:2001年
- 会える場所は:沖合のフグ水槽
- 現在の飼育数は:1個体
- サイズは:全長約1.5m
担当スタッフ全員「マンボウには感情がある」と感じているそうです
問合先 | 083-228-1100 |
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住所 | 山口県下関市あるかぽーと6-1 |
料金 | 【入館料】大人2090円/小・中学生940円/3歳以上幼児410円/2歳以下無料 |
マンボウの水槽は、ホントにず~~っと眺めていても飽きません。ゆ~らゆ~らと浮遊するように泳いだり、真上を向いたり、何個体かが同じ方向を向いたり。最後に『マンボウは広く知られているんですが、まだまだわからないことが多いんです。だからこそ、マンボウはおもしろい』と西田さん。キッズも大人も、水族館でじっくり観察してみてくださいね。
西田さん、マンボウのことをいろいろ教えていただき、ありがとうございました!!