47都道府県それぞれの代表的な「特産品」をクローズアップ。【知る】【つくる】【学ぶ】の3つの視点から、特産品と各都道府県の関係をひも解きます。各地の歴史や風土だけでなく、意外な理由で生まれた特産品は、知れば知るほどおもしろい!
静岡県で取り上げるのは「うなぎ」。名産地として有名な浜名湖でうなぎがとれる理由から蒲焼レシピ、生態が学べる施設までを紹介し、うなぎの魅力に迫ります。
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【知る】うなぎの生態には不思議がいっぱい
日本でも有数のうなぎの養殖地である浜名湖。浜名湖とうなぎの歴史は古く、江戸時代の浮世絵師、歌川広重の作品「東海道五十三図会」に浜名湖西岸の新居宿(あらいしゅく)を描いた一枚があり、うなぎの串焼きが描かれています。その浮世絵から江戸時代後期、浜名湖では、天然うなぎがよくとれていたということが読み取れます。
その後、明治33年(1900)、うなぎ養殖の研究をしていた川魚商の服部倉治郎が浜名湖を養殖に最適な場所だと判断し、約8ヘクタールの養鰻場(ようまんじょう)を造ったのが、養殖の始まりです。
浜名湖でうなぎがとれる4つの理由
画像:PIXTA
養殖が発展したのは、4つの理由が挙げられます。
1つは養殖に必要な安定した水質の真水が、静岡県西部に広がる三方原(みかたはら)台地の豊富な地下水から供給されること。2つ目は、海水と淡水が入り混じる汽水湖を好むシラスウナギ(うなぎの稚魚のこと)が浜名湖に集まり、捕まえやすかったことです。
3つ目は、湖周辺の陸地から飼料となる蚕のサナギの供給を十分に受けられたからです。そして最後の4つ目は、浜名湖周辺の年間平均気温が15℃前後と、気候が比較的温暖なことも養殖に適していました。
静岡県には浜松市以外にも、大正時代から養殖が続く吉田町、富士山の湧き水でうなぎを泳がせることで質を高める三島市など、うなぎが名物として知られる市町がいくつもあります。
どうして夏にうなぎがよく食べられるの?
「土用の丑(うし)の日」をはじめ、夏にうなぎを食べる習慣がありますよね。そもそも「土用」とは、立春・立夏・立秋・立冬より前の約18日間を指し、実は各季節に土用が存在します。
「丑(牛)」は十二支の干支。日にちを数える際にも干支は使われており、12日周期で「丑の日」がやってきます。そのため一般的に知られる夏(立夏)の土用の丑の日は、7月後半から8月前半にかけて毎年日にちが変わるのです。
日本では昔から夏土用の丑の日に、うどんや梅干しなど「う」の付くものを食べる風習がありました。そこにうなぎが加わったのは、江戸時代中期の学者・平賀源内が「うなぎを食べると夏負けしない」と宣伝し、広まったことが理由といわれています。
実際にうなぎには、ビタミンB1やビタミンA1をはじめ、食欲を増進させ、夏バテ解消に効果があるとされる栄養がたっぷり。夏に食べるのは理にかなっています。
国産のうなぎが食卓から消える!?
日本でよく食べられる国産うなぎは、二ホンウナギという種類です。体長1m前後のすらっと長い体つきが特徴で、うなぎ本来の味と香りを楽しめます。スーパーなどでよく見かける中国産うなぎは、ヨーロッパウナギと呼ばれています。体長は1m未満と小さめですが太く、脂がのっています。
日本人が食べるうなぎの99%は養殖です。ただ、養殖うなぎといっても河口で捕獲した稚魚を育てているので、正確には「半天然・半養殖」になります。海で産卵して、ふ化後に川をさかのぼるうなぎの生態には分からないことが多く、例えば養殖うなぎの99%が、なぜかオスになるという謎も。そのため、まだ完全養殖の商業化の実現は難しいようです。
乱獲が個体数減少の原因の一つとされ、2014年にはニホンウナギが絶滅危惧種に指定されました。その後、稚魚の漁獲制限が設けられましたが減少傾向は変わらず、近年はうなぎの値段の高騰が話題に…。将来、食卓から国産のうなぎが消えてしまうのではないかと心配されています。
【つくる】家庭でおしいく食べるコツ
うなぎ料理といえばやっぱり蒲焼! おうちで子どもと一緒に「うなぎの蒲焼」作りに挑戦しましょう。静岡の養鰻産地の一つ、吉田町の郷土料理「ぼくめし」のレシピも紹介します。
「うなぎの蒲焼」を家庭で作っちゃおう!
「蒲焼」の名前の由来は諸説あります。ぶつ切りにして竹串に刺して焼いたうなぎが「蒲(がま)※の穂」に似ているから、焼き上がりの色や形が「樺(かば)の木」に似ているからなどの説があります。
うなぎ料理専門店の蒲焼には「関東風」と「関西風」の2種類があります。関東風は背開きにして、一度白焼きしたものを蒸してから再び焼きます。淡白で柔らかいのが特徴です。関西風は腹開きにしてそのまま焼くので、パリッとして香ばしさがあります。静岡のお店では関東風が主流ですね。
※蒲…ガマ科の多年性植物
簡単レシピを紹介
- 鍋に料理酒を入れて火にかけ、アルコールを飛ばします。続いてしょうゆと砂糖を入れ、中火で10分ほど煮詰めます。これでタレが完成。
- 火にかけたフライパンにタレを敷いて、スーパーなどで購入した白焼きのうなぎを焼きます。表面が焦げないぐらいで裏返し、両面を焼き上げます。タレと一緒にご飯の上に乗せて食べましょう!
うなぎが入った炊き込みご飯「ぼくめし」
画像提供:「しずおかのおかず」開港舎
大井川の水でうなぎを育てる吉田町の郷土料理「ぼくめし」は、炊きあがったご飯に、うなぎとごぼうを煮たものを合わせた混ぜご飯です。
昔、「木杭(ぼっくい=木の杭)」のような太すぎるうなぎは売り物にならなかったので、養鰻場のまかない飯として食べられていました。それが「ぼくめし」と呼ばれる由来だそうです。1960年代頃は大量にうなぎがとれて地元では安く購入できたため、ぼくめしは多くの家庭で作られていました。
簡単にレシピを紹介
- ご飯を炊きます。
- 小さくささがきにしたゴボウを水にさらしてアクを抜き、茹でます。
- うなぎの白焼きを蒸して細かく切ります。
- しょうゆ、砂糖、酒を鍋に入れ、沸騰してきたら②と③を投入。弱火で汁がなくなるまで煮ます。
- サヤインゲンをゆでて、斜め薄切りにします。
- 仕上げにご飯と④と⑤を混ぜ、白ゴマも混ぜ合わせたら完成です!
【学ぶ】うなぎの生態が学べるスポット
静岡県にはうなぎの幼魚が見られる「幼魚館」と、成魚が見られる「浜名湖体験学習施設ウォット」があるのでぜひ見比べたいところ。うなぎつかみ&蒲焼体験イベントを夏季に開催する施設「今切体験の里 海湖館」もチェックしましょう!
幼魚水族館
150種・500匹の展示を行う世界初の幼魚専門水族館「幼魚水族館」では、完全養殖で育てられたニホンウナギの幼魚が見られます。
時期によっては、幼魚に成長する前の柳の葉のような形をした仔魚、うなぎの体形に近づく稚魚を展示することも。どちらもまだ体色がなくスケスケです。水槽内にうな重の食品サンプルをセットしたユニークな展示方法も必見です。
住所 | 静岡県駿東郡清水町伏見52-1サントムーンオアシス3階 |
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問合先 | 055-928-6429 |
営業時間 | 10~18時(最終入館~17時) |
定休日 | 年2日(サントムーン柿田川全館休業日) |
料金 | 大人1400円、小学生700円 |
駐車場 | あり/3000台/無料 |
URL |
浜名湖体験学習施設ウォット
浜名湖や遠州灘に暮らす生き物を“みてさわって楽しむ小さな水族館”が、「浜名湖体験学習施設ウォット」です。中庭にある露地池では、約100尾のニホンウナギの成魚を展示。
2階の開放実験室ではニホンウナギ、オオウナギ、バイカラウナギのうなぎ3種を見比べることができます。中庭にあるタッチプールでは、生き物と触れ合うことができるので子どもたちは大喜び!
住所 | 静岡県浜松市西区舞阪町弁天島5005-3 |
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問合先 | 053-592-2880 |
営業時間 | 9時~16時30分(最終入館~16時) |
定休日 | 月曜(祝日の場合は翌日) |
料金 | 大人320円、高校生以下・70歳以上無料 |
駐車場 | あり/650台/1回400円 |
URL |
「今切体験の里 海湖館」うなぎつかみ・かば焼き体験
海や湖にちなんだ体験学習やバーベキューなどを楽しめる「今切(いまぎれ)体験の里 海湖館」施設内の「きらく市食堂」では、夏を中心に「うなぎつかみ・かば焼き体験」を実施(要予約)しています。
うなぎつかみ体験では、池に放たれたうなぎを頑張って素手で捕まえましょう。蒲焼体験は白焼きのうなぎに自分で串を刺し、タレを付けてから焼きます。焼き上げた蒲焼は、うな丼にして食べられますよ。
住所 | 静岡県湖西市新居町新居官有無番地 |
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問合先 | 053-594-6624(海湖館)、090-8186-1217(うなぎつかみ・かば焼き体験は要予約。きらく市食堂・榊原さん) |
営業期間 | GW、7月中旬~9月下旬開催予定 |
料金 | うなぎ1匹4500円(予定) |
駐車場 | あり/400台/最初の30分は無料、以降1日400円 |
URL |
【SDGs】静岡県のうなぎを自由に食べたり守ったりするために
静岡県で漁獲されるうなぎは、浜名湖などでの養殖によって生態系が守られています。この先も、うなぎを変わらず自由に食べたり守ったりするためにはどのようなSDGsを意識すればいいのか、親子で話し合ったり、考えてみるといいですね。