「自分のお店を持ちたい」「田舎暮らしをしてみたい」など、起業や移住に憧れがあっても、一歩を踏み出す勇気はなかなか出ないもの。そこで今回は、福島県南相馬市にある「Restaurant MADY(レストラン マディ)」を営む吉川未来さん・晃さんご夫妻にインタビュー。起業・移住から現在まで、二人三脚の足跡を辿ります。
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(この記事を書いたライター)南相馬市サポーター
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未来さんの夢「夫婦経営で起業」。実現までの道のり
―― 「起業」を目指したきっかけは何だったのでしょうか?
未来さん:以前働いていた飲食店で、オーナーに「起業に向いてるよ」と言っていただいたことが一番のきっかけですね。夫はそのとき、エンジニアとして会社に勤めていましたが、夫婦経営が自分たちに一番チャンスがあるかなと思いました。2年目のタイミングで私の起業への想いが強くなり、夫に相談してみました。
晃さん:そうですね。もちろん夫婦経営でもいいし、私は料理の経験はアルバイトだけだったんですが、たとえ別々の仕事だとしても大丈夫かなと思っていました。なので、そんなに不安はなかったですね。
2022年にオープン。店名のMADYは福島弁の「までい(丁寧に)」から
―― 「起業」の準備はどのようにはじまりましたか?
未来さん:まず、その時働いていたお店の師匠に起業を考えているという話をしました。そこで逆算して考えると3年は勤めたほうがいいとなり、その間いろいろと起業のノウハウを教えていただくことになりました。
MADYオープンまでの道のりを笑顔で語ってくださった未来さん(左)と晃さん(右)
―― 「夫婦経営で起業」以外に選択肢はあったのでしょうか?
未来さん:他の道は考えていなかったですね。もう「やるぞ!!」と。私は本当に目標がないとやっていけないタイプだったので、「夫婦経営で起業」と決めて突っ走った感じですね。
彩り豊かなランチコースは、店自慢のバーニャカウダのほか、肉または魚料理、スープ、デザートから構成される
―― 起業に対して、周りの人たちからのアドバイスは?
未来さん:同じく飲食業をやってる人たちから、意見をもらったり、情報交換したりしました。いろいろ悔しいことも言われたりしたんですが…、私は燃えるタイプだったので(笑)、バネにして頑張りましたね。
次なるステップ「地方移住」という選択
南相馬の伝統行事「相馬野馬追」の風景
―― 出店の場所になぜ南相馬市を選んだのですか?
未来さん:大学や勤務先のお店は埼玉県にありましたが、元々福島県浪江町の出身なので、最終的に「福島に戻りたい」という気持ちはありました。
晃さん:福島県内のなかでは、いわき、郡山、福島市など他の場所も見つつ、最終的に南相馬に落ち着いた感じですね。
未来さん:もちろん地元である浪江での起業も考えましたが、震災の影響で人口が南相馬より戻っていなくて。南相馬は早めに避難指示が解除されて人が戻っていたので、客数や品切れのリスクを考えて選びました。家賃が比較的安く、浪江にもすぐ行ける距離なので、地元にもよく帰ります。
―― 住む場所やお店はどのように決めたのですか?
未来さん:まず私が起業準備のために、震災後南相馬に移った実家に単身で移住して、半年後に夫が来るようにしました。本当に運が良くて、引っ越して2、3日後に今の店舗を見つけることができました。前に営業されていたお店の状態で残っていたので、自分たちで片づける代わりに家賃の支払い期間を交渉して貸してもらいました。トラックで何度もゴミを捨てに行って「そんなに動けるんだね!」と大家さんにやる気を見てもらえたことがいい思い出です。
トラックでのゴミ捨て作業の様子
―― 移住するにあたって大変だったことはありますか?
未来さん:まるっきり違う世界に行く気持ちだったので、楽しみのほうが強かったですね。それに田舎育ちだったので「こういうのがなくて嫌」みたいなこともなかったです。移住のタイミングが冬だったので、寒い中での引っ越し準備が大変だったくらいですかね(笑)
移住・起業にまつわる不安、そして充実の支援制度
―― 移住後の収入について不安はありましたか?
未来さん:もちろん、いきなり収入がゼロになるのは不安でした。なので、最初の半年間は夫が東京の飲食店で仕事を続け、私は実家に住みながら起業の準備をしつつ、アルバイトもしていました。
―― 起業にあたって資金調達はどうされましたか?
未来さん:銀行からの融資も受けましたが、南相馬の支援制度はフルに活用しました。制度を使ったおかげで、融資の額を当初の計画の半分に抑えられました!他の地域で開業する友人と話していても、「南相馬は支援が手厚くてうらやましい」と言われたりします。
【Check!】実際に吉川夫妻が利用した3つの支援はコチラ
・「商店街空き店舗対策事業補助金」:空き店舗を活用した新規事業に対し、賃借料と改装費の一部を助成
・「福島県12市町村移住支援金」:県外から移住する際、支援金(世帯の場合200万)を支給
・「福島県12市町村起業支援金」:県外から移住して起業する際、支援金(最大400万円)を支給
南相馬市は他にも、移住見学時の交通費補助など支援制度が豊富!市役所職員も親身になって制度の案内をしてくれたため、数字や書類作成が苦手な吉川さんでも安心して利用できたのだとか。
落ち着いた紺色の壁紙が印象的な内装。ご夫妻のこだわりが随所に光る
移住先の「南相馬」での暮らし
―― 移住する前に想像していた生活とギャップはありましたか?
晃さん:来る前は田舎でシャッター街もあるのかなと思っていたのですが、個人店も多く、移住している方もいて、街もウェルカムな感じでした。でも交通面は車がないと不便かなと感じましたね。
未来さん:確かに、お客様からおすすめのお店を教えていただいても車じゃないと行けなかったり…やはり車がないと困ることが多いのは首都圏とは違いますかね。
―― 1日のスケジュールについて教えてください
未来さん:9時30分から開店準備、ランチ営業の後16時頃にまかないをとります。いつも朝と夜の食事は軽めなので、1日の栄養はそこでたっぷりと。そして18時からのディナー営業終了後、23時30分まで後片付けし帰宅、毎日午前1時頃に就寝という流れです。
―― お休みの日はどのように過ごしていますか?
未来さん:直売所などを4軒ほど巡って買い出ししたあと、周辺の飲食店でランチをして、2人でハマっているサウナに行くのが大定番です!お気に入りの温浴施設に、半日くらいいますね。そこでは完全にスイッチオフです!忙しい日常があるからこそ、なにも考えない時間がすごく贅沢だと気付きました。
―― 最後に、今後に向けた意気込みを教えてください
未来さん:開業3年目を迎えます。今後は支援が終了し、自立経営に向けて転機を迎えるところです。だからこそ小さいことの積み重ねですね。節電する、食品ロスを減らす、直売所で地元の新鮮なお野菜を安く買わせてもらうなど。コツコツと無駄を省きながら今後も頑張っていきたいです。
自分の「事業」を通じた、南相馬市とのかかわり
埼玉で知り合った吉川さんご夫妻は、首都圏で働いたのちに南相馬へ移住。晃さんにとってははじめての土地、そして未来さんにとっては地元とはいえ久しぶりの土地でした。
そんな2人にとって「Restaurant MADY」は、単なる仕事場ではなく、地域に溶け込むきっかけとしての役割を果たしているように思えました。
今ではランチのお客様の半分くらいが常連なのだとか。そのお客様が他の方へ「MADY」を紹介してくれたり、逆にいいお店を教えてもらったり、また地域の事業者の方々がお弁当を買いに来てくれたり…吉川さんご夫妻は「MADY」を通して地域に溶け込んでいる姿が印象的でした。
「自分のできる範囲で、南相馬の役に立つのであればやりたい」と話す未来さん。同世代からの移住や開業の相談なども多いそう。最近では南相馬の情報を発信していきたいという依頼が多く、この取材もそんな想いから快く引き受けてくださいました。
吉川さんご夫妻の「南相馬を盛り上げたい」という想いは、南相馬に新たな活気をもたらしています。今後もお二人、そして「Restaurant MADY」は、南相馬を知る新たな入り口・拠点として、地域の活性化に貢献し続けることでしょう。
●Restaurant MADY(レストラン マディ)
住所 | 福島県南相馬市原町区大町2-104 |
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時間 | ランチ11時30分~15時(13時30分LO)、ディナー18~22時(21時LO) |
電話 | 0244-41-9025 |
定休日 | 火曜、第1・3水曜 |
駐車場 | 店舗前2台分、近隣コインパーキング |
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