子どもの足をチェックしたことがありますか? 子どもの足は、実は9歳までに完成します。元気いっぱいに動ける土台を育てるためには、幼児期からの運動あそびや靴選びがとても大切!扁平足や浮き指など、よく聞かれる子どもの足のトラブルやチェック方法、予防法について、足の専門医である桑原靖先生に教えてもらいました。
(監修)足のクリニック 表参道院長 桑原靖先生
2013年に表参道に日本初の足専門クリニックを開設。アメリカのボダイアトリー(足病学)に基づき、形成外科、整形外科、皮膚科、血管外科など各分野の専門医によるチーム医療で、足の総合診察を実現。多数のメディア出演や執筆を通して、日本人の足に対する健康意識の向上に尽力。著書に『足が痛い本当の原因はコレだ!』(時事通信出版局)、『元気足の作り方 – 美と健康のためのセルフケア』(NHK出版)など。
1. 扁平足や浮き指、子どもの足は大丈夫?
足は体の土台。「うちの子、扁平足みたい」「浮き指と指摘されたことがある」「よく転んでいて心配」といったお悩みがよく聞かれます。足の専門医である桑原先生に伺いました。
子どもはみんな扁平足!
「子どもの足は、足アーチと呼ばれる土踏まずがなく、みんな扁平足です。赤ちゃんの骨はほとんどが軟骨でできています。歩き出して動きが活発になり、足をたくさん使うことによって、筋肉や骨が成長し、足アーチが出来上がって、足の形が定まります。ですから、小さなうちは扁平足を心配することはありません」(桑原先生 以下同)
子どもの『浮き指』『転びやすい』は、扁平足だから
『浮き指』は、子どもの足のトラブルとしてここ数年よく耳にする言葉です。
「足アーチが育ってないと、足は自然とバランスをとろうとして指が浮くのです。ですから、小さなうちは過度に心配する必要はありません。転びやすいのも同様で、子どもの足はやわらかくて不安定なため。歩きはじめ〜走り出す頃くらいまではハイカットのシューズで足首を支えてあげるとよいでしょう」
大切なことは、骨格が作られる年齢までに、足アーチがある元気な足を育てること。
「足の骨格の成長は早く、9歳頃で概ねの形が完成します。それまでに、あまり運動をしなかったり、足に合わない靴を履いて過ごしたりすると、扁平足のまま成長してしまい、足アーチが作られません。大きくなって足トラブルに見舞われないためには、幼児期のうちから、元気な足を育てていきましょう」
2. 9歳で足アーチが作られないと、どうなる?
子どもの足の骨格が完成する9歳頃までに、足アーチが作られず、扁平足のまま成長してしまうと、どうなるのでしょうか?
扁平足のまま成長してしまった足
「扁平足は、単に“土踏まずがない状態”なのではありません。扁平足によって、足が内側にねじれた状態で歩行をしていることが問題なのです。その状態が続くと体のバランスが崩れ、足の筋肉や関節などに大きな負担がかかります。それにより、姿勢が悪い、疲れやすい、走るのが極端に遅い、といったことにつながるのです」
また、扁平足になりやすい要因としては、「遺伝」もあるのだそう。
「足の骨格は、“ママ・パパのどちらか、もしくは近親者の誰か”から遺伝します。両親のミックスではなく、必ず誰かの形が受け継がれるのです。ですから、両親のどちらかが扁平足だったり、外反母趾などの足のトラブルがある場合は、子どもにも遺伝をする可能性が高いので、よく注意してあげるとよいでしょう」
3. 子どもの足のチェック方法
わが子の足、大丈夫でしょうか? 足のチェック方法を教えてもらいました。
片足立ち
手を体に添わせ、まっすぐに立ち、片足をあげます。膝は真上にあげましょう。10秒立っていられればok。フラフラとしてしまうのは×。
しゃがむ
まっすぐに立った姿勢からお尻を下に落として、しゃがみ込む動作をしましょう。途中で止まってしまう、かかとが上がってしまう、よろけて転んでしまう、ということはありませんか?
片足立ちができない子は、足全体のバランスが悪かったり下半身の筋力が弱い可能性があり、かかとを着いて座れない子は、足首が極端に硬いことが原因です。運動あそびや正しい靴選びで元気な足育を心がけましょう!
4. 元気な足育の2大ポイント!
9歳までの時期に元気な足を作りたい! 大切なポイントは2つです。
●運動をする
「年齢に応じて適度な運動をすることは、足や下半身の筋肉を育てるのに必須です。公園などで大いに運動あそびをしてください。体操教室に通うのもいいと思います」
●足に合った靴を履く
「子どもの足は柔らかく順応性が高いので、サイズの合わない靴を履くと、それに合わせて指が曲がったり足首が曲がったりしてしまいます。次の正しい靴の選び方をぜひ参考にしてみてください」
5. 年齢別 靴の選び方
0〜2歳頃
「かわいいヨチヨチ歩きの時期は、まだかかとや足首がとても柔らかく不安定なので、ハイカットシューズがおすすめ。足首をしっかりと支えてくれるので、転びにくくなります」
3〜4歳頃
「大股で歩いたり走ったりと動きが活発になってくると、足首が使えるようになるため、ハイカットシューズは逆に転びやすくなります。普通のタイプのスニーカーに変えましょう。上のイラストを参考にして、必ず足に合った靴を選んでください。日中、幼稚園や保育園で長時間着用する上履きも、スニーカータイプのものを選ぶのがおすすめです」
5歳以上
「年中・年長さんぐらいになると、運動量がぐっとあがります。この時期の足のサイズは、一年間に1cm伸びます。半年に一度は靴のサイズを見直しましょう。靴選びのポイントは上記と同じです。インソールが外れるタイプなら、ぴったりサイズも分かりやすく後述の市販のインソールや医療用インソールで補正することもできます」
子どもたちに人気がある“かけっこが速く走れる”タイプの靴はどうでしょうか?
「アウトソール(靴底)が左右非対称のつくりになっているものは、普段履きとしては足育の観点ではおすすめしません。また、かかとがないサンダルタイプの靴も、短時間ならよいですが、普段履きにするのは避けましょう」
6. 足トラブルのサインと治しかた
トラブルを早めに発見するポイントを教えてもらいました。
<こんなときは、トラブルのサイン>
- 先述の足チェック法ができない
- 歩き方がおかしい、手の振り方が左右で違う
- 夜間に足を痛がる
- 走るのが極端に遅い
- 靴底の内側が減っている、または左右非対称に減っている
これらにあてはまる場合は、早めの対処をしてあげましょう。
<足トラブルの対処法>
- インソールを入れよう:
「まずは市販のインソールを試してみましょう。かかとをしっかりホールドし、足アーチをサポートしてくれるタイプのもの、クッション性があるものがよいです。先述したように、子どもの足の形は変わりやすいので、インソールで正しい形に補うことは効果的です」 - 痛みがすでにある場合、高学年になっても扁平足の場合:
「足の専門医かフットケア外来がある医療機関の受診をおすすめします。変形や痛みがひどい場合は、子どもの足に即した医療用インソールを医師の処方のもと(健康保険)で作ることができます」
子どもの長い人生を支える足。正しく元気に育ててあげたいですね!