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京都・北野天満宮は、学問の神様、菅原道真公(菅公)がまつられている全国の天満宮や天神社の総本社で、千年以上の歴史がある神社です。受験シーズンになると合格祈願、その他の季節でも学業成就にたくさんの親子が訪れています。広い境内のあちらこちらに鎮座されているのは、天神様のお使いとされる牛の像(撫牛[なでうし])。北野天満宮のいわれや参拝の方法などを子どもに教えてあげたくて、北野天満宮をお訪ねしました。
千年以上の歴史がある北野天満宮
北野天満宮は、学問の神様、菅原道真公(菅公)がまつられている全国約1万2千の天満宮や天神社の総本社で、千年以上の歴史がある神社です。
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一の鳥居
菅原道真公(菅公)は、勉学に秀でた学者出身の政治家として手腕を発揮しました。ところが策略によって九州に流され、903(延喜3)年、大宰府(現・福岡県)で生涯を閉じます。その魂を鎮める目的もあり、947年に北野天満宮が創建されました。京都の人は親しみをこめて「天神さん」と呼び、毎月25日の縁日(天神さんの日)にはおまいりとともに開かれる縁日を楽しみにしています。
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楼門
入試合格・学業成就・文化芸能・災難厄除祈願にと広く信仰されている北野天満宮ですが、なんといっても「学問の神さま」として名高い神社です。楼門に掲げられた「文道大祖・風月本主(ぶんどうのたいそ ふうげつのほんしゅ)」は、菅原道真公(菅公)を称えて古くから使われている言葉で、学問・文学の祖であり、漢詩・和歌に長じた人という意味です。
境内には天神様のお使いの牛がたくさん
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境内の牛の像(撫牛)は、奉納された年代や奉納されたかたによって、表情や色などが大きく違います。りりしい牛、愛らしい牛、微笑むような表情の牛…。子どもと一緒にそれぞれのお顔を眺めてみましょう。
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なぜ、牛がたくさんいるのでしょう?菅原道真公(菅公)は845(承和12)年の丑年生まれでした。、903(延喜3)年に亡くなられる際には、「人にひかせず牛の行くところにとどめよ」と遺言をのこされ、その遺骸は牛車で運ぶ途中で、牛が座り込んだ場所に埋葬されました。そのため、境内にたくさんある牛の像はすべて伏している臥牛です。
ほかにも、菅原道真公(菅公)と牛の関わりについては数々の伝承があり、牛は天神様のお使いとして崇められています。
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いつの時代からか、多くの人が、ご利益をいただこうと牛の体をなでるため、「撫牛」とも呼ばれています。学問の神様だから、頭が良くなるように牛の頭をなでる子どもや受験生の姿を多くみかけます。
知っておきたい参拝方法とマナー
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手水舎
おまいりは、神さまに日頃の感謝をし、これからも守っていただけますようにと祈ることです。作法を知っていると迷わずにすむので安心です。まずは手水舎で手と口を清めます。北野天満宮の手水舎は花手水。常に専門家が生けた美しい花が見られます。本殿に参拝したら、摂社と末社にもおまいりしましょう。たくさんあるので、全部におまいりするのは難しいかもしれませんね。
手水の作法
- 右手にひしゃく持ち、水をくんで左手を洗います。
- ひしゃくを左手に持ち替えて、右手を洗います。
- ひしゃくを右手に持ち替えて水をくみ、左手で受けて口をすすぎます。
※ ひしゃくに直接口をつけたり、水を飲んではいけません - もう一度左手を洗います。
おまいりの基本
- 深くお辞儀を2回行います。
- 胸の前で大きく2回拍手をします。
- 手を胸の前で合わせたまま、心の中で願います。
- 深くお辞儀を1回行います。
本殿で学業成就や合格をお祈り
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国宝 御本殿
御本殿は、1607(慶長12)年、豊臣秀頼公が造営した桃山建築の代表的遺構で、国宝に指定されています。柱や床は建てられた当時の木がそのまま使われており、近年葺き替えられたばかりの檜皮葺の屋根はとても美しい姿を見せています。
神様がまつられている御本殿とおまいりをする拝殿が別々の建物という神社が多い中、北野天満宮は石の間という石畳の廊下でつながっています。御本殿の西に脇殿、拝殿の両脇には楽の間を備えた建築は、「八棟造(やつむねづくり)」と呼ばれる貴重なものです。
境内の牛の像はすべて伏していますが、拝殿の欄間(らんま)に刻まれた神牛だけは立っています。ご祈祷を申し込まれた場合のみ拝殿に入ることができます。
由緒ある摂末社にもおまいりを
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境内は、本殿を囲むように50の摂社と末社が建っています。北西の角にある鳥居の奥の撫牛は「一願成就のお牛さま」として、最も多くの受験生が願をかける場所です。たくさんの絵馬には、「成績がよくなりますように」「勉強が好きになりますように」と一人ひとりの願いを込めた言葉が書かれています。
京都屈指の梅の名所。見頃はいつ?
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飛梅
本殿の前、向かって左手の梅の木は、「飛梅」という銘をもつご神木です。菅原道真公(菅公)が無実の罪で大宰府へ流される前に、大切にしていた梅の木に語りかけるように詠んだ和歌「東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主なしとて 春を忘るな」が記され、菅原道真公(菅公)が亡くなって4年後に、都から大宰府へこの梅が伝わったとされています。
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梅を愛した菅原道真公(菅公)にちなんで、北野天満宮には、約50種おおよそ1500本の梅の木があります。約2万坪の境内一円で紅白の梅が咲く時季は多くの人が訪れます。早咲きの梅が正月明けから開花し、次々に咲いて3月末頃まで長く楽しめます。
梅苑「花の庭」公開予定
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例年2月上旬から3月下旬にかけて梅苑「花の庭」が公開され、老舗「老松」の茶店が出、夜間のライトアップも行われます。昨年は2月下旬~3月中旬が見頃でしたが、2025年の梅の開花はやや遅れて進んでいます。
2月25日には、神事である梅花祭が行われ、地元上七軒の芸舞妓さんのご奉仕による梅花祭野点大茶湯が開催されます。
◎梅苑「花の庭」公開
- 開催期間:令和7年1月25日(土)~3月16日(日)
※日程は開花状況により変わります - 入苑時間:9〜16時(受付終了15時40分)
- 入苑料:大人1200円(中学生以上)、小人(小学生)600円 ※梅茶と菓子付
※最新の日程や開花状況は公式サイトでご確認ください
子どもと探す天神さまの七不思議
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大黒天の燈籠
北野天満宮に伝わる七不思議を調べてみませんか。実際にたどってみると、大人は「なるほど」と納得し、子どもは好奇心を刺激されます。まずご紹介するのは「大黒天の燈籠」です。
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三光門の東南にある石燈籠の台座に刻まれた大黒様の穴に小石をのせることができたら、願いが叶うとか…。「落ちない」ことから受験生の間で広まっています。やってみると案外難しいですよ。
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三光門
御本殿前の三光門には「星欠けの三光門」という伝説が伝わっています。三光とは太陽・月・星の光を表していますが、門の上部にある彫刻は太陽と月しかありません。なぜなら、平安時代、帝が当時の御所から北野天満宮に向かってお祈りをされる際に、三光門の真上に北極星が輝いていたから、あえて彫刻には用いなかったと伝わっています。
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裏の社
先に紹介した拝殿の唯一の立ち牛も七不思議のひとつ。残りの4つは、影向松、筋違いの御本殿、裏の社、天狗山がキーワードです。答えは北野天満宮の公式サイトにあるので、サイトを見ながら境内を探してみて。
試験合格のお守りや学業鉛筆などをお土産に
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干支をかたどった陶器の中におみくじが入った「福みくじ」。自分の干支や毎年の干支を選んでみましょう。(初穂料500円)。
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梅の花の模様がかわいらしい、入試・試験合格のお守り(学業守)です。(初穂料 1000円)。
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受験合格の願いを込めた学業鉛筆。半数は無地、もう半数は御歌入りで、芯の濃さはHBです。(6本入り1000円、12本入り2000円、24本入り3000円)
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天神様のおつかい、牛の根付「お牛さま」はユーモラスなお顔で、赤と黄の二色です。(初穂料各1000円)
アクセスと駐車場
電車でアクセスする場合、最寄り駅は嵐電の北野白梅町駅ですが、JR京都駅やJR二条駅などから京都市バスを利用する人が多数です。
車でアクセスする場合は専用駐車場がありますが、毎月25日の縁日や行事等の際に利用できないことがあります。レンタサイクルなど自転車の場合は駐輪スペースもあります。
- バス:JR京都駅から、京都市バス50系統で約35分乗車、バス停・北野天満宮前下車、一の鳥居まで徒歩約2分
- 京福電車:京福北野線北野白梅町駅から徒歩約5分
- 車:名神高速道路南インター又は東インターから約30分
- 駐車場:あり(約300台)、乗用車1時間600円、以降30分200円(最大料金設定なし)
周辺も合わせて親子でゆっくり散策を
境内ではシートを広げての飲食などはできませんが、天満宮の南側の今出川通には飲食店が何軒もあります。また、駐車場のある東側の通りにはテイクアウトできる和菓子屋さん、豆腐スイーツが売っている豆腐屋さんなどがあるので、小腹がすいたときに買って帰るのもいいかもしれません。
千年ものあいだ信仰を集めてきた由緒ある天神さんの清々しい空気を感じられる境内で、歴史やいわれを親子でたしかめるのは貴重な時間。四季折々の美しい自然や季節の行事に、日本文化の真髄を感じられる神社です。
北野天満宮
住所 | 京都府京都市上京区馬喰町 |
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問合先 | 075-461-0005(北野天満宮社務所) |
開門時間 | 7~17時 |
社務所・授与所 受付時間 |
9時〜16時30分 ※境内の拝観は自由 ※梅苑「花の庭」ライトアップ 期間中:9~20時 |
御祈祷 受付時間 |
9〜16時 ※受付場所:御本殿前受付「授与所」 |
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