とにかく絵を描くことが好き!ものづくりが好き!そんな生徒たちの熱気あふれる女子美術大学付属中学校。生徒の「好き」をとことん尊重、6年かけてそれぞれの「美の尺度」をはぐくみ、未来のクリエイターを育てる学校の様子を、るるぶKids編集部が学校インフルエンサーのがくパパと共に取材しました。

- 女子美術大学付属中学校の基本情報
- └ 入試情報(2026年度)
- 女子美術大学付属中学校はズバリどんな学校?
- └ とことん生徒の「好き」を突き詰める
- └ 入試に美術実技はなし!
- 女子美術大学付属中学校に伺う「面倒見の良さ」とは?
- └ 生徒自身の「美の尺度」を一緒に探す6年間
- 美術と授業が融合した独自のプログラム
- └ 美術の授業は意外と少ない?その理由
- └ 教科の枠を超える「美術パウダー」
- └ Art English
- └ 付属校だからこそ!大学との連携授業
- 女子美術大学付属中学校ならでは!気になる施設
- └ カフェテリア
- └ アトリエ
- こんな子が向いている
- 先生がお伝えする学校選びのアドバイス
- 保護者へのメッセージ
著者:がくパパ
「偏差値だけで学校を選ばない」をモットーに首都圏の中学受験校100校以上を独自に調査し中学受験校を分かりやすく解説しているインスタグラムを運営中。学校が好きすぎて、私立校の講師も経験した学校ヲタク。今は3児(5歳・2歳・1歳)のパパ。
≫ がくパパInstagram
女子美術大学付属中学校の基本情報

女子美術大学付属中学校は、1915年、私立女子美術学校内に付属高等女学校を開校したことが始まりです。「智の美、芸(わざ)の美、心の美」という三つの美を教育理念に、「美術をとおして、我が国の文化に貢献する有能な女性を育成する」を理念に掲げ、日本に他にはない美術大学付属校として、創立110年にして進化を遂げています。
| 住所 | 東京都杉並区和田1-49-8 |
|---|---|
| アクセス | 東京メトロ丸の内線 東高円寺駅より徒歩8分 Googleマップ |
| 生徒数 | 約1040人(中学校428人、高校612人)※2024年5月現在 |
| 中高一貫タイプ | 併設型(高校からの入学者あり) |
| クラス編成 | 高校2年生にてコース選択(絵画、デザイン、工芸・立体) |
| 文化祭 | 女子美祭(10月開催・一般公開あり) |
| 土曜授業 | あり |
| 部活動 | 運動部10クラブ・文化部20クラブ・同好会5クラブ(週1〜6日活動) ※高校のみ、中学のみの部活も含める |
| URL |
入試情報(2026年度)
いずれの入試形式でも美術の実技試験を行わないのが最大の特徴です。
「自己表現入試」は「考える力・伝える力」とした記述問題が出題されるなど思考力・判断力・表現力・文章力を総合的に見る入試になっています。全ての入試形式で、面接(1人3分程度)を実施します。
- 2科・4科選択入試(国算または国算社理、面接)
- 女子美自己表現入試(記述、面接)
- 2科入試(国算、面接)
女子美術大学付属中学校はズバリどんな学校?
とことん生徒の「好き」を突き詰める

モチーフを前に、個性豊かに静物画を描く
取材日、放課後にいくつかのアトリエを覗くと、下校時間ギリギリまでキャンバスに向かう生徒たちの姿があちこちにありました。さすが美大付属!という雰囲気ですが、生徒たちは授業の居残りなどではなく、ただ「描きたい」から残っているのだといいます。そんなひたむきな生徒たちの姿を象徴するように、広報部の並木先生は「女子美は人を選ぶ学校かもしれません」と話してくれました。
「美大の付属中学・高校と聞くと、派手で自由奔放なイメージを持つかもしれません。しかし、実際の生徒たちは驚くほどストイックに『美』と向き合っています」

アトリエでも、仲間と一緒に同じ題材を描きながら、描き方・画角・切り取り方……試行錯誤し、自分なりの「美しい」を表現していました。そこには「自分の美」を大切にする姿勢が表れています。
あなたのキャンパスは顔ですか?
生徒の美へのストイックさを示す話として、校則に反して化粧をしてきた生徒に対し、周囲がこう問いかけることがあったそうです。
「あなたのキャンバスはそこ(顔)にあるんですか?」
本当の自己表現の場は、自分の顔ではなく、白いキャンバスの上にあるはず。それに本気で向き合えていないから、不安を押し消すように化粧で個性を表そうとしているのではないか――。そんな厳しくもユーモアのある視線を、生徒同士が自然と向け合う文化があるのです。そのため、思春期の女子学生特有の「みんなと一緒じゃないとだめ」という「同調圧力」も一切ないのだとか。
ここでは、着飾ることよりも、一枚の絵を突き詰めることのほうがカッコいい。そんな「好き」への純粋な没頭が、女子美の熱気を生み出しているのだと驚かされます。
入試に美術実技はなし!

昇降口や廊下には生徒の作品がズラリと並び、美術館のような空間!
美大の付属校だから、やはり美術の実技は必須ではないか。そう考える人は少なくないと思います。ただ、女子美術大学付属中学校の入試には美術の実技試験はありません。
とはいえやはり、入学前から一定以上絵が上手な必要はあるのでしょうか?
「いいえ。あくまで『好き』を原動力にしてほしいので、元々上手な人を求めているわけではないんです。技術を向上させるのは、入学してから我々学校側がおこなう役目ですから」
求めているのは、完成された技術ではなく、「絵を描くのが好き、ものづくりが大好き」という原石のような気持ちだけ。入試の面接でも、改めて試験官の方から美術に関する知識を聞くことはないそうです。
女子美術大学付属中学校に伺う「面倒見の良さ」とは?
そんな女子美術大学付属中学校が考える、面倒見の良さとはなんなのでしょうか。

女子美の生徒たちを長く見守り続ける、広報部主任の並木先生
「その子の『好き』をじっくり見極めます。6年間、何回もかけて、その子の『好き』といえるものを後押しできる。それが最大の面倒見の良さだと思っています」
本校には18名の美術教員がいます。だからこそ生徒一人ひとりの「好き」の方向性を見極め、適切な指導ができる。単に技術を教えるのではなく、その子が本当に表現したいものは何か、生徒一人ひとりの「表現したいことの違い」や「美しいと感じるものの違い」に気づき、6年間をかけてじっくりとアプローチすることができるのです。
並木先生は、この「表現したいことの違い」「美しいと感じるものの違い」を「美の尺度」と呼んでいます。
生徒自身の「美の尺度」を一緒に探す6年間
「私が美しいと思うものを、あなたも美しいと思いなさいという教育はおこないません。美の尺度というのは生徒それぞれで異なるんですから」

どのアトリエにも、生徒が描いた画がたくさん!
技術が向上すると、逆に「描けなくなる瞬間」が訪れることがあるそうですが、。そんな時でも、本校の生徒たちはみな、自分だけの「美の尺度」を持っているからこそ、他者と比較して落ち込むのではなく、相手の良さ・素晴らしさを素直に認めることができるといいます。
高校3年生の生徒が、廊下に飾られた中学2年生の作品を見て感動し「これはすごい!本人に伝えたい」と言ってくることもあったのだそうで、これもこの学校らしいエピソードですね。
美術と授業が融合した独自のプログラム
美術を軸にしながらも、実は、高校は「普通科課程」の学校である女子美術大学付属中学校。その独自の教育システムは、「知性と感性の融合」という揺るぎない理念に支えられています。
美術の授業は意外と少ない?その理由

美大付属と聞くと、美術の授業ばかりというイメージがあるかもしれません。でも実際は、中学校では2時間続きの授業が週2回、合計4時間のみ。「えっ、それだけ?」と思われるかもしれませんが、これには理由があります。
「知性が感性を支え、感性が知性を補完する」
この教育方針のもと、生徒たちは高校に進学すると「普通科」として勉強し、さらに「美術」を学びます。その忙しさは想像以上。生徒からは「先生、なんとかならないですか?」と悲鳴が上がることもありますが、並木先生はこの環境こそが重要だと語ります。
「この大変さが将来の糧になる。卒業生たちは『中高の頃に比べたら、仕事の忙しさなんて全然大丈夫』と笑って話をするんです」
高い負荷の中でも仲間たちと互いに刺激し合い、切磋琢磨する。この濃密な時間こそが、将来クリエイターとして生き抜くためのタフな精神力を育てているのです。
教科の枠を超える「美術パウダー」
こうした忙しい日々の中でも、生徒たちが学びを楽しめるのは、各教科の先生が自然と授業に「美術のエッセンス」を取り入れているから。

例えば化学の授業。「元素記号を覚える」という課題に対し、生徒たちは元素を擬人化したキャラクターを描いて記憶します。先生が授業に少し「美術のパウダー」を振りかけるだけで、生徒の「好き」が刺激され、勉強がクリエイティブな学びになっていく――そんな相乗効果を生み出しているのです。
そんな、現場の工夫から生まれてきた「美術を通して教科を学ぶ」というスタイルを、より体系化したプログラムが、女子美だからできる「Art English」です。
Art English

芸術の話題を通して英語で相手を理解し、自分を表現する授業
「Art English」とは美術用語や作品の鑑賞方法をネイティブ教員と学び、自分の作品を英語でプレゼンテーションするといった独自のプログラムのこと。特徴的なのは、「線の種類」など、実際に使える美術用語を英語で学べることです。
「これ、将来世界で活躍するために絶対必要じゃん!」 生徒たちはそう直感するからこそ、英語という道具を、自分の表現のために吸収していきます。美術という「好き」を世界へ発信するための力が、ここでも養われています。
付属校だからこそ!大学との連携授業

女子美のもう一つの大きな特徴は、中学・高校・大学がほぼ同じ敷地内にあることです。この環境を最大限に活かした「中高大連携授業」が、年に1度以上、全学年で実施されています。大学の先生が通常授業にTT(チームティーチング)として参加し、専門的なアドバイスをくれます。受動的に受け取る単発の講演会形式ではなく、いつもの授業の流れの中に自然と入ってきてくれるのが特徴です。
「今日ね、大学の先生が私の作品を見て『いいね』って言ってくれたの!」と、家に帰った生徒が、夕食の席で嬉しそうに保護者に報告する。そんな会話が生まれるきっかけも、学校は意図的に作っているそう。
プロフェッショナルである大学の先生に認められたという経験は、生徒にとって何よりの自信になります。さらに高校生になると、大学の講義を受けて単位を取得できる制度もあり、中学生のうちから「未来の自分」を具体的にイメージできる環境が整っています。
女子美術大学付属中学校ならでは!気になる施設
カフェテリア

明るく開放的なカフェテリアは生徒たちの憩いの場。単なる食事の場所ではありません。壁面には卒業生の作品が展示され、まるでギャラリーのよう。休み時間や放課後になると生徒たちがどんどん集まる人気のスポットです。
アトリエ

各アトリエでそれぞれの専門に基づく作品を制作
学校全体でなんと11室もあるアトリエ。剥製の模写や静物画デッサンなど、さまざまな美術品や展示作品を作り上げています。どのアトリエにも生徒たちの作品がたくさん飾られており、まるでちょっとした美術館のようです。
こんな子が向いている

女子美が求める生徒像は、とてもシンプルです。
「絵を描くことが好き、ものづくりが好き。もしくは大好きですか? その問いかけに、濁りなく『はい』って言ってくれる子です」
時々「女子美に入れたら、美術を好きになってくれますよね?」という保護者の方がいるそう。でも、並木先生は一拍置いてから答えます。
「それは、ちょっと違います。もうすでに好きでないと困ります」
女子美術大学付属中学校は美術を好きに「させる」学校ではなく、すでに好きな子が集まって、一緒に学ぶ場所。だから、入試に美術実技はありません。「できること」ではなく「好きかどうか」を大切にしているから。技術は入学後、いくらでも伸ばせます。
「『好きこそ物の上手なれ』を体現している学校なんです」
もう一つ大切なのは、自分の「好き」を持っていること。「私はこれがいいと思う」と、他人の評価に流されずに言える子です。日本一や世界一ではなく、自分の「自己ベスト」を更新し続けられる子。そんな生徒が、この学校では輝きます。
先生がお伝えする学校選びのアドバイス

並木先生から、学校選びについてこんなお話しをいただきました。
「子どもの好きを伸ばせるところに行くこと。これに尽きます。なぜなら、多くの人が、好きなことでなく役に立ちそうなことを伸ばそうとしてるんですよね。」
確かに、将来役に立つ学びをさせようと考えがちです。でも並木先生は続けます。
「今の子は、好きなことをやる分にはいくらでもできます。だから、子どもには好きなことさせてあげて欲しいんです」
保護者へのメッセージ
「私の考え方は、学校と生徒との出会い方は何でもいいと思っています。偏差値で選んだって、文化祭で一目惚れしたって、何でもいい。大事なのは、出会ってから。その学校でどう幸せになるか考えて、親子で努力できるかどうかなんです」
「私も反省が多い人生やってきたので」と笑いながら話す並木先生。完璧な子育てなんてない。だからこそ、学校選びや中学受験は子どもと一緒に悩み、一緒に歩んでいくことが大切だという信念が伝わってきました。子どもの「美術が好き」という気持ちを尊重し、はぐくみたいと思ったら、ぜひ学校見学などに訪れてみてください。
<がくパパの取材コメント>
女子美術大学付属中学校の最大の魅力は、「美術が好き」という純粋な気持ちを、何より大切にしてくれることです。そして、その「好き」が学校を楽しむ一番の原動力。技術や経験は一切問わず、入試に実技もない。ただ「好き」さえあれば受け入れ、18名の美術教員をはじめ、全教職員が6年間かけてその情熱を育ててくれます。同じ「好き」を持つ仲間たちと切磋琢磨し、学年を超えて認め合える環境——ぜひ美術好きな皆さんに見てほしい学校です!

