JTBトラベルメンバーログインメンテナンスのお知らせ

語彙力とは? 子どもの語彙力を鍛える方法を国語の先生が伝授 読書の秋に!

白坂 洋一 先生

るるぶKidsライターのアイコンるるぶKidsライター

ふだん子どもが「やばい」や「すごい」など、いつも同じことばばかり使っていて、語彙が少ないと心配している方も多いのでは? 筑波大附属小学校で国語を教える白坂洋一先生に、子どもの語彙力をアップさせるちょっとした工夫や声かけについて、教えてもらいました。

白坂 洋一 先生白坂 洋一 先生
1977年鹿児島県生まれ。鹿児島県公立小学校教諭を経て、筑波大学附属小学校国語科教諭。『例解学習漢字辞典』(小学館)編集委員。『例解学習ことわざ辞典』(小学館)監修。全国国語授業研究会理事。「子どもの論理」で創る国語授業研究会会長。主な著書に『子どもを読書好きにするために親ができること』(小学館)『「学びがい」のある学級』(東洋館出版社)等。

おすすめ記事
» なぜ小学生に人気?『るるぶ マンガとクイズで楽しく学ぶ!』シリーズ全ラインナップ

目次(index)

1.語彙力とは?語彙が豊かってどういうこと?

―― 語彙力がある、語彙力を鍛えるなどと言いますが、そもそも「語彙力」って何なのでしょうか?

白坂先生:語彙力には量と質があります。量とは知識としてことばを多く知っていること、質とはことばの意味を正確に理解し実際に会話などで使えることです。語彙力があるということは物事を深く理解し、豊かな表現ができる、ということにつながります。
例えば、「しぼむ」と「すぼむ」などはとっても近いことばではありますが、意味や使い方には違いがあります。ことばを発する側は相手に対して、適切に伝えることができるでしょうし、受け手の側も語彙が豊かであることによって、相手のことばの奥にある意図を正確にとらえることができます。

今の子どもは「語彙の幅」が狭くなっている

―― 最近の子どもは語彙力が低下しているとよく聞きますが、国語の先生から見るとどうなのでしょうか?

白坂先生:語彙の幅が狭まっていると思います。例えば「やばい」ということばでプラスの意味もマイナスの意味もありますよね。このようなひとつのことばで複数の意味を表すことばは簡単だから使ってしまいますが、「語彙の幅」を狭くしていると思います。

語彙力はすべての土台

―― 子どもの語彙を豊かにしたい、と考える親は多いですが、学校教育の面では語彙や語彙力についてはどのように考えられているのでしょうか。

白坂先生:平成29年の文部科学省の小学校学習指導要領 国語科でも学習内容の改善・充実の第一項目として、語彙を身に付けることを挙げていて、語彙力があってこそすべての教科の学習への理解が深まる、と捉えています。語彙力はすべての学習の土台、と言えますね。

2.国語の先生が実践する!語彙力アップのメソッドって?

白坂先生がいらっしゃる筑波大学附属小学校では、各教科の専科の先生方でチームを組んで連携しながら指導に当たる、という教科担任制をとっています。白坂先生は国語の先生として、日々子どもひとりひとりの習熟レベルを深く観察しながら教えています。

子どもに「問い返す」

―― 語彙を豊かにするために、国語の授業や毎日の学校生活ではどのように子どもに接していますか?

白坂先生:国語の授業では文章のどの部分から答えを導いたのか、子どもの発言に「問い返す」ようにしています。そうすることで、根拠をもとに考えを深めることができます。例えば、登場人物の気持ちを考えてみよう、という授業で「どこでそう思ったの?」と問い返すのです。

日常生活で、例えば、子どもが「楽しかった!」や「ヤバい!」のようなことばを言っていて、もう少し詳しく聞いてみたいと思った場合、「どういうこと?」や「どうしてそう思ったの?」と問い返します。

「どうして?」という問いの答えを自分のことばで説明できるようになることで、物事に対する理解を深めるきっかけにもなりますし、もし使い方を間違えていたり、言い換えが必要であったりすることばがあれば、ことばについて一緒に考え、見方や考え方を広げることにもつながります。

低学年のうちはゲームでことばに親しむ

白坂 洋一 先生

―― 小学校に入りたてのうちは、まだ知っていることば自体が少ないと思いますが、どのようにして語彙力を育てていくのですか?

白坂先生:授業では3~4人でグループになって「ことばのネットワーク」を作ることをしています。例えば「楽しい」ということばですが、どんなことばに言い換えられるでしょうか?

「おもしろい」や「ハッピー」、「ゆかい」と考える子もいます。グループの真ん中に紙を置いてみんなで書き出して「ことばのネットワーク」を作ります。「おもしろい」と「ゆかい」は同じ意味だな、と言い換え表現に気が付いたり、同じ意味だけでなく反対の意味のことばも連想したりすることで、ことば同士の関係性を「ネットワーク」のイメージで学ぶことができます。

ほかにも、しりとりやアナグラム(文字を並べかえて別のことばを作る遊び)、折句(文頭のかなをつなげて別のことばを作る遊び)などの遊びを通して楽しくことばに触れてもらいます。これらの昔からあることば遊びは、語彙を豊かにするのにかなり有効で、そういう意味では、ことばと遊びを組み合わせた昔の人々の知恵には驚かされますね。

―― 遊びながら新しいことばの数を増やす、ということですね。

白坂先生:語彙力は量と質が重要と言いましたが、低学年のうちにまず語彙の量を増やすようにしています。ことば自体を知っていないと質を上げることもできません。また、小さい子どもは初めて知ったことばをすぐに使いたがりますよね。子どもたちが遊びやゲームで覚えたことばを使う場面では、意味を間違えていたらすかさず教えるようにしてサポートしています。

中・高学年ではクイズやゲーム作り

マンガとクイズの誌面(クロスワードパズルクイズやスケルトン)

『るるぶ マンガとクイズで楽しく学ぶ!ことば1000』の誌面(クロスワードパズルクイズやスケルトン)

―― 低学年のうちに語彙の量を増やしたら、その後の中・高学年ではどうしていますか?

白坂先生:中学年以上になるとクイズやゲームを自分で作るのが好きな子どもも多いです。小学校3年生~4年生でことわざと慣用句を学習しますが、『るるぶ マンガとクイズで楽しく学ぶ!ことば1000』では、「体の一部を使う慣用句」、「季節をあらわすことば」というコラムがあります。このようなテーマをお題にして答えるような遊びも面白いです。

子どもたちは自分でクイズを作ることが好きですから、クロスワードや穴埋めクイズを作ることにチャレンジするのもいいですね。ゲームを作るときには、クラスの友達や兄弟や両親といった相手がいるとやりがいがありますよね。覚えたことばを実際に使って、作ったり見せたりすることは語彙力を鍛える意味でとてもいいと思います。

3年生で国語辞典、4年生で漢字辞典の使い方を学びますが、白坂先生は「コトバト」という辞書を使った語彙力のゲームの開発にも携わっていました。友達同士や家族で遊んでみるとおもしろそうです。

3.子どもの語彙力アップのためにおうちでできること

学校の授業での語彙力アップの方法を教えてもらいましたが、家庭内ではどのようなことができるでしょうか。

親も同じ立場で「考える」

―― 子どもが学校の宿題など勉強をしているとき、親ができることはありますか?

白坂先生:子どもから、ことばの意味を聞かれたりすることがあると思います。そのときにはすぐに答えを教えるのではなく、どうやって答えにたどり着けるか、一緒に考えたり辞書を開いてみたりすることが良いと思います。例えば「あつい」ということばには「暑い」も「厚い」も「熱い」もありますが、『るるぶ マンガとクイズで楽しく学ぶ!ことば1000』ではイラストと一緒にことばの意味が紹介されているので便利ですね。

一緒の本を読んで感想を共有する

―― 語彙を増やすため、子どもにはたくさん本を読んでほしいのですが、物語や小説ではなく、絵や写真ばかりの本でもいいのでしょうか?

白坂先生:図鑑や偉人の伝記でも大丈夫です。そのときには親御さんも読んでみた感想を子どもと共有するのがよいと思います。物語でなくても、載っていることばがどういう意味かと考えることで語彙力は身に付けられます。以前、あるお母さんから「子どもが本を読まずに図鑑ばかり読んでいて心配」と相談を受けましたが、一緒にお母さんも図鑑を読んでみて、おもしろいと思ったことや疑問に思ったことを子どもと話してみてください、と答えました。

4.語彙力をつけやすい時期は?おでかけや読書の秋はチャンス!

日常生活のなかで、自然に語彙力を鍛える方法を先生に聞いてみました。

思い出を話すことや、食レポも有効?!

―― 夏休みも終わり、読書感想文や日記などの宿題を見ると、まだまだ語彙力不足って心配になりますが…。

白坂先生:語彙力を高めるというと、本を読みことばを知識として得ることがイメージされがちですが、インプットだけではなく、実際にそのことばを使ってみる、アウトプットをしてほしいと思います。家族でおでかけした場所や出来事、思い出を親子で話すことで、どう思ったか、何が楽しかったかを自分のことばで表現できるようになるものです。食事のときのコミュニケーションの中で聞いてみるといいですね。また、食レポなんかもよいです。食べたお菓子がどう甘いのか、比喩表現を身に付けられるようになります。実際にわたしは娘とたまにやっています(笑)

読書の秋!「学級文庫」ならぬ「家庭文庫」

―― 読書の秋がやって来ます。本好きな子どもばかりではないですが、そんな家庭でもできるおすすめの読書方法があったら教えてください。

白坂先生:「家庭文庫」がおすすめです。よく学校では学級文庫として、教室の一か所にみんなで読む本を置いていたりしますが、それをまねたものです。一人当たり3冊ずつ、おすすめの本、読みたい本、読んでほしい本を2週間ほど借りて、リビングの見える場所に置いておく。ただ置くだけとなってしまう期間もあると思いますが、繰り返すことで、以前借りたけど読めなかった本をもう一度借りることもあるでしょう。子どもだけでなく親御さんも好きなときに読むと良いでしょう。特におもしろいと思ったページを共有すると新しい発見があります。親子一緒に読書の秋を楽しめるといいですね。

5.『るるぶ マンガとクイズで楽しく学ぶ!ことば1000』発売中!

白坂先生に監修して頂いた『るるぶ マンガとクイズで楽しく学ぶ!ことば1000』

白坂先生に監修して頂いた『るるぶ マンガとクイズで楽しく学ぶ!ことば1000』

『るるぶ マンガとクイズで楽しく学ぶ!ことば1000』は小学生のうちに知っておきたいことば約1000語を掲載しています。クスっと笑える楽しいイラストと具体的な例文でことばの使い方や意味を学びながら、類義語や対義語も一緒にいつのまにかたくさんのことばを覚えることができます。スケルトンパズル、クロスワードなどのゲームやおもしろコラムも充実しています。
白坂先生には、「読む」だけでなく「使う」のがこの本のいいところ、と言っていただきました。この1冊を使って子どもと一緒に楽しく語彙力アップしてみませんか?

るるぶ マンガとクイズで楽しく学ぶ!ことば1000

» 詳細・購入はコチラ(Amazon)