赤ちゃんと車でお出かけするとき、どの家庭でもチャイルドシートを装着しているはず。それなのに、「子どもが小学生になったから」などの理由で、チャイルドシートを卒業してしまう人も。でもちょっと待って! 自動車に乗車中の小学生の事故がいま、急増しているのです。子どもと楽しく車でお出かけをするためのアドバイスを、チャイルドシートの専門家に聞きました。
加藤久美子さん(自動車生活ジャーナリスト)
大学卒業後、自動車の業界紙である日刊自動車新聞社の編集記者として携わった後、フリーランスとして独立。第一子出産後、2001年には妊婦のシートベルト着用を推進する会を立ち上げる。認定チャイルドシート指導員として、車と子どもの安全に関する啓発活動も行う。Yahoo!ニュースに配信されるメディアに年間300本以上の記事を寄稿。All About「車」ガイド。https://allabout.co.jp/gm/gp/1306/
チャイルドシートの着用はいつまで?
チャイルドシートは何歳まで必要? 前向きにするのはいつ?
道路交通法では、6歳未満の乳幼児を乗せて自動車を運転するときはチャイルドシートを使用することが義務づけられています。また、現在の最新の安全基準では、身長76cm、かつ、月齢15カ月までは後ろ向きに座らせることになっています。15カ月を過ぎていても身長76㎝を満たしていない場合は、後ろ向きに座らせましょう。
後ろ向きにする理由は、進行方向と逆向きに座らせることで、衝撃をいちばん面積の広い背中側で受けて力を分散させるため。大人と同じように前向きで衝撃を受けた場合、まだ体がしっかりつくられていない赤ちゃんでは、衝撃に耐えることができないからです。
チャイルドシートの使用率は?法律の罰則は?
2023年チャイルドシート使用状況全国調査(警視庁/JAF)
チャイルドシートの使用率調査によると、1歳未満では9割弱、1歳〜4歳では約7割が装着しているのに対して、5歳になると5割近くまで低くなっています。乳児にチャイルドシートを使用することについては、多くのパパやママに浸透していますが、5歳を過ぎたとたん、使用率が下がるのです。
しなかったら法律違反になる?罰則は?
6歳未満の子どもにチャイルドシートを着用させずに運転をすると、道路交通法違反となり、運転手は交通違反点数1点が加点されます。赤ちゃんを抱っこして乗るのもNGです。
また6歳以上(大人も含む)が後部座席でシートベルトをしなかった場合、高速道路では交通違反点数1点が加点されます。車の事故が起きた場合の安全性を考えれば、後部座席でも必ずシートベルトをするべきです。
6歳を過ぎたら、ジュニアシートを!
チャイルドシート着用の義務付けは6歳未満ですが、「6歳以上はチャイルドシート卒業」ではありません。車種にもよりますが、車のシートベルトは身長145〜150cmで安全に使えるように設計されています。つまり、満6歳の体格では、車のシートベルトを大人と同じように安全に締めることはできないのです。
身長150㎝まではジュニアシート
チャイルドシートは、年齢よりも体格(身長)を目安に考えます。先述したように、チャイルドシートは身長76cmかつ月齢15カ月までは後ろ向きに座らせることになっています。自動車メーカーの団体である日本自動車工業会では、チャイルドシートを卒業したあとは、身長150㎝までは学童用チャイルドシート(ジュニアシート)を使うように指導しています。身長150㎝を超えたお子さんで、シートベルトが首にかからず、きちんと鎖骨の上を通っている状態であれば、車のシートベルトを使って大丈夫です。
体の大きさが車のシートベルトに満たないのにジュニアシートを使わずに事故にあい、ベルトが首に引っかかって大ケガをしたり、最悪の場合は頸動脈を切って即死する危険性もあります。身長150㎝までは、ぜひジュニアシートを使ってください。
ジュニアシートとは?
ジュニアシートとは、学童用のチャイルドシートのことをいいます。原則として座面の高さをかさ上げして背の高さを補い(ブーストするという意味で、ブースターシートといわれることも)、身長150cmに満たない子どもでも、車のシートベルトが首にかからず、肩にかかって正しく使えるようにしたチャイルドシートです。
車のシートベルトが使える身長になるまでは、ジュニアシートを使って正しくシートベルトを着用することが、子どもの安全を守ります。チャイルドシートとの兼用タイプでも問題はありませんが、身長125cm(8歳くらい)までは、背もたれのあるジュニアシートを使ってください。座面だけのブースターシートもありますが、これでは、100%安全性を発揮することができないからです。
後部座席の子どもの事故が増えている!
死亡重傷につながった主な損傷部位 ベルト着用あり/非着用の比較(2001~2018年合算)
出典:公益財団法人 交通事故総合分析センター イタルダインフォメーション
後部座席に座る小学生のベルトの非着用がとても多いことが、調査で明らかになっています。実際、後部座席でベルト非着用の小学生の死亡重傷者数は大人に比べて目立って多くなっていて、その数は年間1万人以上にも! これは、「もう大きくなったからチャイルドシートは卒業してOK」と親が間違った認識をもっていることや、小学生の子どもがベルトを着けたがらないのを、親もよしとしてしまっていることなどが原因として考えられます。
また、子どもは大人に比べて体に対する頭の重さの割合が高いので、頭部に損傷をおう事故につながる割合が高く、非着用の場合はより死亡重傷にもつながりやすいリスクがあるのです。
正しく使ってる?実は間違った使用法が5割!
ジュニアシート 正しく着用した様子
せっかくチャイルドシート/ジュニアシートを使用していても、正しく使えていないと100%の安全性は保たれません。実は、チャイルドシート/ジュニアシートを使用している子どもの半数以上が、間違った使い方をしていることがJAFの調査でわかっています。
もっとも多いのが、ハーネス(ベルト)の締め付けがゆるいこと。ハーネスがゆるいと、子どもがその間から自力で抜け出す危険性があります。衝突事故では、その衝撃でハーネスから体が飛び出し、車外に放出されてしまう危険もあります。事故の強い衝撃だけではなく、急ブレーキ程度の衝撃でも、子どもの体が床に転げ落ち、大ケガにつながることも。
一方、ジュニアシートの場合はハーネスの締め付けのゆるさに加えて、体格に合っていないものを使っていることが多くみられます。まだ体が小さいのに、学童用のジュニアシートを使っているのです。親は子どもに対して、早め早めに上のクラスのシートを使いたがる傾向があります。なかには3、4歳の子どもに、「座面だけのブースターシート」を使っているケースも見られます。いずれも衝突や急ブレーキなどの衝撃を受けたときに、とても危険です。
チャイルドシートの正しい使い方
せっかくチャイルドシート/ジュニアシートを使っていても、正しく使えていなければ効果を発揮できません。ぜひ今一度、正しい乗せ方をチェックしてみましょう。
ベルトゆるめは✕!厚着もNG
「子どもが苦しそうだから」とハーネスをゆるくするのは絶対にNG。むしろ、正しく装着することで安定して心地よく座れるため、ぐずりにくくなります。また、子どもを座らせるときは厚着をさせないことも重要。ハーネスと子どもの間にぶ厚い衣類があることによって、子どもを守るはずのハーネスの拘束力が100%ではない状態になっているからです。できるだけ薄着で装着させ、寒いときはその上から毛布などをかけてあげましょう。
いちばん安全性を発揮できる乗せ方の基本は、「車の座席」「チャイルドシート」「子どもの体」の3つができるだけ密着していること。チャイルドシートがしっかりと椅子の形になっていることが重要です。正しい乗せ方の3ステップは以下の通り。
<チャイルドシートの正しい乗せ方 3つの手順>
- お尻をシートのいちばん深い位置につけ、背筋を伸ばした状態にする。
- 肩ベルトに腕を通し、バックルを止めたら、先に腰ベルトのゆるみを取る。
- 余った肩ベルトの長さを調節する。このとき、子どもの鎖骨のあたりに、大人の指1本入るくらいの締め付け方が◎。
知ってる?「Eマーク」
安全基準適合を示す「Eマーク」
チャイルドシート/ジュニアシートを選ぶときは、安全基準に適合していることを示す「Eマーク」が付いているかもチェック。日本ではこのマークがないチャイルドシートは流通できず、絶対的な安全基準です。チャイルドシートの底面、側面などについていることが多いです。所有のチャイルドシート、ジュニアシートもぜひチェックしてみましょう。
リサイクルやお下がりに注意
チャイルドシートをリサイクルショップやフリマサイトで購入したり、知り合いのママからお下がりを譲ってもらったりする人もいるかもしれません。でもチャイルドシート/ジュニアシートは新品を購入するのが基本です。
シートは長い間、使用するものなので、使っているうちにぶつかったり落としたりして、中身がどうなっているかわかりませんし、前の持ち主がどういう使い方をしていたかもわかりません。メーカーによって耐用年数が決められているものなので、中古のものを使うのはやめましょう。使用年数から考えても、驚くほど高価なものではないですし、子どもの命に代えられるものはないはずです。
チャイルドシートに楽しく乗せるアイデア
シートを嫌がるとき、あきてしまたっときはどうする?
せっかくシートに座らせても嫌がったり、乗っているうちにあきてしまったり。あるいは、親が運転しているときに後部座席で泣いて困ってしまうことも。
車に乗る時間は「楽しいことがある特別なとき」と子どもが思えるしかけを考えてみましょう。たとえば、家の中ではダメだけど、車に乗ったときだけ遊べる特別なおもちゃを用意する。同様に、いつもは絶対に食べられないけど、車に乗ったときだけ食べられるおいしいお菓子を用意することなどをおすすめしています。親子で一緒に大好きな歌を歌うなど、車のなかを楽しい空間にすることも大切です。
チャイルドシートを子どもの特等席に!
子どもに謝りながらチャイルドシートに乗せているパパやママを見かけることがあります。「ごめんね、痛いでしょ」「きついけどがまんしてね」など。これは絶対にやってほしくないことです。そんなことを言われたら、子どもだって「チャイルドシートは嫌なもの」と思ってしまいますよね。そうではなくて、「これはあなたを守るための、大切な椅子なんだよ」「これは、○○ちゃんのための特別な席なんだよ」というように、プラスの声かけをしてあげましょう。
チャイルドシート/ジュニアシートは乗車中の子どもの命を守る、究極の安全装置。正しく装着して、安心して楽しいお出かけをしてくださいね。
撮影協力:日本初のチャイルドシート専門店「CHILDSEAT LAB」
今回撮影協力をしてくれたのは、代々木公園駅から程近いチャイルドシート専門店で「CHILDSEAT LAB」。店内は、欧州の2大ブランド「マキシコシ」「ブリタックス・レーマー」が所狭しと並び、実車への試着や子どもの試乗が可能。車への適合はもちろん、装着後の車内の広さや、子どもの乗せ降ろしのしやすさなどを確認できます。また、今使っているチャイルドシートのベルト調整や正しい装着法などの相談にも、メーカや購入の有無を問わず対応してもらえます。チャイルドシートの「駆け込み寺」のようなお店です。
CHILDSEAT LAB チャイルドシートラボ
住所 | 東京都渋谷区富ケ谷1-16-3富ヶ谷ハイツ101 |
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営業時間 | 平日11:00〜16:00、土日祝11:00〜19:00 |
定休日 | 火・水(祝祭日の場合は営業) |
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