47都道府県それぞれの代表的な「特産品」をクローズアップ。【知る】【つくる】【学ぶ】の3つの視点から、特産品と各都道府県の関係をひも解きます。各地の歴史や風土だけでなく、意外な理由で生まれた特産品は、知れば知るほどおもしろい!
沖縄県からは、南国フルーツの「パイナップル」を紹介。さわやかな甘酸っぱさのあるパイナップルの魅力について、いろんな角度から迫ります。
47都道府県 特産品おもしろ雑学!トップ
» 47都道府県 特産品おもしろ雑学!|誰かに話したくなるひみつをイラストで解説
47都道府県の特徴まとめ
» 47都道府県の特徴をマンガ・地図で楽しく学ぶ!【日本の地理・歴史・産業・観光】
【知る】国産パイナップルのほとんどが沖縄産
スーパーなどで売られているパイナップルの大半は輸入品で、そのうちフィリピン産が約8~9割を占めるといわれています。パイナップルは年中温暖な気候を好む南国フルーツのため、日本では沖縄県の生産量がダントツ1位!
沖縄県の主な産地は、本島北部地区と石垣島を中心とした八重山(やえやま)地区です。その栽培の歴史が始まったのは、江戸時代の慶応2年(1866)。石垣島沖で座礁したオランダ船から漂着したパイナップルの苗が、伝来のきっかけになったといわれています。
パイナップルは木に実らず土から生える!
画像:PIXTA
南国フルーツのパイナップルは、ヤシの実のように木の上になっている果物だと思う人もいるかもしれません。けれども実際には畑に植えられ、地面から生えるように実がなります。
茎の背丈は50~80cmほど。細長い葉っぱを放射状に茂らせ、茎の先端に紫色の花を咲かせます。花が枯れるとその下の部分が膨らんで、茎の先端にぽっこりとパイナップルの実ができるのです。
沖縄県がパイナップル栽培に向いている理由は2つ、土壌と気候です。水はけのよい酸性の赤土(あかつち)の土壌は、パイナップル作りにぴったり。夏に30~35℃まで届く気温も、糖度の高いパイナップルができる必須条件です。
どうして沖縄のパイナップルは有名なの?
日本全土にパイナップルが普及したのは、昭和の時代になってから。輸送や貯蔵に不向きだったため、当時の沖縄は缶詰などの加工原料用の生産が主流でした。
昭和の沖縄経済を支えてきたパイナップルですが、平成2年(1990)に缶詰などの輸入自由化や生産者の高齢化なども重なり、生産量は激減…。県の農業研究センターは、優良品種の開発や栽培技術の研究に長年取り組んできました。
そうして生まれたのが、平成18年(2006)に新品種として登録された最上級パイナップル「ゴールドバレル」です。販売・生産体制を強化するための産地育成支援チームも発足し、メディアにも取り上げられてブランド化に成功。最近は観光用としてのパイナップル全体の需要も増え、生食用の生産が伸びています。
近年は缶詰やお菓子以外にも、その甘みを生かした無加糖の缶詰やワイン、お酢などを開発。加工品用の生産も活気づいています。
香りは桃?ココナツ? 沖縄の主なパイナップル
世界には、食用だけでも100種類を超えるパイナップルの品種があり、沖縄で栽培されているのは約25種類です。その中の代表的な品種をピックアップ。
世界で最も多く生産されているのが「スムースカイエン」。沖縄ではこの種に属する「N67-10(島パイン)」が、パイナップル全体の約6~7割栽培されています。酸味と甘みのバランスに優れているので、生食用はもちろん、缶詰などの加工用にも使用される定番です。
「ポコットパイン」は手でちぎって気軽に食べられるため、「スナックパイン」の愛称で知っている人もいるのでは?ちぎる際の「ポコッ」という音が名前の由来です。
貴重な高級品種「ゴールドバレル」は、通常のパイナップルに比べて大きく、重量は約2倍! 酸味が少なく糖度が抜群で、沖縄みやげとしても人気です。
「ピーチパイン」は名前のとおり、カットするとほんのり桃の甘い香りが漂います。2021年に品種登録をされた「ホワイトココ」は果肉が白く、甘いココナツのような香りが特徴の大玉。どちらも流通量が極めて少ないレアパイナップルです。
パイナップルとパインアップルは同じ!?
画像:PIXTA
結論から言うと、「パインアップル」と「パイナップル」は同じ果物。ただ呼び方が違うだけなんです。
英語では、そのゴツゴツした形状から松かさを意味する「パイン」と果実を意味する「アップル」を掛け合わせた「パインアップル」が正式名称です。英語の「apple」は、リンゴだけでなく古い英語において「果物全般」を指す言葉だったそう。日本で一般的に「パイナップル」の呼び名が浸透したのは、より言いやすかったからなんだそうです。
ちなみに、りんごには「パインアップル」という名前の品種があります。これはとても希少な品種で、「奇跡のりんご」と呼ばれるほどです。
酢豚にパイナップルを入れるのはなぜ?
画像:PIXTA
400年前の中国・上海(しゃんはい)で、パイナップル入りの酢豚が誕生したといわれています。中国に住む欧米人を豪華な食事でもてなすために、当時は珍しい果物で高級だったパイナップルをあえて使ったそうです。
甘酸っぱいパイナップルを脂っこい酢豚に入れると、後味がさっぱりします。加えて、パイナップルに含まれている酵素には、お肉に含まれるタンパク質を分解する働きがあり、お肉を柔らかくする効果も。また、その作用のおかげで消化不良を起こしにくくなります。そんな組み合わせのよさで、パイナップルを具に使うのが当たり前になったようです。
ただし、タンパク質を分解するパイナップルの酵素は熱に弱いため、60℃以上の熱を加えると効果がなくなります。なので、製造工程で加熱殺菌される缶詰のパインを使って酢豚を作っても、実はタンパク質を分解することはできません。調理の際にもパイナップルの加熱には注意しましょう。
【つくる】パイナップルの自家栽培と切り方
パイナップルは、実は家庭でも作ることができます! その手順とコツを簡単にまとめました。また、パイナップルの切り方も知っておくと、いざというときに役立ちます。
おうちでパイナップル栽培に挑戦
スーパーなどで販売されているパイナップルの葉っぱを使って、おうちでも再生栽培できます。しかも、工夫をすれば東京などでも育てられるんです。パイナップルの再生栽培は難易度が高く、育つまで2~3年もかかりますが、慎重かつ気長に構えて育ててみませんか。
<栽培法を紹介>
- パイナップルのヘタを取ります。手で持ってねじるときれいに取れます。
- ヘタの下に付いている葉の根本部分をコップなどの上に置いて、水に浸けます。
- 根が10cmくらい伸びたら大きめの植木鉢に植えてください。
- 成長期の春~秋にかけては野外で育て、土の表面が乾いたらたっぷりと水をあげましょう。冬の間は室内で育てて5~10℃程度の室温を保ち、乾かしすぎないように水を与えます(冬でも気温が5℃以上の暖かい地域に住んでいる場合は、露地栽培でもOK)。肥料は春と秋の年2回、野菜栽培用の緩効性肥料(ゆっくりと土に溶けて効く肥料)をひと握りぐらい与えます。
- 大きく育つ葉っぱが邪魔になったら、ハサミで切ってください(剪定:せんてい)。葉を小さくした場合、水の消費量が減るので、水やりを減らすのが根腐れを防ぐコツです。
- 2~3年ほど育てると、花が咲いてパイナップルが実ります。開花から約4カ月が経って熟したら、果実のすぐ下を切り離して収穫を!
パイナップルの保存方法&切り方
画像:PIXTA
保存方法は、パイナップルの葉を1cmほど残してカットし、新聞紙などに包んで風通しのよい場所か冷蔵庫に入れておきます。ホールであれば3~4日、カット後なら2~3日で食べ切ってください。
パイナップルは、硬い皮に覆われているので切るのが難しいと思われがちです。ただ一度、切り方を覚えてしまえば簡単ですよ。
<切り方の手順>
- 最初に葉の部分を根本から切り落とします。
- 実の底の部分を切り落とします。
- 実を縦方向に切り、半分にします。
- さらに縦に半分切り、4等分にします。
- それぞれの芯を切り落とします。
- 皮に沿って包丁を入れ、実と皮の部分を切り離しましょう。
- 食べやすい大きさにカット。パインの皮を捨てずにお皿の代わりに使えば、見た目もオシャレ!
【学ぶ】パイナップルについて学べるスポット
カートに乗ってパイナップル畑を見学できる施設と、パイナップル狩りと直売所を備えた2つの道の駅を紹介。レンタカーを借りて、大充実の“パイナップルツアー”に出かけましょう!
ナゴパイナップルパーク(沖縄県/名護市)
沖縄本島北部にある「ナゴパイナップルパーク」は、パイナップルのテーマパーク。カート「パイナップル号」に乗車して家族でワイワイ楽しみながら、パイナップル畑やジャングルのように生い茂った南国らしい植物を観賞できます。
ほかにも、ガーデン散策や恐竜エリア、スイーツコーナーなど、見どころがいっぱい! 小休憩の際に「生搾りパイナップルジュース」800円や「パインソフト」380円もいかが。
住所 | 沖縄県名護市為又1195 |
---|---|
問合先 | 0980-53-3659 |
営業時間 | 10~18時(最終入場17時30分) |
定休日 | なし |
料金 | 16歳以上1200円、4~15歳600円、4歳未満無料 |
アクセス | 車:沖縄自動車道許田ICから約13km18分 |
駐車場 | あり/200台/無料 |
URL |
道の駅やんばるパイナップルの丘 安波(沖縄県/国頭村)
「道の駅やんばるパイナップルの丘 安波(あは)」では、8月~翌年1月中旬にN67-10(島パイン)のパイナップル収穫体験を実施(成長具合により時期が早まる可能性あり)。3歳以上の参加者は1人1つを収穫し、おみやげとして持ち帰ることができます。
畑では、熟した実の大きさ・色味・香りを農家やスタッフが教えてくれるので、初心者でも安心。フレッシュパインの試食が付くのも魅力です。
住所 | 沖縄県国頭郡国頭村字安波1089-7 |
---|---|
問合先 | 0980-43-5115 |
営業時間 | 10~17時(収穫体験最終出発15時) |
定休日 | 11~3月の第2水曜 |
料金 | パイナップル収穫体験2200円、3歳未満無料※予約優先(当日受付可)、小学生以下のみの受付不可 |
アクセス | 車:沖縄自動車道許田ICから57km1時間30分 |
駐車場 | あり/44台/無料 |
URL |
東村 道の駅 サンライズひがし(沖縄県/東村)
「東村(ひがしそん) 道の駅 サンライズひがし」では、4月下旬~9月ごろにパイナップルを販売。村内では約10種の生産を行っており、時期によりさまざまな品種が並びます。ラッキーなら市場に出回っていない、珍しいパインに出合えるかも!
値段はサイズ、品種により異なりますが、小ぶりのものだと1個100円~。7月に多く出る東村特産のゴールドバレルは、平均価格2500円で販売。那覇で買うと約4000円なのでお得ですよ。
住所 | 沖縄県国頭郡東村字平良550-23 |
---|---|
問合先 | 0980-43-2270 |
営業時間 | 9~18時 |
定休日 | 年末年始 |
アクセス | 車:沖縄自動車道許田ICから30km40分 |
駐車場 | あり/20台/無料 |
URL |
【SDGs】沖縄県のパイナップルを自由に食べたり守ったりするために
沖縄県で生産されるパイナップルは、環境にも配慮しながら栽培が行われています。この先も、パイナップルを変わらず自由に食べたり守ったりするためにはどのようなSDGsを意識すればいいのか、親子で話し合ったり、考えてみるといいですね。