47都道府県それぞれの代表的な「特産品」をクローズアップ。【知る】【つくる】【学ぶ】の3つの視点から、特産品と各都道府県の関係をひも解きます。各地の歴史や風土だけでなく、意外な理由で生まれた特産品は、知れば知るほどおもしろい!
栃木県で紹介するのは「いちご」。「あのつぶつぶは、種じゃない」「冷凍にするとおいしいジャムが簡単にできる」など、思わず感心しちゃう話題が盛りだくさんです。
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【知る】いちごのいろは
全国のいちごの栽培面積の25%は、栃木県が品種登録した「とちおとめ」。栃木県では県内全域でいちごが栽培されていますが、最もいちご栽培が盛んな地域は真岡市です。
昭和43年(1968)にいちごの収穫量日本一を記録して以来、なんと半世紀以上も破られていません。平成30年(2018)に「いちご王国・栃木」を宣言するなど、栃木県は国内を代表するいちごの産地として広く知られています。
いちごの本来の旬は春〜初夏ですが、ビニールハウス栽培の普及などにより、今では11月ごろから出回り始め、5月ごろまでがシーズンとなっています。近年になると6~10月に出荷する夏秋どりいちごも生産され、一年を通しておいしいいちごが味わえるようになりました。
いちごのつぶつぶは種じゃなく果実!?
いちごは、梨や桃と同じバラ科の植物。私たちがいつも果実だと思って食べている赤く甘い部分は、茎の先端につく花の中央にあるめしべの土台となる花托(かたく)または、花床(かしょう)と呼ばれる部分が大きくなったもの。つまり茎の付け根分なのです。実際の果実はいちごの表面にあるつぶつぶで、種はこの中に入っています。
そんないちごが日本にやってきたのは、江戸時代末期のこと。当時、オランダ船で長崎に運ばれてきたいちごは観賞用でしたが、農業の近代化が進んだ明治時代には、欧米から栽培用の品種がもたらされています。
ちなみに、日本で最初に開発されたイチゴは「福羽(ふくば)いちご」という品種で、新宿御苑の農学博士であった福羽逸人(ふくばはやと)が生みの親。現在、「福羽いちご」は静岡県のごく一部で栽培されていて、「幻のいちご」と呼ばれています。その後、栃木県で作られた品種「女峰」や「とちおとめ」は、「福羽いちご」の子孫にあたるのです。
どうして栃木県のいちごはおいしいの?
画像:PIXTA
栃木県のいちごが甘くておいしい理由は、最先端のハウス栽培法を取り入れているから、といわれています。冬の太陽エネルギーを最大限に利用し、ちょうどいい温かさを保ちながら、ゆっくりと成熟させます。
また、いちごは涼しい気候を好み、夏の暑さに弱いので、「冬の日照時間が長い」「昼と夜の寒暖差が大きい」といった土地の特性も、栃木県におけるいちご栽培を後押ししました。
今や「いちご王国」として全国的に知られている栃木県ですが、いちご栽培が始まった昭和20年代当時、いちご栽培の北限は神奈川県。暖かい気候で育ついちごを栃木県で栽培するのは難しいとされ、周囲からは無謀な挑戦と見られていました。
そんな逆風に立ち向かったのが、農業技術研究家の仁井田一郎。現在の足利市を拠点に、高級作物だったいちごの栽培を志し、収益性が高く水稲の裏作として栽培できるいちごを研究。新しい栽培方法の開発などに尽力したといわれています。
栃木県では、平成20年(2008)に全国初のいちご研究所を開設。新しい品種やさらなる技術開発など、いちごのおいしさを総合的に研究しています。
栃木県で栽培されているいちごの品種
栃木県で栽培されているいちごの品種は全部で6つあります。
味が濃く果汁たっぷり、甘みと酸味の調和が取れた、栃木県を代表する品種「とちおとめ」。大粒ですっきりと甘くジューシーな「スカイベリー」。やわらかくてジューシーな「とちひめ」は、県内の観光農園でしか食べられない幻の品種です。
夏に収穫できる「なつおとめ」は、酸味が強くお菓子作りにぴったり。白い「ミルキーベリー」は、まろやかな食感と甘さが特徴です。甘~い「とちあいか」は、2019年秋に初出荷された新品種。縦に切るとハート型に見えてかわいいですよ。
いちごを収穫したら、どうやって食べるのがいちばんおいしい?
いちごをおいしく味わうための食べ方ですが、先端が一番甘いといわれているので、ヘタ側から食べ始めると、甘さが徐々に増していきます。また、ヘタ付きのまま水でさっと洗い、食べる直前にヘタを外すことで、ビタミンCなどの栄養分を逃すことなく味わえますよ!
【つくる】いちごの栽培方法とレシピ
いちごは、家庭菜園でも作ることができます。けれども初心者が始めるには、ちょっとした知識とコツが必要。ここではいちごを栽培する際のコツと注意点を紹介します。
自家製のいちごジャムも、意外と簡単にできるので、親子で協力して作ってみませんか?
おうちでいちごを育ててみよう
家庭菜園でいちごを選ぶ際のポイントは、収穫時期と品種。育てやすさに大きな違いはないのですが、初心者には「一季(いっき)なり」のいちごがおすすめです。10月に植え付けて、翌年の5月初旬から6月頃にかけて収穫できます。
一般的なプランターで育てることもできますが、コンパクトに育てるなら、いちご専用の鉢を使いましょう。果実全体が垂れ下がっても地面につかないので、病気の発生も少ないといわれています。
苗を植え付ける時に気をつけたいのは、少しふくらみがある根元部分(クラウン)を完全に埋めてしまわないこと。ちょっぴり顔を出すぐらいが目安です。水やりの頻度は土の表面が乾いたらで十分。いちごは基本的に寒さに強いですが、寒すぎると上手に育ちません。マイナス5度以下になりそうな真冬は、なるべく日当たりの良い場所で育てましょう。
冷凍いちごを使うのがコツ!「いちごジャム」
画像:PIXTA
手作りしたいちごジャムは格別の味わい! 生のいちごでもいいけど、冷凍したいちごを使うと、簡単においしいジャムができますよ。
簡単にレシピを紹介
- 冷凍したいちごをそのまま鍋に入れて、砂糖とレモン汁を加えます。
- 弱火にかけたらふつふつと静かな沸騰が続く火加減で煮詰めていく。こまめにあくを取りましょう。
- いちごに透明感が出て全体的にとろみがついたら完成です。ヘラでかき混ぜて鍋底が見えるようになったらOK!
冷凍したいちごは細胞壁が壊れているので、砂糖をまぶすとすぐに水分が出てきて時短になります。ジャムは作りたてがおいしいですが、日持ちさせたい場合は砂糖を多めに入れると傷みにくく、冷凍保存もできます。
【学ぶ】いちごについて学べるスポット
「いちご王国・栃木」には、いちごの魅力に触れられるスポットがたくさん! いちごについて楽しく学べる展示施設で知識を深め、観光農園のいちご狩りでいちごを味わい尽くしましょう。
道の駅にのみや いちご情報館
いちご関連の商品を多く取り揃えている「道の駅にのみや」に併設する施設。栃木県のいちごのすばらしさやおいしさを伝えることを目的に、歴史や生産に関する情報をパネルなどを使って楽しく紹介しています。
隣にある「いちご展示温室」では、とちおとめなど栃木県に関わりの深い品種を栽培展示。いちごの成長の様子なども楽しめます。
住所 | 栃木県真岡市久下田2201-1 道の駅にのみや内 |
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問合先 | 0285-82-4720(芳賀農業振興事務所) |
営業時間 | 9~18時(季節によって変動あり) |
定休日 | 第3火曜(祝日の場合営業) |
料金 | 無料 |
アクセス | 公共機関:真岡鐵道ひぐち駅から徒歩15分 車:北関東自動車道真岡ICから約15分 |
駐車場 | あり/110台/無料 |
URL |
いちごの里ファーム
170棟ものビニールハウスを備えた日本最大規模を誇る観光農園。スカイベリー、とちあいかなどのいちご狩り(要予約)のほか、さくらんぼやぶどうなどの果物狩りが一年を通して楽しめます。
また、施設内にはレストランやカフェ、売店も併設。自家農園のいちごをたっぷり使ったパンケーキやパフェが人気です。
住所 | 栃木県小山市大川島408 |
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問合先 | 0285-33-1070(総合受付:9~17時) |
営業時間 | 店舗・施設により異なる |
定休日 | 無休 |
料金 | 季節・内容により異なる |
アクセス | 公共機関:JR小山駅から、おーバスで25分、バス停:いちごの里下車、徒歩すぐ 車:東北自動車道佐野藤岡ICから道道50号経由14㎞20分 |
駐車場 | あり/120台/無料 |
URL |
【SDGs】栃木のいちごを自由に食べたり守ったりするために
栃木で収穫されるいちごは、環境に負荷をかけず作り手の育成にも力を入れて栽培が行われています。この先も、いちごを変わらず自由に食べたり守ったりするためにはどのようなSDGsを意識すればいいのか、親子で話し合ったり考えてみるといいですね。