家族でゆったり温泉や銭湯の大きなお風呂に入るのは楽しいですよね。最近では、週末はスーパー銭湯でリフレッシュを楽しむというファミリーも増えているようです。でも、公衆浴場に行けるのは何歳から? 混浴の年齢制限は? 子どもが騒がずに入れる?など、気になることもいっぱい!そこで、子連れでの温泉や銭湯を楽しむために知っておきたいポイントを、マナーの専門家に聞きました。
樋口智香子さん(人材育成・マナー・コミュニケーション講師)
一人ひとりを輝かせるマナーとコミュニケーションの専門家。大手化粧品会社の美容部員を経て、キッザニア東京に転職。丁寧な接客を内外から称賛され、優秀スーパーバイザー賞を受賞。2012年、講師として独立、のべ2万人以上の指導経験を持つ。マナーとコミュニケーションを通じて、相手も自分も幸せにできる人を育てるべく、全国にそのメソッドを伝えている。
子どもと温泉や銭湯へ!何歳からOK?
子どもと温泉やスーパー銭湯に行くのは、何歳ごろから可能?
一般的に家庭でママやパパと一緒に入浴できるのは、生後1カ月以降と言われています。一方、お子さんの温泉やスーパー銭湯などの公衆浴場デビューは、ママとパパの負担はもちろん、不特定多数の人が入ること、肌がデリケートなことなど、赤ちゃんの負担を考えると、立っちができるようになる1歳以降が望ましいでしょう。なお、2歳までに温泉デビューをした子どもは5割というデータもあります。
1歳以下の赤ちゃんが絶対NGというわけではないですが、温泉や銭湯の床は固いことが多いので、ハイハイすると痛いですし、ママやパパが抱っこする時間も長くなること、泣いたときの対応、すべって転ぶ可能性などを考慮すると、あまりおすすめはできません。どんなに早くても首がすわり、おすわりもできるようになる生後6カ月以降が目安です。
とくに赤ちゃんの場合は、入浴させる前に、体温、母乳やミルクの飲み具合、お腹の調子(下痢や便秘がないか)などの体調のチェック、ご機嫌がいいかどうかなども確かめておきましょう。
おでかけ前に施設のルールや設備をチェック!
お出かけの前に、施設のルールや設備をチェックしておくのも重要です。特に宿泊を伴う温泉旅行の場合には、下記の5つをチェックしておきましょう。
<子連れ温泉旅行のチェックポイント>
- 【年齢】
・宿泊の年齢制限(小学生以下NGなところも)。 - 【プラン】
・子連れプランがあるか(ウェルカムベビープラン、哺乳びん洗浄セット、おしりふき、月齢ごとの離乳食、ミルク、土足禁止でハイハイしても安心なルームなどがあることも)。 - 【食事】
・離乳食(月齢ごと)があるか。
・部屋食があるか(部屋食があれば、レストランに行って子どもが機嫌を損ねたときに部屋に移動できる。とはいえ、子どもはバイキングを喜ぶことも多い)。
・アレルギー対応があるか。 - 【お風呂】
・混浴の条件。異性の子どもがパパ・ママと一緒にお風呂に入れる年齢制限。
・ぬるめの湯(40℃以下が望ましい。38℃くらいだとママの体温に近く、赤ちゃんも安心)。
・家族風呂と貸し切り風呂があるか(貸し切りといっても概念はさまざま。家族風呂扱いのところもあれば、介護以外は混浴NG、混浴そのものがNGというケースも) - 【アイテム】
・ベビーバス(ベビーバスを使う月齢の赤ちゃんは浴槽には入れないで、という宿が多い)。ベビーバスチェア、ベビーベッド、補助便座、おもちゃ、防水シートなど、子連れ歓迎の宿はアイテムが充実している。
一つひとつのアイテムを確認するより、子ども向けにどんな貸し出しがあるかざっと見ておけば、荷物が少なくなります。
大切なのは、施設からの指示やルールの有無にかかわらず、ママやパパが、ほかのお客さんの立場になって考えてみること。子ども連れの家族も、大人だけで来ている方も、みんなが気持ちよく、楽しく過ごせるように配慮しましょう。
混浴の年齢制限とは?何歳から混浴NG?
混浴は7歳以上はだめ?なぜ?混浴の年齢制限の理由
令和4年10月1日から、温泉やスーパー銭湯などの公衆浴場の混浴制限年齢が「10歳以上」から「7歳以上」に引き下げされたことを、知っていますか? つまり、7歳以上のお子さんは、公衆浴場での混浴(例: 7歳以上の男の子が女湯に入る、または7歳以上の女の子が男湯に入る)ができなくなりました。
年齢制限が引き下げるかどうかを検討する際、入浴する人、施設などの事業者、幼児教育に関わる方などの意識調査が行われ、以下のような意見がありました。
- 大人が考える混浴禁止とすべき年齢が「6歳」もしくは「7歳」。
- 子どもが「恥ずかしい」と思い始める年齢も「6、7歳」が多い。
- 公衆浴場事業者が考える、混浴を禁止すべき年齢も「7歳」がもっとも多い。
- 幼稚園教諭からの、「4〜5歳の時期に性の意識が芽生え始める」という意見
これらの意見や結果をふまえて、子どもや親はもちろん、一般の入浴者が安心して入浴できるようにと、混浴の制限年齢が7歳以上と決められました。
混浴の年齢制限は、自治体ごとに決定
「7歳以上」と年齢制限を設けたのは、政府が発表した「指針」です。わかりやすく言い換えれば、国が示しているのは「7歳以上」という年齢制限の“目安”で、その基準を判断するのは都道府県または自治体ということになります。
当初は、自治体によっては「9歳以上」とするなど、独自の年齢制限を設けているところもありましたが、最近ではほとんどの自治体や施設で、混浴の年齢制限を下げる動きがあり、現在では「6歳までは混浴OK、7歳以上はNG」とするケースがもっとも多くなりました。(※令和5年10月11日時点)。
気になる場合は、おでかけ前に、施設のホームページをチェックしたり、電話などで問い合わせたりしましょう。また、地域や施設によっては以下のようなポスターが貼られている場合もあるので、チェックしてみましょう。
東京都のポスター 出典:東京都公衆浴場業生活衛生同業組合
» [参考]公衆浴場の混浴年齢を定める条例(地方自治体機構)
シングルママで男児の場合など事情があってもダメ? ルールの絶対度は?
とはいえ、シングルママで男の子のお子さんがいる場合、あるいは発達上の理由や安全面などから7歳の子どもを1人でお風呂に入れるのは不安、という声もあります。
施設によっては、発育発達の個人差、介助が必要なお子さんの配慮や、家族風呂の配慮などの理由から、7歳以上のお子さんが入浴をした場合でも罰則を設けないケースもあります。また、「風紀上、支障がないと認められる場合は、基準を適用しない」ことを認める但し書きを設けている自治体や施設もあるようです。疑問や心配がある場合は、事前に自治体や施設に問い合わせましょう。
温泉の泉質とは?子どもに良いものは?
泉質とは、湯にどんな成分がどれくらいの割合で含まれているかを示すもの。主成分の違いによって10種類に分けられます。温泉に行くと「温泉分析書」などが表示されていることが多いので、チェックしてみましょう。
子どもの温泉デビューにおすすめのもの、避けたほうが無難なものは以下の通りです。
<子どもにおすすめの泉質>
- 【単純温泉】
肌あたりがやわらかく、刺激が少ない。温泉成分の含有量が一定に達していないので、温泉の影響が少ない。 - 【塩化物泉】
湯冷めしにくい。泉成分が皮膚に膜をつくるため、「温泉パック」のような状態になる。肌から水分や熱が放出するのを防ぎ、いつまでも温かさが続く上に肌をしっとりと保湿してくれる。 - 【酸性度を示すpHの数値が6~7.5】
泉質とは違いますが、酸性度を示すpHの数値が6~7.5のものも、子どもが入りやすいでしょう。肌のPHと同じで刺激が少ないため。
<刺激が強く、特に肌の弱い子は避けたほうが無難なもの>
- 【アルカリ性】
アルカリ性(PHが8.5以上)はぬめりがあり、肌がすべすべになります。ただ、角質を落とす効果があり、皮脂を落としすぎる可能性も。 - 【酸性泉】と【硫黄泉】
殺菌効果があるものの、禁忌症(きんきしょう)として「皮膚または粘膜の敏感な人」が挙げられていることがあります。とくに赤ちゃんの皮膚は大人に比べて厚さが薄く、バリア機能が未熟なため、注意が必要。「硫黄泉」は独特の匂いがあることもあり、嫌がる可能性も。
「酸性泉」「硫黄泉」は、一般にアトピー性皮膚炎にいいと言われているようですが、アトピーの症状は人それぞれ。子どもは大人よりも皮膚が薄いため、単純温泉が無難でしょう。また、熱すぎるお湯に長く浸かるとかゆみが増す可能性も。40度くらいの心地よい温度のお湯にゆっくり浸かりましょう。入浴の際は念のためよく洗い流し、家庭で普段行なっているスキンケアを行うことも大切です。
子連れの公衆浴場でのマナーと伝え方
公衆浴場の基本的なマナーは?
たくさんの人が入浴する温泉では、公衆浴場でのマナーを子どもに伝える絶好のチャンス。親子間でコミュニケーションを取りながら、楽しくマナーを身につけさせてあげましょう。
お子さんと一緒にお風呂に入りながら、教えてあげたいことを挙げておきます。
【入浴する前に伝えること】
- 走らない、泳がない、騒がない
公衆浴場での3大NG行動です。大きなお風呂に大興奮し、つい楽しくなって、はしゃいでしまう子どももいるかもしれませんが、公共の場であることを忘れずに。温泉は「癒されたい」「ゆっくりしたい」という人が集まる場です。 - 脱衣場やお風呂場、廊下では走らない
特に濡れたまま走るのは、とても危険。すべって転んで、大ケガにつながることも。 - 湯船の中で、泳がない。
- 大きな声を出して、騒がない。
【一緒に入浴しながら伝えること】
- 体を洗ってから湯船に入る。
- かけ湯、かかり湯をする(急な体温の変化に体がびっくりしないように)。
- 長い髪はゴムなどでまとめる。
- タオルは湯船に入れない。
- 使った洗面器やいすは、元どおりに片づける。
【ママやパパに心がけておいてほしいこと】
- 大浴場に行く前に、子どものトイレを済ませておく。
入浴中に行きたがったら、体をふいて、トイレに連れて行く。 - シャワーを使うときは、子どもをいすに座らせる。
子ども立たせたまま洗うと、周囲の人にシャワーの水が予飛び散ってかかることがあり、迷惑になります。 - 持ち込んだ私物を置いて、洗い場をキープしない。
いったん湯船につかるからと、私物を置いて洗い場をキープするのはNG。物を置くラックがあれば、そちらに置きましょう。また、小分けの洗顔フォームなどのゴミはそのままにせず、ゴミ箱に捨てましょう。
子どもにマナーを守らせるコツはある?
ママやパパもリラックスするために温泉に来ているはず。厳しく子どもに言い聞かせたり、叱ったりはしたくありませんよね。気持ちよく子どもにルールやマナーを守ってもらうには、伝え方にもポイントがあります。
【否定命令はしない】
「~しないでね」といった否定形の命令ではなく、「~しようね」と伝えましょう。たとえば「走らないでね」→「ゆっくり歩こうね」、「騒がないでね」→「大きなお風呂に行くけれど、静かに入ろうね」など。
【承認のメッセージ】
子どもがきちんとルールを守れたり、その子なりに頑張ることができたら、ぜひ承認のメッセージを伝えてあげましょう。
たとえば、子ども用のいすを片づけることができたら、「よくできたね」「えらいね」とほめながら教えれば、子どもも喜ぶでしょう。
熱くて湯船に子どもが入れない場合は?
温泉では、子どもが楽しく過ごせることがいちばん大切。嫌がっているのに無理して熱い湯船に入らせる必要はありません。大浴場の湯船に入れないときは、シャワーで済ませたり、部屋風呂や貸し切り風呂を利用したりしましょう。
また、お風呂場は声が反響するので、嫌がって泣くなど大きな声を出してしまったら、周りの方にも「すみません」の声かけを忘れずに。ただし、あまり神経質にならなくても大丈夫。温泉に入るお客様は開放的な気分になっていること方が多く、優しい方も多いです。周囲への配慮は忘れずに、お互いに気持ちよく使いましょう。
一方で、ママやパパが子どもに温泉を体験させたい気持ちもわかります。初めての温泉でびっくりしているだけなら、足湯から徐々に入れたり、抱っこで入れたりするなど工夫してみましょう。
温泉、スーパー銭湯など公衆浴場で気をつけるべきこと
それ以外にも、子どもと温泉やスーパー銭湯などに入る際には、以下のようなことに気をつけるといいでしょう。
【湯あたり・のぼせに気をつける】
温泉に何度も入ったり、長時間入り続けたりすると、温泉成分が体に影響して頭痛やめまいなどの体調不良を引き起こすことも。入浴前後に水分補給をしましょう。また、万が一気分が悪くなったら安静にし、気持ちよいと感じるなら頭を冷やしてあげましょう。
【宿泊の場合は、浴衣があってもパジャマ持参】
浴衣姿は、とてもかわいいですね。ただ就寝時は、パジャマを着せることをおすすめします。子どもは浴衣を着慣れていないので、寝ているうちにはだけてしまい、寝冷えすることがあります。また、歩きづらいので、浴衣そのものを嫌がる子もいます。念のため、普段のパジャマを持って行く、浴衣の下に着る肌着などを持って行くと、安心です。
【食後の入浴】
食後は血液が体の表面に集まり、胃腸まで行き届かずに消化不良を起こすことがあります。食後すぐの入浴は避けましょう。
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