47都道府県それぞれの代表的な「特産品」をクローズアップ。【知る】【つくる】【学ぶ】の3つの視点から、特産品と各都道府県の関係をひも解きます。各地の歴史や風土だけでなく、意外な理由で生まれた特産品は、知れば知るほどおもしろい!
奈良県で紹介するのは「そうめん」。白く細く、涼感をもたらすそうめんは日本の夏に欠かせない存在。実は、寒い冬に生産されているってご存知ですか。意外と知らないそうめん豆知識をお届けします!
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【知る】日本最古の神社から生まれた、そうめんの源流
奈良でそうめんが生まれたのは、なんと今から1300年ほど前。日本最古の歌集『万葉集』が作られた奈良時代と伝わります。手のべそうめんの名産地として知られる奈良県桜井市の三輪山麓では、今も伝統的な製法でそうめん作りが行われています。冬の晴れた空の下、真っ白な麺を広げて干す「天日干し」は奈良県の景観資産であり、冬ならではの景色です。
なぜ奈良県のそうめんは有名になったの?
出典:農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」
日本で初めてそうめんが誕生したのは、奈良県桜井市の三輪地区といわれます。三輪には日本最古といわれる大神神社(おおみわじんじゃ)があり、その宮司の息子が三輪の風土に適した小麦の栽培を始め、収穫してそうめんを作ったのが起源だそうです。
そうめん作りにふさわしい環境とは、きれいな水に恵まれ、冬の晴天日が多い地域。そうめんを乾燥させるときに必要な「おろし」という季節風が奈良盆地から吹くことも重要でした。
当時のそうめんは2本の生地をよじった太い縄のような形で、索餅(さくべい)と呼ばれていました。今のような形になったのは鎌倉時代だったようです。江戸時代、三輪はお伊勢参りの宿場町として繁栄。立ち寄った人々にそうめんを振る舞ったところ「うまい」と評判になり、そこから播州(ばんしゅう、現在の兵庫県)、香川県小豆島(しょうどしま)、長崎県島原(しまばら)、そして全国へと広がっていったのです。
そうめんはどうやって作られるの?
画像:PIXTA
そうめん作りは寒さの厳しい冬に、2日間にわたって行われます。
1日目は、2日間の天候に合わせて塩と水の量を調整して食塩水を作り、それを小麦粉と均一に混ぜて、丁寧に生地をこねます。生地を少しずつ延ばしては「ウマシ」と呼ばれる熟成を行い、それを繰り返して徐々に、麺を細く延ばしていきます。うどんやそばのように包丁で切るのではなく、平たい麺帯から細く丸い糸状になるまで手で延ばしていくため、非常に手間がかかります。
天日干しが行われるのは2日目の朝から。最近では室内で干す製麺所がほとんどですが、三輪では今も屋外でそうめんを干す様子を見ることができます。
「そうめん」と「にゅうめん」は同じもの!?「ひやむぎ」との違いは?
「そうめん」と「ひやむぎ」の違いは、太さです。基本的に直径1.3mm未満なら「そうめん」、直径1.3mm~1.7mm未満なら「ひやむぎ」と呼びます。ただし手作業で作られる「手のべ干しめん」は、丸棒状で直径1.7mm以下であればそうめんと記載でき、徳島県の名産「半田そうめん」のように、ひやむぎと同じ太さのそうめんも存在します。
太さ以外に、そうめんとひやむぎは製法、食感も違います。そうめんは生地を延ばすことで仕上げられる一方、ひやむぎはうどんのように生地を切って作られます。そうめんはつるりとのど越しがよく、ひやむぎは太さがあることから食べごたえがあります。
どちらも真っ白で見た目では区別しづらいので、昔はひやむぎにピンクや緑の色がついた麺を入れて判別しやすくしていたのだとか。現在では商品管理が容易に行えるようになり、そうめんとひやむぎを間違えることはなくなりましたが、色つき麺が入っていると見た目にも彩りがある、子どもが喜ぶなどの理由で、そうめんにも色つき麺が登場するようになったそうです。
「そうめん」と「にゅうめん」の違いは食べ方です。そうめんは冷やした麺をめんつゆにつけて食べるのに対し、にゅうめんはそうめんをアツアツに煮て食べます。にゅうめんは奈良県の郷土料理の一つです。
【つくる】そうめんのおいしい&楽しい食べ方
暑い季節は、脂質と食物繊維が少ないため消化がよく、胃にやさしいそうめんを味わいましょう。そうめんのおいしいゆで方に加えて、大人も子どもも盛り上がる「流しそうめん」にもチャレンジ! さらに、栄養バランスがもっとよくなる具だくさんレシピもお教えします。
そうめんのおいしいゆで方
出典:農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」
そうめんはたっぷりのお湯でパッとゆで、流水でしっかり洗いましょう。ゆでているときにふきこぼれそうになったら、水は足さずに火を弱めて吹きこぼれを防ぐのがコツです。
冷やしそうめんなら、調理後すぐに食べましょう。食べるまでに少し時間がある場合は、乾燥を防ぐためにラップをかけて冷蔵庫へ。食べるときに冷水をかけて、麺をほぐしてください。
にゅうめんの場合は、麺をあらかじめ用意しておき、食べる前にお好みのつゆにそうめんを入れればおいしいにゅうめんになります。
簡単にゆで方を紹介
- 大きな鍋にたっぷりの水を入れ、沸騰してから麺を入れます。水の量の目安は1束(50g)に対し水600mlです。
- 麺が浮き上がってきたら火を弱めて吹きこぼれないようにします。ゆで時間は麺の細さ・好みにより加減します。鍋から麺を2~3本とりあげ、水で冷やして固さを調べます。
- 好みの固さになったら火を止め、そうめんをざるにあげ、流水でよく洗って水を切ればできあがり!
ペットボトルで流しそうめんにチャレンジしてみよう
竹を縦半分に割ったものを利用して水とそうめんを一緒に流し、流れてきたそうめんをすくいながら食べる「流しそうめん」。食感だけでなく見た目も非常に涼しげで、日本の夏の恒例行事として多くの人に親しまれています。
夏ならではの流しそうめんをお家で楽しむのはいかがでしょう。室内でもできますが、お庭やベランダでやると、さらに特別感がアップしますよ。
竹が手に入らなくても、ペットボトルをつなぐだけで自宅で簡単に流しそうめん台を作ることができます。用意するものは2Lのペットボトル、カッター、ハサミ、セロハンテープ(太いものと細いもの2種)、台の長さに合わせた木の板や棒です。約1mの長さの台を作るのに、2Lのペットボトルが3本必要です。
簡単に作り方を紹介
- ペットボトルの上下を切り落とします。最初にカッターで切り目を入れ、その切り目からハサミを入れて切っていくのがコツです。刃物で手を切ると危ないので、小さな子どもがカットする場合は大人がサポートしましょう。
- 上下を切り落としたペットボトルを、カッターやハサミで縦半分に切ります。
- 切り口で手を切らないようにするため、縦半分に切った切り口に細いセロハンテープを貼ります。
- ③のペットボトルを重ねてテープを貼り、1本につなげます。水が流れる方向に下へ下へと重ねることで、そうめんが段差に引っかからずに流れます。重ねる幅は約2cmで、太いセロハンテープで頑丈に固定しましょう。
- ④のペットボトルを太いセロハンテープで木の板に固定します。ペットボトルだけでは水やそうめんの重さで曲がってしまうのを防ぐためですので、木材がない場合は身近にある固いもので代用しても大丈夫です。
ツナとトマトのイタリアン風そうめん
蒸し暑く、食欲不振になりやすい日本の夏。食事は「のどを通りやすい、あっさりしたもの」とそうめんばかり食べてしまう人も多いのでは。そうめんだけでは栄養が偏ってしまうので、トマトとツナ缶を使ったアレンジレシピ「イタリアン風そうめん」に挑戦してみましょう。
トマトにはさっぱりとした酸味のクエン酸やリンゴ酸が含まれているため、胃液の分泌を促し、食欲増進や疲労回復効果があるとされています。また、ツナ缶はタンパク質が豊富で、筋肉の成長促進におすすめの栄養素です。
ソースはトマトの甘みで味が決まるので、赤くて完熟のトマトを使いましょう。
簡単にレシピを紹介
- トマトはヘタを取って皮を湯むきし、1/2個分は粗めのざく切りに。残りはさらに細かいみじん切りにします。ツナ缶は油を切り、ニンニクは皮をむいてすりおろします。耐熱皿にしらす干しとサラダ油を入れ、電子レンジで様子を見ながら約2分加熱。大葉は軸を落として細切りにします。
- ボウルに①のニンニク、塩、こしょう、しょうゆ、エキストラバージンオリーブオイル、ツナ缶、細かくみじん切りにしたトマトを入れ、よく混ぜます。
- そうめんをゆでて、冷水で手早く洗い、水気をよく切ります。
- ゆでたそうめんを②のソースであえ、残りのざく切りトマト1/2個分を加えて混ぜます。皿に盛って①のしらす干しと大葉を散らします。
【学ぶ】そうめんについて学べるスポット
奈良県内には、そうめんのことがもっとよく分かる施設があります。麵延ばし体験ができるところ、天日干しが見られる製麺所、工場併設の食事処&売店を紹介します。ぜひ、親子で訪れてみてくださいね。
三輪山勝製麺(奈良県/桜井市)
伝統的な手延べ製法で作られるそうめんをはじめ、うどんなどの麺類を製造する「三輪山勝製麺」。
直売店で楽しめるのが、そうめんの「手延べ引っぱりたて麺延ばし体験」(要事前予約)です。工場でできあがったばかりの麺を2人で両側から引っ張って延ばします。また、引っぱりたての麺を味わうこともできます。めったに食べられない生の手延べ麺をぜひ体験してみましょう。体験で延ばすのは、油を一切使わない吉野葛入りの「一筋縄そうめん」で、直売店でも購入できます。
<施設データ>
住所 | 奈良県桜井市黒崎702 |
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問合先 | 0744-44-2533 |
営業時間 | 9~17時(直売店) ※麺延ばし体験は11時~12時30分(麺延ばし体験+食事) |
定休日 | 年末年始 ※麺延ばし体験は、日曜・祝日、6~8月は休止 |
料金 | 2500円(体験・食事・おみやげ代込) ※2名~要予約 |
アクセス | 公共機関:近鉄電車大和朝倉駅から徒歩20分 車:南阪奈道路新庄出入口から国道165号線経由17km23分 |
駐車場 | あり/20台/無料 |
URL |
手延べ三輪素麺 玉井製麺所(奈良県/桜井市)
三輪そうめんの本場で大正2年(1913)に創業した「手延べ三輪素麺 玉井製麺所」は、昔ながらの手のべ製法を守り続ける製麺所です。
近年、そうめんは大半が室内乾燥によって作られますが、こちらの製麺所では奈良県の景観資産であるそうめんの「天日干し」を見学できます。天日干しは例年1、2月と冬の寒い時期に実施されます。開催は天候に左右されるため、見学を希望する場合は必ず前日か、前々日に問い合わせましょう。
また、伝統的な製法で作られたそうめんの直売もしています。
<施設データ>
住所 | 奈良県桜井市三輪214 |
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問合先 | 0744-43-2257 |
営業時間 | 9~16時(直売所) ※天日干しは1〜2月。火〜金曜10時〜10時30分、土曜9時30分〜10時に開催 |
定休日 | 土・日曜、祝日、年末年始 |
アクセス | 公共機関:JR三輪駅から徒歩8分 車:南阪奈道路弁之庄ランプから国道165号線経由15km27分 |
駐車場 | なし |
URL |
三輪山本(奈良県/桜井市)
「三輪山本」は享保2年(1717)創業、300年以上の歴史を誇る手延べそうめんの老舗です。
直営店に併設された食事処では、限定メニューを含めバラエティ豊かなそうめんを味わうことができます。なかでも通常のそうめんよりも細い、太さ約0.6mmの「白龍」は上品なのど越し。この「白龍」を使った「冷やしそうめん」(880円)のほか、温かい「にゅうめん」(880円)も人気です。
<施設データ>
住所 | 奈良県桜井市箸中880 |
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問合先 | 0744-43-6662 |
営業時間 | 11~15時LO ※売店は10~17時(9~3月は〜16時30分) |
定休日 | 不定休(詳細はHPを確認) |
アクセス | 公共機関:JR巻向駅から徒歩10分 車:西名阪自動車道天理ICから国道169号線経由9.3km20分、または南阪奈道路葛城ICから大和高田バイパス経由16.3km30分 |
駐車場 | あり/60台/無料 |
URL |
【SDGs】奈良県のそうめんを自由に食べたり守ったりするために
奈良県で出荷されるそうめんは、環境にも配慮しながら生産が行われています。この先も、そうめんを変わらず自由に食べたり守ったりするためにはどのようなSDGsを意識すればいいのか、親子で話し合ったり、考えてみるといいですね。