子どもの運動能力を伸ばすのに大切なのは、幼少年期にたくさん遊ぶこと! 遊ぶことで、身体を思う通りに動かすのに必要な「基本動作」が身につきます。
るるぶKidsでは、スポーツトレーナーとして運動能力向上の観点で500以上もの公園を独自調査し、パークマイスター(※)としても活動する遠山健太先生監修のもと、公園で経験できる遊びや遊具を、12の「運動能力を伸ばす基本動作」として区分けしました。
公園での遊び方の参考にしてみてくださいね。
遠山 健太(とおやま けんた) 先生
株式会社ウィンゲート代表取締役。子どもの運動教室「WingateKids」の運営のほか、子どもの適合するスポーツを見つけ出す「マイスポ」も監修。ワシントン州立大学教育学部卒、現在は順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科にて「子どもの体力」について研究をしている。2児の父であり、自身の子どもとの公園めぐりの経験を生かし、パークマイスターとしても活動。「運動できる子、できない子は6歳までに決まる!」(PHP研究所)、「体育のずかん」(ほるぷ出版)など著者多数。
※パークマイスター…公園遊びに詳しく、子どもの発育を考えて指導ができるスポーツトレーナーのこと
そもそも「運動が得意」ってどういうこと?
「運動が得意な子」「運動神経がいい子」というと、みなさんはどんな子を思い浮かべますか? たとえば、鉄棒の逆上がりをいち早くこなす子を見ると、「腕の筋肉が生まれつき発達しているのだろう」「きっと親も運動が得意なのだろう」などと思う方もいるかもしれません。
しかし、運動能力は、決して遺伝だけではありません。
身体を動かすときは、脳から指令をだし、それが神経細胞を通じて筋肉へと伝わる伝達回路が必要になります。「運動が得意な子、運動神経がいい子」は、この伝達回路が発達している子。鉄棒の逆上がりをするのには、「地面を蹴る」「身体をひきつける」「まわる」「着地する」などさまざまな動作が必要です。こうした動作の伝達回路を豊富に持っているほど、自分が思ったように身体を動かすことができ、運動が得意になるのです。
どうやったら運動能力が鍛えられるの?
運動の伝達回路は、動作を経験することで発達します。もっとも発達するのは、幼児期~小学校中学年の時期。とても早いのです。ですから、この時期にたくさんの動作を経験することが、「運動が得意な子」に育てることへとつながります。
たくさんの動作を経験するには、特定の習いごとや特訓をするよりも、実は「遊び」が一番!なかでも、最適な場所は「公園」です。公園遊びは、あらゆる基本動作の宝庫! こどもたちが大好きな公園で楽しく遊ぶことが、運動能力をぐんぐん伸ばすのです。
»自由な「公園遊び」が子どもの運動神経を鍛えるのに最適!おすすめ公園もチェック
幼少年期に身につけておきたい基本動作は、細かく分類すると84種類と言われていますが、るるぶKidsでは「公園で経験できる、運動能力を伸ばす動作」に特化して「12の基本動作」に分類しました。どのような動きなのか、また将来のスポーツ能力にどうつながるのか、ご紹介しましょう。
身体を移動する動き ―身体の重心の移動をともなう動作
◆はしる
「走る」は、どんな公園でもできる動作です。また、多くのスポーツ競技で必要とされる運動能力です。速く走れることだけが重要なのではありません。身体をどのように動かすか(速さ・強さなど)、どこへ動かすか(方向・空間など)によって、さまざまな「走る」があります。幼少年期はテクニックではなく、まずは「思いっきり走る経験」をしましょう。大きな公園で走り回れば、持久力やダッシュ力が身につきます。小さな公園では鬼ごっこがおすすめです。追いかける、逃げる、かわすなど、狭い場所ならでは「走る」が体験でき、敏捷性が自然と育まれます。
◆のぼる・おりる
日常生活においても、階段昇降などで不可欠な動作です。公園では、すべり台、はん登棒(のぼり棒)、ジャングルジム、複合遊具のほか、傾斜のある小山や回遊式庭園もおすすめ。お尻の筋肉(大殿筋)や太もも裏の筋肉(ハムストリングス)が鍛えられ、速く走るのに必要な地面を蹴る力も育まれます。公園遊具でのあそびでは、手足を使ったのぼりおりが豊富に行えるのもよいところです。
◆はう・くぐる
四つんばいで「はう」動きは、手足だけでなく、背筋や腹筋も使います。「くぐる」は、姿勢の変化に伴うバランスが必要とされる動作です。全身の部位を使うことで、あらゆるスポーツ競技はもちろん、日常生活においても、スムーズな身のこなしにつながります。
◆とぶ
「垂直にとぶ」「水平にとぶ」と、それらに伴う「着地する」「飛び降りる」を含む動作です。公園では、複合遊具やジャングルジム、はん登棒(のぼり棒)などで頻繁に出現します。太ももの筋肉だけではなく、踏み込む力、足首の柔軟性、バランス力なども必要とされます。陸上競技、体操競技、バレーボールやバスケットボール、ダンス、ウィンタースポーツなど、非常に多くのスポーツ競技のベースになります。また、日常生活においても、とっさのときに怪我をしない危機対応能力につながります。
◆およぐ・もぐる・うく
水遊びを通して水に慣れ親しむことは、運動面はもちろんのこと、水の事故を回避する力としても大切です。家庭でできる防災教育のひとつでもあるので、ぜひ積極的に水遊びをしてほしいと思います。プール併設の公園や、夏季にじゃぶじゃぶ池が開放される公園に、思う存分濡れてもよい準備をして出かけましょう。水泳やビーチバレーをはじめとする水中・海洋系のスポーツ競技にもつながります。
バランスをとる動き ―姿勢の変化や安定性を必要とする動作です
◆ぶらさがる
「ぶらさがる」は、自分の体重を手と腕で支える動作です。そして、ぶらさがるのには、握る力も必要です。握る力は、「投げる」「打つ」などの「そうさする」動きの基本にもなります。公園では、鉄棒にぶらさがるだけでも握る持久力がつきますし、握る力がついてくると、ジャングルジムや複合遊具など、遊べる幅が広がっていきます。
◆まわる
平衡感覚を司る三半規管が発達しはじめるのは3歳頃から。この時期に「まわる」動作を経験しておくと、小学校の体育種目の鉄棒やマット運動の習得がスムーズになります。公園では、鉄棒遊びや大人の身体を使ったくるりんぱがおすすめ。頭を逆さにする感覚は、スポーツ競技で回転や転倒をしたときの怪我回避にもつながります。
◆のる
「のる」動作は、身体の姿勢を保ち、バランス感覚が身につきます。ブランコやスプリング遊具、複合遊具などで経験できます。交通ルールを学びながら自転車の練習ができる交通公園もおすすめです。オリンピック種目でもあるボート競技やスケートボード、馬術のほか、ウィンタースポーツにも「のる」競技が多くあります。
◆わたる
歩いて渡る、走って渡る、とんで渡るなど、さまざまな「わたる」があります。身体のバランス感覚だけでなく、空間把握能力、歩幅やスピードを調整する力など、あらゆるスポーツ競技で必要とされる能力につながる動作です。公園では、飛び石遊具、ジャングルジム、複合遊具などで、多様な「わたる」を経験できます。
ものを使う・あつかう動き ―手や足、道具を操作する動作です
◆おす・ひく
「おす・ひく」は、手の力だけでなく、踏んばる力や、足首や股関節の柔軟性も必要な全身動作です。相手が押してきたところを、身体を引いてかわす力の調整力も含まれます。この動作の代表的なスポーツといえば、相撲や綱引きですね。
◆ほる
公園でできる「ほる」動作は、砂あそびです。親はつい汚れるから…と制してしまいがちですが、砂遊びは、スコップなどの道具を操作する動きに加え、しゃがんだ姿勢で遊ぶので股関節の柔軟性も養われます。西洋式生活の現代では、股関節や足首が固い子が多いのですが、股関節の柔軟性は「はしる」「とぶ」の動作の素地にもなります。砂場がある公園では、ぜひ砂遊びをさせてあげましょう。
◆そうさする
「そうさする」は、手足や道具を使う動作です。「投げる」「捕る」「打つ(手で打つ、棒状のもので打つ、ラケットで打つ)」「蹴る」「パントする※」が含まれ、あらゆる球技スポーツの素地になる動作です。小さな子はボールを投げるとき、手だけでひょいっと投げますが、ボール遊びを通してくりかえし投げる経験しておくと、だんだんと身体の使い方や必要な筋肉が備わり、上手な投げ方が身についていきます。小学校のドッジボールで活躍できる子は、小さい頃からボール遊びをよくしてきた子です。
※ラグビーやサッカーなどで、ボールを手から落とし、地面につく前にけること。
実践編!公園で思いっきり遊んでみよう
この12の基本動作が、公園でどれだけ体験できるのか。遠山先生と一緒に、5歳のしょうたくんと4歳のすみれちゃんで遊びに行ってみました。遊具だけでなく芝生広場も基本動作の宝庫! 楽しくて運動効果の高い遊び方も紹介しています。
»公園は「基本動作」の宝庫!運動能力が伸びる汐入公園での遊び方は?
「るるぶKids こどもの運動能力がぐんぐん伸びる公園」東京版&京阪神版も要チェック!
東京都内&京都・大阪・神戸エリアにある運動能力をぐんぐん伸ばせる公園を、厳選して紹介するガイドブックです。「るるぶKids」と同様に、それぞれの公園で体験できる12の基本動作をアイコンでわかりやすく表示しています。
公園によって設置されている遊具や施設は千差万別! 公園によって自由な遊びのなかで体験できる「基本動作」は異なります。アイコンを参考にいつもとはタイプの違う公園にでかけてみることが、運動能力を伸ばすことにつながります。
ニューノーマルの時代にこそ楽しんでほしい、週末ごとの小さな冒険。近所にある公園やちょっと遠くの公園まで、ガイドブックを参考におでかけしてみては?公園遊びを楽しみながら、子どもたちの運動能力をぐんぐん伸ばしましょう!