夏はトイレトレーニング(おむつはずれ)をするのに適した時季といわれることがあります。先輩ママからすすめられて、「そろそろ始めなきゃ…」と焦っているママもいるのでは? でも、おでかけや旅行をする機会が多い夏、外出中のトイトレはどうすればいいのでしょうか。たくさんのママたちにアドバイスをしてきた助産師・保健師・看護師の中村真奈美先生に、トイレトレーニングのコツを聞きました。
中村真奈美先生
助産師・保健師・看護師。
病院勤務を経て、地域で新生児訪問、乳児健診、母乳沐浴訪問に携わる。現在は、育良クリニック母乳外来で勤務しながら、出張専門助産師として母乳相談、育児相談を行う。2人のお子さんのママ。
トイレトレーニングって?
トイトレはいつから? 始める時期やサイン
トイレトレーニングという言葉だけ見ると、「トイレはトレーニング(訓練)するもの」「必ずやなければならないもの」と思いがちですが、決してそうではありません。まわりのお子さんがおむつがはずれているのを見たり、幼稚園に入るタイミングに合わせて「トイレトレーニング」を意識し始めたりするママもたくさんいますが、その時期と子どもの発達がマッチしていなければ、トイレトレーニングは長引くだけ。逆にいえば、その見極めさえできていれば、おむつは自然にはずれていきます。
トイレトレーニングを始める時期を見極めるポイントは大きく4つあります。
<トイトレスタート時期の4つのポイント>
- ひとりで立って歩き、身の回りのことができる
もっとも大切なのは、子どもがしっかり歩いて、自分でパンツを脱いだり履いたりするなど、身の回りのことが自分でできること。発達がしっかりしてくると、「おしっこをしたい」という尿意を感じられるようになります。 - 膀胱におしっこを溜める機能がある
最低でも2時間は溜める力が備わっていることがポイント。おむつ替えのときに、おしっこを知らせるライン(マーク)が付くのに2時間以上空いているかどうかをチェックしましょう。 - 自分の意志をある程度、言葉やしぐさで伝えられる
「あれ取ってきて」と言ったら取ってこられる、「あっちに行きたい」と自分で言えるなど、簡単な受け答えができたり、自分の気持ちを伝えることができることも大切です。それがやがて、「おしっこしたい」「ちっちしたい」という意志につながります。 - トイレへの興味がある
①〜③のすべてが備わっていても、トイレへの興味がないとトイトレは苦戦します。トイトレの前段階として、トイレやおしっこを題材にした絵本を遊びのなかで取り入れながら、トイレへの興味を持たせてあげましょう。小さなころから、おしっこの意識ができるように、おむつ替えのときに「おしっこいっぱい出たね」「さっぱりしたね」などの声かけをすることも大切です。この心の準備が一番大切なので、時間をかけていいところです。
夏が始めやすいって本当?
トイレトレーニングに夏が適していると言われる理由は、脱ぎ着をさせやすいことと、汚れた衣類などが乾きやすいことの2点です。つまり、ママが楽だから、そしてこどもが脱ぎやすいからという理由だけなのです。
季節と子どもの発達には関係ありません。子どもの発達を見極めずに、「夏になったから」「○歳になったから」「夏休みで時間がとれるから」といった理由でスタートすると、長期化することが多く、結果的に親子ともに疲れきってしまった、というケースもよく見られます。季節にこだわらず、子どもの成長をよく見てからスタートしましょう。
トイトレ中のおでかけ、どうする? 持ち物は?
パンツにする?おむつにすべき?進捗度を確認!
トイトレ中のおでかけで、子どもにパンツを履かせるべきか、おむつを履かせるべきか? それはトイトレの進み具合によります。トイレでのおしっこの成功率がかなり高くなったら、パンツでおでかけしてもいいでしょう。成功率が半々くらいのときは、まだおむつでもいいかもしれません(ちなみに家の中でもトイトレ中、成功率50%の場合はおむつでもOKです)。
おでかけ先でおもらしすることは大前提。なので、おもらしされたときにママが焦ったりイライラしたりしてしまいそうなら、おむつを履かせましょう。子どもに「パンツで行きたい」という強い気持ちがあるなら、お子さんの気持ちを尊重してあげても。お子さんと相談できるようなら、「今日はどうする?」と聞いてみてもいいですね。
事前の準備や必要な持ち物は? ママの服装もチェック
外出先のトイレの場所は事前に確認を。失敗して当たり前なので、トイトレ中の持ち物として、着替えの予備、おもらしした後にサッと拭けるタオル、濡れたものを入れる袋などを用意しておきましょう。なかには、ペット用シートを持ち歩く人もいます。
また、ママ自身の洋服もトイトレのサポートに適した動きやすいものを選んで。しゃがむ機会が多いのでスカートよりパンツにする、前かがみになったときに邪魔にならないようにショルダーバッグではなくリュックにするなど工夫しましょう。
トイトレ中の外出先での声かけの頻度は?
トイトレ中はどうしてもトイレをうながしたくなるものですが、あまりしつこく声かけをすると、それがきっかけでトイレが嫌いになってしまうことも。最初のうちは、2時間くらいを目途に、遊びがひと段落したタイミングで「トイレ行ってみる?」などと声をかけたり、トイレの近くを通りかかったときに「ここに寄ってみようか?」などと声をかけてみましょう。嫌がったら無理に行かせなくても大丈夫です。
外出先でのトイレ、成功のポイント
きれいなトイレを選ぼう
ふだん使っている家のトイレと違うと、それだけで怖いと思ってしまう子もいます。また、暗く、清潔感がないトイレだと行くのを嫌がることも。できれば初めてのおでかけ先でのトイレは、キッズ用のトイレがあるところや、明るくてきれいなトイレにしましょう。
おでかけ先のトイレの特徴を教える
おでかけ先のトイレでよくあるのが、自動で洗浄するタイプや音が鳴るタイプのもの。知らないと子どもはびっくりしてしまい、トイレが怖くなってしまう子もいるので、事前にわかっていれば、子どもにトイレの機能を教えておいてあげると安心です。
きょうだいや親と一緒にトイレに行ってみる
おにいちゃんおねえちゃんがいて、協力してくれそうであれば、一緒のタイミングで「トイレに行こうか」と誘ってみても。「ママもトイレしたくなっちゃった」などと言って一緒にトイレに行き、さりげなく誘ってみるのもいいですね。
もしも失敗してしまったら?
おもらしは、叱らない、責めない
「叱らない」「責めない」がトイトレの極意。失敗は指摘せず、スルーしましょう。「おしっこ、出たね」と言って淡々と拭いて処理するだけでOK。おもらししてしまった子ども自身もびっくりしているものなので、そこで叱られてしまったら、おしっこをするのが嫌になってしまいます。「大丈夫だよ、拭いたら終わりだからね」とさらっと言って、着替えさせてあげましょう。ママはあせらず、すぐ対応できるように「着替えセット」などの持ち物はすぐ出せるようにしておくといいですね。
なにか1つ、できたことをほめる
もらしてしまったら、なにか1つ、できたことをほめてあげると子どもの自信につながります。たとえば「(もらしたことを)教えてくれてありがとう」「上手に脱げたね」など、子どもがやる気になる一言を添えてあげましょう。
旅行や帰省、数日間のおでかけはどうする?
トイトレよりも楽しむことを優先
トイレが気になって、遊びが中断してしまうなど、おでかけ先で楽しめないのは本末転倒。家でトイレが成功しているからといって、外でもトイトレをし続けなければいけないなどということはありません。家ではおしっこができても、外でできなくなるのはよくあること。失敗は気にせず、おでかけ先ではトイトレはお休みしてもいい、というくらいの気持ちで楽しんだほうが、結果的にトイトレは成功しやすいでしょう。
実家(里帰り先)でのトイトレ、どうする?
ご実家や里帰り先にお子さんが何度も遊びに行っていて、安心できる環境ならトイトレを続けてもいいでしょう。年に1、2回しか行かないような場所なら、無理をしてトイトレを続ける必要はありません。
ちなみに、トイトレをやめておいたほうがいいタイミングというものがあります。それが「引っ越しをしたとき」「下の子が生まれたとき」です。つまり、生活環境が大きく変わったときは、トイトレに適していないのです。ですから、里帰り先が慣れない環境のときは、トイトレは1回お休みでOKです。
旅行先や実家での夜のおねしょ対策は?
日中に「おしっこに行きたい」という感覚ができてくるのは2〜4歳ごろですが、夜間の排尿機能が完全に整うのは4、5歳前後から6歳ごろが一般的。日中のトイレが成功しても、夜間に関しては発達機能が追いつくまでもう少し時間がかかることも。気長に成長を待ちましょう。それまでは、おむつを履かせてかまいません。
トイトレがうまくいかないときは?
あせらなくても大丈夫!
子どもの体と心の発達のタイミングと、ママがトイトレを始めたいタイミングは、実はずれていることがとても多いです。このタイミングの見極めが合っていれば、トイトレは短期間で終わるどころか、トレーニングさえ要らないこともあります。
一方で、ママ自身がイライラしてしまったり、不安や心配が出てきてしまったりするようなときには、無理してやる必要はありません。ほかのお子さんがおむつがはずれたからといって、焦らなくても大丈夫。トイトレをしなかったからといって、おむつがはずれませんでした、というお子さんはいないので、安心してくださいね。
なにか始めるとしたら、トイレへの興味から
もし、トイトレに向けてなにかを始めるとしたら、トイレに興味を持たせることから始めてみましょう。トイレの絵本を読んでみる、ママやパパがトイレに行くときに一緒に連れて行くなど、トイレは怖くないところだという意識づけや、トイレに行きたくなる働きかけをしてみましょう。
おでかけや旅行先では探検気分でトイレツアーを!
夏のおでかけや旅行では、外出先のいろいろなトイレを一緒に見てみるのもおすすめです。名づけて「トイレツアー」です。遊び感覚で、出かけた先でいろいろなトイレを見に行き「ここはこんなボタンがあるね」「ここは足で踏んで水を流すんだね」などというように教えてあげましょう。おでかけ先のトイレは、きれいなトイレばかりではありません。いろいろなトイレを見せるのは、どんなトイレでもお子さんがトイレをすることができるようにするためでもあります。決して無理強いする必要はないので、楽しみながら続けてみてくださいね。
おでかけや旅行をまず楽しむことを前提に、親子で無理せず、楽しくトイトレを進めましょう。