セミの羽化を観察!幼虫のいる場所・時期・時間帯は?失敗は手助けできる?

セミの羽化 神秘的で美しい!/昆虫芸人 堀川ランプ監修

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セミの鳴き声が聞こえると、夏を感じますね!セミは一生の大半を土の中で過ごし、成虫として過ごすのはわずかな期間だけ。幼虫が地上にでてきて成虫になる「羽化の瞬間」をぜひ観察してみましょう。セミの羽化の瞬間はとても美しく、生命の力強さを感じられる体験なので、ぜひ子どもたちにも見せてあげたいですね。るるぶkidsの虫係こと、昆虫芸人の堀川ランプさんのイラストと解説でお届けします。

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堀川ランプさん(監修プロフィール)堀川ランプ
昆虫大好き芸人。変形菌にも詳しい。日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程修了。理系の研究発表を模した白衣スタイルでおこなうフリップ芸が人気。Youtubeで「堀川ランプの昆虫列伝」を配信中。日本変形菌研究会会員。成虫の会メンバー。当記事のイラストはすべて堀川ランプさん本人のよるもの!
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1.セミの特徴や種類を知ろう

セミの特徴や種類/昆虫芸人 堀川ランプ監修

脚の数や目の数は?

セミは昆虫の仲間。なので、脚の数は6本、翅は4枚あります。目は、小さな目がいくつも集まってひとつの目になっている「複眼」と呼ばれるメインの目が2つあり、これに加えて明るさを感知するための「単眼」と呼ばれる目がおでこに3つついていて、合計5つの目で世界を見ています。

セミはどうして鳴くの?

セミが鳴くのはオスがメスに対して求愛するため。ですから、鳴くのはオスのセミだけです。鳴く虫の仲間は、セミのほかにはコオロギやスズムシが有名ですよね。コオロギやスズムシは、翅のギザギザをこすり合わせて音を出していますが、セミの鳴き方は方法が違います。セミはお腹の中にある筋肉を震わせて、その音をお腹の中にある空洞で増幅させることによって、大きな音を出しているんですよ。

セミの種類と鳴き声

セミの種類と鳴き声/昆虫芸人 堀川ランプ監修

日本にセミは36種類(35種と1亜種)いるとされていますが、ここでは特に身近な6種類を紹介します。みなさんがもっともよく聞く鳴き声はどのセミですか?

アブラゼミ
(鳴く時期:7月上旬~9月下旬ごろ)

もっとも身近なセミの種類のひとつ。黒い胴体に茶色の羽が特徴。「ジリジリ」と鳴く声が揚げ物をしている時の音に似ているためこの名前がついたのだとか。北海道から九州まで広い範囲に分布している。奄美諸島より南の島々や沖縄にいるアブラゼミは、「リュウキュウアブラゼミ」というよく似た別の種類のセミ。

ミンミンゼミ
(鳴く時期:7月中旬~9月中旬ごろ)

アブラゼミと並んでもっとも身近なセミのひとつ。黒い模様の入った緑色の胴体が特徴で、模様には若干の個体差がある。たまに黒い模様のない全身緑色の個体もいる。名前の通り「ミーン・ミンミン」と鳴く。涼しい場所と乾燥した場所が好きなので、涼しい山の中や、ヒートアイランド現象で乾燥が激しい都内の公園でよく見られる。逆に西日本の平地や湿度の高い東日本の日本海側では少ない。

クマゼミ
(鳴く時期:7月上旬~9月上旬ごろ)

西日本に多い大型のセミ。黒い体と緑色の筋が入った透明の翅が特徴。午前中に騒がしく「シャシャシャ」と鳴く。最近、西日本から運ばれてきた植木などにくっついてきた個体が定着したためか、関東地方でもたまに見られることがある。

ニイニイゼミ
(鳴く時期:6月下旬~8月中旬ごろ)

胴体も前翅も木の皮のようなまだら模様で、後翅だけ黒い小型のセミ。北海道から沖縄本島まで幅広く分布し、「チー…ジー…」「チッチッチッ…」と鳴く。湿った環境が好きなので、乾燥が激しい都内では少ない。抜け殻は泥をかぶっていることが多い。

ヒグラシ
(鳴く時期:6月下旬~8月下旬ごろ)

赤褐色の体に黒や緑のラインが入っているのが特徴。北海道南部から屋久島を除いた奄美諸島まで幅広く分布。九州以南では山地に多いが、それ以外の地域では平地でも見られる。「日暮らし」という名前から夏の夕方に鳴くイメージが強いが、実際は日の出前後と日没前後に「カナカナカナ」と清涼感のある声で鳴く。石垣島と西表島には「イシガキヒグラシ」というよく似た別種がいる。

ツクツクボウシ
(鳴く時期:7月下旬~9月中旬ごろ)

濃いグレーに緑色の模様が入った体が特徴のセミ。北海道から九州まで分布しているが、冬の寒さに弱いので北日本では少ない。夏の後半に多く見られ、「ツクツクボーシ」と鳴いていた声のペースがだんだん早くなって「ウイヨース」となり、最後「ジー…」で終わる特徴的な鳴き方をする。声を聴くことは多いが、警戒心が強いうえに木の高い場所にいることが多いので、実はなかなか姿を見ることはできない

2.セミの一生

セミの一生/昆虫芸人 堀川ランプ監修

セミの一生は短いとよくいわれますが、実は、卵で約一年、土の中で数年と、トータルでの一生はさほど短くないのです!夏に力強い鳴き声を出す成虫になるまでの、私たちには見えない期間のセミの様子をご紹介します。

卵からかえる孵化に約1年?!

セミは枯れ枝の中に卵を産み付けます。ニイニイゼミなど小型のセミはその年の秋に幼虫が孵化しますが、そのほかの多くの種類のセミは、翌年の梅雨に卵が孵化します。実に1年近くも卵のまま過ごすのです

土の中で約2~5年 エサは樹液

卵から産まれた幼虫は、土にもぐり、針のような口を木の根に突き刺してエサとなる樹液を吸って育ちます。樹液は栄養が少ないため、成長するのにとても時間がかかります。セミの種類や環境によって差がありますが、よく見るアブラゼミやミンミンゼミでは2~5年、幼虫期間が短いといわれているツクツクボウシでも1~2年は土の中で過ごすといわれています。

セミの幼虫はさなぎにならずに羽化!

土の中で十分育った幼虫は、夏に地上に出てきます。セミの幼虫は蛹にならずに成虫になる「不完全変態」という成長の仕方をする昆虫なので、幼虫から最後の脱皮で羽化して成虫になります

成虫の地上生活はわずかな間だけ

昔から「セミの成虫寿命は一週間」といわれていますが、最近の研究では、10日から長いもので1ヶ月ほど生きることが分かってきました。何年も土の中にいるセミですが、大人になってからの寿命はひと夏限りなのですね。

3. セミの羽化を観察しよう!

セミの羽化の観察/昆虫芸人 堀川ランプ監修

セミの羽化は、とても神秘的で美しい瞬間です。ぜひこの夏は、親子で観察してみませんか?羽化の流れや観察のポイントをご紹介します。

羽化をする場所は? 公園などを下見しておこう

セミの幼虫が出てきた穴が多くある場所

公園や神社、お寺などの地面を観察すると、いつの間にか穴が開いているのを見つけることができると思います。これは、セミの幼虫が地上に出てくるために空けた穴です。セミの羽化を観察したい時は、このように地面に穴が空いている場所をチェックしておきましょう! 穴の近くの木の幹に抜け殻がたくさんくっついている場所だと、より確実にセミの羽化を見られます

羽化の時期、時間帯は?

地面に出てきて羽化する場所を探すセミの幼虫

セミの羽化は、蒸し暑い日が続いた後の雨が降っていない日に行われます。日が傾き、暑さが少し和らいだ夕方6時頃から8時前までの時間帯に、幼虫が地面に出てきて、高い場所に上って羽化を始めます。日中に下見をして目星をつけた場所に、この時間帯に出かけていくと、セミの羽化を観察できる確率が高いです!

羽化の流れ 飛び立つまでにかかる時間は

●動きをとめたら、羽化がスタート!

セミの羽化の様子

夕刻に地上に出てきた幼虫は、羽化する場所を探してしばらくウロウロと動き回り、やがて木の幹などの地面から離れた高い場所に上っていきます。木の幹や枝でじっと動きを止めたら、いよいよ羽化のスタート!しばらくすると、背中が割れて、セミの体が少しずつ出てきます。体を波打たせながら、ゆっくりと少しずつ出てくるので、手を触れずに静かに観察しましょう

体全体が出てくると、抜け殻から落ちてしまうのではと心配になるかもしれませんが、お腹の先だけを抜け殻に引っかけてぶら下がりながら休憩したり、体勢を変えて殻に脚をかけ、お腹を殻から引き抜いたりと、落ちないように上手く殻を脱いでいきますので心配は無用!セミの生命力を信じて見守ってあげてください。

●2~3時間で翅が真っ直ぐに

セミの羽化の様子

全身が殻から出た直後はまだ翅がくしゃくしゃで、見た目にも柔らかそうな様子が感じとれるでしょう。この後、だんだんと翅がピンと広がっていき、翅が完全に広がりきった後に体に沿わせて翅の向きを変えます。この時点でもまだまだ体が柔らかいので決して触らずに!すでにこの段階で5つの目はよくわかるので見てみてくださいね。羽化スタートからおおよそ2~3時間前後で、セミらしい成虫の様相になります。半透明で少しグリーンかかった色がとてもきれいですね。

●飛び立つのは翌朝

羽化が終わっても、すぐに飛び立つわけではありません。徐々に体が硬化し、色が黒く変化して、翌朝になると元気に飛び立っていきます。

羽化が失敗する原因は?手助けできる?

地上に出たセミの幼虫は、全てが成虫になれるわけではありません。脱皮の途中で、アリや鳥などの天敵に食べられてしまうことも多くあります。また、羽化する途中で地面に落下したり、上手く殻を脱げなくて死んでしまう場合もあります。原因はさまざまですが、自然界の中で羽化に失敗して死んでしまう確率は6割程度にもなるといわれています。セミが一生懸命脱皮をしている様子は、見ていて手伝いたくなるお子さんも多いかもしれません。しかし、基本的には手を触れないで観察してください。仮に助けるとしても、誤って地面に落ちてひっくり返ってしまったセミを起こしてあげる程度にしましょう

羽化の観察のポイント

●絶対に触らない!カメラのフラッシュはOK

羽化途中のセミの体は白くてとっても柔らかいため、ちょっとした刺激でも致命傷になってしまいます。なので、絶対に触らないでください。逆に、光の刺激には強いのでフラッシュをたいて撮影するのは問題ありません。セミの美しい羽化の瞬間を、ぜひたくさん記録に残しましょう!

●虫除けは自宅で!

夜の公園は蚊が多いので虫除けスプレーなどによる対策は必要ですが、薬品の成分がセミにも悪影響を与えてしまう危険があるため、家であらかじめ虫除けスプレーをするようにしてください。セミの近くでの虫除けスプレーの使用は控えましょう。また、夜の公園は暗くて危険なので、必ず大人の人と一緒に行くようにして、子どもだけで行かないようにしてください。

4.自由研究に!家の中で観察する方法

家で観察する方法

セミの羽化は、家の中でも観察することができます。地面を歩いているセミの幼虫を採集し、網戸やカーテンにつかまらせてみましょう。最初は落ち着きなく動き回りますが、やがて動きを止め、羽化を開始します。羽化は始まってから終わるまでには2~3時間かかるので、気長に観察しましょう。
羽化が始まってからは、脱皮の妨げになってしまうのでカーテンや網戸を揺らさないように気をつけてください。羽化が終わっても、体が完全に硬くなるのには時間がかかるので、外に逃がしてあげるのは翌朝になってからにしましょう。

家の中で羽化に失敗したら?

家での羽化観察は、野外と違ってセミの天敵がいないので、8割以上の確率で羽化に成功するといわれています。それでもたまに落下などが原因で羽化に失敗してしまうことがあります。羽化に失敗しても、翅が曲がっているだけなど程度が軽ければ、生きていることが多いので、翌朝、体が完全に硬くなってから、近所の木につかまらせてあげましょう

自由研究のまとめ方の例

セミの羽化観察は、夏休みの自由研究にもおすすめ!小学2年生のけんごくんが自由研究としてまとめたものをみせてもらいました。

セミの羽化観察のまとめ

セミは、他の昆虫とは異なる生命サイクルをもち、私たちが目にする成虫は、一生のうちのほんのわずかな最後の時期。そう思うと、夏しか会えない貴重なセミの姿を堪能したいですね。ぜひこの夏は、神秘的で美しい羽化の瞬間も親子で観察してみてくださいね!

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