47都道府県それぞれの代表的な「特産品」をクローズアップ。【知る】【つくる】【学ぶ】の3つの視点から、特産品と各都道府県の関係をひも解きます。各地の歴史や風土だけでなく、意外な理由で生まれた特産品は、知れば知るほどおもしろい!
岐阜県で紹介するのは「アユ」。河川が多い岐阜では、昔から天然のアユがたくさんとれました。鵜飼、ヤナ漁など、伝統的な漁法はとても風流。味わうだけでなく体験もしてみましょう!
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【知る】信長も愛した&皇室お墨付き!伝統的なアユの漁法・鵜飼
「清流の国」と呼ばれる岐阜県には、木曽川(きそがわ)、長良川(ながらがわ)、揖斐川(いびがわ)の木曽三川をはじめとする美しい清流があり、県の魚アユが多く生息しています。
盛んなアユ漁の中で特に有名なのが、1300年の歴史を誇る長良川の「鵜飼(うかい)」です。
また、川の流れをせき止めて、木杭や竹で組んだ仕掛けに川魚を流し込む伝統漁法「ヤナ」も行われています。夏になると、数多くの「観光ヤナ」が設置され、アユのつかみ取り体験や新鮮なアユを使ったアユ料理を味わえます。
岐阜県のアユが有名なワケは?
画像:PIXTA
街の中を流れる長良川は、流域に多くの人が住んでいます。長良川の清らかな水の流れは人々の暮らしの中で保たれ、その清流でアユがたくさん育ちます。長良川の上流でとれる天然アユは「郡上鮎(ぐじょうあゆ)」と呼ばれ、姿かたちがよく身が締まっていて、香りも味も一級品として全国の食通の間で愛されています。
長良川のアユ漁の歴史は古く、美濃国(みののくに、現在の岐阜県)では大宝2年(702)ごろから鵜飼という漁法が行われていたと伝わります。客へのもてなしとして鵜飼の観覧をしたのは、永禄11年(1568)に武田信玄の使者を鵜飼観覧に招待した織田信長が最初といわれます。
かつては魚を獲る方法として盛んに行われていた鵜飼ですが、船頭不足などのさまざまな理由が重なって、徐々に廃れていったのだそう。古代漁法として観光向けに伝承されていた鵜飼は、尾張徳川家の保護を受けて続けられましたが、明治維新とともに保護がなくなり、消滅の危機にさらされました。
鵜飼を存続させるために、岐阜県は宮内省(現在の宮内庁)に働きかけ、明治23年(1890)、岐阜の鵜匠(うしょう)は宮内省の職員となり、安定した地位を獲得しました。現在、長良川には御料場(皇室の所有地)が3カ所設置されています。
岐阜県のアユ漁は自然条件に恵まれていただけでなく、時の権力者たちに守られて受け継がれてきました。現在も日本で唯一の皇室御用の鵜飼であり、日本の伝統文化として世界に発信されています。
鵜飼って一体なに!? どうやって魚をとるの?
画像:PIXTA
鵜飼とは、「鵜匠」と呼ばれる人が水鳥のウミウを手縄で操り、アユなどの川魚をとらえる伝統的な漁法の一つです。
真っ暗な闇夜に、鵜匠と鵜が一体となって行われる鵜飼が、赤々と燃えるかがり火の中に浮かび上がるさまは、古の世界にタイムスリップしたかのように趣があります。
鵜飼はウミウの魚を丸飲みにする習性を利用したものです。かがり火の光に驚いて跳ねた魚をウミウがつかまえますが、紐で首を縛られているため丸飲みできません。その魚を鵜匠が回収するという仕組みです。
長良川の鵜飼は、毎年5月11日~10月15日までの期間中、鵜飼休み(中秋の名月ごろの1日)と増水時を除いて毎夜行われます。長良川の鵜飼用具一式122点は国の重要有形民俗文化財に、長良川の鵜飼漁の技術は国の重要無形民俗文化財に指定されています。
古くから伝わるアユの漁法・ヤナ漁もおもしろい!
岐阜で一般的に行われるヤナ漁は、アユやマスなどの川魚をつかまえるために、川の流れをせき止め、木の杭や竹で組んだ仕掛け(ヤナ)を使って魚をとる方法です。大きな河川が多い岐阜県では、昔からヤナ漁が盛んで、平安時代より前から行われていたと伝わります。
豪快に水しぶきがあがるなか、アユがヤナの上でピチピチとはねる様子はとてもダイナミック! 増水時には一晩中アユがあがり、一夜で数千匹とれるほど大漁な日もあるのだとか。ですが、川の上流から産卵のために下りてくる魚をつかまえるため、水が少なければアユはとれません。逆に、水が多すぎるとヤナが水面下になってしまい、ヤナそのものが崩壊することも。
自然に左右されることが多く、それがアユの乱獲を防ぎ、魚を守ることにもつながっています。
アユ、イワナ、ヤマメの違いは?アユの香りは独特!?
アユ、イワナ、ヤマメはどれも川魚ですが、違いは知っていますか?イワナとヤマメはサケの仲間、アユはキュウリウオやシシャモの仲間です。天然のアユはキュウリやスイカのような香りがするため、「香魚(こうぎょ)」とも呼ばれます。
アユ、イワナ、ヤマメはすべて川生まれですが、イワナとヤマメは成長するにつれて川の上流にすみ続けるものと海へ行くものに分かれます。海に出たイワナは「アメマス」、海に出たヤマメは「サクラマス」と呼ばれ、体長60〜70cmにまで巨大化する特徴があります。
川で生まれ育ったヤマメやイワナが海に出るためには、自分の体より塩分が濃い海水の中で生きていくために、体内から塩分を排出するしくみを持った体(スモルト)に変身します。
一方、アユはみんなが一生に一度海で暮らす、つまり川と海を回遊する魚です。秋になると産卵のために河口(川が海に流れ込む場所)へ向かい、海で成長します。春から夏にかけて再び川に戻るのです。
【つくる】アユ料理に挑戦してみよう!
フライパンを使って、家でアユの塩焼きにチャレンジしてみましょう。また、アユの形をした初夏の和菓子「若アユ」を親子で作ってみては?アユの顔も描くので楽しいですよ。
フライパンで簡単!おいしい!アユの塩焼き
フライパンを使えば、自宅で簡単にアユの塩焼きを作れます。ふっくらジューシーなアユのおいしさをシンプルに味わうには、蒸し焼きがコツ。内臓も食べられますが、苦味が気になる場合は取り除いてください。
簡単レシピを紹介
- アユの腹から肛門に向かって軽く押し、中にたまった排泄物を取り除きます。出なくなるまで2〜3回繰り返します
- 包丁の背で尾から頭に向かって軽くしごき、ぬめりをこそげ取ります。水でぬめりを洗い流し、キッチンペーパーで水気をふき取ります。
- アユの身全体に塩をふります。さらに、ひれ、尾に多めに塩をつける(化粧塩)ことで、きれいに焼き上がります。
- フライパンにサラダ油を入れて中火で熱し、頭を右、腹を手前にしてアユを並べ入れます。焼き色がつくまで2分ほど焼き、裏返して2〜3分焼きます
- ふたをして、アユに火が通るまで弱火で5分ほど蒸し焼きにします。ふたを取り、水分を飛ばすようにさらに中火で2分ほど焼きます。
- 皿に盛り、半分にカットしたすだちを添えて、できあがり。
和菓子「若アユ」をホットケーキミックスで再現!
画像:PIXTA
アユをモチーフにした伝統的な和菓子の一つ「若アユ」は、夏の始まりを告げるものとして古くから親しまれています。カステラ生地に求肥(ぎゅうひ)をまいた和菓子で、地域や店舗によってもアユの形や表情、生地、中身などが異なります。また、「アユ菓子」「登りアユ」「稚(ち)アユ」「かつらアユ」など、地域によって名前も違います。
ここでは、ホットケーキミックスを使用したレシピで、「若アユ」作りに挑戦してみましょう。
簡単にレシピを紹介
- 黒あんを約10gずつに分け、丸めます。柔らかい場合は皿に広げて電子レンジで加熱し、硬さを調整します。
- ボウルにホットケーキミックス150g、卵1個、みりん大さじ1、水135ccを入れてよく混ぜ、生地を作ります。フライパンを中火で熱し、1度火から下ろして濡れた布巾の上に3秒ほど置いて冷まします。再び中火にかけ、約15cmの楕円形になるよう生地を広げて焼きます。生地を薄く伸ばすのがポイントです。
- 生地の表面に気泡が出てきたらひっくり返し、裏面を30秒くらい焼きます。焼き上がった生地は温かいうちに半分に折り、ラップで包んで冷まします。
- 求肥を作ります。耐熱容器に白玉粉、砂糖、水を入れ軽く混ぜ、ふんわりとラップをかけて電子レンジで加熱します。一度取り出してスプーンでよく混ぜ、再度加熱します。全体が半透明になればOKです。バットに片栗粉を広げ、求肥を薄く広げ、好みの大きさに切り分けます。
- 焼いた生地に、細長く形を整えた黒あんと求肥をのせ、間に挟んで半分に折ります。生地のふちを優しく押さえ、折った生地をくっつけます。あんの量が多い、または生地が分厚いと、生地の表面が割れるので注意しましょう。
- アユの目とヒレを描いて、できあがり。店で売られているものは焼いた金串で焼き目をつけて描きますが、インスタントコーヒーを水で溶かしたコーヒー液を竹串につけて描くと簡単です。
【学ぶ】アユについて学べるスポット
岐阜県内には、アユについて学んだり、アユのつかみ取り体験ができたりする施設があります。ほかにも、アユ料理が味わえるだけでなくヤナ体験もできる飲食店、アユの加工品が手に入るおみやげ処などを紹介します。
清流長良川あゆパーク(岐阜県/郡上市)
山々と清流という豊かな自然に囲まれた「清流長良川あゆパーク」は漁業、クラフトなどを体験しながら長良川の環境や文化、生活について学べる施設です。
水に入って行うアユのつかみ取り体験や、マスが釣れる釣り堀体験にチャレンジした後は、アユの塩焼きやアユせんべいなどをほおばってみませんか。併設のレストランでアユ料理なども味わえます。
住所 | 岐阜県郡上市白鳥町長滝420-10 |
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問合先 | 0575-85-2115 |
営業時間 | 魚のつかみ取り体験・釣り堀体験受付10時~14時30分(4月下旬~11月上旬に開催) |
定休日 | 火曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始 |
料金 | 体験料1名500円(魚のつかみ取り体験・釣り堀体験) ※魚代(焼き代含む)別途1匹600円 |
アクセス | 公共機関:長良川鉄道白山長滝駅から徒歩5分 車:東海北陸自動車道白鳥ICから国道156号線経由8km10分 |
駐車場 | あり/103台/無料 |
URL |
天然鮎みやちか(岐阜県/郡上市)
ヤナ場でとれた天然アユを味わえるお食事処「天然鮎みやちか」。長良川のほとりで大自然を満喫しながら天然の郡上鮎を堪能できます。アユをシンプルに味わえる「鮎の塩焼き」や、豪華なコース料理が人気です。ヤナ漁の期間中(8~10月)は、食事をした人は無料でヤナ体験ができますよ。
住所 | 岐阜県郡上市美並町上田2525 |
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問合先 | 0575-79-2160 |
営業時間 | 11~15時(月により異なる) ※変更の場合あり。11月~翌5月は予約営業 |
定休日 | 7~10月は無休、11月~翌6月は不定休(要予約) |
アクセス | 公共機関:長良川鉄道木尾駅から徒歩10分 車:東海北陸自動車道美濃ICから国道156号経由13.4km20分 |
駐車場 | あり/80台/無料 |
URL |
鵜舞屋本店(岐阜県/岐阜市)
明治10年(1877)に創業した「鵜舞屋」は、清流長良川で有名な岐阜市で「清流長良川の鮎」を加工し、地域のみやげ品を製造販売しています。本社の2階にある本店では、「鮎昆布巻」(1350円)、「子持ち鮎」(1296円)、「鮎一夜干し」(1296円)など、バラエティー豊かなアユの加工品が手に入ります。
住所 | 岐阜県岐阜市東鶉1-1 |
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問合先 | 058-274-0141 |
営業時間 | 8時30分~17時 |
定休日 | 土・日曜、祝日 |
アクセス | JR岐阜駅から岐阜バスで20分、バス停:岐阜保健大学から徒歩10分 車:東海北陸自動車道岐阜各務原ICから国道21号経由7km10分 |
駐車場 | あり/5台/無料 |
URL |
【SDGs】岐阜県のアユを自由に食べたり守ったりするために
岐阜県で出荷されるアユは、環境にも配慮しながら漁が行われています。この先も、アユを変わらず自由に食べたり守ったりするためにはどのようなSDGsを意識すればいいのか、親子で話し合ったり、考えてみるといいですね。