
47都道府県それぞれの代表的な「特産品」をクローズアップ。【知る】【つくる】【学ぶ】の3つの視点から、特産品と各都道府県の関係をひも解きます。各地の歴史や風土だけでなく、意外な理由で生まれた特産品は、知れば知るほどおもしろい!
滋賀県で紹介するのは「フナ」。滋賀のソウルフード・ふなずしの主な材料は、日本で琵琶湖にしかいない固有種のニゴロブナです。琵琶湖のフナについて掘り下げてみましょう!
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【知る】琵琶湖固有種のニゴロブナで作るごちそう・ふなずし
フナは日本人にとって身近な淡水魚の一つです。北海道から沖縄まで、広い範囲で分布していて、川や池などさまざまな水域に生息しています。
どうして滋賀県ではフナが有名なの?

フナは日本全国にいるのに、どうして滋賀県で特に有名なのでしょうか。
そのヒミツは、琵琶湖に暮らすフナ、ニゴロブナにあります。
琵琶湖には、60種類もの固有種(特定の地域や国にのみ生息する生物種)が存在していて、二ゴロブナもその一種。ニゴロブナは昔から琵琶湖でたくさんとれ、滋賀県民に食べられてきました。そして、滋賀県の郷土料理「ふなずし」を作る主な材料としても選ばれています。
最も歴史が古い“すし” ふなずし

ふなずしとは、魚を長期保存するための技法「なれずし」の代表的な料理の一つ。最も古いすしの形態といわれます。塩漬けした魚や肉を、炊いた米と乳酸発酵させて作る郷土料理「なれずし」はいくつかの地域に伝わりますが、フナで作るのは滋賀県だけ。
まず、春先に漁獲したニゴロブナを洗って内臓を取り、2〜3カ月間塩漬けにした後、水でよく洗って塩を取り除きます。次に、魚の身に炊いた米を詰め、飯米を敷き詰め漬けて重しをし、数カ月〜2年ほど発酵・熟成させて完成です。独特な味わいとチーズのような濃厚なうま味があり、乳酸菌を多く含みます。
ニゴロブナがふなずし作りに向いている理由
滋賀県には数種類のフナがいるのに、なぜふなずしをつくるときはニゴロブナが使われたのでしょう?
ニゴロブナはうろこが剥ぎやすく、内臓も取りやすい種類。そして骨も早く柔らかくなるので、おいしいふなずしができ上がるのです。
ふなずしは、主に子持ちのニゴロブナを使って作られます。たくさんの卵を持ったニゴロブナのメスは特に高級品。子持ちの二ゴロブナを用いて手間ひまかけて作られるふなずしは、お正月のようなハレの日にごちそうとして振る舞われます。
また、栄養たっぷりなので、滋養強壮が必要なときや、おなかの調子が悪いときにも食べられてきました。
現在は全盛期よりもニゴロブナが減少し、「ふなずし」を作る家庭は減りつつありますが、滋賀県の特産品として飲食店などで提供され、今なお高い人気を誇ります。
フナの生態を守る活動
滋賀県民にとってなじみ深い琵琶湖のフナですが、昭和後期には個体数が減少しました。しかし、フナが産卵するためにヨシを水辺に植え、ヨシ群落を人工的に作り出したり、外来魚を駆除したり、フナの稚魚を放流したりし続けた結果、近年徐々に漁獲数が回復しています。なかでもニゴロブナは、資源管理計画に基づく漁獲制限をして、資源回復に努めています。
フナにはどんな種類があるの?

フナはユーラシア大陸に広く分布しているコイ科の淡水魚です。日本には数種類のフナが生息しますが、ここでは琵琶湖にすむ3種類のフナについて、簡単に説明します。
【ニゴロブナ】
琵琶湖固有の品種で、全長は約30cm。ふなずしの材料として知られています。
【ギンブナ】
日本各地の河川や沼などに広く生息する、全長30cmほどのフナ。ほとんどの個体がメスで、多くはオスを必要とせず、メスだけで繁殖します。このように精子と卵が受精せずに子孫を残すことを「単為生殖」と呼びます。
【ゲンゴロウブナ】
琵琶湖原産のフナですが、現在は放流によって全国各地の湖沼に生息しています。ニゴロブナよりもとりやすいことから、ふなずしの材料にも使われていました。しかし、ふなずしにするとニゴロブナよりも背骨が硬くなるため、ふなずしの食材としてはニゴロブナよりも劣ります。ゲンゴロウブナを品種改良したものが、釣りで知られる「ヘラブナ」です。
フナとコイの関係性は?金魚はフナの仲間!?

パッと見たところ、フナとコイはよく似ていますが、実は違う種類です。コイと違ってフナにはひげがありません。また、コイと比べて体高が高く、頭が大きいのもフナの特徴です。
一方、縁日などでおなじみの金魚はフナの仲間です。東アジア温帯域原産の「ギベリオブナ」というフナが、金魚の祖先といわれています。「ギベリオブナ」は日本には生息していません。ギンブナの近縁種で体は銀色ですが、突然変異で赤い個体(ヒブナ)が生まれることがあります。それを観賞用に品種改良したのが金魚です。
金魚とヒブナの違いは、人の手が加えられているかどうかです。金魚は人間に改良されてつくられた魚で、自然界には存在しません。金魚がフナの仲間である証拠に、金魚にはひげがありません。
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【つくる】ふなずし作りに挑戦しよう!
自家製のふなずしづくりにチャレンジしてみましょう。また、ふなずしは薄くスライスしてそのまま食べるだけでなく、いろんな料理にアレンジできます。ぜひ一度お試しあれ!
滋賀県名物・ふなずしのレシピを伝授

ふなずしはもともと滋賀県内の各家庭で作られていたため、家ごとにさまざまな作り方があります。ここではレシピの一例をご紹介します。
手間はかかりますが、おうちの人と一緒にチャレンジしてみましょう。漬け込むとき、しっかりと重しをして酸素を追い出すことが肝心です。最近は、すでに塩漬けされたフナを購入して、家でのふなずし作りに利用する人も多いそうです。
●簡単にレシピを紹介
- ウロコとりで(ウロコとりがない場合はペットボトルキャップのへこんでいる部分をフナに当て、尾から頭へ向かって滑らせて取る)、フナのウロコを落とします。
包丁の刃先を使ってエラをとり、卵膜を傷つけないように内臓を抜き取ります。三枚おろしにして中骨をはずします。 - 苦玉(胆のう)をつぶさないようにとり、背骨のすぐ下にある浮き袋も取り除きます。フナを水で洗い、水気を切ります。
- フナの口腔部(口の中)、腹腔部(内臓が入っていた部分)に塩を詰めてから全体に塩をまぶし、桶に並べて塩漬けにします。
重石をして、水が出てきたらそのままの状態で2カ月以上漬けます。 - 米を炊き、ご飯に塩(米10合に対し塩40~80g)を混ぜ、室温まで冷まします。
- 塩漬けした③のフナを流水で洗い、竹べらで残ったうろこや内臓を取り除きます。
ペーパータオルでフナを包み、水をよく切ります。逆さにつるして腹腔内の水も切りましょう。 - 桶に漬物袋を入れて中に④のご飯を敷き、その上に⑤のフナを重ならないように並べます。ご飯、フナ、ご飯、フナと3~4段積み重ね、隙間ができないようにしっかり押して空気を出します。
フナをすべて並べ終わったら、残りのご飯をかぶせ、しっかりと押さえて漬物袋を閉じます。桶は蓋をして、重石(重さは中身の倍量が目安)をします。 - 気温が30〜35℃くらいになり、できれば午前中に日が当たる場所で⑥の桶を保管します。
半年以上おくと発酵・熟成し、骨が柔らかくなります。まず1尾を取り出して味見し、骨が硬い場合は、再び重石をしてさらに数か月間発酵を続けましょう。
ふなずしがイタリアンに!ふなずしとトマトの冷製パスタ

ふなずしの発酵による酸味と味わい深さ、トマトのすっぱさが組み合わさって、不思議なハーモニーを生み出します。暑い季節におすすめの一品ですよ。
●簡単にレシピを紹介
- 事前にトマトを冷蔵庫で冷やしておきます。パスタは規定時間を目安にゆでて、冷ましておきましょう。
- トマトを1辺1cmくらいのサイコロ形に切ります。
- ふなずしを3mmくらいの厚さにスライスし、トマトと同じくらいの大きさに刻みます。
- ②で刻んだトマトと③のふなずしの切り身をオリーブオイルで和えて、ソースを作ります。
- ①でゆでたパスタの上に、トマトとふなずしのソースをかけたら完成!
【学ぶ】フナについて学べるスポット
滋賀県には、琵琶湖にすむ固有種をはじめ、フナの展示をする博物館があります。また、湖上の島へ行って、漁師にふなずしの漬け込み作業を教えてもらえる体験クルーズも毎年行われています。ぜひ琵琶湖へ足を運んで、フナの知識を深めましょう。
滋賀県立琵琶湖博物館(滋賀県/草津市)

提供:滋賀県立琵琶湖博物館
「滋賀県立琵琶湖博物館」は、「湖と人間」をテーマに、よりよい未来について考えるためのミュージアムです。琵琶湖の自然や生き物を見るだけでなく、実際のフィールドへ出かけてみたくなるような、琵琶湖のすべてを体感できます。
国内で最大級という淡水生物の展示室は、展示面積が約2000㎡もあります。ニゴロブナは、水族展示室内のヨシ原水槽、トンネル水槽、ニゴロブナ水槽で見られますよ。また、ギンブナ、琵琶湖固有種のゲンゴロウブナも見学できます。
住所 | 滋賀県草津市下物町1091 |
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問合先 | 077-568-4811 |
時間 | 9時30分~17時(最終入館16時) |
定休日 | 月曜(休日の場合は開館)、その他臨時休館あり |
料金 | 大人840円、大学生470円、小・中学生、高校生(18歳未満)無料 ※企画展示は別途料金 ※2025年4月に改定予定 |
アクセス | 公共交通:JR草津駅→近江鉄道バスで25分、バス停:琵琶湖博物館から徒歩すぐ 車:名神高速道路栗東ICから約30分、名神高速道路瀬田西ICまたは新名神高速道路草津田上ICから約35分 |
駐車場 | あり/420台/有料 ※博物館利用者には無料サービス券を配布 |
URL |
琵琶湖汽船「鮒ずし作り体験クルーズ」(滋賀県/大津市・近江八幡市)

琵琶湖汽船では、毎年7月上旬~中旬になると人が暮らす湖上の島「沖島」で郷土料理ふなずしの漬け込みを体験するクルーズ(全8回予定)を運航します。
朝、大津港を出発し、船で沖島へ上陸。漁師指導のもと、塩漬けされた琵琶湖産のニゴロブナのみがき・洗い・干し・タル詰めまでの作業を半日かけて行います。できたふなずしのタルは持ち帰って自宅で保管し、晩秋になったら自分で漬け込んだふなずしを味わえます。保護者同伴なら小学生から参加でき、フナをみがく(食べられない部分を取り除いて、きれいにする)作業などを親子で楽しめますよ。
例年、5月上旬~下旬にWEBで申込みを受け付けています(抽選予約制、抽選発表6月上旬。詳細は琵琶湖汽船公式サイトを確認)。
住所 | 滋賀県大津市浜大津5-1-1(集合場所:大津港) |
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問合先 | 077-524-5000(琵琶湖汽船予約センター) |
営業時間 | 8時30分大津港集合・受付→9時大津港発→10時20分沖島着・ふなずし作り体験→15時30分沖島発→16時40分頃大津港着予定 |
料金 | 往復乗船料大人3500円、小学生1750円。ほか、材料費1タル2万5500円(ご飯、ニゴロブナ約5㎏)、容器代1タル1500円、昼食代1500円(希望者のみ)別途必要 ※2024年開催時の料金 |
アクセス | 公共交通:京阪びわ湖浜大津駅から徒歩3分 車:名神高速道路大津ICから県道56号線経由2.9km10分 |
駐車場 | なし ※近隣に有料駐車場(浜大津アーカス駐車場、大津港駐車場ほか)あり |
URL |
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【SDGs】滋賀県のフナを自由に食べたり守ったりするために

滋賀県で漁獲されるフナは、稚魚の放流、漁獲制限などの実施によって生態系が守られています。この先も、フナを変わらず自由に食べたり守ったりするためにはどのようなSDGsを意識すればいいか、親子で話し合ったり、考えてみるといいですね。
滋賀県の子ども向けSDGsの取り組み







