白くて大きなシロイルカ(ベルーガ)。見ているだけで癒やされる、そんな行動や表情、そして人なつっこさについて、横浜・八景島シーパラダイスの飼育員さんにいろいろ教えていただきました。なぜ白い? ぷにゅぷにゅおでこやバブルリングについてなど、一番知りたい10のコトをうかがっています。もちろん、日本で4つの水族館にしかいないシロイルカ(ベルーガ)たちについても、プロフィールや性格などを紹介します。
※この記事は2023年8月31日現在の情報です。シロイルカ(ベルーガ)の展示やプログラムは内容変更、中止・休止する場合がよくあります。事前にご確認ください。
- シロイルカってどんな生きもの
- シロイルカのキホン
- シロイルカの性格
- シロイルカの生態
- シロイルカについて知りたい10のコト
- シロイルカとベルーガ、正しい名前は?
- シロイルカはなぜ白い?
- ぷにゅぷにゅおでこにメロンがある!?
- 笑っているように見えるけど笑ってる?
- 特技のバブルリング、みんなできるの?
- 海のカナリアと呼ばれるのはどうして?
- シロイルカは知能が高いの?
- 超音波で判断しているって本当?
- 歯は何本? エサ噛んでる? 丸飲み?
- 日本の水族館に少ないのはなぜ?
- シロイルカ(ベルーガ)がいる4つの水族館
- 横浜・八景島シーパラダイス(神奈川県)
- 鴨川シーワールド(千葉県)
- 名古屋港水族館(愛知県)
- しまね海洋館アクアス(島根県)
シロイルカってどんな生きもの
横浜・八景島シーパラダイスの飼育員さんに、シロイルカとはどんな生きものなのか、シロイルカの基本情報と生態や寿命についてうかがってみました。
加登岡 愛実さん(かとおか あみ)
横浜・八景島シーパラダイスの飼育技師。祖母の家が横浜市金沢区だったこともあり、幼少期からシーパラには来ており、シロイルカなどのイルカの飼育やショーのトレーナーになることが夢だった、とのこと。そして2013年、念願の横浜・八景島シーパラダイスに入社し飼育員として働かれています。
シロイルカのキホン
『シロイルカは、主に北極海に分布し、オスで最大5.5m、メスで最大4mになります』と加登岡さん。『哺乳類ですが、カラダが真っ白だったり、イルカにある背ビレがなかったり、クジラ・イルカとは異なる部分も多くみられます』。へぇ、繁殖や寿命は? 『繁殖の時期は3~6月の春。14カ月で出産し、オスは8年、メスは5年くらいで成熟します。寿命は30~40年くらいです』とのことでした。
- 【学名】Delphinapterus leucas
- 【分類】クジラ目 イッカク科 シロイルカ属
- 【生息地】北極海ほか
- 【体長】約3~5.5m
- 【寿命】約30~40年
北極海に暮らす白いイルカがシロイルカです
シロイルカの性格
人なつっこいイメージがあるシロイルカ。性格について聞いてみました。『シロイルカは繊細ですが好奇心旺盛なんです。だから、じっと見ていると近寄ってくることも多いんです』とのこと。なるほど、焦らずのんびり近くで観察しているといいことがあるかも♪
シロイルカは好奇心旺盛! 大接近できることもあります
シロイルカの生態
生態については『シロイルカは同性で群れをつくります。オスの成獣のみの群れは数百頭になることもありますが、メスの子連れの群れは10数頭の小さな群れで行動します』とのこと。なるほど。季節ごとの過ごし方は? 『冬は沖合で過ごしますが、夏は河口に集まって、砂利などで古い表皮をはぎとって脱皮するんです』。え、脱皮するんですか!? 『はい、ただ、このとき無防備になってしまい、ホッキョクグマの攻撃で傷つけられたりします』とのことでした。
しまね海洋館アクアスの“アーリャ”“ミーリャ”親子
シロイルカについて知りたい10のコト
続いて、シロイルカについての10の疑問を加登岡さんにぶつけてみました。名前のこと、色のこと、カラダのこと、食事のこと、など。これで、シロイルカのことが少しわかってきますよ。
シロイルカに関する疑問について、丁寧に答えていただきました
1.シロイルカとベルーガ、正しい名前は?
日本でシロイルカがいる4つの水族館のうち、2つはシロイルカ、2つはベルーガと呼んでいます。正しいのはどっちなのでしょう? 『もちろん、どちらも正しいです。シロイルカは和名、つまり日本語の名称、ベルーガはロシア語の呼び方です。ロシア語で“白い”という意味の“ベールイ”に由来しているようです』とのことでした。では、この記事内では基本、シロイルカと表記し、ベルーガと呼ぶ水族館のみベルーガと表記することにします。
名古屋港水族館の“ニコ”。ココではベルーガと呼んでいます
2.シロイルカはなぜ白い?
そもそもシロイルカが白いのには理由があるのでしょうか? 『北極や流氷といった“白い世界”で暮らすため“カラダが白い”ことが保護色の役割をしているんです』とのこと。
白いのは危険から身を守る、生きるための手段だったんですね
3.ぷにゅぷにゅおでこにメロンがある!?
シロイルカのおでこは、ぷにゅぷにゅですが何が入っているのですか? 『メロンです』。えっ!? フルーツの? 『いえいえ、おでこの中に“メロン”と呼ばれる脂肪の塊があるんです。ぷにゅぷにゅでやわらかいのは、北極などで氷にぶつかったときにクッションとなるためなんです』。なるほど、そういうことですか。
おでこをさわると、まさに、ぷにゅぷにゅ、なのです
4.笑っているように見えるけど笑ってる?
シロイルカはときどき笑っているように見えます。あれは、まさか笑っているのですか? 『残念ながら、笑っているのではなくて、唇がとってもやわらかいために、笑顔のような表情になるんです』とのこと。そうだったんですね…でも、笑ってると勝手に思うのは自由ですよね。『はい、それは自由です(笑)』。
やっぱり、笑っているように見えるシロイルカの表情
5.特技のバブルリング、みんなできるの?
輪っかをつくるバブルリングですが、これは、そのシロイルカもできるんですか? 『横浜・八景島シーパラダイスのシロイルカはみんなできますよ。多くのシロイルカができると思います。上手下手はありますが、バブルリングはシロイルカたちは楽しいみたいです』。そうですか、楽しんでいるんならいいですね。
キレイなバブルリングを見せてくれる名古屋港水族館の“ナナ”
6.海のカナリアと呼ばれるのはどうして?
シロイルカのことを“海のカナリア”と呼ぶのを聞いたことがありますが。『はい、甲高い大きな声で鳴いて遠くまで聞こえるので、そう呼ばれることがあります。この声で群れの中の仲間と連絡を取り合っているようです』と加登岡さん。
鴨川シーワールドでは、水中のマイクに向かって鳴いてくれるパフォーマンスもあります
7.シロイルカは知能が高いの?
知能の高さについて『シロイルカに限らず、クジラやイルカなどの鯨類はみんな知能が高いと思います。例えば、バンドウイルカもシロイルカも、いくつかあるサインを識別して行動します。これが知能の高い証拠といえます』とのこと。
加登岡さんのサインにシロイルカがしっかり応えてくれます
8.超音波で判断しているって本当?
シロイルカは超音波で判断する、というのは本当でしょうか? 『超音波というか“エコーロケーション”といって、鼻腔内で発した音をメロンで束ねて外に発射し、海中で跳ね返ってくる音を聞き分けて、そこに何があるかを探ります。この能力が優れているので、氷に覆われた海や暗い海を泳ぐことができるんです』。シロイルカ、すごい能力を持っているんですね。
鴨川シーワールドのパフォーマンスでは“エコーロケーション”についての解説もあります
9.歯は何本? エサ噛んでる? 丸飲み?
唇がやわらかいといわれましたが、歯はあるんですか? 『30~40本の歯があるんですが、魚などを食べるときは歯で噛むことはなく丸飲みで食べます』。えっ、では歯はなんのために? 『敵と戦ったり捕まえたりするためです。なので、ほぼ虫歯にはなりません』。そういうことですか。食事は? 『魚がメインですが、シーパラではアジ・サバ・ホッケ・サンマ・シシャモなどをあげています。自然界ではカニなどの甲殻類や貝類も食べます』とのことでした。
シロイルカの食事や歯のことについても注目してみてください
10.日本の水族館に少ないのはなぜ?
日本では4つの水族館でしかシロイルカを見られません。少ないのは何か理由があるのでしょうか? 『まず、シロイルカの入手自体が難しいことがあげられます。次に、入手できたとしても北極から日本までの距離が遠いこと。カラダが大きいので、移動から飼育・展示、いずれも簡単ではないんです』と加登岡さん。大変な苦労がありそうです。貴重な展示なんですね。
カラダが大きいことも日本で見られる水族館が少ない要因のひとつ
シロイルカ(ベルーガ)がいる4つの水族館
貴重な4つの水族館にいるシロイルカについて紹介しましょう。横浜・八景島シーパラダイスとしまね海洋館アクアスは「シロイルカ」、鴨川シーワールドと名古屋港水族館は「ベルーガ」と呼んでいますので、各施設での呼び名はそれにあわせますね。
※シロイルカ(ベルーガ)のショー・パフォーマンス・体験プログラムなどの実施日・回数・所要時間等は、各水族館の公式サイトでご確認ください。
横浜・八景島シーパラダイス(神奈川県/横浜市)
よこはま・はっけいじましーぱらだいす
横浜・八景島シーパラダイスの一番人気アイドル・シロイルカは、アクアスタジアムのショーで見ることができます。
- シロイルカを初めて展示したのは:1993年
- 現在いるのは:3頭
- 会える場所・名前・性別・年齢・サイズ:
【アクアスタジアム『海と動物たちのショー』出演の3頭】
プルル(オス)推定27歳/体長約4m
クルル(メス)推定22歳/体長約4m
シーマ(メス)推定22歳/体長約4m
<性格>
加登岡さんに3頭の性格をうかがったところ『“プルル”はおっとりとした性格で少し臆病なところもあります。“クルル”は気が強いんですけど実は繊細で鳥が苦手。“シーマ”はあねご肌のしっかり者ですね』とのこと。みんな個性があるんですね。
加登岡さんのホッペにチュッ♪ してくれました
●海と動物たちのショー
アクアスタジアムでのショーにシロイルカも出演(内容などは季節や時期によって変更あり)。『シロイルカの生態を生かした演出が見どころの、優雅な水中パフォーマンスです』と、加登岡さんもイチオシ!
シロイルカのパフォーマンスは必見です
トレーナーさんとの息もぴったりでした
問合先 | 045-788-8888 |
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住所 | 神奈川県横浜市金沢区八景島 |
料金 | 【アクアリゾーツパス(4つの水族館入場)】大人3300円/小・中学生2000円/4歳以上幼児1000円/3歳以下無料/65歳以上2800円 ほか |
鴨川シーワールド(千葉県/鴨川市)
かもがわしーわーるど
2023年8月現在“ナック”と“マーシャ”の2頭が「ベルーガパフォーマンス」で活躍中です。マリンシアターで見ることができます。パフォーマンスには参加しませんが、2021年7月に誕生した“リーナ”と“ヴィズ”にもマリンシアターで会えます。
- ベルーガを初めて展示したのは:1976年
- 現在いるのは:6頭
- 会える場所・名前・性別・年齢・サイズ:
【「ベルーガパフォーマンス」に出演の2頭】
ナック(オス)年齢不明(1988年来館)/体長約3.85m
マーシャ(メス)年齢不明(1990年来館)/体長約4.02m
<性格>
“ナック”はマリンシアターでの飼育30年以上の大ベテラン。普段からトレーナーさんの話す言葉を真似ようとします。真面目な性格なので、新人のトレーナーさんには厳しいとか。“マーシャ”は水遊びが大好きで、トレーナーさんがホースを持っていると遊んでほしそうに口から水を吹きかけてくるそうです。高く澄んだキレイな声で鳴くのが特技。
顔のシワが多いのが特徴の“ナック”です
●ベルーガパフォーマンス
ベルーガの知能や特有の能力を生かした数々のパフォーマンスが見られます。水槽の上の映像解説もわかりやすいですよ。
どの席からでも、しっかり見られるシアタータイプ
トレーナーさんとベルーガ、とっても仲が良さそうです
バブルリングも見せてくれます
エコーロケーションにより、目隠しをつけて障害物をよけながら泳ぐ能力を披露
問合先 | 04-7093-4803 |
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住所 | 千葉県鴨川市東町1464-18 |
料金 | 【入館料】大人3300円/小・中学生2000円/4歳以上幼児1300円/3歳以下無料/60歳以上2700円 |
名古屋港水族館(愛知県/名古屋市)
なごやこうすいぞくかん
「オーロラの海」に4頭のベルーガがいて、2階で水槽を泳ぐ様子と3階でトレーニングの様子を見ることができます。
- ベルーガを初めて展示したのは:2001年
- 現在いるのは:4頭
- 会える場所・名前・性別・年齢・サイズ:
【北館「オーロラの海」に4頭】
ニコ(オス)推定15歳/体長約4.5m
ミライ(オス)11歳/体長約3.6m
グレイ(メス)推定24歳/体長約3.88m
ナナ(メス)16歳/体長約3.6m
<性格>
“ニコ”は物怖じしない性格で“ミライ”が大好き。その“ミライ”は名古屋港水族館生まれの甘えん坊です。“ミライ”のお母さん“グレイ”はとっても真面目で不器用。優等生タイプです。“ナナ”は好奇心旺盛で遊ぶことが大好き。
美しいエンジェルリングを見せてくれました
人なつっこく水槽に近づいたりします
名古屋港水族館“ナナ”の正面からのショット。好奇心旺盛です
●ベルーガ公開トレーニング
ベルーガのトレーニングの様子を見られます。運動や頭の体操と健康管理のために実施しています。
なんだかうれしそうなベルーガ
体温測定時のベルーガの姿勢
ボールを見事に操るベルーガ
ジャンプして口から水を吹きだすシーンも見られます
●ベルーガのふしぎな魚の食べ方
土・日曜、祝日だけですが、砂などに隠れたイカナゴをどのように食べているかを間近で見ることができます。
実験装置は飼育員さんの手作りです
問合先 | 052-654-7080 |
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住所 | 愛知県名古屋市港区港町1-3 |
料金 | 【入館料】大人2030円/小・中学生1010円/4歳以上幼児500円/3歳以下無料 |
しまね海洋館アクアス(島根県/浜田市)
しまねかいようかんあくあす
西日本で唯一シロイルカが見られるのが島根県のしまね海洋館アクアスです。パフォーマンスプールに3頭、繁殖プールに4頭がいます。みんな遊び好きで、手作り遊具を入れておくと、それぞれお気に入りのもので遊んでます。
- シロイルカを初めて展示したのは:2000年
- 現在いるのは:6頭
- 会える場所・名前・性別・年齢・サイズ:
【本館「シロイルカパフォーマンスプール」に2頭】
シーリャ(オス)13歳/体長約3.65m
ミーリャ(メス)8歳/体長約3.25m
【別館「シロイルカ繁殖プール」に4頭】
ランゲル(オス)推定24~26歳/体長約4.35m
ナスチャ(メス)推定24~26歳/体長約3.95m
アーリャ(メス)推定24~26歳/体長約3.8m
アンナ(メス)推定24~26歳/体長約3.5m
<性格>
“シーリャ”はアクアス生まれのいたずら好き、“ミーリャ”は怖いもの知らずのおてんば娘です。別館のお母さん“アーリャ”を加えて3頭は家族。“ランゲル”は豪快ですが実はさみしがり屋。“ナスチャ”は気が強いあねご肌で“アンナ”はのんびりマイペースと、それぞれ性格が違いますね。繁殖プール近くのお弁当広場で聞き耳をたてていると、食事の時間に“ランゲル”たちのけたたましい鳴き声が聞けますよ。
“アーリャ”と“ミーリャ”の親子です
●シロイルカパフォーマンス
シロイルカの「幸せのバブルリング(R)」が見られるほか、シロイルカの生態や能力についてわかりやすくご紹介。
広いパフォーマンスプールでシロイルカのパフォーマンスを
「幸せのバブルリング(R)」は“シーリャ”と“ミーリャ”の兄妹が見せてくれます
遊具でうれしそうに遊ぶシロイルカ
問合先 | 0855-28-3900 |
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住所 | 島根県浜田市久代町1117-2 |
料金 | 【入館料】大人1550円/小学生~高校生500円/未就学児無料 |
シロイルカ、愛らしいでしょ? 日本では4水族館だけですが、どこのシロイルカ(ベルーガ)も人なつっこくて、近づいてきてくれることも多く、サービス精神旺盛(好奇心旺盛)で見ているだけで癒やされます。