
近年、体の硬い子どもが増えてきています。体が硬いと、ケガをすることが増えたり、体を思ったように動かすことができないためスポーツに対して苦手意識を抱いたり、日常生活や運動能力への影響も。柔軟性のある体づくりのために、親子でできる簡単ストレッチのやり方をイラストでご紹介! 1日1ストレッチでも効果があるのでぜひ挑戦してみて。
遠山健太 先生
株式会社ウィンゲート代表取締役。子どもの運動教室「WingateKids」の運営のほか、子どもの適合するスポーツを見つけ出す「マイスポ」も監修。ワシントン州立大学教育学部卒、現在は順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科修了。現在は「子どもの体力」について研究しながら保護者や指導者向けの講演活動も行っている。「運動できる子、できない子は6歳までに決まる!」(PHP研究所)、「コツがつかめる! 体育のずかん」(ほるぷ出版)など著書多数。
子どものストレッチが重要な理由

子どものストレッチが重要な理由は、おもに以下の3つが挙げられます。
①思うように体が動かせず、活動量が減る

柔軟性が低いといわれる状態には2種類あり、その1つは柔軟性のカギとなる4つの関節、肩・背骨(胸椎)・股関節・足首の可動域が狭くなっているということ。もう1つは筋肉が硬直している状態のことを指します。いずれも動きがぎこちなくなり、思うように体が動かせなくなるため、「ほかの子より体が動かない」というスポーツ・運動への苦手意識の芽生えにつながってしまいます。その苦手意識から、普段の外遊びや活動量が減ってしまうことになるかもしれません。
②ケガをしやすくなる
体を思うように動かせず、スポーツ・運動をする機会が減ると、関節が十分に使われないためどんどん柔軟性が低くなってしまいます。柔軟性が乏しいと、スポーツや運動中に体に負荷がかかったときに耐えきれず、スポーツ障害やケガにつながりやすくなります。また、急な動きに対応できず、転倒したり衝突したりしやすくなります。
③代謝が悪く疲れやすい体に
先に挙げた、柔軟性が低いといわれる状態の2種類のもう1つは、筋肉の疲労などにより血流が悪化し、筋肉そのものが硬くなってしまうことです。体が硬く、関節が十分に使われずに生活することは、基礎代謝の低下や血行不良にもつながります。加えて、肩こりや腰痛の要因にも。運動量が少なく、スマホやゲームばかりで同じ姿勢をとり続けていると、代謝が落ち、疲れやすい体になってしまう懸念があります。
柔軟性があがると運動能力もあがる!

上の図はスポーツトレーナーが運動能力を高めるために参考にしている「競技力向上のピラミッド」です。一番下に位置している「Position(ポジション)」=関節の可動性と安定性が一番重要になります。ここではとくに可動性について解説しますが、4つの関節、肩・背骨(胸椎)・股関節・足首、それぞれが柔軟性に富んでいることで、より体がスムーズに動かすことができ、競技力の向上へとつながるのです。どのスポーツにおいても、一番の基礎となるのは関節の可動性=柔軟性といえます。
ストレッチの効果的なやり方、よくある質問

何歳から始めればいいの?
子どもでも関節が十分に使われていないと、どんどん硬くなってしまいます。普段からスポーツを習っていれば大丈夫かというとそうではなく、同じような動きに偏ると使われない関節もあるため、カギとなる4つの関節をまんべんなく動かすストレッチが大切になってきます。ストレッチを低学年のうちに実践することで、中・高学年、中学生へと成長し本格的にスポーツを始める頃には、本人も違和感なく習慣として受け入れるようになるので、始めるのは早ければ早いほど効果的です!
どのくらいの頻度でやるのが効果的?
1日の活動量や成長の過程において、関節の可動域が変わることはよくあること。たとえばゲームのやりすぎでずっと同じ姿勢だった日などは、筋肉が硬直してしまうこともあり、普段は柔らかい子がわずか1日で硬くなってしまうことも珍しくありません。毎日ストレッチを継続することで、バランス良く関節が動き、毎日“良い”状態をキープすることが大切です。また、ストレッチを通じてのスキンシップは親子間のコミュニケーションの機会もつくってくれます。
ストレッチに良い時間は?
一般的には体が温まり筋肉の緊張も解けるので入浴後がおすすめ。とはいえ、大切なのは家族で一緒に、毎日継続できるタイミングでストレッチをすること。時間を特定せず、夕食前や就寝前など、子どもの生活リズムに合わせた無理のないタイミングで、一緒に行うことが習慣化への近道です。
親子でできるストレッチ7選!イラストでやり方を紹介

毎日たったの数分で簡単にできるストレッチをイラストでご紹介! 親子で楽しみながら取り組めるものばかりです。一緒にチャレンジしてみましょう!
決して無理はせず、ストレッチで痛みを感じるようであれば中止してください。子どもの表情を見ながら力の入れ具合や伸ばし具合を調整してあげましょう。
両腕ぐい~んストレッチ <大胸筋&肩・背骨(胸椎)>

- あぐらで座り、両手を頭の後ろで組む。
- パートナーは座っている人の背中に片脚をつけ、座っている人のひじにやさしく手を添
える。 - 弧を描くように少しずつ座っている人の腕をパートナー側に引き寄せ、背中を伸ばす。
子どもはゲームや授業、親は仕事などで日常的に前かがみの姿勢をとりがち。固まっている大胸筋や肩・背骨(胸椎)を伸ばしてあげましょう。
★親はこのストレッチもプラス!

- あぐらで座り、両手を上げる。
- 子どもは後ろに立ち、上げた手の内側から両手を入れて肩甲骨をおさえる。
- 脚で背中を支えながら親の体を引き寄せ背中を伸ばす。
親世代になると、普段肩を頭上にあげることが少ないため、耳の後ろまで両腕を持っていくだけでもかなりつらいかも!? 四十肩・五十肩になる前にしっかりストレッチしておきましょう。
座って引っ張りっこストレッチ <広背筋&背骨(胸椎)>

- お互いに向き合って、ひざを伸ばした状態で足を合わせて座る。
- 座ったまま腕を引っ張り、20~30秒間ほど、じわじわとゆっくり伸ばす。
※膝を伸ばした状態で手が届かない場合はタオルなどを掴んでもOK。
1つ目の「両腕ぐい~んストレッチ」とセットでやると、背骨(胸椎)の柔軟性がよりアップします。
背中合わせでボールをまわしっこ <肩・背骨(胸椎)>

- 背中合わせにしていすに座る。
- 両手でボール(枕やクッションでもOK)をつかんで、肩越しにパートナーにボールを渡す。
- パートナー側は両手でボールを受け取る。この受け渡しを何度か繰り返す。
ひねりの動作で、背骨(胸椎)を動かすことができるストレッチです。立った姿勢だと股関節も回ってしまいますが、座った姿勢だと背骨(胸椎)だけをしっかりと回旋させることができます。
片脚まっすぐ90度ストレッチ <太もも裏の筋肉&股関節>

- リラックスしてあお向けに寝る。
- パートナーは片足のかかとをもって、ゆっくり90度になるまでまっすぐ上げる。
- ひざが曲がらないよう手を添えて、ゆっくり頭側に倒す。反対側の脚が浮き上がる場合は、ひざで挟んで押さえる。
太もも裏の筋肉(ハムストリングス)を伸ばし、同時に股関節もやわらかくするストレッチです。横から見て脚が垂直(90度)でない場合は硬い証拠。相手の表情を見つつ伸ばしてあげましょう。
やわらかおしりストレッチ <大殿筋&股関節>

- リラックスしてあお向けに寝て、1つ前の「片脚まっすぐ90度のストレッチ」の体制をとる。
- パートナーの右手で上げている脚のひざを、左手で足首をもち、ひざから下の角度が90度になるように曲げる。
- ひざから下の角度を90度に保ったまま、寝ている人の胸のほうにゆっくりと倒して、おしりを伸ばす。
大殿筋(お尻の筋肉)は、パワーを発揮するための源の筋肉といわれています。立つ、歩く、姿勢を安定させるなど基本動作のすべてで日常的に使われているため、毎日のストレッチで疲れを取ってあげることが大切です。
床にひざくっつけストレッチ <内転筋群&股関節>

- 床に座った状態で、体の前で足の裏を合わせ、自分に引きよせる。
- パートナーは後ろからひざに手を添え、ゆっくりと床に近づけるように下方向に押す。
内もものの筋肉が弱いとひざが内側に入ってしまうため、ひざの靭帯のケガにつながることが。とくに女性は骨盤が広く、ひざが内側に入る傾向にあるので、このストレッチがおすすめです。股関節が硬い人は、膝の位置が床からこぶし2個分ほど上がってしまうので、なるべく床に近づけることを目標にしましょう。
足首くるくるストレッチ <足裏の筋肉&足首>

- 足裏に手のひらをあて、足の指の間それぞれに手の指を入れる。
- そのまま足を握り、足首をゆっくり回す。
足首の硬さは、捻挫をはじめとするさまざまなケガのもと。さらに、足の小指の機能が失われると高齢になった際に転倒しやすいと言われています。足の指を広げて、しっかり回してあげることで足裏と指のコンディションをアップしましょう。
★ゲーム性を持たせたストレッチも!
床に置いたビー玉を足の裏でつかんでコップに移すストレッチも、足裏の柔軟性を高めるうえで効果的です。制限時間内にコップにいくつ入れられるか、色や形で分けてポイント制にするなど、ゲーム性を持たせて家族で楽しく取り組んでみてくださいね。
親子ストレッチを毎日続けるための秘訣

●無理をしない
柔軟性を高めようと意識するあまり、めいっぱい押したり、伸ばしたりしてしまいがち。まずは、紹介するストレッチの姿勢をとることができればOKという気持ちで始めましょう。お互いの表情を確認しながら少しずつ強度をつけるようにして、痛がるのを無理に伸ばすのはやめましょう。
●ゲーム性を持たせる
ストレッチを習慣にするコツは「ここまでできたら〇点」、「〇秒キープできたら〇点」などのようにゲーム性を持たせること。親よりも子どもの点数が高い!なんてこともあるかもしれません。子どもと親がお互いの体の状態を理解し合うことで、モチベーションアップにもつながります。
●1日1ストレッチでOK!
1日のうち、複数のストレッチを実践するのが理想的ですが、無理せず1つずつでもOK。また、毎日同じストレッチばかりではなく、バリエーションを変えて行うことで体をまんべんなく伸ばしてあげることが重要です。飽きずに楽しみながら続けてみましょう!
子どもの運動能力アップだけでなく、親の運動不足解消やスキンシップを伴うコミュニケーションにもなる親子ストレッチ。「お父さん、体硬すぎ!」、「前よりもやわらかくなったよ!」などと、家族目標を定め、体の硬さ、やわらかさ、ストレッチの効果を話し合いながら、お互いの体の状態を確認し合うのがおすすめです。いつまでも親子で一緒に旅行やお出かけができるように、ぜひ今日から始めてみてくださいね!
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