昨年から話題になりはじめた「車中泊」。新型コロナの感染リスク回避や防災対策の面からも、車中泊に注目しているファミリーが増えてきているようです。車中泊のメリットや初心者でもわかるやり方、注意点、おすすめグッズ、宿泊場所について、車中泊のエキスパート池辺純代さんに教えてもらいました。これからは家族旅行の選択肢が増えるかもしれませんよ!
監修:池辺純代さん
夫婦での車中泊歴20年、4人家族で週末や長期休みを利用して日本各地の車中泊旅をしているYouTuber/ブロガー「とうちゃんはテンネンパーマ」のかあちゃんとして、車中泊のノウハウ、旅行記などを発信。車中泊で沖縄以外の全国を網羅。
「とうちゃんはテンネンパーマ」:ブログ / YouTube
家族の車中泊、こんなメリットが!
自家用車で移動して、宿泊も…となると、人との接触が少なく、コロナ禍ではリスク回避ができ、安心です。それ以外にも車中泊のメリットはたくさん!
旅行費用を安く抑えることができる!
ガソリン代や高速代がかかりますが、宿泊費は実質0円。しかも、GWや夏休みなどのトップシーズンでも、価格変動がなく済みます。旅行日数が長いほど、費用の差が出て、メリット大。
時間の制約が少ない
車中泊であれば、チェックイン・チェックアウトの時間を気にする必要がありません。子どもは、急なトイレや「ここでもっと遊びたい!」など予定通りにいかない場合も多いですよね。しかし車中泊なら、そうした予想外の時間のロスにあわてることもなし! また、前日に目的地近くに車中泊できれば、渋滞に巻き込まれるといったこともなく、時間を有意義に使えます。
子どもの成長にもgood!
車中泊では、睡眠スペースづくりや食事の用意などを自分たちでしなければなりません。家族みんなで協力することを体験する絶好の機会。子どもにお手伝いをお願いしやすい環境です。役割をもつことで、子どもの達成感や自己肯定感を高めることにもつながります。
また、車で遠方に行く場合、移動に時間がかかりますが、その不便さが子どもの教育に役立つ面も。窓から地域の様子や景色の変化を見ることができ、日本の広さや距離、土地の雰囲気を肌で実感できます。「車で関東から北海道へ行こうと思うと約1日半かかります。子どもたちは、北海道はすごく遠いところだって思っていますよ」(池辺さん)。地図上だけではわからない、地理の勉強にもなりますね。
車中泊はどんな車がおすすめ?
近年のアウトドアブームで、キャンピングカー仕様の軽自動車もあるほど。どんな車でも車中泊はできるのでしょうか?
「軽自動車でも車中泊は可能ですが、大人2人に小さい子ども1人が限界。子ども2人の4人家族では難しいですね」(池辺さん)。たとえばセダンなど、前座席を倒して大人が寝て、後部座席を倒して子どもが寝る、というスタイルでは、エコノミー症候群の不安も出てくるため、2泊以上の車中泊には向きません。そして、寝る場所だけでなく、荷物を積むスペースも必要です。その広さを確保するとなると、家族4人の場合、ミニバンがおすすめ。また、ミニバンでも4人が並んで横になったときに窮屈に感じない横幅と、車高があるとベストです。
自家用車がミニバンではないファミリーもご安心を。車中泊仕様のバンをシェアできるサービス「Carstay」があります。レンタルよりもリーズナブルで、車中泊を気軽にトライすることができますよ。
● キャンピングカー・バンのカーシェアサービス「Carstay」
車中泊ビギナーの不安解消アドバイス
車中泊に興味はあるけれど、「ホテルや宿に泊まらないとなると、おふろやトイレはどうするの?」「暑さ、寒さに影響されない?」といった心配もあるもの。気になる不安を解消するコツやアイデアを紹介します。
おふろ:日帰り入浴施設や道の駅の施設を利用
最終目的地付近の日帰り入浴施設や、旅館の日帰り入浴などを利用するとよいでしょう。ただし、コロナの影響で営業時間の短縮や休業をしている可能性もあるので、電話等でしっかり確認を。また、入浴施設が併設されている道の駅もあります。車中泊が可能な道の駅であれば、そのまま泊まることもできますね。
トイレ:環境のいい車中泊場所をチョイス
公共の駐車場や公園などでもトイレはありますが、サービスエリアや道の駅はトイレも清潔で使いやすいことが多いです。車中泊場所にすればトイレ問題は解決。念のため、災害時用のポータブルトイレを積んでおくといざという時も安心です。
小さい子どもがいる場合、車を停める場所はトイレが近いほうが安心できますが、人の行き来が多く、物音がしやすいことも念頭に入れておきましょう。
睡眠環境:車中泊は快適な睡眠がキモ! 停車場所と寝床は「フラット」にこだわって
「快適に眠れるかどうかで、その後も車中泊を楽しめるかが変わってきます」と池辺さん。快適な睡眠のために大切なことは「寝床をフラットにすること」と「周囲の音」です。
●フラットにするためには…
シートがフルフラットになる車はいいですが、もし隙間ができる場合はクッションやタオルなどで調整を。駐車場もできるだけ平らな所を選びましょう。傾斜がある場合は、頭側が高くなるように車を停めて。
フラットにしたシートの上にはクッション性のあるエアマットやエアベッドを敷くとベスト。
●音が気にならない場所選びを
連休や長期休暇は、サービスエリアや道の駅も混雑することが多く、物音で寝られない…という場合も。公共の駐車場でも、車通りの多さで睡眠の快適度が左右されます。音が気にならない場所に駐車することもポイントです。
防犯対策:窓全体をシェードで覆い、プライバシー確保を
窓にスモークが貼られていても、暗くなると外からは車内の様子が見えるもの。寝るときは、車内の様子が見えないように、窓にシェードを貼ってプライバシーの確保&防犯対策を。また、周囲に人がいないと思っても、外に私物を出しっぱなしにせず、必ずドアロックをかけ、貴重品は見えないところに置きましょう。
季節:ビギナーは秋や春など、気温が穏やかな時季が快適
車中泊はキャンプと同様、気温の影響を受けやすいので、季節に応じて準備が変わります。エンジンを切って寝ることを考えると、初めのうちは気候のいい秋や春がおすすめです。行き先や高度によっても気温の違いがあるため、下調べをしておきましょう。
初めての車中泊、おすすめグッズ10選
家族4人で車中泊をするときに用意したいおすすめグッズ10選を紹介します。
エアマット(またはエアベッド・ベッドキットも可)
エアマットは自動的に空気で膨らむインフレーターマットが手軽。マットの厚みは5㎝以上がおすすめ。エアベッドは厚みがあり寝心地がいいですが、空気を入れるポンプが必要に。ベッドキットは車種に合わせて購入可能。
寝袋&枕
タオルケットや毛布でも問題ありませんが、寝袋はコンパクトになり収納しやすいメリットが。
シェード
防犯対策だけでなく、防寒・断熱対策にもなります。子どももスヤスヤ…
バッテリー(シガーソケット型またはポータブル電源)
スマホやゲーム機などの充電用であれば、シガーソケット型の車載充電器で十分です。パソコンや家電など大容量の電力が必要な場合は、ポータブル電源がおすすめ。値段は高くなりますが、キャンプや災害時にも役立ちます。
LEDランプ・ランタン
車のライトを長時間使用するとバッテリーがあがる可能性が。夜トイレに行くときにも必要です。
ウインドーネット
窓を開けて寝たい場合、虫よけ・防犯対策としておすすめ。
クーラーボックス
食事を作る場合、材料を保存するために必要。また子ども用の飲み物や、いざと言う時の食べ物などを保存しておくのにもあるとよいです。
バーナー
食事を作る場合に必要。ツーバーナーは場所をとるものの、調理しやすく、料理の幅が広がるメリットが。シングルバーナーや小型ストーブはコンパクトで収納が便利。車内でバーナーを使う場合は必ず窓を開けて換気をしましょう。
食器・調理器具類
食事を作る場合に必要。ひとつにまとめておくと便利。
テーブル&チェア
外でゆっくりしたいときや食事をする場合に必要。コンパクトに収納できるものがおすすめ。(道の駅や公共の駐車場など、車中泊場所によってはテーブル&チェアを出すのはマナー違反になることもあるので、注意しましょう)
子どものための必需品
車の移動が長いと水分補給が欠かせません。クーラーボックスに入れておく飲み物以外に、自分用の水筒を用意して入れておくと安心。また、急な寒さ対策に羽織るものも用意しておきましょう。そのほか、保険証や医療証、常備薬など、急な体調不良時に備えた準備は、普通の旅行時と同様です。
車移動中、親は窓の景色を楽しんでほしいと思っても、時間が長いと好きなDVDを見たり、ゲームをしたりするのは仕方のないこと。タブレットやDVD、ゲーム機、充電に必要なものも忘れずに。使う時間など、事前にルールを決めておくといいですね。
車中泊場所はどう選ぶ?おすすめスポット
予約不要で宿泊場所を自由に選べるのも車中泊の魅力。でも、どこに泊まったらいいかも悩みどころ。ロケーション・設備・安全面など、何を優先させたいかを考え、車中泊場所の特徴に合わせてチョイスを。ここでは、人気の高い車中泊場所とそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。
道の駅
車中泊場所として人気ですが、禁止している道の駅も。事前に車中泊可能かどうかを確認し、長居をしない・ゴミは持ち帰るなどマナーを守って利用しましょう。
<メリット>
- 入浴施設、売店、飲食店が併設されているところもあり、利便性が高い
- トイレが清潔
- 車中泊している車が比較的多いので安心
<デメリット>
- 車中泊で人気の道の駅は人通りが多い
- 連休や長期休暇は混雑する場合も
高速道路のサービスエリア
車中泊は禁止していませんが、あくまでも高速道路の利用者が仮眠をとったりする休憩場所。移動中の仮眠の手段として車中泊するのはよいですが、最初から車中泊目的で泊まるのは避けた方がよいでしょう。
<メリット>
- トイレが清潔
- フードコートやガソリンスタンドがあるところも
- 高速道路を降りずに仮眠できる
<デメリット>
- 車の出入りが多め
- 連休や長期休暇に混雑する場合も
RVパーク
おもにキャンピングカーなど、車中泊を目的とした施設。道の駅や入浴施設と連携しているところも。
<メリット>
- 水道・電源設備があり、ごみの処理が可能なところも
- 入浴施設が近い場合も
- 長期滞在が可能
- 管理された敷地内の車中泊車のみで、防犯面が安心
<デメリット>
- 数が少ないため、場所が限られる
- 利用料がかかる
オートキャンプ場
サイト(敷地)の隣に車が停められるキャンプ場で車中泊が可能。無料のオートキャンプ場もありますが、混雑時は早くいかないと場所が確保できない場合も。
<メリット>
- 洗い場、トイレ、シャワーがある
- 調理器具やテーブルなどのレンタルが可能
- 管理された敷地内で、防犯面が安心
<デメリット>
- 要予約、利用料がかかる
- 無料の場所は混雑することが多い
公共の駐車場
観光地にある公共の駐車場を利用する方法もあります。ただし、あくまで仮眠をとる場所として、滞在を短めにし、迷惑にならないようにしましょう。
<メリット>
- いろいろな場所にある
- トイレがあることが多い
<デメリット>
- 設備がない
- 滞在は短くする配慮が必要
- 夜間は出入り口が閉められる可能性がある
達人・池辺さんのおすすめ検索サービスとスポット
「会員登録が必要ですが、24時間トイレ利用可能、ホストがいて初心者向きの車中泊場所が探せる」と池辺さんがおすすめしてくれたのが「Carstay」というサイト。車中泊やテント泊スポットとして登録された、宿泊施設や民家の駐車場などを検索、予約できます。
そのなかでヒットした、池辺さんいちばんのおすすめ車中泊スポットが、かんぽの宿の駐車場で車中泊できる「くるまパーク」。くるま旅クラブ会員になる必要がありますが、宿で食事や入浴も可能(別途有料)。かんぽの宿のおふろは、ほとんどが温泉なのもうれしいポイントです。
三重県のかんぽの宿鳥羽には天然温泉が!
朝起きたら目に飛び込んでくる絶景のロケーションも、車中泊ならではの楽しみ!
● キャンピングカー・バンのカーシェアサービス「Carstay」
失敗しないための注意点
楽しい車中泊のためには、次のようなことにも注意が必要です。
- 事前に車のコンディションをチェック
- バッテリー切れ
- 一酸化炭素中毒防止のため、寝るときはエンジンを切る(マナーとしても)
- 飲み物、食べ物の確保
- こまめなガソリン補給
いろいろと準備をしても、渋滞や悪天候など、初めての車中泊ではハプニングが起こることがあるかもしれません。けれど、それは予期せぬことに対処するスキルが親も子も身に着くチャンス。「ちょっとした不自由さや冒険を楽しもう!」という気持ちが車中泊の成功のカギかもしれません。