2023年4月1日から、すべての自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されました。ヘルメットをつければ安全なことはわかるけれど、かぶらないとどうなるの? もしも子どもがかぶるのを嫌がったら?大人もつけるの?などなど、疑問はたくさん。大切な命を守るためのヘルメットの役割から最新のヘルメット事情まで、たっぷり紹介します。
※当記事は2023年7月1日の取材に基づいています。
遠藤まさ子さん(自転車ジャーナリスト)
自転車の安全利用促進委員会メンバー。安全安心な自転車利用の情報を発信。自転車業界新聞の記者、自転車専門誌編集と3児の母としての経験から、子乗せ自転車の知識も豊富。
自転車ヘルメット努力義務、いつから?なぜ?
ヘルメットが努力義務化された理由は?
2023年4月から、すべての自転車利用者へのヘルメット着用の努力義務化されました。これは子乗せ自転車の利用者に対しても同じで、同乗している子どもだけでなく、自転車を運転する保護者もヘルメットを着用するように努めなければなりません(※13歳未満の子どもに対しては2008年にすでに着用努力義務化)
その理由の1つには、自転車全体の利用率が高まってきたことがあります。子乗せ自転車も例外ではなく、多くのママやパパが子どもを乗せて走る姿を見かけるようになりました。特に都市部では車を所有する家庭が少なくなり、車の交通事故そのものは減少しているにもかかわらず、自転車の事故は横ばいもしくは微増している状況です。そこで、「自転車に安全に乗ること」を多くの人に認識してもらうためにも、今回の努力義務化にいたったのです。
ヘルメット着用努力義務化のもう1つの理由は、自転車の事故で亡くなってしまう理由の6〜7割が、「頭部挫傷」によるものだからです。頭のケガは命に直結します。ヘルメットで頭部を保護することで、自転車の死亡事故を減らすことができるのです。特に大人よりも頭部がやわらかい子どもは、ヘルメットでしっかり保護する必要があります。
<実は増えている!駐輪中の事故>
子乗せ自転車で増えているのが、実は駐輪中の事故。子どもを乗せたまま大人が自転車から離れたすきに、自転車が倒れてしまう事故が後を絶ちません。自転車は走行時だけでなく、駐輪時にも注意が必要。駐輪中の自転車に子どもを乗せたまま大人がそばを離れるのはやめましょう。
ヘルメットを着用しないとどうなる?何歳から?
着用しないとどうなる?罰則は?
ヘルメットの着用はあくまでも「努力義務」なので、着用していないからといって、罰則はありませんが、警官に呼び止められて注意を受けることがあります。もし着用せずに事故に遭ってしまったら、後悔してもしきれないのではないでしょうか。自転車は、むき出しの体で車の近くを走る乗り物です。罰則があるかどうかではなく、命を守るためにも、親子でヘルメットを着用するようにしましょう。
何歳からヘルメットが必要?
今回の規定では、全年齢が対象となっています。ですが、自転車用ヘルメットのサイズや規格からすると、ヘルメットをかぶれるのは1歳以上です。0歳児の子どもを自転車に乗せなければならない状況もあるかもしれませんが、基本的に0歳児の場合は、ベビーカーなど自転車以外の手段を使うことをおすすめします。
自転車の子ども用ヘルメットの買い方・選び方
「SGマーク」など安全基準があるものを
もっとも重要なのは「SGマーク」が付いているものを選ぶこと。SG基準は、実用性を重視したうえで、安全を考えられた基準となっています。SGマークは、ヘルメットの後頭部の下部や、内側に貼られていることが多いでしょう。また海外の製品であればCEマークのほか、CPSCやASTMなどといったさまざまな安全基準があります。安全基準については、ヘルメットの仕様書を確認するようにしましょう。
<偽のロゴに注意して!>
最近は偽、もしくは異なる規定のロゴマークの製品が出回っていることもあります。微妙な違いなので、見ただけでは区別がつきにくくなっています。子ども用ヘルメットには少ないようですが、以下のようなものは安全基準を満たしていない可能性が高いので、買わない方がいいでしょう。
このようなものには注意!
ヘルメットはどこで買える?自転車屋さん?
ヘルメットは、展示スペースに場所を取るため、街の自転車屋さんでは種類が少ない場合もあります。ショッピングセンターやホームセンターなどの大型店、量販店のチェーン店などの売り場面積が広い自転車売り場に行くと購入しやすいでしょう。
ネットで購入してもいい? 気をつけるポイントは
ヘルメットをネットで購入する人も増えています。ネット購入の際に注意が必要なのは、頭のサイズと合っているかどうかわかりにくいこと。とくに欧米ブランドの場合は、サイズが合わないことがあります。欧米人は日本人に比べて頭の形が細長いため、たとえば同じ50cmの頭囲でも、幅が合わないことがあるのです。これは大人も子どもも同じです。購入するときはできれば試着したほうが失敗がないでしょう。
近くにお店がないなど、ネットで購入したい場合は、頭囲を正確に測ったうえで、上述のSGマークがついた国産ブランドのものを購入すると、フィットしやすいです。
頭囲をメジャーで測り、自分のサイズを把握します。メジャーがなければ代わりにひもを使って測ってもOK 。眉毛の上のおでこの一番高い位置から水平に後ろにまわし、耳のすぐ上を通り、後頭部の一番高い位置を通って一周するようにして測りましょう。
バックルやアジャスターをチェック
子どもは成長が早いので、大きさが調節できるものを選ぶのもポイント。ヘルメットの後頭部でゆるみ具合を調整できるバックルがついているもの、ダイヤルアジャスターで調整できるものもあります。
また子どもがストラップを締めるときによくあるのが、バックルであごなどの皮膚をはさんでしまうこと。それを防ぐためにバックルの下にカバーがついているものや、外れにくいマグネットでできたバックルもあるので、いろいろ試してみるといいでしょう。
ヘルメットの硬さは3タイプ 小さな子は軽いものを
サイズ以外の部分では、子どものヘルメットは硬さによって大まかに3つのタイプに分かれています。外側がとても硬く安全性がもっとも高い「ハードシェル」、ハードシェルよりも樹脂部分が薄くて軽い「ソフトシェル」、そしてスキーやスノーボードのヘルメットで採用されていることが多く、もっとも軽い「インモールド」の3つです。好みで選んで構いませんが、子どもは重いヘルメットを嫌がることが多いため、1歳児など小さいお子さんなら、首の負担が軽いソフトシェルやインモールドを選ぶといいでしょう。
安全×かわいい!こんなヘルメットも人気
JOLY キャップタイプ、ハットタイプ(各1万2980円・税込)/©オージーケーカブト
最近の子ども用ヘルメットはさまざまな工夫がされています。安全性が高いうえにかわいいデザインや、ヘルメットに見えないデザインのものもたくさん出ているので、いろいろ試して、お気に入りのものを選びましょう。
大人用ヘルメットも忘れずに!
大人用ヘルメットを選ぶときのポイント
ドルフィン ヘルメット/クミカ工業(オープン価格)
子乗せ自転車を運転している大人を見ていると、子どもはヘルメットをかぶっているのに大人はかぶっていないケースが多いようです。ヘルメットが重要なことはわかってはいても、「ヘアスタイルがくずれる」「カッコ悪い」などの理由で着用したくないという声も。
最近では、安全性は考慮したうえで、大人にも使いやすい工夫をしているヘルメットもたくさん出てきています。ストリートカジュアル風のデザインや、後ろで結んだ髪の毛が乱れないようにかぶれるヘアポケット付きのものも。ヘルメットに抵抗がある人にもおすすめなのが、上の写真のようなブラックやブラウンのでマット系のもの。普段着のファッションともなじみやすく、スタイリッシュです。
ヘアスタイルのくずれを防ぐには?
バンダナを巻いてからヘルメットをかぶると、比較的くずれにくくなります。不思議なのは、ヘルメットはかぶりたくないのに、キャップはかぶる人が多いこと。ヘルメットをかぶるときは、キャップをかぶるときと同じようなヘアスタイルを工夫すれば、抵抗がないのではないでしょうか。ふんわりしたヘアスタイルではなく、前髪はペタッと横に流して分ける、髪は全部下ろさずにハーフアップにする、下のほうで一つ結びにするなどといったヘアスタイルなら、つぶれにくいかもしれません。
ヘルメットの正しい着用の仕方
ヘルメットは正しく着用ないと効果がない
ヘルメットをせっかく着用してても、実は正しくかぶれていないとう人も多いもの。多くの人は、斜めにかぶっていますが、正しくはまっすぐ!です。イラストを参考に、購入前の試着のときにも、正しくかぶって確認するようにしましょう。
- 頭囲を測り(先述のイラストを参考)、自分に合いそうなサイズを選ぶ。あごのバックルは外し、後頭部にアジャスターがついている場合は緩める。
- あごひもを両手で広げながらヘルメットをかぶり、あごひものバックルを締める。ヘルメットの先端が、眉毛のすぐ上にくるように、ヘルメットの角度と位置を合わせ、ヘルメットの前側を押さえながら後頭部のアジャスターがあれば調整する。
ヘルメットがぐらついていたり、頭頂部しか当たっていない感じがすれば大きい証拠。締め付けられたり、痛かったりするところがなく、帽子をかぶるような感じで自然にかぶれていればちょうどいいサイズです。
子どもがヘルメットをかぶるのを嫌がったら?
デコレートしてお気に入りに!
初めてヘルメットをかぶる場合、嫌がったり、泣いてしまったりする子もいます。でも「ヘルメットをかぶれたら、自転車に乗れるよ」などと励ますと、慣れてくる子がほとんど。それでも嫌がる場合は、ヘルメットの機能に影響がない範囲で、好きなキャラクターのシールを貼ったり、好きな柄をペイントしたりするのがおすすめ。「自分だけのヘルメット」という意識が高まって、かぶるのが楽しみになるようです。
自分で選ぶ!も大切
ヘルメットを購入するとき、つい親が選んでしまいがちですが、子どもと一緒に見て、子ども自身に選ばせるのもポイント。自分で選んだヘルメットには愛着が湧き、すすんでかぶってくれるようになるでしょう。
かぶらないなら、別の交通手段を
「どうしても嫌がるので、ヘルメットなしでもいいですか」と聞かれれば、「NO」と答えざるを得ません。命に代えられるものはないので、ヘルメットをかぶれないなら、ほかの交通手段を検討してください。
いまや子乗せ自転車は、子育て世代がベビーカーの次に買うものになっていて、育児用品の延長のように思っている大人もいます。でも、自転車は道路交通法では立派な軽車両です。自転車に乗る以上、ドライバーという意識を持って、安全面への配慮をいちばんに考えてください。正しくヘルメットを着用して、自転車ライフを安全に楽しみましょう。