成長が早く、買い替えの頻度も高い子どもの靴。「どうせすぐに履けなくなるから」と、サイズだけチェックして、何も考えずに選んでいませんか? 足は体の土台になる重要な部分。子どもの靴選びは生涯にわたってとっても重要なのです。子ども靴の専門家に靴の正しい知識について聞きました。
※当記事は2023年9月1日の取材に基づいています。
寺杣敦行さん
FHA(足と靴と健康協議会)認定、バチェラーオブシューフィッティング(上級シューフィッター)。「シューフィッター養成講座幼児子ども専門コース」講師。皇室御用達の靴メーカーに15年間勤務後、独立。2008年完全予約制の子どもの革靴専門店「ジェンティーレ東京」をオープン。一人ひとり違う足の特徴や歩き方をチェックし革靴をカスタマイズして販売している。
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正しい靴のサイズの測り方 チェック方法は?
靴のサイズはどうやって測るの?
靴のサイズは、足長(長さ)、足幅、足囲(太さ)をもとに、日本ではJIS(日本工業規格)で定められています。靴を購入するときに、ほとんどの人が22cm、22.5cmなど、足長だけを目安にしているかもしれませんが、実は「E」「EE」(メーカーによっては「ワイズ」と表現されることも)などで表示される足幅、足囲がとても重要です。足幅、足囲は人によって違います。だから足長だけを測って靴を購入しても、きつすぎたりゆるすぎたりしてしまうのです。
子どもの場合、女の子だと4歳、男の子だと6歳くらいから少しずつ大人の足のプロポーションに変わり、12歳から性差が出て、大人用の規格と同じになります。
成長の変化が早い子ども時代こそ、まめにサイズアップしていく必要があります。正しいサイズを測るには、専門家のいる店(※)に行くのがいちばんですが、購入する前に、できれば足長だけでなく、足幅と足囲のサイズを知っておくといいでしょう。
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» FHA(足と靴と健康協議会)
合っている靴を履いているかどうかのチェック方法
足の特徴は一人ひとり違います。どんなにいい靴でも、足と靴が合っていなければ、トラブルを引き起こしてしまいます。
家庭でのチェック方法は、まずは中敷きを出して足を乗せ、指先がどれだけ余っているかを確認します。そのあと、実際に靴を履いた状態でチェックすることをおすすめしています。
【チェック方法】
- 中敷きを出して足のかかとの端と中敷きのかかとの端を合わせて立つ。
- その状態で中敷きのつま先に最低10ミリ以上の余裕があるもの(3、4歳なら12〜13ミリ程度、つま先の細い靴の場合は15ミリ程度)がベスト。
- 靴に足を入れてかかとを床にトントン着け、靴のかかとと足のかかとを密着させる。
- そのままつま先を少し上げた状態で、足が前にすべらない状態で面ファスナーをしっかりと締める。足首まわり、足幅、足の甲にすき間がないか、きつくないかチェック。
- 最後に歩いてみて、かかとが脱げそうになっていないか、スムーズに歩けているかチェック。
いちばん大切なのは、靴を履いたときに足が靴にしっかり密着していること。靴のなかで足が前後左右にぶれないかどうかをチェックしましょう。
合わない靴を履くとどうなる?
3歳の女の子の足。量販店ですすめられるままに合わない靴を買い求めたところ、1週間後に痛々しい傷と水ぶくれができてしまいました!
足の成長が著しい時期に、合わない靴を履いて過ごしてしまうと、足のトラブルだけでなく、体全体のゆがみにもつながってしまいます。靴選びは、健やかな成長のためにとても大切なのです。
子どもの足にいい靴って? 買うときのポイントは?
子どもの靴の選び方
安価すぎる靴は要注意!どうせすぐに大きくなるからと、安価な靴を選びたくなる気持ちはわかります。ただ、1000円以下などの安価すぎる靴は、品質や設計に問題が多く、履くと足のトラブルが起きやすいだけでなく、全身のゆがみなど成長に悪影響を与えることも。
品質、設計ともに安心できる価格の目安は4000円以上。ただし、高価な靴ならいいというわけではありません。以下のチェックポイントを参考に選びましょう。
【子ども靴選びのチェックポイント】
□かかとに芯材が入っているもの
かかとがまっすぐになるような、しっかりした芯材が入っているもの。かかとがやわらかい靴は、履きやすい一方で、子どもがバランスを取りにくく、体のゆがみの原因に。後ろから見たときに、かかとからアキレス腱までまっすぐになっているのが理想です。かかとは12歳ごろに固まってくるので、それまでは足にフィットした靴を履くことが重要。
□足の付け根のラインで靴底が曲がるもの
親指の付け根から小指の付け根をつなぐ横のラインで、靴底がしっかり曲がること。ここが固く、正しい位置で曲がらないと、ちゃんとした歩き方ができなくなります。
□つま先に反り上がりがあるもの
横から見たとき、つま先が少し浮いている反りのことを専門用語で「トースプリング」といいます。この反りがある靴なら、子どもがつまずきにくく、歩きやすいのです。
□履き口がやわらかすぎないもの
靴を履くときに足を入れる部分を履き口といいます。履き口がやわらかすぎる靴は足をしっかり支えることができず、トラブルの原因に。履き口の形は、まん丸ではなく、縦長の丸(ローマ字のOのような形)を選びましょう。
また、スリッポンはつま先が広く、履き口も大きいので足を痛めたり、靴のなかで足が動いてねんざをしてしまったり、脱げてケガをしてしまうこともあるので、長時間は履かないようにしましょう。
ひも靴を選んだほうがいい?
自分で微妙なひもの調節ができるようになるのは小学校高学年くらいから。それまでは、面ファスナー(ベルクロやマジックテープと言われることが多いです)の靴で十分です。なかでも、調整部分にリングがついているものがおすすめ。子どもでも、ベルト部分を引っ張るだけで足の甲にぴったりフィットさせやすいでしょう。
大人の靴(スニーカー)の選び方
大人のスニーカー選びのポイントも、基本的に子どもの場合と同じです。
脱ぎ履きしやすいようにひもをゆるく結んで、履き口を広くしている人がいますが、締め付けがゆるいとつま先が前にすべって足を痛めたり、足の骨の配列が崩れて外反母趾の原因になったりすることも。
スニーカーのひもはしっかり結んで足の甲にフィットさせましょう。ただ、きつすぎても足が疲れてしまいます。できれば一度、スニーカーを購入する際にシューフィッターにチェックしてもらい、足に伝わるちょうどいい感触をつかんでおくといいでしょう。
ネットで購入する場合の注意点
足長のサイズだけを目安にネットで購入すると、合わない可能性大。足幅も含めて正しいサイズを知った上で購入しましょう。また、最近ではネット購入でも試し履きできる場合もあるので、そういったサービスを利用しましょう。
急成長する子どもの足、靴の買い替え時は?
靴の買い替えのサインは?
子どもは、よほど足が痛くならない限り、親に訴えることをしません。痛みを感じてからでは遅いので、3歳以上になったら4カ月に1度は中敷きを取り外してサイズチェックを。足の成長期は5〜9月といわれているので、夏休みが終わる直前くらいにチェックするのもポイントです。
中敷きには、子どもの指先の跡が付いているはず。中敷きの先端と足のつま先の差が5~7ミリになったら、買い替えのサインです。また、かかとが半分以上すり減っていたら、大人の靴のように修理に出すか買い替えを。
中敷きをチェック。この状態では、親指(母趾)と小指(小趾)がかなりきついはず。中敷きの先端とつま先の差が狭くなったら買い替えどき。
かかとがすり減ってしまう前に買い替えるのがベスト。まめに確認を!
子どもに人気「速く走れる靴」は何が違うの?
速く走れる靴より自分の足に合った靴を
速く走れるといわれる靴は、靴底のゴムの配合を変えています。走るときに、コーナーを曲がりやすいような工夫がされているものが多いようです。普通の運動靴よりも、靴底がやわらかくなっているので、普段履きをすると消耗が早く、靴底がすぐにすり減ってしまいます。運動会の練習や運動会当日に履くのはいいですが、普段から履くのはおすすめしていません。
何より運動しやすいのは、自分の足にぴったり合った靴。正しいサイズの靴で運動会に臨みましょう。
正しい靴の履き方
座って履くのが大事
正しい靴の履き方のポイントは、以下の3つです。特に子どもが小さいうちは、足元が不安定なので正しく履く習慣をつけることが、けが予防にもつながります。
<正しい靴の履き方>
- 椅子や床に座って履く。
- 靴に足を入れたら、かかとを床にトントンと着け、靴のかかとと足のかかとを密着させる。
- その状態のままで靴ひもや面ファスナーを、すき間がないようにしっかり締める。
立った状態で靴を履いてしまうと足に体重が乗って足の形が変わってしまいます。座って靴をちゃんと履いてから立つと、足と靴がぴったりフィットして、足が伸び広がらずにしっかりと支えられます。子どもが自分でしっかり面ファスナーを締められるようになるまでは、最後の仕上げは大人がサポートしてあげましょう。
靴のお手入れ、洗濯は?
洗うとサイズが縮んでしまうので要注意!
運動靴を洗ってしまうと、サイズが1cmくらい縮んでしまいます。日当たりのいいところに干してしまうとさらに縮み、中敷きがスルメのように固く、小さくなってしまうことも。上履きを洗濯機で洗ったり、運動靴をコインランドリーの靴専用洗濯機で洗ったりする人もいるようですが、靴の縮みを考えるとあまりおすすめできません。
靴の汚れはしっかり落としたいと思う人もいるかもしれませんが、そもそも靴の中は、病気になるほど不衛生ではありません。洗うなら軽く汚れを落とす程度にし、自然乾燥させるか、日陰で扇風機などに当てて乾かしましょう。暖房器具で乾かすとサイズが縮んでしまうので避けたほうがいいでしょう。
靴は子どもの成長や全身の骨格にまで影響を与えてしまいます。ピッタリの靴を親子で選んで、元気に遊びたいですね!