「エデュテイメント」とは、教育(エデュケーション)と娯楽(エンターテインメント)を組み合わせた造語。子どもたちが「楽しみながら学ぶ」体験を通して、自主的に知識を身につけていくことを意味します。2019年に「教育界のノーベル賞」と呼ばれる「グローバル・ティーチャー賞」トップ10に選ばれた正頭英和先生も「エデュテイメント」を推進するひとり。今、「エデュテイメント」が必要な理由と、日常生活の中でできることについて教えてもらいました。
監修 正頭英和(しょうとう ひでかず)先生
1983年大阪府生まれ。小学校教諭。株式会社Edutainment Education代表取締役。人気ゲーム「マインクラフト」を活用した問題解決型授業が評価され「Global Teacher Prize 2019(グローバル・ティーチャー賞)」のトップ10に選出(小学校教員としては日本初)。著書に『世界のトップティーチャーが教える 子どもの未来が変わる英語の教科書』(講談社)。
1.子どもの幸せな将来に必要な力は?
10年後も100年後も変らない、共通のものとは?
「10年後に必要な能力はなんだと思いますか?」とよく聞かれますが、今やAIが絵を描いたり、物語を作ったり、作曲をしたりする時代。人がやりたいと思うクリエイティブな仕事までAIに取って代わられる日がくるなんて、少し前までは思いもしませんでした。
だから、将来のために身に付けるべき能力はわからないけど、10年後も100年後も変わらないものがあるとすれば、それは「子どもに幸せな人生を送ってほしい」という親の想いではないでしょうか。
「好き」が多いと、人生はより豊かに!
では、どんな人が幸せかといえば、ぼくは「好き」がたくさんある人だと思います。絵を描くことが好きな人が、たとえその仕事をAIに奪われてしまっても、それでも絵を描くことが好きだから描き続けるだろうし、あれもこれもと「好き」がたくさんあれば、幸せな人生を送ることができると思いませんか?
そうなるためには、なんでも「好き」になれることが大切。普段、小学校の児童たちには、「あなたが嫌いで仕方がないものを大好きだという人もいる。だから視点を変えて見てごらん」とよく話しています。
視点を変えれば、世界は「面白い」であふれている
いろいろな角度から物事を見られるようになると、嫌いだったりどうでもよかったりしたことが、興味深く思えたり、好きなれたりします。
「この世は生きるに値する」。これはぼくの好きな言葉ですが、この世の中には面白いことがたくさんあって、一生かけても知的好奇心が満たされることはありません。子どもたちには、そういう世界観を育んでほしいと思っています。
2.エデュテイメントとは?「好き」を見つける第一歩
今の子どもは、モチベーションが続かない⁉
モチベーションが続きづらいのは今どきの子どもの特徴のひとつ。その原因のひとつは、コンテンツの豊富さではないでしょうか。「これがいい」と思っても、「ほかにもあるんじゃないか」と目移りするんですね。
しかし、みんながみんなそうかといえば、なかにはモチベーションが長く続く子もいます。そういう子の原動力はなにかというと「調べたい」「作りたい」「試したい」という3つの欲求。この3つの欲求が「好き」や「追求」への第一歩になるのです。
「体験の多様性」で「好き」に出合う確率を上げる!
また、もうひとつの特徴に「多様性」があります。ひと昔前はみんなが同じドラマを見て翌日はその話題で持ちきり、ということがよくありましたよね。ですが、今は人それぞれ。だれが何にハマるという法則性もないので、とにかくその子が好きになりそうなものにたくさん触れさせてあげること、つまり「体験の多様性」が必要なのだと思います。
子どもの行動基準は「楽しい」か「楽しくない」か
ぼくは、この「調べたい」「作りたい」「試したい」という3つの欲求と、「体験の多様性」をつなぐものが「エデュテイメント」だと考えています。
大人は勉強と遊びを分けますが、本来子どもは勉強と遊びを区別しません。楽しくないから勉強しないのであって、遊びが楽しくなければ遊ばないし、勉強が楽しければ夢中で勉強をするはず。だからこそ「エデュテイメント」で楽しい入口を作ってあげることがすごく大切で、その先に「調べたい」「作りたい」「試したい」という欲求が待っているわけです。
「のめり込む」経験で、折れない心を育む
とはいえ、ハマったとしてもだいたい2〜3カ月で飽きはきますよね。ですが、途中で飽きてしまったらダメということではなく、大事なのはある程度「のめり込む」経験をすること。大人になるまでに何度か「のめり込む」経験をしたことがある人は、なにかイヤなことがあったときに「Aがダメでも Bがある」という発想ができる。「のめり込む」という経験は、知識を得るだけではなく、しなやかで丈夫な心も育んでくれるのです。
3.エデュテイメントは、家庭でも仕掛けられる
「体験」ってどんなこと?定義を見直そう
ぼくは普段、ひとつひとつの授業が子どもたちにとって「体験」になるように意識していますが、ぼくが決めている「体験の定義」は、「調べる」「作る」「試す」こと。
体験というと、山や川に連れていくなど、大掛かりな遠出のおでかけをイメージする方が多いのですが、そうではなく、子どもの「調べたい」「作りたい」「試したい」を引き出すものと捉えてみてください。そうすると、実は日常生活にも体験はあふれているんですね。家庭でもエデュテイメントのフックを仕掛けてあげることができれば、子どもの生活はあらゆる体験に満ちて、好き!楽しい!に出合える可能性が高まるはずです。
エデュテイメントの仕掛けかた
「仕掛ける」というのは、決して難しいことではありません。たとえば、子どもに料理を手伝ってもらおうとするときに、「お父さんの好きなものを調べてきて」と言ってみる。たまご料理が好きといえば、一緒にメニューを考えたり、買い物に行って材料を選んだり、調理のときは塩を1g多く入れたらどれだけ味が変わるかを試してみたり…。
お母さんお父さん自身も、子どもと同じように、調べたい!試したい!という気持ちをもって仕掛けてみるのがいいと思います。
親の「体験疲れ」をなくすために
子どもに豊かな体験をさせてあげることは大事ですが、それ以前に、一番の良い教育は「親が笑顔でいること」です。親の笑顔こそが、子どもが安心して好奇心をのばせるベース。だけど、今は親が忙しく、時間的にも体力的にも余裕がない。いつも笑顔でいることがとても難しい時代ですよね。せっかくいろいろな体験をさせても、ずっと親が怒っていたり疲れていたりしては台無しです。
それならば、いろいろな教育アプリや学習ツールを活用して、親の負担を減らしてみてほしいと思います。今は、楽しみながら学ぶエデュテイメントの考えを取り入れたアプリや商品も多々あります。もちろん、子どもの個性はさまざまですし、教材やアプリに正解が存在するわけでは決してありません。ですが、日常を体験であふれされるヒントや、家庭で活かせる考え方がたくさんつまっています。
「子どもにより良い体験をさせてあげたい」と日頃から考えているご家庭にこそ、体験疲れや子育て疲れに陥らずに、エデュテイメントを通して、親子の笑顔を増やしてほしいと思います。
<正頭先生監修 体験活動エデュテイメント「OYACONET-QUEST」>
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株式会社JTBが開発中の体験型教材「OYACONET QUEST(おやこネット クエスト)」は、ミッションチャレンジのよう仕立てた小学生向けの体験型教材。子どもたちは、ゲーム感覚で楽しみながらミッションクリアを目指すなかで、さまざまな体験をし、知識を得ることができます。また、それぞれのミッションには日常生活を体験活動へと昇華させるヒントがいっぱい。現在、体験参加をしていただけるモニターを募集をしています。ぜひこの機会に、エデュテイメントを親子で体験してみませんか?