47都道府県それぞれの代表的な「特産品」をクローズアップ。【知る】【つくる】【学ぶ】の3つの視点から、特産品と各都道府県の関係をひも解きます。各地の歴史や風土だけでなく、意外な理由で生まれた特産品は、知れば知るほどおもしろい!
富山県で紹介するのは「ホタルイカ」。体長10㎝ほどの小ぶりのイカはおいしいだけでなく、ホタルのように美しく光るのです。「富山湾の神秘」のことを知れば、実際に見て、食べてみたくなるはず!
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【知る】闇夜で光る!?ホタルイカの不思議な生態に迫る
画像:PIXTA
毎年3月から5月ごろ、富山県滑川(なめりかわ)市を中心に富山市から魚津(うおづ)市にかけて富山湾の沿岸では、青白く光りながら、波に乗って大量のホタルイカが打ち寄せてきます。この幻想的な光景が見られる海面は「ホタルイカの群遊海面」と呼ばれ、国の特別天然記念物に指定されました。
滑川とホタルイカとの関係は古く、豊臣秀吉が関白になった天正13年(1585)ごろには、すでに漁獲された記録が残っています。明治38年(1905)には東京大学教授の渡瀬庄三郎博士がホタルのように発光する姿から「ホタルイカ」と命名し、明治45年(1912)には観光事業がスタートしました。
富山湾でホタルイカがなぜとれるの?
ホタルイカの大群が見られる現象は珍しく、日本では滑川近くの富山湾に限られています。富山湾にホタルイカが押し寄せてくる理由は、海岸から急に深くなるすり鉢状の富山湾の地形と海流が関係していると考えられています。
湾の底から上に向かって流れる海流、湧昇流(ゆうしょうりゅう)が、岸近くまでホタルイカを押し上げます。加えて、ホタルイカは日中は沖合の200~400mの深海(対馬暖流水~深層水)に生息し、夜いっせいに産卵やエサを追うために、海面近くまで浮上するという習性も。そのため、富山県は全国有数のホタルイカの漁獲量を誇るのです。
富山県のホタルイカがおいしい理由
シーズンの春になると、富山県屈指の漁獲量を誇る滑川漁港をはじめ、県内すべての漁港でホタルイカが水揚げされます。その際、定置網によるホタルイカ漁を行っているのは全国でも富山だけ。ほかの地域では、ホタルイカを底引き網漁で漁獲するのが一般的です。
(底引き網漁とは、袋状の網を海底まで沈め、船で引っ張りながら魚を捕獲する漁法を指します)
一方、海中に網を固定し、回遊する魚類を待ち受けてとる定置網で漁獲されたホタルイカは、傷つきにくく体がツヤツヤ。また、ホタルイカの大群が集まる富山湾の漁場は漁港から近いこともあり、鮮度も抜群です。
さらに富山県で水揚げされるホタルイカは、ほとんどがメス。オスは深海でメスと交接した後、一生を終えてしまうからです。産卵のために栄養を蓄え、丸々と太ったメスがとれるのもおいしい理由です。
どうして青白く光るの?
©(公社)とやま観光推進機構
ホタルイカの青白い光は、熱くならない光なので「冷光(れいこう)」といいます。目の周りや脚など体に無数の発光器を持っており、その中で発光物質(ルシフェリン)に発光酵素(ルシフェラーゼ)が作用して発光します。光る理由は、3つが考えられます。
「身を守るため」
外敵生物と接触した際、相手を驚かすために光るといわれています。
「光で身を隠すため」
昼間、海の中に太陽光が差し込むと、自分の身体に影ができて外敵に見つかりやすくなります。そこで自ら微小に発光することで、周りに溶け込むカモフラージュをするためだと考えられています。
「光で会話するため」
ホタルイカの眼は青・水色・緑の3種類の色の識別が可能。仲間へ合図や会話をするために光り、集団行動ができるともいわれています。
【つくる】家庭でホタルイカ料理に挑戦
春の到来を告げる富山の郷土料理である「ホタルイカの酢味噌和え」と、子ども向け洋風料理「ホタルイカのトマトご飯」のレシピをお届け。親子で作って食べて、ホタルイカ料理のデビューをしてみては?
子どもも食べやすい!定番料理「ホタルイカの酢味噌和え」
©(公社)とやま観光推進機構
新鮮なうちにゆでて食べるホタルイカは格別で、「ホタルイカの酢味噌和え」は最もポピュラーな料理。春になると、富山県の漁場がある港町の家庭の食卓や飲食店で登場します。アサツキやワケギを添えると彩りがよく、おもてなしの一品としても振る舞われるそうです。
ホタルイカはゆでると胴が丸くなりツヤが出て、中はトロトロ、外はプリプリの食感になります。また、身が薄くて噛みやすいので子どもでも食べやすいのもポイントです。
目の部分は食べると硬くて食感が残り、目の周りにある黒い部分が臭みの原因になります。なので、目は指でつまみ取り、黒い部分はツメでこすり落とす下処理をお忘れなく。
簡単にレシピを紹介
- 水に塩を加え、沸騰させたらホタルイカを入れてゆで上げ、目を取り除きます。
- 薬味のワケギはサッと熱湯に通して水切りした後、3~4cmの長さに切ります。
- 味噌、酢、からし、砂糖を合わせて辛子酢味噌を作ります(子どもが食べる場合、からしは入れなくてOK)
- ホタルイカとワケギを酢味噌で和えたら完成です!
洋風なら「ホタルイカのトマトご飯」がおすすめ
和食の食材として使われるイメージがあるホタルイカですが、パスタやグラタンといった洋風の料理にも合います! 今回はトマトの酸味がマッチし、子どもウケもよさそうな「ホタルイカのトマトご飯」のレシピをお伝えします。
ホタルイカには、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB12が豊富に含まれています。なかでも目や皮膚、粘膜を健康に保つのに必要なビタミンAは、わずか50gで成人の一日に必要な摂取量をとれるほど!さらに鉄分、亜鉛などのミネラルもたっぷりですよ。
簡単にレシピを紹介
- タマネギをみじん切ります。
- フライパンでオリーブオイルを熱し、タマネギを炒めます(大人向けにする場合はおろしニンニクも投入)
- ②にトマト缶、塩、水を加えて、中火で10分ぐらい煮込みます。
- タマネギが柔らかくなったら、ホタルイカとしょうゆを投入し、サッと煮ます。
- ご飯に④をかけたらできあがり!
【学ぶ】ホタルイカについて学べるスポット
滑川漁港近くの「ほたるいかミュージアム」や春限定の観光船ツアー「ほたるいか海上観光」で、親子でドキドキワクワクの体験を。ホタルイカのおみやげを買える老舗にも立ち寄りましょう!
ほたるいかミュージアム(富山県/滑川市)
「ほたるいかミュージアム」は、ホタルイカの生態や漁について学べる体験型の施設です。館内では、ホタルイカの体や発光の仕組み、定置網を使ったホタルイカ漁について、映像や展示で分かりやすく解説。春には、神秘的な青い光を間近で見られる「ホタルイカの発光ショー」が行われます。
同じく春限定のホタルイカにさわることができるタッチプールは、子どもたちに人気。ダイオウグソクムシやチンアナゴの生体展示は、通年見学できます。
住所 | 富山県滑川市中川原410 |
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問合先 | 076-476-9300 |
営業時間 | 9~17時(最終入館~16時30分) |
料金 | 大人(高校生以上)620円、小人(3歳〜中学生)310円 ※2023年度の料金。ホタルイカのシーズン(3月下旬〜5月下旬)は異なる |
定休日 | 6月1日~翌年3月19日の火曜(祝日の場合は翌日)、年末年始、1月最終月曜から3日間 |
アクセス | 公共機関:あいの風とやま鉄道・富山地方鉄道滑川駅から徒歩8分 車:北陸自動車道滑川ICから5㎞10分 |
駐車場 | あり/160台/無料 |
URL |
ほたるいか海上観光(富山県/滑川市)
早朝に滑川漁港を出港し、漁をする様子を観光船から見学できる春限定ツアーが「ほたるいか海上観光」です。定置網を引き上げる「網起こし」の様子や、幻想的にきらめくホタルイカは必見。船から望む立山連峰の朝焼けなども思い出に残る景色になるはず。
ツアーは夜明け前に実施されるので、滑川市内の宿泊施設に泊まれるセットプラン(完全予約制)を利用するのがおすすめ。
欠航だった場合は、乗船日の営業時間内に無料で「ほたるいかミュージアム」を見学できます。
住所 | ※集合場所 富山県滑川市中川原410(ほたるいかミュージアム内売店) |
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問合先 | 076-476-9307 |
営業時間 | 2~4時頃 |
定休日 | 期間中は無し ※海上の状況等により欠航する場合あり |
料金 | 大人8000円、小、中学生5000円 ※未就学児は乗船不可 |
アクセス | 公共機関:あいの風とやま鉄道・富山地方鉄道滑川駅から徒歩8分 車:北陸自動車道滑川ICから5㎞10分 |
駐車場 | あり/160台/無料 |
URL |
カネツル砂子商店 本店(富山県/滑川市)
110年以上の歴史をもつ水産加工会社「カネツル砂子商店」の販売店。富山湾でとれた海の幸を使った商品の数々は、全国的にも評判です。ホタルイカの加工品では、刺身のようなプリッとした食感と濃厚なうま味が魅力の「ほたるいか活き漬け180g」1620円などを通年で買えます。
例年3月1日のホタルイカ漁解禁後から5月初旬ごろまでは、朝どれの生ホタルイカやその刺身(各時価)などを販売。なお、同商店には「ほたるいかミュージアム店」もあります。
住所 | 富山県滑川市北町1253 |
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問合先 | 076-475-0035 |
営業時間 | 8時30分~17時 |
定休日 | 日曜、祝日(12月、3~5月は営業) |
アクセス | 公共機関:富山地方鉄道中滑川駅から徒歩10分、あいの風とやま鉄道・富山地方鉄道滑川駅から徒歩13分 車:北陸自動車道滑川ICから4.6㎞10分 |
駐車場 | あり/5台/無料 |
URL |
【SDGs】富山県のホタルイカを自由に食べたり守ったりするために
富山県で収穫されるホタルイカは、富山湾の環境保護への取り組みも行われ、漁獲されています。この先も、ホタルイカを変わらず自由に食べたり守ったりするためにはどのようなSDGsを意識すればいいのか、親子で話し合ったり、考えてみるといいですね。