ゲームやスマホは、今や子ども同士のコミュニケーションツールのひとつになりつつあります。子どもがゲームにハマりすぎる様子を心配に思う親も多いでしょう。ゲームに夢中になるのはなぜ?成長への影響は?気になる不安と、時間制限やルール作りについて、脳科学者の瀧靖之先生に教えてもらいました。
監修:瀧 靖之(たき やすゆき)先生
東北大学加齢医学研究所教授
医師。医学博士。東北大学加齢医学研究所および東北大学東北メディカル・メガバンク機構で脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究に従事。読影や解析をした脳MRIはこれまで16万人以上にのぼる。
子どものゲーム依存、親の不安は?
今は、親子でゲームを楽しむという家庭も多くみられます。しかし、子どもが長時間ゲームに没頭する様子には、自分のことはさておき、「悪い影響があるのでは…?」と心配になってしまうのが親心ですよね。
『るるぶKids』で行った座談会やアンケートでは、主に下記のような声が寄せられました。
- 朝までゲームをすることもあり、健康や発達に影響するのでは?と心配
- 画面の見過ぎで、視力が低下しないか
- ゲームに固執しがち。何をするにおいても「ゲームをするために」という考えをする
- 宿題などやるべきことがおろそかになっている
など
上記のアンケートからは、ゲームには「夢中になりすぎる」という傾向があることがよくわかります。脳科学者の瀧先生によると、その理由は「脳の仕組みと関係しています」とのこと。そして、子どもには大人よりも依存しやすい傾向があるようです。
ゲームによる成長への影響
ゲームをやめられないのはなぜ?
『楽しい、嬉しい』などの感情が湧くと、脳の扁桃体から神経伝達物質のドーパミンが放出されます。ドーパミンは、幸福感をもたらしてくれる脳内ホルモンのひとつ。特にゲームは、音や映像、ストーリーが多重に脳を刺激するため、『楽しい』という気持ちが湧きやすく、どんどんドーパミンが放出されていきます。「なかなかやめられない」という状況になるのは、ゲームが持つ優れたエンタメ性と、このドーパミンによるもの。大人でも子どもでも同じですが、特に脳の発達が未熟な子どもは自主的にやめることが難しく、行動依存になりやすい一面をもっているのです。
幼児期からのゲームは悪影響?
ゲームで遊ぶこと自体は、決して悪いことではありません。子どもは幼児期から「知りたい、やりたい」という知的好奇心がどんどん旺盛になり、またそれにより脳の発達が促されます。ですから、この時期にゲームに触れれば、夢中になるのは当然のことでしょう。
しかし、知的好奇心の本質は、「苦労や忍耐を伴ってでも、もっと経験したい」と思うことにあります。ゲームは、ほかの遊びと比較すると手軽に成果や喜びを得られやすいので、幼児期にゲームばかりをやりすぎると、逆に知的好奇心の芽を摘んでしまうことにもなりかねないのです。
ゲームをはじめて良い年齢は?
ゲームをはじめるタイミングの理想は、年齢というよりも、周りの友達が始めて必要になった時だと思います。ゲームは現代ではコミュニケーションツールのひとつとして機能しているので、コミュニケーションスキルを高めることに役立ちます。ただし、その時に大切なのは、年齢制限のあるゲームや親が適さないと判断したゲームは、適正年齢になるまでやらせないこと。たとえ友だちがやっていたとしても、そこは親として、理由をしっかりと説明しましょう。小学生になると友だちの影響はより大きくなりますが、「子どもが今どんなゲームをやっているか」を親はしっかり把握しておくことが大切です。
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ゲーム依存にしない!親の関わり方
ゲーム以外の遊びの選択肢をつくる
ゲームに子どもが依存しすぎないようにするには、「ゲーム以外の遊びの選択肢をつくってあげること」が重要です。例えばスポーツや釣り、昆虫採集など、好きな遊びがあると、天気が良い日は外に出て遊びますよね。数ある好きな遊びのなかの「ゲームもそのひとつ」となるのが大切です。
そのためには、「好きなこと、やりたいことが(ゲーム以外にも)たくさんある!」という気持ちが育める環境を、ぜひ親が意識的につくってあげてください。先述したように、子どもは好奇心を広げることで脳がぐんぐん発達していきます。だからこそ、環境さえ与えれば、さまざまなことに興味をもっていきます。ゲーム一択とならないためには、ぜひさまざまな遊びを体験させてあげましょう。
コミュニケーションを意識的に増やす
ゲームに夢中なときほど、親子のコミュニケーションが大切です。ぜひ、意識的に親子の会話を増やしてください。子どもの成長においては、親子のリアルな会話やコミュニケーションこそが、幸せや安心感のベースとなるからです。
ゲームのせいで勉強がおろそかになったり、やるべきことができなくなったりしている場合は、頭ごなしに禁止するのではなく、「なぜゲームよりもそれらが必要なのか」をていねいに伝えてあげましょう。勉強は、子どもの将来の夢をかなえるために必要なもの。「どうせきかないから」とあきらめずに、年齢に応じたわかりやすい言葉で、根気よくコミュニケーションをとってあげてください。
ゲームをひとりでやらせるのではなく、親子で一緒に楽しむこともおすすめです。ゲームのおもしろさや難しさを分かち合うと、より会話もはずみますね。対戦ゲームで戦う時は、ぜひ全力でぶつかってあげましょう。親に勝てたという経験は、子どもの自己肯定感に大きくつながる一面もあります。
子どもの言葉遣いが悪くなったと感じたら
子どもがゲームをしている最中に乱暴な言葉遣いが出ていても、ついうっかり、ということがあります。プレイ中だけであれば、それほど心配に思う必要はありません。もし学校や友達と遊んでいる時にも悪い言葉遣いが出ているようであれば、しっかりと注意してください。
時間制限は大事!ルールづくりのコツ
①時間制限の決め方
子どもがゲームで遊ぶ際、例えば「1日1時間まで」と時間制限を設けている家が多いのではないでしょうか。時間のルールを設けるのはとても良いこと。制限する時間はそれぞれの家の方針で決めて問題ありませんが、ある程度「満足感」を感じられることが大切です。あまりにも短いと不満が残ってしまい、他のことにうまく意識を移せなくなってしまう可能性もあります。 逆に、会話・睡眠・勉強などが生活に影響がでてしまっているなら、ゲーム時間が長すぎる証拠なので、短くしましょう。
目が疲れるから基本的には30分、勉強を頑張った日は1時間、など段階を分けるのもおすすめです。
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②自分で決めさせる
親が許容できるゲーム時間を決めたら、それを一方的に押し付けるのではなく、選択肢を与えて子ども自身に決めさせてみましょう。例えば、「今日は〇〇があるから、ゲーム時間は30分、45分、1時間のどれか」といった具合です。曜日ごとに決めるのもいいですね。 子どもに選択権を与えると、責任感が芽生え、ルールを守る意識が育ちやすくなります。
②守れなかったら叱る
もし、子どもが自分で決めた「今日のゲームは30分」のルールを破った場合、親は厳しく叱るべきか、今日は仕方ないと考えるか、悩みどころですよね。
ゲームで遊ぶ時間に限らず、友達との約束破るなどルールを守らなかったときは、しっかり子どもを叱ることが大切だと思います。このような場合は厳しくしたほうが、子供の自己肯定感、やり抜く力が高まります。ただ、頭ごなしに叱るのでなく、何が良くないかを伝えるのを忘れないこと。一番悪いのは褒めも叱りもしない、無関心。褒める時は褒める、叱るときは叱る。はっきりした態度を取って接するのは、親子関係においてとても重要です。
ゲームの良さも理解
ゲーム=悪では決してありません。ゲーム内で登場した実在の物質や生きものに親しみを覚え、名前を覚えるなど、ゲームが学びの入口になることも大いにありますね。私自身もゲームが大好きで、子どもと一緒に対戦ゲームを楽しんでいます。行動依存や視力への影響を及ぼさないコントロールさえできれば、楽しいコミュニケーションツールのひとつであることは間違いありません。過度に不安を抱きすぎずに、親子で一緒に工夫をしてみてください。
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