としまえんはいつまで?最後の夏休みに乗りたいおすすめベスト5&遊園地王の思い出

佐々木隆のアイコン佐々木隆

昭和40~50年代の「としまえん」

これは本当の話でしょうか? 2020年8月31日、東京を代表する遊園地「としまえん」が94年の歴史に幕を閉じます。遊園地王・佐々木隆にとっても、それはそれはお世話になった愛すべき遊園地「としまえん」、どうやら、閉園は現実の話のようです。ただ、このまま黙って閉園を見届ける気にもなれず『るるぶKids』の読者の皆様に向けて「としまえん」の記事を残したいと思います。

最後の夏に乗っておきたいアトラクション! 100年近くある長い歴史! 今はなき名作アトラクションや“あの”広告ポスター。まさに日本の遺産とも言うべき遊園地「としまえん」の足跡を、さまざまな思い出とともに、たどっていきたいと思います。

上写真:昭和40~50年代の「としまえん」。中央のアトラクション「フライングパイレーツ」をはじめ、右下に見える「サイクロン」、左下の「フリュームライド」など、どれもが動いている、実はなかなか撮影できない写真です

目次(index)

最後の夏休みに乗っておきたい!「としまえん」おすすめベスト5

2020年8月に乗ることができる「としまえん」のアトラクションなどから“絶対乗っておいたほうがいい”ものを5つセレクトしました。つまり、これが遊園地王にとっての「としまえん」ベスト5です。

1.1907年生まれの回転木馬「カルーセルエルドラド」

平成11年(1999年)、テレビ東京『TVチャンピオン』第4回遊園地王選手権、滋賀県の遊園地「びわ湖タワー」(現在はありません)での2回戦。遊園地名物の観覧車「イーゴス108」の狭いゴンドラ内で、とてつもなく大きな白い紙を開いて、そこに書いてある情報で“どこのなんていうアトラクションか”を当てる問題がありました。

その答こそ「としまえん」の回転木馬「カルーセルエルドラド」。この問題に早押しで正解して2回戦を突破。これをきっかけに決勝まで順調に進み、佐々木隆は晴れて第4代遊園地王となれたのです。ひとつめのアトラクションは、その思い出深い「カルーセルエルドラド」です。

「カルーセルエルドラド」の外観/としまえん(東京都/練馬区)

歴史ある「カルーセルエルドラド」の外観

「カルーセルエルドラド」は1907年(日本は明治40年)生まれ、ドイツ製の回転木馬です。しばらくは、ヨーロッパのカーニバル巡業で人気を博していましたが、戦争など理由により、1911年、アメリカ・ニューヨークの遊園地に送り出されました。ここでも遊園地の名物だった回転木馬ですが、1964年の遊園地閉園に伴い撤去・解体。これでお別れかと思われたところを「としまえん」が購入し、1969年(昭和44年)、貨物船で日本へとやってきたわけです。

「回転木馬」がアメリカから日本へ輸送されるときの様子/としまえん(東京都/練馬区)

アメリカから日本へ輸送されるときの様子。コンテナに「THE ELDORADO」の文字が見えます

解体された回転木馬の木馬たち/としまえん(東京都/練馬区)

解体された回転木馬の木馬たち

解体された状態でやってきた回転木馬は、専門家監修のもと、入念な修復作業を経て、できた当時の姿に復元され、昭和46年(1971)4月3日から「としまえん」で稼働。「カルーセルエルドラド」が日本にお目見えしたのです。

約2年かかった回転木馬の修復作業の様子/としまえん(東京都/練馬区)

修復作業には約2年かかりました。大変な作業だったと想像できます

「カルーセルエルドラド」のすごさは、まず、主役である木馬の表情がすべて違い、装飾の彫刻もすべて木製で、木馬・装飾すべて手彫りということです。だから、見ているだけで味わい深く、どこか荘厳な雰囲気を醸し出しています。そして、乗り場が3段階に分かれているのも大きな特徴。乗る場所で速さが違うんですよ。

回転木馬/としまえん(東京都/練馬区)

すべてが異なる木馬の表情をよ~く観察してみてください

回転木馬に乗っている馬車/としまえん(東京都/練馬区)

荘厳で豪華な造りの馬車。ほかにもさまざまなデザインの乗り物が並んでいます

回転木馬の天井の装飾/としまえん(東京都/練馬区)

天使たちが舞う天井の装飾にも注目

2010年8月7日「カルーセルエルドラド」は、機械仕掛けの芸術的乗り物で世界的に貴重な文化遺産として『機械遺産』に認定されました。「カルーセルエルドラド」は日本、いや世界の遺産なのです。閉園前に一度乗られることを強くおすすめします。

日本機械学会が『機械遺産』に認定/としまえん(東京都/練馬区)

日本機械学会が『機械遺産』に認定しました

2.川を渡りトンネルに突入するコースター「サイクロン」

昭和40年(1965)に登場し、遊園地を代表するコースターとなった「サイクロン」。これも、はずせません。速さや高さといったスペックは、その後、次々と誕生した日本の絶叫コースターには及びませんが、途中トンネルに入ったり、園内にある川を渡ったりというコースレイアウトのおもしろさは秀逸で何度も乗りたくなるんです。身長110cm以上OKですので、親子でぜひ!

起伏に富んだコースが魅力の「サイクロン」/としまえん(東京都/練馬区)

起伏に富んだコースが魅力。春にはコースの周囲に桜が咲く“お花見コースター”として人気でした

「サイクロン」開業当初のトンネル内のイメージ/としまえん(東京都/練馬区)

「サイクロン」開業当初のトンネル内のイメージ。レインボーカラーの照明があったのですが、たまたま消灯しているときに走行させたら真っ暗闇でスリルが倍増。以降、照明なしで走ってきました

3.水にスプラッシュするパイオニア「フリュームライド」

水路を進み、クライマックスで滝壺にスプラッシュする、いわゆるウォーターライドのパイオニア。登場したのは昭和45年(1970)でした。我が家の玄関に、この「フリュームライド」で落下するときの家族4人の写真が飾ってあります。2人の娘たちはもう30代…ファミリーの大事な大事な思い出です。こちらも身長110cm以上OK。

落下してスプラッシュする「フリュームライド」/としまえん(東京都/練馬区)

やはり、この落下してスプラッシュ! が「フリュームライド」の醍醐味です

4.遊園地のシンボル的存在「フライングパイレーツ」

あとで少し紹介しますが“うらやましいぞ!!Jリーグ”“祈 景気回復”といった「としまえん」の広告ポスターに登場していた「フライングパイレーツ」。大型船が振り子のようにスイングを繰り返します。2台が同時に稼働しているときの迫力はかなりのものです。身長120cm以上OK。小学校中学年くらいから大丈夫ですよ。

スイングにより高さ45mまで上昇する「フライングパイレーツ」/としまえん(東京都/練馬区)

船は海賊船と商船の2隻。スイングにより高さ45mまで上昇します

5.世界初の流れるプールやスライダー「としまえんプール」

アトラクションではありませんが、はずせないのが「としまえんプール」。毎年、夏のプール開きでテレビに登場していた、いわゆる“東京の夏の風物詩”のひとつでした。昭和40年(1965)に登場した世界初の「流れるプール」や、ウォータースライダーが31本(開業当時)、交差するように設置された「ハイドロポリス」など、まる1日遊べる東京を代表するプールでした。

「としまえんプール」全景/としまえん(東京都/練馬区)

手前が水の絶叫マシン「ハイドロポリス」(身長110cm以上OK)、奥が「流れるプール」などです

大正15年開園!「としまえん」94年の歴史

おすすめベスト5の次は「としまえん」の歴史をたどってみましょう。開園はなんと大正15年という古さ。西暦でいうと1926年、100周年まで、あと6年だったのです…惜しい!

開園~戦前の創生期「豊島園は豊島区にはありません」

「豊島園」は、大正15年(1926)に一部、翌年の昭和2年(1927)に全面開園しました。その名称から豊島区にあると思われがちですが、実は練馬区にあります。室町時代に一帯を治めていた豊島氏にちなんで「豊島園」と名付けられたとのこと。つまり、豊島区とは何の関係もないんですね。

昭和13年(1938)頃の入園口/としまえん(東京都/練馬区)

昭和13年(1938)頃の入園口。“緑の豊島園”“体位向上”“簡易保険加入者御優待デー”などの表示が見られます

開園当時は運動施設、ボートハウスなどとともに池へスプラッシュするアトラクション「ウォーターシュート」がすでに設置されており大人気でした。夜間開園や花火なども実施していたそうです。

昭和初期の「豊島園全景」/としまえん(東京都/練馬区)

昭和初期の「豊島園全景」、いわゆるガイドマップです。中央に「ウォーターシュート」があります

戦後の遊園地成長期「世界初の流れるプールが登場」

第二次世界大戦で一時閉園する頃には「豆汽車」「飛行塔」などのアトラクションもあった「豊島園」。戦後には遊園地を再開し、さまざまな乗り物とともに昭和32年には「昆虫館」開館、昭和40年(1965)に世界初の「流れるプール」をオープンしました。まさに遊園地「豊島園」の成長期です。

「空飛ぶ電車」と「ユネスコ列車」/としまえん(東京都/練馬区)

上を走るのが日本初の懸垂型モノレール「空飛ぶ電車」、下を走るのが「ユネスコ列車」。昭和26年(1951)頃の絵はがきより

昭和40年代のプールの様子/としまえん(東京都/練馬区)

昭和40年代のプールの様子。芋洗い状態の典型のような「流れるプール」。すごい人気でした

昭和~平成初期の最盛期「ピーク時は入園者数約390万」

昭和40年代後半から昭和50~60年代、そして平成の初期まで。これが遊園地の最盛期でした。前述の「カルーセルエルドラド」「サイクロン」「フリュームライド」が導入された昭和40年代、ココは日本最先端の遊園地だったと言っても過言ではないでしょう。

昭和45年(1970)頃の「豊島園案内図」/としまえん(東京都/練馬区)

昭和45年(1970)頃の「豊島園案内図」。「サイクロン」や「流れるプール」そして「観覧車」などもあります

昭和50年代、次々と絶叫マシンを導入します。「コークスクリュー」「フライングパイレーツ」「シャトルループ」…遊園地絶叫ブームの先頭を走っていました。それは昭和60年代から平成初期にかけても続き、プールの「ハイドロポリス」や「トップスピンW」などが人気となり、平成4年(1992)に年間入園者数約390万人を記録。遊園地「豊島園」のピークを迎えました。

昭和50年(1975)頃の入園口風景/としまえん(東京都/練馬区)

昭和50年(1975)頃の入園口風景

昭和54年(1979)に登場した「コークスクリュー」/としまえん(東京都/練馬区)

昭和54年(1979)に登場した「コークスクリュー」。閉園まで現役で稼働予定です

平成~令和の変革期「温泉やコスプレで回復途上…しかし」

昭和58年(1983)「東京ディズニーランド」が開業した頃から、遊園地の“立ち位置”は変貌し、平成になってからすぐに顕著となりました。“家族の遊び場”“デートの定番”“レジャーの王様”という、それまでの“立ち位置”はなくなり“レジャーの選択肢のひとつ”くらいの位置づけとなった遊園地。それでも「としまえん」は、さまざまな努力で“東京を代表する遊園地”という位置を維持していました。

幻想的な夜桜ライトアップの様子/としまえん(東京都/練馬区)

春の桜は見事でした。幻想的な夜桜ライトアップの様子

「としまえん」は、平成15年(2003)に温浴施設「豊島園 庭の湯」と映画館「ユナイテッド・シネマとしまえん」を開業。遊園地だけではない総合レジャーパークを目指します。平成の新規アトラクションも絶叫系ではなくファミリー系が多く、三世代をねらった戦略が見てとれました。さらに“コスプレの聖地”としても有名で、イベント時には園内をコスプレイヤーたちが埋め尽くすほどの大盛況でした。2018年から2019年にかけて入園者数は約1.2倍に増やすほどで“ある程度好調”だと思っていたのですが…。

「豊島園 庭の湯」/としまえん(東京都/練馬区)

「豊島園 庭の湯」は2020年8月31日以降も営業を継続します

これぞ「としまえん」!懐かしき名作アトラクション5選

閉園が決まってしまった「としまえん」ですが、今はなき歴代アトラクションから「これぞ!」という名作アトラクションを5つほど紹介します。

1.ウォーターシュート

開業当時からあったアトラクション「ウォーターシュート」。高さ約20mから舟型ライドが斜面を滑り落ち、池に着水した瞬間、舟の先頭に立っていた船頭さんがジャンプするという派手な演出が大人気でした。

「としまえん」のほか「西武園ゆうえんち」などにもあったが「横浜・八景島シーパラダイス」にあったアトラクションが平成17年(2005)にクローズして以降、日本には存在していません。ちなみに「横浜・八景島シーパラダイス」の「ウォーターシュート」でも『TVチャンピオン』の1回戦が行われ、それは負けてしまいました。

「としまえん」の「ウォーターシュート」/としまえん(東京都/練馬区)

「としまえん」の「ウォーターシュート」は、昭和2年(1927)から昭和43年(1968)まで、42年間にわたり稼働しました

2.アフリカ館

昭和44年(1969)から平成10年(1998)まで「としまえん」のひとつの名物だったのが「アフリカ館」。ジープ型のライドで館内をめぐるスタイルで、動物や造りもかなりリアル。当時、行列ができる日もあるほどの人気でした。

「アフリカ館」/としまえん(東京都/練馬区)

「アフリカ館」前に長い行列ができています

3.観覧車

実は「としまえん」には遊園地の大定番「観覧車」がありません。でも、昭和40年代には小さい「観覧車」が存在していました。余談ですが、昔のプール全景の写真で、プールの側にある緑の森の中に「観覧車」が見えていたのが、すごく印象的でした。

昔の観覧車/としまえん(東京都/練馬区)

大観覧車を建設する計画はあったようですが、ついに実現することはありませんでした

4.シャトルループ

「としまえん」の絶叫マシンで、もっとも衝撃的だったのが「シャトルループ」です。まず、スタートが高速というのにビックリ、前向きで上昇、後ろ向きで下降してクルリと1回転。今度は後ろ向きで上昇&下降。所要時間わずか35秒…あっという間のできごとでした。「としまえん」の導入は昭和55年(1980)、撤去は平成19年(2007)。当時は全国の遊園地に何台かありましたが、2020年現在、国内では「ナガシマスパーランド」に現存するのみです。

シャトルループ/としまえん(東京都/練馬区)

写真の左端に注目。高さ約45mまで前向きで上昇しています

シャトルループの後ろ向きで上昇&下降の瞬間/としまえん(東京都/練馬区)

こちらは後ろ向きで上昇&下降の瞬間です

5.トップスピンW

平成の始め頃、日本の遊園地に「トップスピン」という、とんでもない絶叫マシンが登場しました。2本のアームが回転し、座席があるゴンドラもひねりを加えるという「回転苦手~~」という人には最悪のアトラクション(実は「としまえん」は回転マシンの宝庫でもありました)。これが2台並んでいたのが「としまえん」。その名も「トップスピンW」でした。当時かなりの人気がありましたが、平成15年(2003)の「豊島園 庭の湯」開業時に1台が営業終了。数年後に、もう1台も撤去されました。

2台の「トップスピン」/としまえん(東京都/練馬区)

2台の「トップスピン」。「トップスピンハード」と「トップスピンスーパーハード」という名称でした

覚えてますか?「としまえん」の広告ポスター

もうひとつ「としまえん」で忘れてはいけないのが、斬新でユニークな広告ポスターです。これは近年も作成されていますが、やはり印象的なのは“プール冷えてます”に始まる一連の“責めた広告”シリーズでしょう。

昭和61年(1986)の広告ポスター“プール冷えてます”/としまえん(東京都/練馬区)

昭和61年(1986)の広告ポスター“プール冷えてます”

平成に入ってからも、平成5年(1993)“祈 景気回復”、平成6年(1994)“うらやましいぞ!!Jリーグ”、平成17年(2005)“クール・ミズ。”、平成20年(2008)“冷やし温水。”などなど、毎年、秀逸な広告ポスターで楽しませてくれました。

平成2年(1990)エイプリルフールの新聞広告“史上最低の遊園地。”/としまえん(東京都/練馬区)

平成2年(1990)エイプリルフールの新聞広告“史上最低の遊園地。”

平成27年(2015)の広告ポスター“世界遺産 狙ってます。”/としまえん(東京都/練馬区)

平成27年(2015)の“世界遺産 狙ってます。”

おすすめベスト5、歴史、歴代名作アトラクション、そして広告ポスターと「としまえん」の素敵なところを書き留めてみました。

最後に「としまえん」様、並びに西武グループ、東京都の皆様、回転木馬「カルーセルエルドラド」だけは、なんらかの形で残していただけませんでしょうか? 特に「西武園ゆうえんち」のリニューアルコンセプト“懐かしい幸福感に包まれる遊園地”に「カルーセルエルドラド」はピッタリなのではないでしょうか? もちろん、個人的な思い出もあってのことですが、この回転木馬は“世界の遺産”です。ぜひとも、愛あるご判断を望んでやみません。

では、遊園地「としまえん」様、長い間お疲れ様でした。そして、本当にお世話になりました。ありがとう!!

●としまえんの情報

住所 東京都練馬区向山3-25-1
問合先 03-3990-8800
入園 制限あり(日付指定の事前予約制)

※この記事の情報は2020年7月現在のものですが「としまえん」の閉園日は2020年8月31日です。ご注意ください。