インクルーシブ公園を知っていますか? 障がいのある子のための公園ではありません。障がいの有無にかかわらず「誰もが一緒に遊べる公園」です。インクルーシブ公園は欧米では20年以上前から広がっていましたが、日本では2020年に初めて東京都に誕生しました。インクルーシブ公園の特徴などをご紹介します。
インクルーシブ公園とは?
インクルーシブ公園とは、公園を訪れる誰もが、一緒に楽しく遊べる公園のこと。
公園は、本来みんなの場所です。しかし現状は、身体の障がいがある子、知的障がいや発達障がいがある子、外国にルーツを持ち日本語を母語としない子などにとっては、利用しにくい、思うように遊べないという実情があります。
屋外での遊びは、幼少期の子どもにとっては大切な心身の成長の場。そこで、「どんな子でも成長機会を損なわず、一緒に遊べる公園を」という思いから生まれたのが「インクルーシブ公園」です。
どんな人でも利用できる多機能トイレは多く見られるようになりましたが、子どもたちの遊び場や遊具にもユニバーサルデザインが取り入れられていることがインクルーシブ公園の特徴です。
※ユニバーサルデザインとは、1980年代にアメリカのロナルド・メイス博士が提唱した、年齢や性別、文化、言語、障がいの有無などに関わらず、どんな人でも利用できるデザインを指したもの
日本でも、公園・遊具のインクルーシブ化がスタート
インクルーシブ公園は欧米では20年以上前から広がってきましたが、日本での第一号は、2020年3月にオープンした世田谷区・都立砧公園の『みんなのひろば』。広大な敷地の一角が、インクルーシブ公園として生まれ変わりました。また同年9月に、豊島区『としまキッズパーク』がインクルーシブ公園として新設オープン。2021年7月には、渋谷区の恵比寿南二公園で遊具の一部がインクルーシブ遊具へと改修リニューアルされました。
公園の新設や改修は簡単なことではありませんが、上記の公園はいずれも、障がいをもつ子の保護者や市民団体、自治体および東京都の連携によって生まれた公園です。世界規模でのSDGs達成への気運もあり、日本でも、さまざまな形でインクルーシブ公園づくりが広まりつつあります。
インクルーシブ公園づくりで大切にされるべき5つのポイント
- アクセシビリティ:誰もが公平にアクセスできる
- 選択肢:誰もが自分の好きな遊びを見つけられる
- インクルージョン:誰もが対等に遊びに参加し、相互理解が深まる
- 安心・安全:誰もが危険にさらされることがなく、のびのび遊べる
- 楽しさ:誰もがワクワクしながら、自らの世界を大きく広げられる
参考:みーんなの公園プロジェクト『-すべての子どもに遊びを-ユニバーサルデザインによる公園の遊び場づくりガイド』
インクルーシブ公園の遊具には、こんな工夫が!
では、実際にインクルーシブ公園の遊具をみてみましょう。
親も一緒に乗れるブランコ[としまキッズパーク]
体幹が弱い子でも、家族が支えながら一緒に遊べる設計がされています。
日光が苦手な子が遊べる日除けスペース[としまキッズパーク]
強い日差しが苦手だったり視覚過敏の子にも優しい配慮がされています。
車いすや歩行器のまま上れるスロープ[都立砧公園 みんなのひろば]
幅広のスロープは、車いす同士でもすれ違うことができます。
認識しやすい案内表示[としまキッズパーク]
文字が読めない子や日本語がわからない子でも理解がしやすい表示をしています。
背もたれと手すりが安心なシーソー[恵比寿南二公園]
大きな座面と手すりがついたシーソーなら、安全に楽しめそう!
車いす用の砂場[二子玉川公園]
車いすに乗ったまま砂遊びができるよう、工夫されています。
他にも、園内にはさまざまに配慮した細やかな設計が数多く施されています。ぜひ一度、子どもと一緒にインクルーシブ公園に出かけてみませんか?
インクルーシブ公園へ行ってみよう
都立砧公園(東京都/世田谷区)
世田谷区最大の都立砧公園には、障がいがある子もない子も、世代や国籍を超えて誰でも一緒に遊べる遊具広場「みんなのひろば」があります。多様性を身近に感じながら、心と身体の成長を見守れる未来型の公園遊具は要チェック!
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としまキッズパーク(東京都/豊島区)
東池袋のイケ・サンパークに隣接する豊島区初のインクルーシブ公園。あらゆる子どもたちが自由な発想で遊べる夢の公園として、2020年9月に誕生しました。世界的に有名な水戸岡鋭治氏がデザインを担当しています。
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恵比寿南二公園(東京都/渋谷区)
2021年7月、渋谷区初のインクルーシブ公園として大幅リニューアルした恵比寿南二公園。都内でも数少ない、多様な子どもたちが一緒に楽しめるインクルーシブ遊具が導入され、注目を集めています!
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秋葉台公園(神奈川県/藤沢市)
2021年3月、神奈川県で初めて、障がいの有無に関係なく子どもたちが一緒に遊べるように設計された「トリム広場」が誕生しました。誰でも遊べて、誰でも安全に楽しめる複合遊具を大解剖します!
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平塚総合公園(神奈川県/平塚市)
2023年3月にインクルーシブ遊具広場「こどもクリニックさいとう みんなの広場」が登場。車いすや歩行器のままでも遊べる複合遊具やスイング遊具など、計8種類の遊具が備わっています。
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公園遊びから、インクルーシブな未来へ
インクルーシブ公園で大切にされていることは、「障がいがあっても遊びやすい」ではなく、「すべての子どもが一緒に遊べる」ということ。あらゆる個性や背景を持つ子どもたちが、一緒に混ざり合って遊ぶことで、多様性への相互理解を深め、インクルーシブな地域社会につながれることが理念とされているのです。子どもたちだけでなく、付き添う親にとっても、多くの気づきを得られる場であることは間違いありません。
最近では欧米だけでなく、シンガポールや台湾などアジアでも広がりを見せるインクルーシブ公園。日本でもやがて各区市町村にインクルーシブ公園ができるぐらい、スタンダードなものになっていくことが理想とされています。日本で初の事例となった東京都は、「だれもが遊べる児童遊具広場のガイドライン」を創設し、他の自治体への提供を開始しました。「自分の住む地域にもこんな公園がほしい!」と思ったら、自治体や役所に声を届けることも、インクルーシブ社会の実現への第一歩につながるそうです。
<参照>
◆-すべての子どもに遊びを-ユニバーサルデザインによる公園の遊び場づくりガイド(みーんなの公園プロジェクト)
◆インクルーシブな遊び場づくりミニガイド「はじめの一歩!」編(一般社団法人TOKYO PLAY、みーんなの公園プロジェクト)