知的好奇心がすくすく育つ学びスポット!
上野公園に集う文化施設の一翼を担う東京都美術館。国内外の名品・名作と出合える特別展をはじめ、公募展や企画展など多彩な展覧会を常時開催しています。展示のみならず、前川國男氏設計の建築そのものもひとつのアート。自分なりの好きなポイントを探してみるのも面白いですよ。
子どもの知的好奇心は身近な“学びスポット”で育む!
子どもの脳の発達の原動力となり、将来の可能性を広げてくれるのが知的好奇心。その知的好奇心を育むスポットは東京周辺にたくさんあります。脳医学者の瀧 靖之(たき やすゆき)先生、そして宇宙・動物・昆虫・アートなどの各テーマの“達人”たちと選んだ東京周辺にある “学びスポット”を紹介します。どこも、「知るのが楽しい!面白い!」と思わせてくれる、工夫にあふれた施設ばかり。コロナ禍が続くいまだからこそ輝く身近な“学びスポット”へ出かけてみませんか。
監修:瀧 靖之(たき やすゆき)先生
東北大学加齢医学研究所教授
医師。医学博士。東北大学加齢医学研究所および東北大学東北メディカル・メガバンク機構で脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究に従事。読影や解析をした脳MRIはこれまで16万人以上にのぼる。
知的好奇心で培われる、8つの“育つ力“
子どもの知的好奇心を刺激することで培われる力を、瀧 靖之先生が8つ選定。「洞察力」「思考力」「想像力」「発想力」「思いやり」など、施設ごとに“育つ力”を付記しました。
» 脳医学者の瀧 靖之先生に聞く!「知的好奇心」で育つ8つの力
»「国立科学博物館」は知的好奇心をくすぐる展示や学びの仕掛けが満載!
東京都美術館で育つ子どもの力
知的好奇心が育つと、子どものどんな力が育つのかをチェック!東京都美術館では、とくにどんなところが子どもの知的好奇心をくすぐるのでしょうか?
ジャンルにとらわれないさまざまなアートに触れることができるのが魅力。なかでも野外に設置された常設展示の彫刻作品は、子どもが間近で鑑賞できる格好のアート。「これって何だろう?」「後ろから見たらどうなるのかな?」といった子どもの純粋な好奇心がかき立てられます。
» アートの達人「美術ライター 浦島茂世さん」お仕事インタビュー
東京都美術館ってこんなところ!
1926(大正15)に東京府美術館として開館した東京都美術館は、まもなく開館100周年を迎える日本初の公立美術館です。すべての人にとっての「アートへの入口」となることを目指し、「世界と日本の名品に出会える美術館」「伝統を重視し、新しい息吹との融合を促す美術館」「人々の交流の場となり、新しい価値観を生み出す美術館」「芸術活動を活性化させ、鑑賞の体験を深める美術館」という4つの役割を担っています。大規模な特別展や自主企画展、公募展などの展示のほか、上野公園の文化施設と連携して子どもたちのミュージアム・デビューを応援する「Museum Start あいうえの」といった活動も実施。上野公園という立地も生かした魅力的なプロジェクトを推進しています。
所要:1時間30分
おすすめの年齢:6歳~
住所 | 東京都台東区上野公園8-36 |
---|---|
電話 | 03-3823-6921 |
営業時間 | 9時30分〜17時30分 |
定休日 | 第1・3月曜(祝日・振替休日の場合は翌日)、特別展・企画展は月曜(祝日・振替休日の場合は翌日)※年末年始のほか、整備休館など臨時に休館及び開館することがあるため最新情報はHPもしくはSNSを確認 |
料金 | 無料(入館は無料。観覧料は展覧会ごとに異なる) |
アクセス | JR上野駅公園口から徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口から徒歩10分、京成電鉄京成上野駅から徒歩10分 |
駐車場 | なし |
<施設データ>
- 子ども用トイレ:〇
- おむつ替え:〇
- 授乳室:〇
- ベビーカー利用:〇
- ベビーカー貸出:〇
- コインロッカー:〇
- 館内飲食店:〇
- 館内売店:〇
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おすすめのアクセス方法は?
公共交通機関を利用する場合、JR上野駅公園口から徒歩7分、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅7番出口からは徒歩10分となります。JR上野駅公園口からは国立西洋美術館に面する遊歩道を直進し、正面の上野動物園表門の右手に美術館の正門があります。上野公園内の案内図も参考に向かいましょう。
専用駐車場はないため、車で来館する場合は上野公園周辺のコインパーキングを利用することになります。
おすすめの遊び方&過ごし方
過ごし方は目的によってさまざま。複数の展示室で同時に複数の展覧会を開催しているので、事前に展覧会の情報を調べて目星をつけておくことをおすすめします。とくに大型の特別展の場合は日時指定予約制となっているので注意が必要です(2022年2月現在)。
展覧会を見るならまずは地下1階のロビー階を目指しましょう。東京都美術館は中央棟、企画棟、公募棟、交流棟の4つの棟に分かれていますが、各棟の入口や、各棟をまたぐ移動はロビー階が起点となります。ロビー階にはインフォメーションやミュージアムショップ、コインロッカーや授乳室などの施設・設備が揃い、待ち合わせにも便利です。
観覧料は展覧会ごとに異なりますが、入館は無料なのが東京都美術館のポイント。たとえば日本を代表する20世紀の建築家のひとり、前川國男氏が設計した美術館そのものもアートのひとつ。家や学校ともひと味もふた味も異なる、遊び心あふれる建物をくまなく探検してみましょう。
アートへの入口となる、さまざまな展覧会
企画展「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」(2018年)©Yusuke Nakajima
さまざまなテーマのアートが一堂に会する東京都美術館。ジャンルやテーマ、年代や性別にとらわれないラインナップはアートの多様性を改めて感じさせてくれます。それらは子どもにとって自身の好きなアートに出合うよいきっかけとなるはずです。
東京都美術館の顔ともいえる特別展は国内外の名品と出合えるのが魅力。「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」や「生誕300年記念 若冲展」、「ムンク展─共鳴する魂の叫び」など、話題性のある大型展覧会を数多く開催してきています。
企画展「キュッパのびじゅつかん―みつめて、あつめて、しらべて、ならべて」(2015年)© Ken Kato
企画展では、アートとライフ(生き方、生命、生活)の深い関係に迫る「アーツ&ライフ展」、日本の現存中堅作家の活動に注目した「現代作家展」、アートとケア(新しい価値観との出会い、学び)をコンセプトに多彩な作り手を紹介する「アーツ&ケア展」の3つのテーマを基本に、毎年ひとつのテーマを掘り下げます。
過去には、絵本のストーリーを入口とした「ノルウェーから東京・上野へ! キュッパのびじゅつかん―みつめて、あつめて、しらべて、ならべて」や、お弁当と食べることのコミュニケーション・デザインを題材とした「BENTO おべんとう展─食べる・集う・つながるデザイン」といった参加型の展覧会も開催。子どもにも親しみやすい身近なテーマで、楽しみながらアートに触れられる機会も多く設けています。
そのほかにも東京都美術館が所蔵する「書」作品や、都立の美術館、博物館が所蔵する「東京都コレクション」を紹介するコレクション展、年間約250もの団体により催される公募団体展なども開催されています。
野外彫刻を自由に鑑賞してみよう
©Ken Kato
上の写真はワークショップで野外彫刻を見ることを楽しんでいる様子。東京都美術館を訪れて、はじめに目に飛び込んでくるのが正面入口のエスプラナード(中庭)に設置されたこの銀色の球体。《my sky hole 85-2 光と影》と名付けられた井上武吉氏の作品は、東京都美術館の顔ともいえる野外彫刻のひとつで、人気の記念撮影スポットとなっています。近づいてみると自分も含めた周囲の風景がぐにゃりと歪んで球面に映し出され、なんとも不思議な感覚に。上部にぽっかりと開いた穴からは何が見えるかな?と想像力がむくむくと湧いてきます。
五十嵐晴夫 《メビウスの立方体》1978年
野外彫刻を含む常設の立体展示は全部で12作品。360度ぐるっと作品を眺めれば、思いもよらぬ発見があるかもしれません。こちらはいつでも自由に鑑賞できるのもいいですね。
前川國男建築は秘密がいっぱい!?
100年近くの歴史を誇る東京都美術館。現在の建物は1975年(昭和50)に竣工されたものです。設計を手がけたのは、日本のモダニズム建築の巨匠・前川國男氏。1960年代以降多くの美術館や博物館の設計を手がけ、その独特の建築スタイルから「前川建築」なる言葉も生まれたほど。ここ東京都美術館も、そんな前川建築のエッセンスがいたるところに散りばめられています。
たとえば上野公園から地続きとなったエスプラナードは、内と外とを明確に区切らず美術館自体が公園の一部となったような開放的な印象を与えます。また建物の約60%を地下に埋め込むことで建物の高さを抑えて自然景観と調和するようデザインされ、同時に地下階の入口までの道のりをあえて設けることで、徐々にアートの世界へと入り込むワクワク感を演出しています。
4つの建物を隣合わせにしたような構造の公募棟はそれぞれ異なるキーカラーで区分され、広い建物内を移動する際も視覚的に迷いにくい工夫がなされています。壁一面がキーカラーで塗り分けられた公募棟の休憩スペースはその代表例。ちなみにこの休憩スペースを含む館内各所に設置されているカラフルな椅子も、建物と調和するように前川氏がオリジナルでデザイン、製作したもの。布の張替えや足の高さの調整を施しつつ、現在も大切に使用されています。
ロビー階の中央棟にある階段を見上げれば、吹き抜けがキレイな三角形を描いていることに気づきます。天井の明かりがついたときには「梅のおむすび」が完成するとか。インフォメーションの受付テーブルなど、おむすび型が潜んでいる場所はほかにもあります。子どもと一緒に探し歩くのも楽しいですね。
東京都美術館ならではの体験にトライ!
©Yusuke Nakajima
上野公園の9つの文化施設が連携し、子どもたちのミュージアム・デビューを応援する「Museum Start あいうえの」では、世界中から集まる本物のアートを通じてより楽しく深くアートを学ぶための、さまざまなプログラムを用意しています。「とびラー」と呼ばれるアート・コミュニケータが子どもに寄り添い、対話を繰り返すことで子どもの好奇心のアンテナを刺激。主体的・探究的に学ぶ力を身につけることがでます。
各プログラムの詳細は公式HPをご確認ください。
子連れにおすすめ!館内の立ち寄りスポット
「お子様ランチジュース付き」( RESTAURANT MUSEにて提供。小学生以下のみ)※食材の入荷状況によりメニュー内容が変更になる場合がございます。
館内にはカジュアルな「RESTAURANT MUSE(レストラン ミューズ)」(中央棟2階)、本格フレンチダイニングの「RESTAURANT salon(レストラン サロン)」(中央棟1階)、軽食やデザート、ドリンクを提供する「cafe Art(カフェ アート)」(中央棟1階)の3つの飲食施設があり、用途に合わせて利用することができます。
RESTAURANT MUSE ©東京都美術館
子ども連れのファミリーにおすすめなのが、中央棟2階の「RESTAURANT MUSE」。座席数は200席と最も規模が大きく、ゆったりとした店内はベビーカーの利用もらくらく。お子様ランチなどのキッズメニューも用意されているので安心です。
- 営業時間:11時~17時30分(17時LO)
- 定休日:施設に準ずる
ミュージアムショップ ©東京都美術館
中央棟ロビー階にはミュージアムショップを併設。「+CREATION(プラスクリエーション)」をコンセプトに、アート作品をモチーフにした雑貨やオリジナルグッズ、スイーツなどを取り扱っています。来館記念にぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
- 営業時間:施設に準ずる
- 定休日:施設に準ずる
小さい子ども連れファミリーに嬉しい、施設や設備
中央棟ロビー階には授乳室があり、小さな子ども連れのファミリーも安心して利用できる多目的な設備が整っています。
おむつ替え台は2台設置されています。
2室ある授乳室も清潔&広々。授乳室の扉の鍵はインフォメーションで借りることができます。なおベビーカーの無料貸し出しも同様にインフォメーションで受け付けています。
脇には調乳用のスペースもあります。お湯は設置された内線電話からリクエストが可能です。
授乳室内には、子どもが利用できる座面の低いトイレも設置されています。
コインリターン式のコインロッカーはロビー階の公募棟や企画棟の入口前のスペースに数多く設置されています。
展覧会や野外彫刻、そして建築そのものからもアートの魅力に触れることができる東京都美術館。子ども向けの設備も充実し、安心してお出かけができるのが嬉しいですね。アートの鑑賞方法に決まりはありません。子どもの自由な発想を大切にして想像力の翼を大きく羽ばたかせてあげましょう。
●掲載の情報は予告なく変更になる場合があります。おでかけ前に各スポットへご確認ください。
●旅行中は「新しい旅のエチケット」実施のご協力をお願いします。
『るるぶKids こどもの知的好奇心がすくすく育つ学びスポット 東京周辺』
子どもたちの知的好奇心を刺激してくれる“学びスポット”全89施設をピックアップ。図鑑などでもお馴染みの「恐竜」「動物」「昆虫」「宇宙」「乗り物」、そして日常の延長として親子のコミュニケーションを楽しめる「アート」「絵本・アニメ」「にほんの歴史」を加えた8テーマに分けて紹介しています。
監修者である脳医学者の瀧 靖之先生、そして各テーマの“達人”たちと選んだ“学びスポット”は、どこも子ども心をくすぐる工夫にあふれた施設ばかり。また巻頭には、瀧 靖之先生による「知的好奇心の伸ばし方」も収録していますよ。
子どもの成長にとって大事な知的好奇心を育てるスポットの数々。本書を参考に家族でおでかけしてみませんか。