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移住インタビュー │フィットするコミュニティから選ぶ自分らしく豊かな暮らし

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半田さん一家/移住インタビュー(秋田県/五城目町)

地方への移住を考えるとき、「どんなまちがいいだろう?」と、まず場所から考えることが多いと思います。とはいえ、行ったことのない土地の情報から、具体的に暮らしの想像をするのはなかなかむずかしいもの。
少し目線を変えて、関わりたいと思える人がいる地域、つまりコミュニティから移住先を選んでみるという方法もあります。

今回紹介するのは、クラウドファンディングで関わったプロジェクトをきっかけに、秋田県南秋田郡五城目町(ごじょうめまち)に移住した半田理人(まさと)さんと、その奥さん絢香さん。特徴的な移住のきっかけや、今の暮らしの様子について聞いてきました。

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目次(index)

移住のきっかけは、クラウドファンディング

半田さんご夫妻は、ともに秋田県の出身。現在は、五城目町の中心部にある住宅で、娘さんと3人暮らしをしています。

理人さんは、大学進学を機に関東で暮らすようになり、移住前は栃木県で医科大学の職員として働いていました。

理人:僻地に医師を派遣する事業に関わっていて、地方の暮らしに触れる機会も多い仕事をしていました。そのころ祖母が亡くなって、形見分けや家の片付けで地元に帰る機会があったことで、移住を意識するようになって。大きい組織から人材を送り込むだけでなく、自ら地域に入り込んで、働き暮らしていきたいという想いが強くなりました

当時、偶然Facebookで見つけたのが、五城目町に廃校を活用したシェアオフィスができたという情報。

隣町の井川町出身の理人さんは、地元に外から人が集まり、新しいコミュニティができていることに驚いたそう。

廃校を活用したシェアオフィス/移住インタビュー(秋田県/五城目町)

理人:この人たちと関わりたいと思ったけど、どうすればいいかはわからなくて。そんなときに、シェアオフィスの入居企業主催のクラウドファンディングを見つけたんです。これなら、コミュニティの中にいる人たちとつながるきっかけをつくれると思いました

築140年の古民家をひとつの村に見立ててコミュニティをつくる、「シェアビレッジ」プロジェクト。

全国から「村民」を募り、「年貢」と呼ばれる年会費を納めてもらいながら、古民家を再生していく。村民は自由に古民家に泊まりにくることができ、地域のリアルな暮らしを体験できるというもの。

一風変わったそのプロジェクトで、村民となったことをきっかけに、理人さんは五城目に関わりはじめます。

古民家/移住インタビュー(秋田県/五城目町)

理人:様々な自治体の移住イベントに参加していたんですけど、行ったことのない地域だと暮らすイメージがあまり湧かなくて、移住するならUターンかなと思いはじめていたころでした。それに、情熱をかけて何かやるなら地元のほうがいいなって

村人として五城目に通うようになり、なんとクラウドファンディングの半年後には、プロジェクトにジョインする形で移住した理人さん。「家守」として実際に古民家に住みながら、訪れる人たちをもてなしたり、プロジェクトを発信したりする仕事をはじめました。

一方の絢香さんは、五城目から2時間ほど離れた、内陸部の大仙市出身。医療関係の仕事に就き、秋田市や青森市でも働いた経験があるそう。

理人さんと一緒に住むために、五城目に移り住んできました。

絢香:医療事務として何社かで働いてきて、五城目に来たときも、その経験を生かして医院で働きはじめました。住む場所が変わっても仕事には困らなかったのが、ありがたかったですね。そのあとは、地域で関わる人の幅を広げられたらと思って、夫の会社が入っている廃校オフィスの管理事務を半年ほどしていました。出産を経て、今は隣町の佃煮屋さんでパートをしています

フィットするコミュニティがある安心

絢香さんが引っ越してきた後も、シェアビレッジの拠点である古民家と、絢香さんが住む市街地の賃貸住宅を行き来する生活をしていたという理人さん。

古民家に一緒に住んでいたわけではなかったんですね。

理人:古民家は“住み開き”みたいな形で、常にいろんな人が家に訪れては、泊まっていく環境なんです。自分一人ではじめたことなので、そこに妻に一緒に住んでもらうという発想はなくて

絢香:イベントのときや、宿泊する人が多くて忙しいときに手伝いをする感じでした。仕事とプライベートの境目がないのは、大変そうでしたね。コロナ禍の今は訪れる人が少ないぶん、自宅にいる時間は長くなりました

現在は、リモートで全国にシェアビレッジの活動を広める仕事をメインにしている理人さん。

先にシェアオフィスやクラウドファンディングについて知ったことが、移住のきっかけにあるのは特徴的だと思います。

移住前から知り合いを増やすことができ、いい準備期間にもなったそう。

理人:正直、もともとあまり地元が好きではなくて、家族以外に関わる人たちがいたわけではなかったんです。でもプロジェクトを通じて、自分が興味のある活動をする人たちとつながれたことで、この輪に加わるのが純粋に楽しそうだなと思えました。移住の不安よりも、ワクワク感のほうが大きかったです

移住インタビュー(秋田県/五城目町)

理人:移住先を考えるとき、単に場所で選ぶんじゃなくて、そこにどんな人たちがいるのか、仲間になれそうかどうか。そういう選び方も個人的にはすごくいいと思います。フィットするコミュニティに移住前から出会えていると心強いですよ

たとえUターンでも、長年住んでいないまちに戻るのは勇気のいること。自分と価値観の合う人がいる安心感が、背中を押すこともありそうです。

なかなか一歩を踏み出せず悩んだときは、自分が興味を持てそうな活動をしている団体や人びとがいるかどうか、という視点から地域を探してみるという方法もおすすめです。

顔が見える、おいしい食べもの

シェアビレッジの活動を通じて、五城目に魅力を感じて外から集まってくる人たちと出会い、地元のいいところを再発見できた、と理人さんは話します。

理人:たとえば五城目って500年以上続く朝市が名物で、すごく賑わうんです。朝市が開かれる商店街には酒蔵もあって、そこの日本酒がすごくおいしいんですよ。この地域の水と米がこんなにおいしいんだってことに、そのお酒を通じてあらためて気がつきました

朝市の様子/移住インタビュー(秋田県/五城目町)

絢香:お米も野菜もお惣菜も、まちの人たちからお裾分けをたくさんいただきます。どれもみなさんが手塩にかけてつくったもので、娘に『〇〇さんのトマトだよ』『〇〇さんがつくったんだよ』と、教えることもできます。顔がわかるので安心して食べられるし、すごく贅沢で、ありがたいです

今はまだ実現できていないけれど、お返しにおすそ分けができるように、将来はものづくりもしてみたいとお二人は話していました。

グラデーションのあるまちで

五城目は、子育て環境としてはどうですか?と質問してみると、「最高です!」との答えが。

理人:今住んでいるのはまちの中心部で結構便利なんですけど、川や自然もすごく近いです。少し歩いて橋を渡ると朝市の商店街があって、こっちに帰ってきたときから付き合いのある仲間のカフェもあります。娘の散歩がてら、よく連れて遊びに行っています

絢香:目の前に大きな公園がある家を偶然借りられて。ベンチがあって、広い原っぱがあって、桜の木があって。子どもを遊ばせるにはちょうどいいんです

大きな公園/移住インタビュー(秋田県/五城目町)

まちの中に川が流れている五城目。川に沿って、下流が市街地、上流にいくにつれて自然豊かな山間部になっていくそう。

半田さんご家族が今住んでいるのは下流部で、シェアビレッジの古民家があるのは上流部。

理人:まちのなかにそういうグラデーションがあるので、暮らしに合わせて住む場所を選びやすいです。うちも、古民家にみんなで暮らすっていう選択肢もないわけじゃなかったけど、やっぱり娘が生まれたら、暖かく住みやすい家で、同じ子育て世代の多い市街地にいたいと思いました。同じまちなので、行こうと思えば気軽に山のほうにも行けますしね

五城目町の風景/移住インタビュー(秋田県/五城目町)

絢香:娘と散歩をしていると、道でも、川の向こう岸からも、通りがかった車からも、『おーい!』『お菓子食べる?』ってよく声をかけてもらいます。帰宅するまでに会った人全員に声をかけてもらったこともありました。地域のみなさんに気にかけてもらえることがうれしいです

絢香さんは、今の暮らしについてどう思っていますか?

絢香:ここは秋田の中では雪も少なくて、気候も穏やかな地域なんです。実家が豪雪地帯なので、とても住みやすいですね。福祉も手厚いし、おいしいご飯もあるし、生きる上で必要なものは大体そろっています。大変なことがあまり思い浮かばないくらいで。何もないっていう人も多いけど、なんでもあるよって思っています

/移住インタビュー(秋田県/五城目町)

秋田出身のおふたりだから、まちに馴染みやすかった部分もきっとあると思います。

でも移住先の選び方や、暮らしに対する考え方は、きっと参考になることも多いはず。

心を許せる人たちと、おいしい食べもの、生活するには十分な環境、そして自然。シンプルだけれど、豊かで穏やかな暮らしが、このまちにはあるんだろうなと思いました。

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