SDGs(えす・でぃー・じー・ず)は、子どもたちの未来に関わる世界共通の目標。子ども自身がSDGsを“自分ごと”として理解していくには、好きなものや身近なものから知るのが一番。今回は、電池を使わずに走る「プラレール」の新開発車両に注目。小さい頃からプラレールやトミカなど、走るおもちゃが大好きだという9歳の有星くんが、株式会社タカラトミーを訪問。かっこいいプラレールにはどんなSDGsの取り組みがあるのでしょうか?
◇ SDGsとは? ◇
» 子どもの未来を守るSDGsとは?簡単な遊びからサステナブルな取り組みを始めよう
1.大好きなおもちゃ、プラレール!
9歳の有星くんは、小さい頃からプラレールとトミカが大好き! お母さんによると「繰り返し本当によく遊んでいた」とのこと。最近、小学校の授業でSDGsのことを学び始めました。実はプラレールがSDGsを意識したおもちゃになっていると聞いて、「プラレールとSDGsがどう結びつくのだろう?」と興味津々に。プラレールを作っているタカラトミー本社に伺って、担当の伊藤さんと高林さんにお話を聞くことにしました。
2.株式会社タカラトミーに直接取材!電池不要のプラレールの秘密
有星くんが手にしているのは、プラレール『電池いらずで出発進行!テコロでチャージ』シリーズの新商品、923形ドクターイエロー!
手で転がして、電力をチャージ
プラレール『テコロでチャージ』シリーズは、先頭車両を手でコロコロと転がすことで電力をチャージする仕組みのプラレール。電池は使用しません。
チャージした先頭車両を、レールに乗せた後続車両とつなぐと出発進行!電池走行と変わらないスピード感が楽しめます。
まず、プラレール事業部の伊藤さんにお話を聞きました。
有星くん「電池がなくても動くのにびっくりしました!前はよくお母さんに『電池なくなっちゃったー』って言ってたんです(笑)どうして手で転がすだけでこんなに速く動くんですか?」
伊藤さん「この新開発車両は、普通のプラレールの電池を入れる場所に、『テコロチャージシステム』っていう機能が入っているんです。車輪を動かすと、この中に入っている小さいパーツが動くことで電気が作られて貯められるようになっているんだよ」
有星くん「発電してるの?」
伊藤さん「そう、発電した電気をここに蓄えて、その電気を使って、電池を使うように電動走行することができるんだ」
子どもでも無理なくあそべる初の仕組み
伊藤さん「車輪を手で転がしてみると重いというか、動かすのにちょっと力が必要なように感じるでしょ。力をかけた分が電気になるんだよ」
有星くん「じゃあ、重いほうがたくさん発電できるんですか?」
伊藤さん「そうなんだけど、重すぎちゃうと、子どもの力では動かすのが難しくなっちゃうから、そのバランスはすごく難しいんだ。有星くんが、この車両でチャージを繰り返しても、疲れないでしょ?」
有星くん「全然疲れないです! 動かしてチャージするのも楽しい!」
伊藤さん「おもちゃを動かして発電する仕組みは昔からあるんだけど、子どもたちが遊びながら電気をチャージして、電動走行する仕組みを使ったプラレールは、このテコロでチャージシリーズの車両が初めてなんだよ」
有星くん「後ろに引っ張ると走り出すミニカーは?」
伊藤さん「『チョロQ』などのミニカーだね。あれはゼンマイを使ったおもちゃなので、電気をためて電動走行しているわけじゃないんだよ」
有星くん「ああ、なるほどー」
特許取得済みのすごい機能が!
伊藤さん「もう1つ、この新開発車両で使われているすごい機能は、車両を前後“両方向”に動かしてチャージできるという仕組みです。普段手で転がして遊ぶときと同じように、前後に動かすことで電気をチャージできるような機構にしたんだよ。これは新しく開発した特別な技術なので、ちょっと難しい言葉だけど、『特許』を取得してるんだ」
有星くん「へー! すごい!!」
見た目にも楽しい工夫がいっぱい!
電気がチャージされる量が増えるとともに、運転席が徐々に明るく光ります。
有星くん「電気がチャージされると運転席が光ったり、車体が透明で中が見えるのもかっこいいなって思いました」
伊藤さん「それはよかった! ほかのプラレールの車両とは少し違う見た目にしたいと持って、クリアカラーにしたんだ」
有星くん「運転席を光るようにしたのはどうしてなんですか?」
伊藤さん「転がすだけではどのくらい電気が貯まったかがわかりにくいよね。だから、遊びやすいように、チャージした電気の量が増えるにつれて、どんどん明るくなるようにしたんだよ。逆に、車両を走らせていくうちに、だんだん走りが遅くなって、そうすると光も消えていくでしょ」
有星くん「はい、最初はどうしたら運転席が光るのかがわからなかったけど、動かしているうちに電気をチャージしたから光ったんだって、わかりました」
『テコロでチャージ』シリーズは、連結器も取り外ししやすいような工夫に。
伊藤さん「ほかにも、この新開発車両では、すぐに取り外しができるように置くだけで簡単に連結できる連結器にしていたり、他のプラレールと同じように落としたりぶつけたりしても安心な仕様にしていたり、いろんな工夫をしているんだよ」
レールもSDGs?!
続いて、SDGsに詳しいサステナビリティ推進部の高林さんに、緑色のプラレール『エコレール』について質問してみました。
有星くん「緑色のプラレールを初めて見ました。これは青色のレールとどう違うんですか?」
高林さん「はい、普通のレールは青色ですよね。この緑色のレールは、『エコレール』と言います。なにがエコなのかというと、使っている材料の半分が、リサイクルされたプラスチックなんです」
有星くん「青色のレールのほうが、少し重いような気がします」
高林さん「実は、同じなんだよ。重さも一緒だし、強度もやわらかさも同じように作っています。レールをエコにするために、最初は穴を開けてみたり、薄くしてみたり、いろいろな材料を試したり、安全もチェックしてみたりと工夫をして、この形にするまでに2年くらいかかりました」
高林さん「リサイクル材を使うことには、2ついいことがあって、1つは、ゴミが減るということ。というのも、緑色のレールは、包装用の袋を作る工場で、袋をつくる時に出る透明のシートの捨てる部分を材料に使っているからです。
もう1つは、プラスチック製品は石油から作られていて、リサイクル材を使えば、石油という地球の資源を消費する量が少なくて済むということ。だから、この緑色のレールは、地球にやさしいレールなんだよ」
有星くん「緑色のレールは青色のレールより、作るのに手間がかかったりするんですか?」
高林さん「リサイクル材は日本で作っています。レールは海外で作っているので、リサイクル材を海外に運ぶのに、ほかのものよりひと手間かかっています。でも安全なおもちゃをつくるためにそうしています」
有星くん「緑色のレールと青色のレールはつなげられるんですか?」
高林さん「つなげられます。プラレールのレールは、初めて発売されてから約60年間ずっと規格がかわっていないので、有星くんのおじいちゃん、おばあちゃん家の引き出しの奥から出てきたような古いものとでも、つなげることができます。それは青色のレールでも緑色のレールでも同じなんだよ」
3.タカラトミーの『エコトイ』ってなあに?
これぜーんぶ、エコトイ!
電池がいらない新開発車両やリサイクル材を使ったレールなど、プラレールのSDGsの話に興味津々な有星くん。そのほかのおもちゃのSDGsについても、質問してみました。
トミカシリーズにもさまざまなエコ商品が
有星くん「ぼくはトミカも大好きなんですが、トミカにも環境に配慮した工夫はあるんですか?」
高林さん「環境に配慮したおもちゃを、タカラトミーグループでは『エコトイ』と呼んでいるんですが、トミカにもエコトイはあります。2段の引き出しに20台以上のトミカが収納できる『トミカワールド パーキングケース24』は、エコレールと同じリサイクル材を50%以上配合して作っています。ほかにも、レバーやハンドルを使ってトミカを走らせるドライブコースの『キミが運転! トミカわくわくドライブ』は、電池を全く使わずに、ボタンを押したりレバーをくるくる回してトミカを上まであげることができるおもちゃです。見たことあるかな?」
有星くん「あ、これ、友だちが持ってます!」
高林さん「それと、この『ダブルアクショントミカビル』は、ビルの形を2つのモードに変形させて楽しむことができるおもちゃですが、エレベーターがついていて、電池で動かすこともできるし、切り替えて手動でも動かすことができるようになっています。いずれも電池を使わなくても遊べる、省エネのおもちゃなんだよ」
有星くん「省エネもSDGsにつながっていますよね?」
高林さん「そうだね、省エネは電気の量が少なくて済む、もしくは電気を使わないでエネルギー資源を大切にすることだから、SDGsにつながるよね。よくエアコンや冷蔵庫などの家電(家庭用電気器具)は省エネのものがあるけれど、おもちゃにも省エネの商品があることを、今日、有星くんに知ってもらえてよかったです」
有星くん「はい!」
ペットボトルで遊べる「エコトイ」
家にあるペットボトルであそべる!『キャップ革命 ボトルマン』
高林さん「トミカやプラレール以外にもエコトイはいろいろあります。たとえばこんなエコトイもあるんですよ。『ボトルマン』って知ってる?」
有星くん「知らないです」
高林さん「ペットボトルを『的』に、キャップを『弾』にして遊ぶおもちゃです。いろいろな種類のボトルマンがあって、キャップの飛ぶスピードやパワーが違ったり連射ができたり改造できたりします。お店で体験イベントも行われているし、アニメにもなっているとても人気があるおもちゃなんです」
有星くん「へえ!」
高林さん「このおもちゃのエコなポイントは、捨てられてしまうペットボトルを使うこともあるけど、パッケージに、『ペットボトルを分別してあそべるぞ!ラベル→ゴミ箱へ』や『遊び終わったペットボトルは、ルールにしたがってリサイクルへ!』って書いてあって、遊びながら分別やリサイクルを知ることができるところなんです」
『エコトイ』にはマークが
有星くん「エコトイかどうかは、どこでわかるんですか?」
高林さん「エコトイは、パッケージにエコトイマークがついています。また、エコなポイントも書いてあって、ボトルマンだと分別のしかただったり、「電池いらずで出発進行!テコロでチャージ」は電池を使わない、「エコレール」はリサイクル材を使っているとか、どういうところがエコなのかがわかるようになっていますよ」
有星くん「ほんとだ!」
SDGsの目標でいうと何番?
有星くん「エコトイは、SDGsの17の目標の何番になりますか?」
高林さん「一番努力しているのは12番『作る責任使う責任』です。タカラトミーがおもちゃを作るときには環境のことを考えるのはもちろんですが、遊ぶときにみんなが『緑色のレールはリサイクル材を使っているんだな』などと思い出して、それがSDGsを知るきっかけになることも大切だと考えています」
有星くん「エコレールは、14番(海の豊かさを守ろう)や15番(陸の豊かさも守ろう)もつながると思うんですがどうですか?」
高林さん「そうだね。特に意識しているのは12番だけど、ゴミを減らしたり、エネルギーを節約したりなど、実はいろいろなことにつながっているよね」
『エコトイ』を使ってSDGsのオンライン授業も
有星くん「4番の『質の高い教育をみんなに』もつながるのかなあ?」
高林さん「実は、エコトイを使ったりして、日本全国の小・中学校でSDGsのオンライン授業をしているんですよ。『みんなでつくるSDGs人生ゲーム』という授業をしているんだけど、『人生ゲーム』って知ってる?」
有星くん「はい、知ってます!」
高林さん「人生ゲームは、ルーレットを回して出た目の分だけコマを進めて、マス目ごとに発生するお金のやり取りを楽しむゲームなんだけど、その授業では、SDGsの内容でマス目を考えて、自分たちだけの人生ゲームを作ることで、SDGsの勉強をしてもらっています。タカラトミーのホームページから受け付けているので、有星くんも学校から申し込むと、授業を受けられるよ」
有星くん「おもちゃを使って、勉強ができたら楽しそう!」
高林さん「身近にあるおもちゃから学べたら、SDGsに興味がわきやすいでしょ。ぼくが子どものころは、環境についてあまり意識していなかったけど、有星くんのように子どものころから環境について興味を持って大人になったら、今よりももっと環境を大切にしようと思う社会になる、そうなるといいなと思っています」
4.ぼくの・わたしの行動宣言!!
「おもちゃは、ぼくが予想していなかったSDGsも目指していることがわかってすごいなって思いました。おもちゃをエコにするために、たくさん研究をしてることも、わかってよかったです」と有星くん。
担当の伊藤さんや高林さんが、研究するときに新しいおもちゃで遊ぶ機会がたくさんあると聞いて、ちょっとうらやましそうだった有星くん。そんな有星くんがあげた行動宣言は『おもちゃを大切に使い省エネ! SGDsに取り組み、未来までつなごう!』。大好きなプラレールやトミカは、環境や社会を良くする工夫を施しながら、子どもたちの夢を乗せて、未来へと走り続けます。
© TOMY