
「家族で地方に滞在しながら、子どもには自然体験を、親には仕事も可能な自由時間を。」そんな新しい家族の過ごし方を叶える「ポケマルおやこ地方留学」。今回、7歳の女の子と福岡県での3泊4日のプログラムに参加し、その魅力を探るべく体験取材してきました!
「ポケマルおやこ地方留学」とは?

「ポケマルおやこ地方留学」は、小学生とその保護者が一緒に地方で過ごす滞在型の学びのプログラムです。2022年に始まり、親はワーケーションを満喫しつつ、子どもたちは地域の農家さんや漁師さんと触れ合い、かけがえのない自然体験や食育を通して成長できるのが魅力。親子で新しい発見や出会いを楽しみながら学べるため、リピーターが多いのだとか。
参加前にオンライン説明会を実施
今回参加した春の3泊4日のプログラムは、糸島での「塩づくり体験」と玄界島での漁師さんとの「島探検」をぎゅっと凝縮。お子さんはもちろん、親御さんは温泉旅館をリノベーションした快適なワーケーション環境で過ごせる、福岡ならではの自然や食文化に触れる貴重な体験ができるプログラムです。
参加前に、運営スタッフや地元の生産者の方々と参加者全員でオンライン説明会を開きます。ここでは、プログラムの目的や内容が詳しく説明され、参加者同士や関係者との顔合わせも行われます。持ち物や気になる点も事前に確認できるため、安心して当日を迎えられます。
初日は移動が中心

羽田空港から福岡空港までは飛行機で約1時間50分。今回の滞在先である「快生館」は、福岡空港から車で約30分の福岡県古賀市にあります。参加者はレンタカーまたは送迎バスを利用して現地へ。運転免許がない方でも、送迎サービスがあるため安心です。
到着は16時

宿泊先の「快生館」の徒歩圏内にはコンビニやスーパーがないため、必要なものは事前に購入しておくのがおすすめです。送迎バスでは、初日に宿へ向かう途中でスーパーに寄り、滞在中に必要な飲み物やお菓子などを購入できます。

「快生館」は、1925年に薬王寺温泉の老舗旅館として開業。2021年に温泉旅館の設備を活かし、ビジネス利用に特化したワーケーション施設として生まれ変わりました。
現在では、コワーキングスペースや個室オフィス、温泉、宿泊施設を備えた施設に。今回の滞在でも、自然の中でリフレッシュしながら仕事に取り組むことができます。
オリエンテーションとウエルカムパーティで顔合わせ

到着後、参加者全員でオリエンテーションを実施します。
参加理由や滞在中の楽しみを発表し合う自己紹介が行われました。集まったのは東京や、千葉、長野、福岡など各地からで、小学1年生から6年生までの総勢6名の幅広い年齢の子どもたちが参加していました。

今回のプログラムのスケジュールと内容について、参加者全員で確認を行います。どこで生産者さんと出会い、どんな体験が待っているのか——皆さん、期待に胸をふくらませながら楽しみにしている様子です。

オリエンテーションが終わると、お楽しみのウェルカムパーティーの時間です。夕食は福岡県福津市にある「南部食堂」さんの、彩り豊かなワンプレートご飯が登場。旬の新鮮な食材を使った美味しい料理に、子どもたちも大喜び。このプログラムでは、子どもには3泊4日の滞在中、毎日3食の食事(親御さんには毎朝晩2食)が提供されます。
滞在場所はどう?

今回滞在した2名用客室は6畳の広さで、布団と小さなテーブル、座布団が置かれたシンプルな空間です。室内にはテレビ、パジャマ、バスタオル類はなく、バス・トイレは共用となります。各客室にはWi-Fiが設置されているので、24時間客室でワークが可能です。

共有スペースには歯ブラシ、紙コップ、冷蔵庫、湯沸かしポット、電子レンジ、洗面台、洗濯用洗剤、有料の洗濯機・乾燥機が用意されています。冷蔵庫を利用する際は、各自名前を記入して区別します。

洗濯機・乾燥機は共用のため、利用時は備え付けの名簿に記入をして使用します。支払いは現金またはPayPayで、お釣りは出ないので小銭を用意しておくと便利です。

広々としたコワーキングスペースは、個人利用はもちろん、イベントにも活用できます。旅館の客室を改装したスモールオフィスは、月額契約に加えて、必要な時だけ借りられる貸切利用も可能です。どちらのスペースも電源とWi-Fiが完備されており、快適なワーク環境が整っています。オンライン会議の際は、自室または有料の個室を利用できます。

このほか、入浴後の休憩や会議に使えるフリースペースも完備。コワーキングスペースは通常、月~土曜日の9~18時に利用できますが、プログラム参加者はリビングスペースとして3Fフリースペースが確保されており、滞在中自由に使うことができました。


コワーキングスペースや、フリースペースには自由に読める本棚も設置されています。
天然温泉も!

画像提供:快生館
快生館の利用者は、1918年発祥の薬王寺温泉、天然温泉「鹿の湯」を満喫できます。大きな窓から緑豊かな景色を眺めながら、ゆったりと天然温泉を楽しめる大浴場です。毎日9~12時は清掃が入りますが、それ以外はいつでも入ることができます。

画像提供:快生館
ボディソープや、シャンプー、コンディショナー、ドライヤーは備え付けですが、タオルなどは各自で用意が必要です。目の前には山肌が広がり、快生館スタッフの土肥さんによると「時折、鹿や野生動物が姿を現すこともある」そう。
盛りだくさんの体験プログラム

2日目の7時、朝食の時間です。初日の夕食と同様、南部食堂さんが用意してくれたのは、見た目も美しく体に優しい和食でした。

9時に宿を出発。親御さんに見送られながら、子どもたちはバスに乗り込みます。子どもたちがアクティビティを楽しんでいる間(原則9~17時)は、親は集中してワーケーションに臨むことができます。静かな環境で落ち着いて仕事に取り組むことができました。

バスに乗ること約1時間30分。到着したのは糸島半島の西端にある新三郎商店が営む「工房とったん」。国内外の観光客からも人気のお店です。

工房の目の前に広がる海は、玄界灘の内海と外海がぶつかり合う場所。山と海からの豊かなミネラルが混ざり合う、特別な海域です。
薪割りからはじめる塩づくり体験

この日は花曇りであいにくの天気でしたが、子どもたちは気合十分。塩づくり体験は、まず薪割りからスタート。2つのチームに分かれた子どもたちは、「工房とったん」のスタッフに教わりながら薪割りに挑戦します。

最初は戸惑っていた子どもたちも、すぐにコツを掴み、夢中で薪割りに取り組み始めました。真剣な表情で斧を振るい、あっという間に薪の山を完成させていました。

自分たちで割った薪を使い、いよいよ海水の煮詰め作業へ。「小さい薪と大きい薪、どちらが燃えやすいかな?」といったスタッフの問いかけに考えながら、子どもたちは協力して火を起こしていきます。

時間をかけてじっくりと煮詰めることで、少しずつ塩が結晶化していきます。煙や煤(すす)と奮闘しながら、塩づくりには手間と根気が必要であることを肌で感じていました。

何度も何度もすくい上げ、海水を煮詰めて作った塩の結晶が、ようやく目に見える形に。

通常、この工程でできた塩の結晶は乾燥させ、選別を経て塩へと仕上げていきます。

工房で塩づくりの流れについて学んだ子どもたち。普段何気なく自分たちが食べている塩が、どのようにしてできているのかを知る貴重な機会となりました。
またいちの塩でおむすび&塩クッキーづくり

塩づくりが終わると、バスで新三郎商店が営む「ゴハンヤイタル」へ移動。ここでは塩むすびと塩クッキー作りに挑戦します。

「ゴハンヤイタル」では、かまどで薪を使って羽釜で炊き上げたこだわりの米と、塩屋ならではの具材を使ったおむすびと、こだわりの味噌でできた味噌汁で昼食をとります。

ご飯が炊けるのを待つ間に、みんなで塩クッキーづくりに挑戦です。塩が練りこまれたクッキー生地を思い思いの型でくり抜いていきます。

中には自分でオリジナルの形を作る子も。仕上げにはアクセントとして塩をトッピング。どんな味になるのかワクワクです。

待ちに待ったご飯が炊き上がり、いよいよおむすび作りの開始です。スタッフのけんじさんが、美味しいおむすびの握り方を丁寧に教えてくれます。

子どもたちは、見よう見まねで、楽しそうにおむすび作りに挑戦。自分のお昼ご飯だけでなく、滞在先の快性館でお留守番をしているお父さんやお母さんのために、たくさんのおむすびを握っていました。

熱々のおむすびが完成。みんなで「いただきます!」

またいちの塩で握ったおむすびは、炊飯器で炊いたご飯とは全く違う格別の味わいだったようで、子どもたちはその美味しさに感動していました。

食後のデザートには、焼きたてのクッキーが登場。一人一人、今日の体験を通して学んだことをお店の方に発表し、感謝の気持ちを伝えていました。

最後に、自分たちで作った塩はお土産としてプレゼントしてもらった子どもたち。お腹も心も満たされる大満足の昼食となりました。
お小遣いでお土産購入

昼食後には、みんなで「新三郎商店」へお土産を買いに行きました。ここでは、お留守番をしている親御さんへのプレゼントを選びました。

店内には、竹の塩田で濃縮した海水を平釜で炊き上げた「炊塩」や、人気の花塩プレーン6個セットをはじめ、バラエティ豊かな商品が並んでいます。


今回のお土産に、7歳の娘は海洋プラスチックでできた色鮮やかなトレーをチョイス。
買い物を終えた一行は再びバスに乗り、帰路へ。車内からは、楽しかった一日の思い出を語り合う子どもたちの賑やかな声が聞こえてきました。
定置網漁の漁師さんと島暮らし体験

翌朝、朝食を済ませた子どもたちは7時半にバスに乗り、「博多ふ頭旅客ターミナル」へ向かいます。

ここは、玄界島や対馬などさまざまな離島への定期船が出航する港です。移動時間も多く、島までは船に揺られるため、不安な方は酔い止めを飲んでおくと安心です。
3日目は穏やかな猫の島で、何代も続く定置網漁の漁師さんと、イカリのペンキ塗りやビーチコーミング、そして新鮮な海の幸を使った海鮮丼づくりを楽しみます。

ベイサイドプレイス博多ふ頭からは、玄界島行きのフェリーが1日に7便運航しています。玄界島までは約30分の船旅です。

島を散策すると、地域猫だという島猫がたくさんいます。
地元の子どもたちと島太鼓の競演

人口約300人のこの島で、はじめに地域の子どもたちと交流し、伝統の島太鼓を学びます。玄界島の小中学校の生徒たちから直接指導を受け、一緒に太鼓を打ち鳴らす体験です。

島の子どもたちにとって特別な意味を持つ太鼓。2005年に発生した福岡県西方沖地震の前から小学校で演奏されていましたが、震災後の避難生活の中、「復興に向けて心を一つにしよう」という先生たちの思いから、より力を入れるようになったそう。以来、島のさまざまなイベントで響き渡ってきた太鼓は、まさに“復興のシンボル”だと教わりました。

島太鼓を楽しんだ後は、地元漁師の宮川さんと漁協の冷蔵庫へ。普段何気なく口にしている魚が、どのようにして私たちの食卓に届くのか、その流通の現場を宮川さんと一緒に見学し、学びます。

続いて、宮川さんの定置網漁で使われている実際の網を見学。この島で主流の漁法である定置網漁では、鯛やアジ、イカ、マダイなど、豊かな海の幸を水揚げし、新鮮な魚介類として福岡の食卓を支えています。子どもたちは、網の中に入って魚になった気分を体験しました。

網の破れた箇所を宮川さんが手際よく修繕していく様子に、子どもたちは釘付けです。

宮川さんの船に乗り込み、前日に獲れたばかりの新鮮な「活コウイカ」を捌く貴重な体験です。

イカはもちろん、魚を捌くこと自体が初めてという子どもたち。戸惑いながらも、宮川さんの丁寧な指導を受け、少しずつ手際が良くなっていきます。

以前、鹿の解体を経験したことがあるというお子さんは、さすがの手際の良さでイカを捌いていきます。イカが締まる時に「キューキュー」と音を立てる様子を、子どもたちは興味津々に見つめていました。

コウイカを捌いた後、港に戻った子どもたちは、古くなったイカリのペンキ塗りに挑戦します。錆止め入りのペンキを刷毛で丁寧に塗り重ねる作業に、子どもたちは真剣な表情で黙々と取り組みます。

丁寧に塗り重ねられたペンキのおかげで、イカリは見違えるほどピカピカに生まれ変わりました。

待ちに待ったお昼ご飯。今日のメニューは、コウイカのほか、地元で獲れたばかりの新鮮なスズキ、クロダイ、サワラ、ヤズなどが、贅沢にお刺身として食卓を彩ります。

新鮮な海の幸を好きなだけ、思い思いに盛り付けて作る、自分だけの贅沢海鮮丼。

しかも、おかわりも好きなだけできるんです。こんなに新鮮な魚を毎日味わえるのは、この島ならではの贅沢。「島の人は、魚は買わないよ。物々交換で済むから」と、宮川さんは笑顔で教えてくれました。

宮川さんのお母さんが心を込めて作った、温かいあら汁も振る舞われ、子どもたちにとって忘れられない贅沢な昼食となりました。
ビーチクリーン体験

お腹がいっぱいになった後は、みんなで浜辺へ移動し、ビーチクリーンに取り組みました。

大きなプラスチックごみはもちろん、発泡スチロールや空き缶など、幅広い種類のごみが目につきます。

集めたゴミを可燃ごみと不燃ごみに丁寧に分別。恵みの海への感謝の気持ちを込めて、みんなで清掃活動に励みます。

温かく迎えてくれた宮川さんや島の人たちに感謝の気持ちを伝え、一行はフェリーに乗り込み、島を後にしました。
ベイサイドプレイス博多埠頭散策

フェリーは再び「博多ふ頭旅客ターミナル」に到着。島での思い出を胸に、子どもたちはベイサイドプレイス博多埠頭の散策へと出発します。

地上70メートルの博多ポートタワー展望台から、広がる博多港の景色を一望。その眺めとともに、福岡という街について学びを深めました。楽しい思い出をたくさん詰め込んだ一行は、バスに乗り帰路へと向かいました。
3日目の夜は子どもたちによる振り返り会

宿に到着した子どもたちは、3階のフリースペースに集まり、2日間の体験を振り返る会を行いました。それぞれのチームが、体験を通して生産者の方々から学んだ大切なことを発表しました。

子どもたちが体験を発表する様子を、リモートワークをしながら見守っていた親御さんたちも、その学びの深さに感動していました。

発表会が終わると、参加者全員での夕食がスタート。この日の夕食は、地元古賀市で飲食店を営む「NEW PUBLIC SALOON」さんが提供してくれました。この3日間の交流を通して、子どもたちはもちろん、親御さん同士も親睦を深める良い機会となりました。
最終日は観光もできる

最終日の朝の朝食もたっぷりのボリューム。みんなで一緒に朝食を済ませた後、3泊4日を共に過ごした仲間たちと別れを惜しみつつ、それぞれの帰路へ。

朝9時に解散となるため、福岡観光をゆっくり楽しむこともできます。「これから新幹線で広島へ移動して、お昼にお好み焼きを堪能する」という人や、「伊勢神宮に立ち寄ってから帰る」という人もいて、解散後の過ごし方はさまざま。最終日だけでなく、初日の集合前に観光を楽しむ人もいるので、旅行と合わせて参加するのもおすすめです。
体験で持っていった持ち物

今回の体験で持っていくと便利だったアイテムをご紹介します。3月の福岡は、初夏のように暖かい日もあれば、雨で急に冷え込むこともあるため、脱ぎ着しやすい服装がおすすめです。宿泊先では洗濯ができますが、体験中は保護者のサポートが難しいため、汚れても気にならない服装を選ぶようにしましょう。
【2日目の持ち物】
- 軍手(薪割りの際に使う)
- ハンドタオル(手を洗う時、汗を拭く時)
- ポケットティッシュ
- 羽織るもの1枚
- 水筒
- エプロン(昼食・クッキーづくり用)
- バンダナ(昼食・クッキーづくり用)
- ビニール袋(汚れ物入れ用)
- 日焼け止め(任意)
- 虫刺され薬(任意)
- 常備薬: 酔い止め薬(任意)
- お土産購入用の小銭(2,000円前後)
【3日目の持ち物】
- リュックサック
- 水筒
- ハンドタオル
- ポケットティッシュ
- 羽織るもの1枚
- 着替え一式(上下、靴下含む)
- 軍手2枚
- 長靴またはマリンシューズ
- 雨具(両手が自由になるレインジャケットのようなものが良い)
- ビニール袋(汚れ物や海での思い出の品入れ用)
- 任意: 常備薬(日焼け止め・酔い止め薬・虫刺され薬)
参加してどうだった?

参加前、塩づくりを楽しみにしていた娘は、「友達がたくさんできて本当に嬉しかった!みんなで一緒に体験できて楽しかった。」と笑顔で話してくれました。朝から夜まで、年齢も住む場所も違う新しい友達と一緒に、初めての体験を共有し、これまで知らなかった食の世界を深く学べたことは、娘にとってかけがえのない宝物になりました。

地域ごとの特色を生かした生産者との交流を通して、多彩なアクティビティを満喫できる「ポケマルおやこ地方留学」。子どもはもちろん、大人にとっても、その土地ならではの貴重な学びと体験がきっと得られるはずです。
また、今回のプログラムで出会った生産者さんの商品は、産直ECサイト「ポケットマルシェ」から購入可能です。現地でのご縁を、これからは“お買い物”を通じて応援につなげることができますよ。
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