福島県の浜通り、太平洋に面した温暖な気候が広がる富岡町(とみおかまち)。いま若い移住者たちが増え、新たな可能性が次々と生まれています。その町の魅力を先輩移住者にインタビュー。そこから分かってきたのは、チャレンジを応援してくれる人と人とのつながりでした。2022年10月に開催される移住モニターツアーもご紹介します。
富岡町ってどんなところ?
写真提供:富岡町
福島県の“浜通り”にある太平洋に面した町
福島の方と話していると、たびたび会話に登場するのが「浜通り」というエリア名。地図にもないような聞きなれない名前です。実は地元では、県全体を縦3つのエリアに分け、県西部の「会津地方」、県中央部の「中通り」、そして県東部の「浜通り」と呼んでいます。太平洋に面した浜通りは、温暖な気候に恵まれ、降雪は少なく、四季を通じて暮らしやすいエリア。なかでも富岡町は浜通りのちょうど中央に位置し、海の景色はもちろん、阿武隈の山並みも望める自然豊かな景観が魅力です。
東京からは約3時間。いわき市や仙台市へ行くにも便利
東京から富岡町へは、車の場合、常磐道経由で約3時間。電車の場合は、JR東京駅から特急で約3時間でアクセスできます。富岡町から南へ車で50分~1時間ほどのところにあるいわき市には、常夏で有名なテーマパーク・スパリゾートハワイアンズや、体験型水族館・アクアマリンふくしまがあり、休日のおでかけスポットが充実。さらに宮城県の仙台市は車で約1時間30分という近さにあります。
生活にもレジャーにもちょうどよく、まさに都会と田舎の“いいとこどり”をしたような利便性のよさに惹かれる移住者も多いのだとか。
春の桜並木など一年を通して楽しみがたくさん
町の名所「夜の森 桜のトンネル」写真提供:福島県観光物産交流協会
富岡町の誇りといえば、春になると見事なアーチをつくる桜のトンネル。「夜の森 桜のトンネル」と呼ばれ、福島を代表する桜の名所のひとつでもあります。全長2.2kmにわたり420本の桜が植えられ、夜のライトアップした姿はとても幻想的。夏は大きな松明が夜空に輝く「麓山の火祭り」、秋は伝統のお祭り「えびす講市」、冬は町を彩るイルミネーションと、四季折々のイベントが開催されています。また2021年7月には町の歴史を伝える「とみおかアーカイブ・ミュージアム」が開館するなど新たな観光スポットも誕生しています。
ゼロからの町づくり。充実したサービスで暮らしやすさが向上
東日本大震災・原子力災害によって富岡町は全町避難を経験。2017年には町の面積の約9割で避難指示が解除され、人びとが再びこの町で新たなスタートを切りました。
現在はゼロからの町づくりに取り組んでおり、行政・医療・教育・福祉などさまざまなサービスが拡充。新たな商業施設のオープンや、児童生徒の就学に要する費用の無償化、起業や営農を目指す人への手厚い支援で、暮らしやすさが格段にアップ。町内居住人口は2,000人を超え、チャレンジ精神にあふれる若い移住者がさらにこの町を盛り上げています。
富岡町への移住をイメージできるモニターツアーを開催
富岡町の暮らしを体験できるお試し住宅 写真提供:とみおかプラス
移住を考えている人にとって、慣れ親しんだ土地ならまだしも、はじめての場所だと不安はつきもの。仕事、生活環境、人間関係…悩むポイントは人それぞれで、理想と現実のギャップがあったなんて声もよく聞きます。そんな富岡町では移住を検討中の方に向けて、町の暮らしを体験できるモニターツアーを実施しています。
ツアーの詳細は記事後半で詳しくご紹介!今回は実際に富岡町へ移住された先輩ご家族へインタビューすることができました。そのリアルな声をお届けします♪
移住者インタビュー|「若い世代が多く、みんなで支え合って暮らせる町です」
今回お話を伺ったのは、神奈川から富岡町へ移住された鈴木さんご家族。地域活動をサポートする「一般社団法人ふたすけ」として活動され、町の人びとにとって心強い存在となっている方々です。移住を決めたきっかけや、現在のお仕事、暮らしの様子などを話してくださいました。
移住者プロフィール:
鈴木 亮さん(49歳)・香織さん(34歳)・郷ちゃん(3歳)・斗和くん(0歳)
※取材日2022年7月5日時点
―― ご出身はどちらでしょうか?お二人が出会ったタイミングは?
香織さん:出身は夫が神奈川県、私が埼玉県です。2011年に東京の環境NGOで知り合い、結婚したのは2015年になります。
―― 移住されたのはいつですか?
香織さん:先に夫が2017年の避難指示解除と同時にきていて、私は2019年の9月でした。最初は私の実家のある埼玉と福島の二拠点生活をしていて、子どもが生まれてからもしばらく埼玉と福島を行き来する生活が続きました。
―― 首都圏ご出身のお二人ですが、そもそも富岡町とのつながりは?
香織さん:夫は東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)という組織で3年ほど活動していて、復興が進むにつれて活動のフィールドがだんだん浜通りに集中していくようになって。何度か現場の人たちと復興支援の人たちが共同で話す現地会議があり、そこにゲストとして呼んだのが富岡町の平山勉さんという方でした。のちに一般社団法人ふたすけの代表となる方ですが、平山さんとの出会いが一番大きかったと思います。
平山さんの「ふるさとをかけがえのないものとして大事にして、移住者も帰還者も関係なく、若い人たちの力で作り直していこう」という姿に感銘を受けて…。平山さんが経営していたホテルの小部屋を借りて1年ぐらいそこに住んで仕事をしていました。
―― 香織さんは埼玉で生まれたばかりのお子さんと暮らしていたということですが、最終的に自分も移住しようと思ったきっかけはなんでしょうか?
香織さん:一回来てみてって言われたのがきっかけで。私が行ったのは楢葉町(富岡町の南に隣接する町)のコミュニティスペースで、そこに勤めていた女性も移住者だったんです。ほかにもいわき・双葉の子育て応援コミュニティ cotohana(コトハナ)という子育て支援の団体で代表をしている女性が富岡町にいて、子育てのことで何かあったら相談できる友達がそこでできたんですよね。
彼女たちは元々立命館大学のボランティア支援で来ていた人たちなのですが、来ている間に町が好きになってそのまま移住されたんです。若い女性が頑張っているという印象があって、そういう先輩移住者がいて心強かったというのはすごくありますね。
あとやっぱり帰還してきた方々の熱意。移住者も受け入れつつ、まだ戻ってこられない人たちの思いも受け止めつつ、町をゼロから作っていく、二度と失わないように頑張っていくっていう気概が、すごく血の通った温かい町なんだなと思いました。それを肌で感じたから移住を決められたのかもしれません。
―― 現在のお仕事についても教えてください。
香織さん:夫は「ほっと大熊」という大熊町にある宿泊施設のフロント業の傍ら、「一般社団法人ふたすけ」という民間の中間支援を行うNPO団体でも活動をしています。
私は基本的にフリーランスで、主に会計や経理などの仕事をしています。「ふたすけ」はもちろん、いろんな地域の方々からのお仕事をしています。例えば私と同い年の女性が一昨年開業した楢葉町にあるケーキ屋さんの総務・経理をしたり、子育て支援団体cotohanaのメンバーとして運営に携わったりしています。
いまって、“団体の代表”みたいな感じで切り拓いていく女性が多いんですけど、それを支える力のある人ってそんなにいないと思ってて。私はそこを支えていきたいなって。切り拓いていくエネルギーと、ベースを支える力とで使う脳みそが違うので、事務面などで支えられることがあればと思っています。
―― 「ふたすけ」は移住者のサポート活動をされているということですが、具体的にどのようなサポートをしていただけるのでしょうか?
香織さん:何でも言っていただければ!例えば、一緒に車で回ってこの地域の主要なサービスを見ていただくこともできます。住んでみて嫌だったことも言いますよ(笑)
あと「ふたすけ」がご厚意で借りている休耕田で、月一回ほど交流会をやっています。単身の若い男の人や移住してきて間もない人、移住しようと考えている人がそこで出会って…畑に集まった人たちでLINEグループを作って、そこでまた別の話が繰り広げられていたり…。
町の中心部にあるショッピングセンター「さくらモールとみおか」で、今年の春から「さくらライブ」という野外音楽イベントを企画している方がいるのですが、それもうちの畑に来てくれた方が「ずっとやりたい」と言っていたことが実現したもので。運営をしている人も畑の交流会で知り合った人たちだったりするんですよ。
だから移住してきた人たちが仲間を作りやすい場は作れているのかな?やっぱり人がいちばんですね、移住の決め手は。
―― 移住者側からの相談で一番多いのは?
香織さん:圧倒的に住まいと雇用ですね。この間広島から移住された方がいたんですけど、その方の住まい探しの際に、人を紹介するなど私達にできることをさせていただき、最終的に住まいを見つけることができました。住まいは情報提供しかできないんですが、「いまこの団地空いてるみたいだよー」と教えることができます。仕事探しの相談はもちろん、働き手を探しているという連絡もよく来たりしますね。
―― 富岡町の住環境はどうですか?
香織さん:すごくいいです。ベビー用品が売っているお店が少ないっていうのはありますけど、不便なところは少ないですね。「さくらモールとみおか」に、スーパーマーケットとドラッグストア、ホームセンターが入っているので、もうそれで十分。あとはネット通販に頼っちゃってます。若い夫婦が住む分には全然問題ないと思いますよ。
―― 教育面に関しては?
香織さん:いま子どもは町で唯一の認定こども園に通っています。ママ友に聞いた話だと、小学校は少人数なので先生の目が行き届いていて最高だって。ちょっとお友達が少なくて寂しいかもだけど、少しずつ増えているみたいなので。多すぎるよりは伸び伸びできていいんじゃないかな。
―― 休日に家族で出かけるオススメのスポットはありますか?
香織さん:富岡町だと「富岡わんぱくパーク」。あと「富岡漁港」は釣りや海水浴ができるんですよ。サーフィンをやっている人も最近多いですね。
ほかには隣町ですが、いまの季節は楢葉町の「天神岬」など。浪江町の道の駅や公園、川内村の子どもの遊べるスペースがある「いわなの郷」もよく行きますね。富岡町に住むことで一番大事なのは、富岡町だけで完結させないことだと私は思っています。
―― 最後に、移住を考えている方にメッセージをお願いします。
香織さん:ゼロから再出発した町のエネルギーを感じて欲しいし、自分がこうしたいと思ったことは叶えられる町です。なんでも揃っているわけじゃないけど、もし不便なことや困っていることがあれば、それを一緒に解決できる仲間達がここにはたくさんいますよ。
町内でのびのび!富岡町で訪れたいオススメスポット6選
ここでインタビューで鈴木さんのお話にもあった富岡町のオススメスポットをご紹介。子育てにぴったりな施設や、町を知れるインフォメーションセンターなど、富岡町に訪れたならぜひ立ち寄りたい場所をピックアップしました。
富岡町文化交流センター 学びの森
生涯学習館、図書館、大ホールなどが揃った複合文化施設。会議室が利用できるほか、図書館にはゆっくりくつろげる交流スペースも。自然に囲まれた空間のなかで、人・まち・文化が出会う“町の広場”として、町民に愛されています。
住所 | 福島県双葉郡富岡町大字本岡字王塚622-1 |
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問合先 | 0240-22-2626(代表) |
開館時間 | 生涯学習館9~17時、図書館10~18時 |
休館日 | 月曜、祝日(こどもの日、文化の日は開館)※月曜が祝日の場合翌日休 |
URL |
富岡わんぱくパーク
子育て支援の拠点となる施設で、ボールプールやお絵かき、砂遊び、ままごとなどさまざまな遊びを体験できます。誰でも利用は無料で、定期イベントも開催。安心して子どもを遊ばせられるよう、遊びを見守るプレイリーダーを配置しています。
住所 | 福島県双葉郡富岡町中央3-11 |
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問合先 | 0240-25-8590 |
開館時間 | 10~18時 |
定休日 | 火曜(祝日の場合は翌日)※学校の長期休暇期間は開館 |
料金 | 無料 |
URL |
Re-Birth cafe(りばーすかふぇ)
バナナベリーヨーグルトスムージー500円、チョコチップスコーン280円
地元産の野菜や果物などの食材を活かし、健康を意識して考案されたメニューを提供。メディカルフィットネスが運営するカフェで、医療・スポーツ系専門職や管理栄養士が在籍しています。身体が不自由な方・栄養や食事について気軽に相談したい方にもおすすめ。
住所 | 福島県双葉郡富岡町大字本岡字王塚36(トータルサポートセンターとみおか内) |
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問合先 | 0240-25-8915 |
営業時間 | 10~19時 |
定休日 | 木曜 |
URL |
富岡漁港・海水浴場
2019年に復旧工事を終えて再開した漁港で、ハゼやカレイ、アイナメ、ヒラメなど投げ釣りやルアーフィッシングが楽しめます。隣接する浅瀬の砂浜は、海水浴ができる地元の人に人気の穴場スポット。花火大会や釣り大会などのイベント開催も。
住所 | 福島県双葉郡富岡町仏浜釜田60 |
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ふたばいんふぉ
双葉8町村の現状を共有し、広く伝えるために開設された総合インフォメーションセンター。パネルや大型モニター、立体地図を使った展示で双葉郡の過去・現在を学ぶことができます。物販コーナーでは名産品を購入でき、共有スペースでは訪れた人同士の交流も。Wi-Fiや電源も完備。
住所 | 福島県双葉郡富岡町大字小浜字中央295 ふたばタイムズ1階 |
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問合先 | 0240-23-6612 |
開館時間 | 11~18時 |
休館日 | 不定休 |
料金 | 無料 |
URL |
とみおかワインドメーヌ
山梨のワイナリー勤務を経て、地域おこし協力隊として移住した細川さん
‟とみおかワインで魅力あるまちづくり”を目標とし、町内に3つのブドウ畑を展開。地元の食材とのマリアージュや、ワインを通した交流人口・観光産業の育成を目指しています。「この土地はワインづくりのポテンシャルがあると確信している。富岡の景色を作っていきたいです」(細川さん)
住所 | 福島県双葉郡富岡町小浜438-1 |
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問合先 | 0240-23-7606 |
URL |
※各ブドウ畑は私有地につき許可なく出入り不可。ボランティアや視察受け入れは要問合せ
富岡町の移住体験モニターツアーは2022年10月8日~10日!
では最後に、10月に開催される富岡町の移住体験モニターツアーについてご紹介!
移住体験モニターツアーでは、「仕事」×「地域の魅力的な人びと」×「魅力的な生活スタイル」×「地域文化」の4つのテーマを行程に盛り込み、2泊3日で気軽に富岡暮らし体験をすることができます。実際に暮らしたときにお世話になる施設の見学や先輩移住者との交流会などが予定されており、住んでみてからのイメージを膨らませられる内容となっています。
POINT①日常生活に欠かせないショッピングセンターをチェック
富岡町民にとって日常生活のお買い物で中心となるのが「さくらモールとみおか」。町の中心部にあり、ヨークベニマル(スーパーマーケット)、ダイユーエイト(ホームセンター)、ツルハドラッグ(薬局)、フードコートが一体となったショッピングタウンです。ツアーでは施設を見学しつつ、フードコートでランチ休憩。町の生活の雰囲気を感じ取れますよ。
POINT②農業体験で憧れの田舎ぐらしを体感!
富岡町は農業が盛んで、水稲やタマネギ、パッションフルーツなど多種多様な作物の栽培が行われています。田舎ぐらしに憧れる人にとって一度はやってみたい農業体験。秋の心地よい風に吹かれながら、収穫体験や採れた野菜でランチを楽しめます(内容は変更になる場合があります)。
POINT③支援制度、求人情報などの説明でより具体的にイメージできる
2日目のメインイベントであるセミナーでは、まず町役場の担当者から町の概要や、教育、公共交通といった暮らしに関わる説明があります。移住支援金や各種補助金制度といった具体的なお話のほか、町で募集されている主だった求人企業情報もご紹介。移住希望者とのマッチングを図り、スムーズにサポートしていただけます。
POINT④セミナーや交流会で先輩移住者のリアルな声を聞ける
実際に富岡町にお住まいの先輩移住者が登場し、移住のきっかけや移住してよかった点、大変だった点、そしてアドバイスなどをいただきます。セミナーのあとには夕食交流会が予定されているので、人脈づくりの場としてもどんどん活用していきましょう。
POINT⑤主要スポットもめぐって町の魅力をさらに知れる
ツアーでは、2021年7月にOPENした「とみおかアーカイブ・ミュージアム」や震災遺構「請戸小学校」をめぐるほか、学校や医療施設、役場などを見ることができます。お試し移住体験ができる住宅「とみおかプラス」にも立ち寄るので、移住で不安なことがあれば目で見て確かめてみましょう。
日程 | 2022年10月8日(土)〜10日(月) |
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参加費 | 小学生以上5000円(朝食2回・昼食1回・夕食2回、自宅の最寄主要JR駅~富岡駅の往復JR券、入場料含む) |
募集人員 | 20名(最少催行人員10名) |
募集期間 | 2022年7月24日(日)〜9月15日(木) |
東日本大震災そして原子力災害を乗り越え、ゼロからの町づくりをスタートさせた富岡町。若い移住者が増え、いま新たな潮流が生まれています。人と人がつながり、チャレンジしたい人を応援してくれる、そんな気概に満ちあふれたこの町のパワーを、ぜひ一度見にきてくださいね。
●新型コロナウイルス感染症対策により、記事内容・営業時間・定休日・サービス内容(酒類の提供)等が変更になる場合があります。事前に店舗・施設等へご確認されることをおすすめします。
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
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