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「お手伝い」の習慣、継続させるには? 「夏のお手伝い ホームプロジェクト」実施レポート

お手伝いの習慣を継続させるには?お手伝いホームプロジェクト実施レポート

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るるぶKidsが2023年夏に募集をした「夏のお手伝い ホームプロジェクト」は、子どもの興味関心診断から、その子にあったおすすめのお手伝いを提案。お手伝いをミッション仕立てにし、さらに親ができる「やりたいスイッチ、やりぬくスイッチ」を入れるアイデアを提供することで、家族の「ホームプロジェクト」として実行するというもの。今回は、当プロジェクトに参加いただいた親子の体験レポートから、習慣を継続するための大切なポイントを中山先生に教えてもらいました。

中山先生監修 中山芳一先生
1976年岡山県生まれ、3児の父。岡山大学准教授。専門は教育方法学。大学生のキャリア教育に加え、幼児から小中高生の非認知能力やメタ認知能力育成についても研究。新刊の『「やってはいけない」子育て 非認知能力を育む6歳からの接し方』(日本能率協会マネジメントセンター)のほか『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(東京書籍)など、著書多数。

目次(index)

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1.みんなが実践した「お手伝いプロジェクト」をシェア

「夏のお手伝いホームプロジェクト」の特徴は、

  • 事前に行った子どもの質問回答から、その子の興味関心の傾向を示す「私の可能性 発見!」診断レポートが届く。
  • 診断レポートに基づき、その子におすすめのお手伝いと、ママパパができる「やりたいスイッチ・やりぬくスイッチ」の入れ方をアドバイス。「ホームプロジェクト」として、家族全員でミッションを達成する。

というもの。実際に体験参加してくれたモニターさんの声をご紹介します。

お友達のホームパーティを成功させよう!

【モニターAさん】

  • 子どもの「私の可能性 発見!」診断は…
    しくみに興味をもつ傾向
    人のために何が出来るか考えたり、誰かと協力したりすることが好きな傾向
  • 実行したお手伝いミッション
    お友だちの誕生日のホームパーティを計画し、成功させよう!
  • プロジェクトの感想
    ホームパーティのためにアップルパイを作ることを決め、材料の買い物リストを作成し、作り方を調べ、実際に調理をしてもらいました。事前の「私の可能性 発見!」診断から、お菓子作りの本などを紹介しておき、あとは自分でどう調べるのかをまかせたところ、本人はYouTubeなどを使って調べていて、現代的だと感心。パイ生地をどうくっつけるのか、どうしたら均等に焼き上がるかなど、自分で終始考えて作っていたのが良かったです。
  • 発見できたこと
    買い物は支払いが苦手なようでしたが、これを機にお会計に興味をもったことが新しい発見となりました。苦手だった片付けも、調理からの一貫した流れでミッションにしたことで、一生懸命に取り組んでいました。やりぬくスイッチのアドバイスから、「助かる〜!ありがとう」と何度も声掛けをしたところ、本当にやる気が起きて、最後までパーティをやり抜けました。

親戚の子たちと楽しい一日を過ごそう!

【モニターBさんの例】

  • 子どもの「私の可能性 発見!」診断は…
    アイデアを形にする活動を好む傾向
  • 実行したお手伝いミッション
    親戚の子どもたちと、楽しい一日を過ごそう!
  • プロジェクトの感想
    普段は弟や親せきの妹を遊んであげてよ、と言っても面倒くさそうにすることが多かったのですが、今回は、あらかじめ「幼児から小学生までが楽しめることを企画して、どう実行したらよいか」というミッションを与えたことで、喜んで率先して考え、計画の段階からワクワク楽しそうでした。当日、企画通りには幼児が動いてくれない場面もありましたが、その場で自分の工夫を交えながら臨機応変に責任もってやり遂げました。
  • 発見できたこと
    ミッションをまかせたら、あとは本人のやりたいように自由にやらせたことで「やりたい・やり抜くスイッチ」が入ったようです。これまでは、つい親があれしてこれしてと指示してしまい、嫌がる口答えにイライラしてしまいましたが、お互いが嫌な気持ちにならず、むしろみんなが楽しめました。

植木の水やりを毎日しよう!(報酬つき)

【モニターCさん】

  • 子どもの「私の可能性 発見!」診断は…
    人を助けること、守ること、人の暮らしを支えることを好む傾向
  • 実行したお手伝いミッション
    植木の水やりを毎日して、報酬のお小遣いをため、卒園した保育園の夏祭りへ参加しよう!
  • プロジェクトの感想
    夏祭りでミニゲームや駄菓子やジュースを買うにはいくら必要なのか、シミュレーションからしたところ、「この金額は集めたい」とやりたいスイッチがオン!以前は、植木の水やりを頼んでも断られる日もありましたが、率先してやるようになりました。「今日は雨だから水やりはしなくて大丈夫だね」「今(朝)は疲れてるから帰ってからやるね」などと自分で考えて取り組み、きちんと目標額をクリアしました。
  • 発見できたこと
    夏祭りでは、意外にも少しお小遣いを残して帰ってきました。先生からは「慎重に考えながら使っていた」との報告がありました。自分で働いて貯めたことで、お金の大切さを子どもなりに感じたのかもしれません。

2.中山先生に聞く!お手伝いを今後も継続するためには?

お手伝いを通して、各家庭のさまざまな工夫や成果があった「ホームプロジェクト」ですが、今後もそのお手伝いを継続していけるにはどうしたよいのでしょうか?プロジェクトを監修した中山芳一先生にお聞きしました。

編集部:上記の体験談を含め、今回参加してくださったモニターさんのレポートには、まず「子どもの興味関心に合わせたお手伝いをできたのがよかった」という感想が多くありました。

中山先生:お手伝いというのは、毎日の生活を営むうえで「家族の一員としてやらなければいけないこと」。そのとっかかりとして、まずは興味関心に沿ったことから入るのはスムーズなんですね。しかし、お手伝いはきれいごとではないので、なかにはやりたくないこともあります。そのあまりやりたくないことにも「好き」や「得意」を見つけられると、その後も継続しやすくなります。

編集部:「普段は口うるさくいってもやらなかったのに、まるっとまかせてみたら、自主的に頑張ってやった」という声も目立ちました。

中山先生:今回、お手伝いを「ホームプロジェクト」としたことで、子どもに「責任」が芽生えたました。普段も気が向けばお菓子作りはやるけど、片付けはしないという子は多いですよね。ですが、プロジェクト化すると準備から片付けまでを仕事として包括して捉えることができる。これは子どもだけでなく、実は親の意識もそうなんです。

編集部:モニターBさんの報告のように、「途中で予想外の状況になっても、子どもが自分で考えてやり遂げた、成長を感じた」という声も多かったですね。

中山先生:まかされたことでの職業意識、やり抜こうという責任感ですね。

編集部:モニターCさんのように、きちんとやればお小遣いがもえらたり、好きなシールが貼れたりといったインセンティブがもらえる形を実行された回答も目立ちました。

中山先生:インセンティブがもらえる形は、外発的な動機付け(下図参照)となりやすいですね。特に、モニターCさんの例は、お小遣いを貯めることにとどまらず、夏祭りに楽しく参加することを目的にしたのが良いですね。結果、使い切らずに帰ってきたということは、働いて得た大切なお金だということを実感した証拠でしょう。
家庭内インセンティブは、続けるうちにあいまいになりがちな場合もあります。お手伝いの目的がお小遣いにならないよう、前提の「家族の一員としてやるべきこと」という職業意識をもたせたうえで導入するのが大切ですね。

3.継続するためのキーワードは「責任感」

編集部:夏休み・冬休みといった長期休みは、お手伝いプロジェクトのような取り組みをしやすいですが、その後も習慣として継続させていくためのポイントはなんでしょうか?

中山先生:親が大変な思いをしてやらせるのはお手伝いではなりません。目指すべきは、親が介在せずに、子どもが「自立・自走・継続」できること。

そのためには、お手伝いは「家族の一員としてやるべきこと、家族から求められていること」という「責任感」を持てることがポイントです。子どもはできればお手伝いを回避したいですよね。だけど、家族の一員として、自分もやるべき仕事なのだと当たり前に思えるようになることがとても大切です。そして、やりたくないことや面倒なことのなかにも「好き」や「得意」が見つけられると、お手伝いはより継続しやすくなります。

これは、将来社会で仕事をしていく上でも重要なスキルになります。「ジョブ・クラフティング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。誰かからやらされるのではなく、働く人自らが仕事を主体的に捉え、工夫し、やりがいを見出しいくというマネジメント理論です。子どもにとって、自分と社会の間にあるのが「家族」。家族のために働けるようになることは、社会で必要とされる大切な力を育みます。

親の意識として大切にしてほしいのは、「やらせよう」ではなく「やりやすいように導く」こと。見通しをたててあげたり、やりやすい環境を整えてあげるサポートに徹して、責任と裁量はしっかりとあたえてあげましょう。そして、常に「ありがたし」という気持ちをもって、子どもを見守ってあげてください。

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