47都道府県それぞれの代表的な「特産品」をクローズアップ。【知る】【つくる】【学ぶ】の3つの視点から、特産品と各都道府県の関係をひも解きます。各地の歴史や風土だけでなく、意外な理由で生まれた特産品は、知れば知るほどおもしろい!
佐賀県で紹介するのは「海苔」。有明海に面する佐賀県は、日本を代表する海苔の産地です。生産量・販売額で日本一を誇る佐賀海苔の特徴や、意外と知らない海苔の豆知識をご紹介します。
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【知る】アイデアで品質向上!一大産地になった有明海
九州4県にまたがり、どこまでも遠浅の海が続く有明海。その恵み豊かな有明海で育った海苔の収穫は、11月から始まり、「秋芽網期(秋海苔)」と「冷凍網期(冬海苔)」の2回に分けて3月ごろまで行われます。
収穫した生海苔は、乾海苔にして出荷。主に焼き海苔や味付け海苔に加工された海苔は艶のある黒紫色で、口どけがよく、香ばしさと甘みのある独特のうま味が特徴です。
そもそも海苔ってなに?
画像:PIXTA
海苔は食用とする藻類の総称で、縄文時代から食用にされていたといわれています。海苔の養殖は江戸時代に始まったとされており、かつて海苔養殖はアサクサノリという食用海苔が一般的でした。近年ではスサビノリ、ウシケノリなどが主体となっています。
海苔の収穫は海苔芽が15〜20cmほど成長したところで摘み取っていきます。収穫した生海苔は、四角い木枠を載せたすだれ状の「みす」に流し込み、四角い形に漉(す)いて乾燥させます。乾海苔となったところで、出荷します。
市販の焼き海苔はツルツルしている面が表で、ザラザラしている面が裏。サイズは、流通しやすいという理由から、昭和40年代から原則タテ21cm×ヨコ19cmに統一されています。江戸時代は今より大きく、戦後はちょっと小さかったといわれており、海苔のサイズは各産地でまちまちでした。
どうして佐賀でおいしい海苔がとれるの?
支柱式養殖の様子/画像:PIXTA
佐賀県では、昭和5年(1930)に唐津湾で海苔の養殖を開始しました。昭和43年(1968)には全国でも珍しい集団管理方式を採用して、これまで密殖していた漁場を区画整理。水路を整備したことで、病害を免れるだけではなく、漁船の航行がスムーズにできるようになり、さらに良質の海苔が生産されるようになりました。
昭和49年(1974)ごろからは県主導で量産から品質への転換が行われ、「うまい佐賀海苔つくり運動」がスタート。その甲斐もあって1枚当たりの単価が上がり始め、昭和51年(1976)には佐賀海苔の平均単価が全国一になりました。今も佐賀県の海苔は高級品として人気を博し、全国に出荷されています。
おいしい海苔を生み出す有明海
海苔が育つ漁場の条件は3つ。穏やかで遠浅な海であること。潮の流れによって、適度な水の交換ができること。そして、海苔が育つのに必要な栄養塩が川から運ばれること。海苔の養殖が始まった江戸時代から、これら条件を満たす漁場を見つけて、海苔の生産地は少しずつ拡大していきました。
福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県の4県にまたがる有明海は、九州北部に位置する九州最大の湾です。干満の差が最大で約6mに達するという遠浅の内海で、干潮時には数km沖まで干潟が出現。大小100以上もの河川が流れ込んでいるため、ミネラルと栄養分をたっぷり含んだ適度な濃さの海水となっています。
有明海では、この干満差を利用して、支柱式養殖という方法で海苔を育てています。
干潮時に支柱の間に張った海苔網が、海面上に現れる1日2回の干出によって天日にさらされることで、うま味がぐっと凝縮されるほか海苔の病気の予防にも効果的。海水と太陽の光を交互にたっぷりと吸収できる、海苔作りには最高の環境が広がっています。
海苔の漁場に必要な3つの条件を満たした有明海は、全国屈指の海苔の産地として知られるようになりました。
海苔って1種類だけじゃない!海苔の種類を知ろう
海苔にはいろいろな加工法がありますが、主な海苔としては生海苔、乾燥海苔、焼き海苔、青海苔の4つの種類があります。
- 生海苔:その名前の通り、海で収穫されたままの生の状態のこと。海苔の佃煮などを作るときにも使用され、乾燥海苔の原料にもなります。
- 乾燥海苔:収穫した生海苔を洗浄、裁断をして乾燥させたものです。均一な厚さにして薄い板のように見えることから、板海苔とも呼ばれています。その乾燥海苔を焼くことにより、パリッとした食感と風味を引き立たせたのが焼き海苔。現在では主流の海苔として認識されています。
スーパーなどで見かける味付け海苔は、焼き海苔にしょうゆやみりん、砂糖などで作るタレを塗って味付けした後に乾燥させたものを指します。 - 初摘み海苔:11月ごろ、その年の最初に摘み取られた海苔は「一番摘み」「初摘み」と呼ばれ、高級品として扱われています。その味わいはトップレベル。柔らかく、香り高い風味が特徴です。
- 青海苔:アオノリ類の海藻を洗浄させた後に乾燥させた青海苔は、鮮やかな色と、柔らかな磯の風味が特徴です。たこ焼きやお好み焼きなどで使用されている青海苔は、乾燥させた後で粉砕されています。
ちなみに、日本の海苔と「韓国海苔」の違いは、原料の海苔が異なります。韓国海苔は「岩海苔」を原料としていますが、日本ではほとんどが「すさび海苔(スサビノリ)」が原料です。
【つくる】海苔のおいしいレシピ
艶のある黒紫色をした佐賀海苔は、火でさっとあぶるだけで緑色へ変化し、香ばしさが増します。海苔は湿気ると風味が落ちてしまうので、密封容器に乾燥剤を入れ、湿度の低い冷暗所や冷蔵庫で保存して置くようにしましょう。それでも、海苔が湿気ってしまった場合は、海苔の佃煮などを作ってみるのもおすすめです。
ご飯のお供「海苔の佃煮」を作ってみよう!
海苔の佃煮をはじめ、かき揚げや味噌汁といった料理によく使われる生海苔は、12〜2月ごろを中心に、鮮魚店などで購入することができます。すでに湿気ってしまった海苔がお家にある場合は、細かくちぎり、湯で戻した後に調味料で煮ても佃煮は作れます!
簡単レシピを紹介
- 生海苔はざるに入れ、水でさっと洗います。海苔が長いようなら、洗う前に切っておきましょう。
- 軽くしぼり、水気を切ったら、海苔を鍋に入れ、火にかけます。木べらで鍋底を払いながらよく混ぜます。
- 海苔が緑色に変わったら、しょうゆ、酒、みりんを入れ、弱火で煮ます。途中、かき混ぜながら、水分がなくなり、ちょうどよい固さになるまで煮詰めます。
【学ぶ】海苔について学べるスポット
うま味がぎゅっと詰まった風味豊かな佐賀海苔は、おみやげやギフトとしても人気があります。ここでしか味わえない佐賀海苔を使ったソフトクリームなど、佐賀県ならではの味覚をぜひチェックしておきましょう。
JF佐賀有明海直販所 まえうみ(佐賀県/佐賀市)
「JF佐賀有明海直販所 まえうみ」は、佐賀市内にある漁協組合が運営する直販所です。有明海の海苔を中心に、地元のおみやげ品や海産物など、さまざまな商品を取り揃えています。なかでも、海苔はスーパーなどには流通しないような高級品から工場直売品までバリエーション豊富。直売所ならではの価格と品揃えが魅力です。
ここならではの、海苔の風味たっぷりの佐賀のりソフト(コーン300円・少量カップ100円)は、ぜひ味わってほしい必食グルメ。また、店内には有明海などでとれた新鮮な魚介類が並ぶ鮮魚コーナーも併設しています。
<施設データ>
住所 | 佐賀県佐賀市光2-819-1 ※令和6年(2024)春に移転予定 |
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問合先 | 0952-20-1200 |
営業時間 | 10~18時 |
定休日 | 木曜 |
アクセス | 公共交通機関:JR佐賀駅から車20分 車:長崎自動車道佐賀大和ICから国道263号などを経由10km20分 |
駐車場 | あり/24台/無料 |
URL |
【SDGs】佐賀県の海苔を自由に食べたり守ったりするために
佐賀県で収穫される海苔は、環境に負荷をかけず生態系と調和しながら栽培が行われています。この先も、海苔を変わらず自由に食べたり、守ったりするためにはどのようなSDGsを意識すればいいか、親子で話し合ったり、考えてみるといいですね。