47都道府県それぞれの代表的な「特産品」をクローズアップ。【知る】【つくる】【学ぶ】の3つの視点から、特産品と各都道府県の関係をひも解きます。各地の歴史や風土だけでなく、意外な理由で生まれた特産品は、知れば知るほどおもしろい!
高知県で紹介するのは「カツオ」。一本釣りの漁法やカツオのたたきなど、高知県のカツオがどうしておいしいのか、そのヒミツに迫ります。
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【知る】古くから高品質と評判だった高知県のカツオ
高知県の県魚であるカツオ。約8000年前の貝塚で食べられていた痕跡が発見されていて、日本で古くから親しまれていたことが分かっています。身が柔らかくて傷みやすいカツオは、硬くなるまで干してから食されていたようです。
平安時代の制度を記した法典「延喜式(えんぎしき)」には、土佐(とさ、現在の高知県)が中央政府に「堅魚(かつお)」を納入したという記載があります。「堅魚」は生魚を細かく切って干したもの、「煮堅魚」はカツオを煮てから干したもので、現在のかつお節の原形といえるものです。
戦国時代になると、かつお節は武士の間で戦陣での携帯用保存食として用いられるようになります。「勝男武士」と当て字が使われ、出陣時の引出物とするのがしきたりだったとか。江戸時代には、土佐のかつお節は品質のよさが認められ、名産として徳川家康にも献上されたそうです。
高知県のカツオが有名なワケ
太平洋を臨む高知県の海岸線は東西に長く、沖合いの全エリアでカツオ漁が行われています。
カツオは春になると黒潮(くろしお)という海流を北上し、秋になると反対に北から南に戻ってくる魚です。春、3〜5月に旬を迎えるものを初カツオ、9〜11月と秋に旬となるものを戻りカツオといい、その両方が高知県の近海まで来るため、年に2度も旬のカツオを水揚げできます。
初カツオは赤身が多く、身が引き締まっていてさっぱりとした味です。薬味をたっぷり乗せて味わう「たたき」が一番おいしい食べ方と伝わります。戻りカツオは、初カツオより肥えて大きくなり、脂肪がのった濃厚な味。柔らかくトロッとした食感で、生のまま刺身で食べるのがおすすめです。
県の南西部に位置する足摺岬(あしずりみさき)は黒潮、つまりカツオの漁場に近いので、釣り上げたその日のうちに、鮮度のよいカツオを漁港まで持ち帰ることができます。カツオは鮮度が重要な魚です。日にちが経ったものは臭みが出てきます。漁場に近い高知県だからこそ、新鮮なうちにカツオを港へ運び、味わうことができます。鮮度のよさが、高知のカツオが有名な理由の1つといえそうです。
高知県でとれるカツオは5種類!
たたきや削り節など、日本人の食生活に密接に関わっているカツオ。実は、カツオと呼ばれる魚は複数いるのを知っていますか。高知県で水揚げされるカツオは5種類あり、そのうちたたきや刺身など生で食べられるのは、本ガツオ、ハガツオ、ヒラソウダガツオ、スマガツオの4種類です。もう1種類のマルソウダガツオは加工に向いています。
●カツオと言えばコレ!本ガツオ
一般的にカツオとは「本ガツオ」のことで、刺身や「カツオのたたき」で味わうのにも、かつお節などに加工するのにも適しています。赤身のさっぱりとした風味を楽しむ春の初カツオ、脂ののった味わいを楽しむ秋の戻りカツオと、年に2回旬があります。ラグビーボールのような体つきで、腹側にタテジマがあります。
●鋭く大きな歯を持つハガツオ
「サバガツオ」、「キツネガツオ」とも呼ばれます。鮮度落ちが早く、都市部へはあまり流通しません。色合いは薄いピンク色、白身魚のようなあっさりとした味で、生食はもちろん揚げ物や塩焼きにしてもおいしいです。
●マグロに似た上品な味わいのスマガツオ
ほかのカツオと異なり大群で行動しないため漁獲量が少なく、カツオの中では最も希少価値が高い種類です。体長は1m前後とカツオの中では一番大きく、重さは10kgを超えるものもあります。肉質が柔らかく適度に脂がのっていて、マグロを連想させる味です。刺身やたたき、竜田揚げがおすすめの食べ方です。
●煮魚におすすめ!ヒラソウダガツオ
マルソウダガツオより体がやや大きく、血合いが少なめです。ややねっとりとした食感で味に深みがあり、加熱するとうま味が増すため、煮魚にするとおいしいです。
●宗田節の原料になるマルソウダガツオ
「メジカ」とも呼ばれ、丸い体をしています。体長は40cm前後、重さは5kg程度とカツオの中では小さめです。血合いが多く腐りやすいので、生食には向いていません。かつお節の中でも、マルソウダガツオから作られるものを「宗田節(そうだぶし)」といい、香り高くコクのあるいいだしがとれます。
船上でのまかない料理が起源!?カツオのたたき誕生の理由
カツオ料理の中でもメジャーな「カツオのたたき」。表面をワラの火で一気に焼き上げるため、皮が柔らかくなり、カツオ特有の臭みが消えて香ばしさとうま味が増します。通常ポン酢で味わいますが、高知県では塩で食べるのが主流。ニンニクスライスや薬味をたっぷり添えて食べるそうです。
「カツオのたたき」のたたきとは、その名の通り叩くことを意味し、調理の際にカツオに塩やタレをかけて叩いて味をなじませたことに由来するのだそうです。元々は漁師が船上で食べていたまかないが世間に広まったものとされています。昔は今のように食物を保存する技術がなく、鮮度が落ちたカツオを船の上で食べるため、生臭さを軽減する料理法が発展したようです。
また、真偽のほどは分かりませんが、「土佐藩主が食中毒を恐れてカツオの生食を禁じた際、カツオ好きの人々が表面を焼いて焼き魚と偽ったことから生まれた」という説もあります。
高知県のカツオはなんと一匹ずつ釣り上げられている!?
カツオ漁には、巻き網漁、一本釣りなど、複数の漁法があります。カツオ漁の主流は巻き網漁ですが、高知県では一本釣りが多く用いられます。
大きな網で魚群を囲い込み、まとめてカツオをすくい上げるのが巻き網漁です。餌が不要で、一度に大量の獲物を捕獲できます。しかし衝突によって魚が傷つき、品質劣化が進んだものが混ざります。そのため、巻き網漁で水揚げしたカツオは生食に適さず、かつお節などに使われます。
一方の一本釣りは、釣り竿で一匹ずつ魚を釣り上げる漁法です。釣り上げられたカツオは1匹ずつ生きたまま、すぐに凍結処理されるため、鮮度は抜群。暴れる時間も短いので、品質低下のリスクも抑えられます。ただし、巻き網漁に比べて捕獲量は少なくなります。
高知県で流通するカツオは、ほとんどが一本釣りされたもの。魚体に傷がつきにくく身の傷みが少ないのが特徴です。それゆえ、高知県のカツオはおいしいのです。
【つくる】カツオ料理に挑戦してみよう!
高知の郷土料理「カツオのたたき」を、おうちで作ってみましょう。さらに、高知の家庭料理「かつおめし」のレシピも紹介します。
家で「カツオのたたき」にチャレンジ!
皮のついた生のカツオを手に入れて、自宅で「カツオのたたき」を作ってみましょう。わらであぶるとより味わい深くなりますが、家庭ではガスの火であぶりましょう。
簡単レシピを紹介
- 3枚におろしたカツオの身を背と腹に切り分けます。さくに切り分けた身が店で売られているので、それを用意してもOKです。できれば皮つきのものを選びましょう。
- 身を串に刺し、全体に軽く焼き色がつくまで、ガスコンロの直火で表面を焼きます。
- 火であぶった身を食べやすい厚さに切ります。
- まな板の上で身に塩を振って、包丁の腹(側面)で叩き、味をなじませます。さらに酢としょうゆを振りかけて軽く叩き、皿に盛ります。
- カツオの上にニンニクの薄切りを乗せ、お好みでネギの小口切りやタマネギの薄切りを散らします。そして、④で残ったしょうゆと酢を回し掛けます。薬味には、大葉、葉ニンニク、小夏などの柑橘の皮もおすすめです。
カツオの炊き込みご飯「かつおめし」
「かつおめし」は土佐の漁師町に昔から伝わる家庭料理です。カツオをたたきや刺身で食べた後、残った身を炊き込みご飯にします。
簡単にレシピを紹介
- カツオの身を1cm角に切り、酒と薄口しょうゆ、しょうが汁を合わせたタレに30分~1時間ほど漬けます。
- 米を洗い、炊飯器に米とタレを入れ、水の分量を合わせて炊きます。
- 炊き上がったご飯を茶碗に盛ります。好みで、細かくちぎった焼きのりや小口切りにした万能ネギを飾ります。
【学ぶ】カツオについて学べるスポット
高知県内には、カツオのわら焼き&たたき体験ができるスポット、かつお節の削り体験と工場見学ができる施設があります。また、カツオを使ったおみやげがたくさん揃う店もあります。現地でおいしいカツオを見つけに出かけましょう!
黒潮工房(高知県/中土佐町)
約400年前からカツオ一本釣り漁を行ってきた漁師町、中土佐町久礼(くれ)にある「黒潮工房」。歴史のある町並みや太平洋を見渡しながら、昔と変わらぬ製法で本場の豪快なわら焼きとたたきを体験できます。乾燥したわらは火をつけると大きく燃え上がって迫力満点! その火で、一本釣りされた生カツオ(ない場合は冷凍を使用)を一気に表面だけ焼き上げます。
あらかじめ切り分けられたカツオの身を焼き上げる初級コースは、大人と一緒なら未就学児でもチャレンジOK。カツオをさばくところからスタートする中級コ-スは、指導員が付き添うため魚をさばいた経験がない人でも安心して参加できます。
工房内には、旬の魚介類や農産物を堪能できる飲食コーナー、地元の新鮮な海産物が並ぶ売店もあります。
住所 | 高知県高岡郡中土佐町久礼8009-11 |
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問合先 | 0889-52-3500 |
営業時間 | 8〜15時(売店)、11~14時(飲食コーナー) ※カツオのたたき体験は4〜10月の10時30分~13時30分 |
定休日 | 第2木曜(祝日の場合は変更あり) ※カツオのたたき体験はGW・お盆休み |
料金 | 初級コース:カツオ料金(時価)+800円、中級コース:カツオ料金(時価)+1500円 ※完成した料理は持ち帰り、またはその場で食事可 |
アクセス | 公共機関:JR土佐久礼駅からタクシーで10分 車:高知自動車道中土佐ICから国道56号経由3.6km10分 |
駐車場 | あり/70台/無料 |
URL |
たけまさ商店(高知県/土佐清水市)
大正元年(1912)に創業し、伝統の製法を守って宗田節を作る「たけまさ商店」では、宗田節納屋(製造工場)の見学と宗田節削り体験を行っています。見学では、100年以上も続く職人たちによる手仕事の様子を間近で見ることができます。
体験では、今では珍しい削り節器で宗田節を削ります。その後には、宗田節をみずから小刀で成形しボトルに入れる「うま味醤油オリジナルボトル」作りに挑戦。おみやげとして持ち帰ることができます。
<施設データ>
住所 | 高知県土佐清水市中ノ浜236 |
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問合先 | 0880-82-9208 |
営業時間 | 9~16時 ※宗田節削り体験の所要時間は1時間 |
定休日 | 火・水曜 |
料金 | 大人2000円、小学生以下1500円、未就学児無料(見学のみ) ※2名~、2日前までに要予約 |
アクセス | 公共機関:JR中村駅から高知西南交通バスで60分、バス停:中浜区長場から徒歩3分 車:高知自動車道四万十町中央ICから国道56号・321号経由79.7km1時間30分 |
駐車場 | あり/6台/無料 |
URL |
とさのさと AGRI COLLETTO(高知県/高知市)
「とさのさと AGRI COLLETTO(アグリコレット)」は、 高知県の特産品を数多く集めたセレクトショップをはじめ、地元の食材を使った料理が味わえるレストラン、テイクアウトコーナーが集まる複合施設です。
一本釣りのカツオを黒潮町(くろしおちょう)産の天日塩とオリーブオイルでシンプルに味付けした缶詰「カツオdeオリーブ」(540円)など、カツオのおいしさを満喫できる食材がたくさん並びます。口当たりが軽やかで卵かけご飯にぴったりな削り節「卵かけご飯専用宗田節」(500円)や、コクとうま味豊かな宗田節の味を活かしただしオイル「ラーメンにのせる宗田節オイル」(850円)などもおすすめ。
住所 | 高知県高知市北御座10-10 |
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問合先 | 088-803-5015 |
営業時間 | 10〜19時(ショップ・テイクアウト)、10〜20時(レストラン) |
定休日 | 1月1日、2日 |
アクセス | 公共機関:JR高知駅からとさでん交通バス5分、バス停:北御座から徒歩2分 車:高知自動車道高知ICから県道44号経由4km7分 |
駐車場 | あり/300台/無料 |
URL |
【SDGs】高知県のカツオを自由に食べたり守ったりするために
高知県で水揚げされるカツオは、環境にも配慮しながら漁が行われています。この先も、カツオを変わらず自由に食べたり守ったりするためにはどのようなSDGsを意識すればいいのか、親子で話し合ったり、考えてみるといいですね。