新型コロナウイルスの終息への願いから、疫病退散の妖怪・アマビエがSNSなどで話題になっています。江戸時代に描かれたというアマビエ、当時の背景や人々が託した思いなどを、江戸時代の書物を専門に扱う大屋書房・纐纈くりさんにお聞きしました。外出自粛の今、子どもと一緒にできることのひとつとして、編集部が考案(?)した5ステップで描けるアマビエの描き方もご紹介します!
(監修者)大屋書房 纐纈(こうけつ)くりさん
創業1882年、江戸時代の出版物を専門に扱う古書店・大屋書房の4代目。世界一の古書店街として知られる東京・神田神保町で、江戸時代の生活や文化、昔の人々の息吹を、江戸時代の書物を通して、現代に届けている。写真は妖怪・猫娘のポーズ。
1.新型コロナで話題の妖怪・アマビエって?
アマビエは、江戸時代、肥後(熊本)の瓦版に書かれた半人半魚の妖怪です。“病がはやったら私の写し絵を人々に見せよと告げて海に消えた”と書かれています。
江戸時代、幕末の安政期は、大地震が相次いだり、コレラの大流行があったりと、まさに現在と同じような不安な状況が続きました。そのなかで人々が心の拠り所にしたのは、疫病退散の妖怪に願うこと。不安やストレスにのみこまれないために「なにかできることを…」と考えたのは、江戸時代の人々も同じなのですね。
現在SNSでアマビエの絵を描いて投稿する「♯アマビエチャレンジ」が広がっているのは、そのチャーミングな風貌によるところもありますが、“写して、人に見せよ”と書かれているのが最たるゆえん。これはひとえに、江戸時代の文化にも基づくもの。当時は、本を書いて写す“写本”によって、多くの本が伝えられてきたんですよ。
2.アマビエだけじゃない!葛飾北斎も描いた疫病退散の神様『白澤』
『白澤之図』 整軒玄魚画 大屋書房提供
必要以上の灯りがなかった江戸時代、妖怪は、人々にとって今よりとても身近な存在だったのでしょう。当時はアマビエ以外にもたくさんの妖怪が描かれました。
なかでも、疫病退散や厄除けのエース的妖怪『白澤(はくたく)』をご紹介しましょう!白澤は“懐中すれば災難病厄を免れる”とされ、当時さまざまな絵師によって描かれ、また配りものとしても流行したといわれています。人々は、白澤図をマクラの下に敷いて寝たり、書き写して肌身離さず持ち歩いたりしていたそうです。目が6つあり、アマビエに比べると少々怖い風貌ですが、いかにも病魔をやっつけてくれそうな強さを感じますよね。あの葛飾北斎が描いた白澤は、勇ましくてかっこいいですよ。
『北斎漫画』 葛飾北斎画 大屋書房提供
3.江戸時代にも「るるぶ」があった?! 妖怪は旅行のお供も
『旅行用心集』 八隅芦庵 白澤之図入 大屋書房提供
江戸時代の人々も、お出かけや旅行が大好きでした。旅行ガイドブックが生まれたのは、実は江戸時代なんですよ。『旅行用心集』は、旅行の日程やルート、服装、気をつけることなどが書かれていて、まさに現在の『るるぶ』の元祖のような内容! なかには『白澤』が描かれていて、道中の病魔よけのお守りとして、旅のお供をしていたのですね。
今の子どもたちと同じように、江戸時代の子どもたちも、家族でお出かけをしたり、外で凧揚げなどをして元気にあそんだりしていた様子が、当時のあらゆる浮世絵や文献などから伺い知ることができます。「感染症から家族を守りたい!」と必死に願う親心もまた、いつの時代も同じなのだと感じます。
昔の人々にならって、妖怪を書き写してコロナの終息を願う--外出自粛の今は、そんな過ごし方をしてみても良いかも知れません。感染予防につとめながら、また、元気な子どもたちの声が街に響く日々がくることを祈りましょう。
4.子どもと描こう!#アマビエチャレンジ
るるぶキッズ編集部が考えた、5ステップのアマビエお絵描きです。親子で描いて、おまもり代わりにバッグに忍ばせたり、壁に貼ったりしてみましょう。そして、まめな手洗いを忘れずに!
- 楕円をグルッと描いて、真ん中あたりに線をひこう。
- 上半分に、目と口を描くよ。口は、鳥のくちばしのようにするのがポイント!
- 下半分は、人魚のようなウロコを。好きな模様を描いてアレンジしてもok!
- 髪の毛を描こう。アマビエはロングヘアだよ。
- 足を3本描いたら完成!! 好きな色を塗ってね!