防災に役立つキャンプの知恵を子どもと実践!まず家庭でできる身近な体験で備えよう

防災キャンプ、テント内イメージ

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「子どもとキャンプしてみたい」と思っているママパパは多いと思います。実は、キャンプで培う知識や体験、使うグッズは、いざという災害時にも大いに役立つことばかりなんです。アウトドアの原点を知ったうえでキャンプを楽しむと、災害時にも役立つスキルや生きる力へとつながります。アウトドアライフアドバイザーの寒川一さんに詳しく教えてもらいました。

寒川一さんの記事:
キャンプで楽しく防災力アップ! 子連れ初心者のキャンプ場選びや身につけたいスキル

アウトドアライフアドバイザー 寒川 一さん<監修>寒川 一さん
アウトドアライフアドバイザー。中学生時代のキャンプ体験からアウトドア、キャンプの魅力にはまり、結婚披露宴、新婚旅行、子どもとの旅行もすべてがキャンプという、キャンプの達人。アウトドアの魅力を広めると同時に、外遊びを通して、災害時に役立つ「生きるスキル」を教えるワークショップを全国各地で行っている。

目次(index)

どうしてキャンプが防災に役立つの?

キャンプは、生活の知恵の宝庫!

キャンプの様子

最近は、自治体などが主催して災害時の避難宿泊体験をする「防災キャンプ」といったイベントもあります。レジャーのひとつであるキャンプが、どうして防災に役立つのでしょうか?

「普段、私たちは当たり前のように衣食住があるなかで、生活しています。ところが、ひとたび災害が起こってライフラインが断たれ、その衣食住がままならなくなったら、どうでしょうか。
それこそ、大昔の人々は、水道もガスも電気もない中、知恵を使って衣食住を組み立てて生き延びてきたわけです。現代に生き、忘れてしまっていたその知恵は、キャンプで身に着くスキルにつながっていて、大きな災害を経験したこれからの時代に、欠かせないものだと思います」(寒川さん)

屋外でごはんを作ったり、たき火で暖をとったり、寝袋で寝たり…。自然の中、いつもと違う日常を味わえるのがキャンプの魅力。キャンプを楽しむことで、生活する知識やスキルが親子で身に着く場になるとしたら、うれしいですね。

アウトドアの原点は、体温を守ること!

防災キャンプ:対応保持イメージ

アウトドアの原点を知ると、どうしてキャンプが防災につながるのかわかる、と寒川さん。

「人が生きるためには体温を保持しなければなりません。私たちはそれを震災で認識させられました。アウトドアの原点は、どんな場所・天候でも体温を守ること。すなわち生きることなんです。それを知ったうえでキャンプを楽しむと、工夫をしよう、協力しあおう、といった気持ちも自然と生まれます。そうした経験が、万が一、何か大きな災害が起こったときにも、あわてずに対応できる力を育むと思います」(寒川さん)

天候や気温などのコントロールができない自然の環境下で過ごすキャンプは、家族の絆を深めたり、命を考える体験にもつながりますね。

おうちでできるキャンプ体験&用意しておきたいアイテム

「子どもが小さくて、いきなりキャンプをするのはまだ不安…」という初心者のために、まずは自宅で楽しめて、災害時に役立つキャンプ体験を寒川さんに教えてもらいました。

家族で使う水の量って、どれくらい? ポリタンクで調べてみよう

防災キャンプ:ポリタンクイメージ

「キャンプでは、水が必要なたびに水道があるところまで行くのは大変なため、2ℓのペットボトルやポリタンクを用意することが多いです。ペットボトルは飲料用、ポリタンクは煮沸して飲んだり、調理や手洗い用に使ったりします。キャンプで1日過ごすとどのくらい水を使うのかが、減った量からわかるのですが、これを自宅でも経験しておくと、災害時の目安にもなるでしょう」(寒川さん)

寒川さんがおすすめするのは、蛇口つきで水道のように使えるポリタンク。コンパクトに折りたためるタイプもあります。キャンプ用に購入しても、防災グッズとしても活用できるので、損はありません!
おうちで一日、ペットボトルやポリタンクから水を使って過ごしてみて、自分たちがどのくらいの水を必要としているのか、実験感覚で調べてみると子どもも楽しめそうですね。水を大切に使う意識も芽生えそうです。

飲み水確保の必須アイテムはこれ!アウトドア用浄水器

防災キャンプ:アウトドア用浄水器

備蓄に必要な水の量は、大人で1日3ℓと言われています。ある程度の備蓄は必要だけれど、自分たちでどうにかして確保するという意識も必要だと寒川さん。

「備蓄をするにしても、限りがありますし、夏場に水道が長期間止まったと仮定したら、川の水や雨水を飲める水に替えられることを知っておくことも大切です。その一つの知恵として、アウトドア用の携帯浄水器はおすすめです」(寒川さん)

携帯用浄水器があれば、火を使わずに水の細菌を取り除けます。ネットなどで数千円で購入でき、キャンプや登山には必ず持参するという方も多いアイテムです。
ただし、注意点もあります。

「浄水器を使っても飲めない水があるので、説明書をしっかり読んで。工場の排水や農薬を散布した畑の下を通る水などは、避けましょう」(寒川さん)

そして、飲料水以外の水を飲み水にする知恵をもう一つ。

家庭にあるコーヒーのペーパーフィルターや布マスクで水を濾して、その水を煮沸して殺菌する方法です。煮沸は必ず、沸騰してから5分以上ぐらぐらさせるようにしましょう。おうちでは、おふろの水などを使ってトライしてみるのもいいかもしれませんね。

おふろの水でごはんを炊いちゃう?!

防災キャンプ:冷凍用密閉式保存袋でご飯を炊く様子

おふろの水と、冷凍するときに使う冷凍用密閉式保存袋を使って、ごはんが炊けるんです!袋のまま食べることができて、容器も片づけも不要。非常時に役立つスキルです。

<用意するもの>

  • 冷凍用密閉式保存袋
  • 無洗米またはといだ米 100g
  • ガスバーナーまたはコンロ
  • 小鍋

<作り方>

  1. 保存袋の中に、米と少し多いくらいの水を入れて、できる限り空気をぬいてチャックを閉じる。
  2. 鍋に水(飲料水でなくてもOK)を入れ、バーナーで沸騰させたら、①を入れる。
  3. 15分程度、中の水がなくなるまで煮たらできあがり。
    ※袋が鍋に触れて溶けないよう注意しましょう。

「これを知っておくと、キャンプでは、川の水など使ってご飯を炊くことができます。煮沸するので殺菌されるし、お湯を再利用することも可能です。家なら、おふろの水を使ってもいいですね。食べたい量を炊いて、炊き上がったら袋の上からおにぎりにすることもできる。ふりかけをかけたり、カスタマイズもできて楽しいですよ」(寒川さん)

親子で「ヘッドライト」を作ろう!

防災キャンプ:手作りヘッドライトをつける子ども

キャンプでは電気がないため、ランタンやヘッドライトの光で明るくします。おうちのキャンプ体験で、夜は電気に頼らずランタンやヘッドライトで過ごして、暗さに慣れてみるのもおすすめです。家の中がどんな風に見えるのか、危険な場所がないかを確認することもできます。
寒川さんのワークショップで人気の、ヘッドライトづくりに親子で挑戦してみるのも、楽しいおうちキャンプ体験に。

「ガチャポンの空き容器と麦球とボタン電池で、ヘッドライトを自作します。光の量がわかるし、何個もつけて明るくすることもできますよ」(寒川さん)

防災キャンプ:手作りヘッドライトの材料

<用意するもの>

  • ガチャガチャの空き容器
  • 麦球
  • ボタン電池
  • ペットボトルのふた
  • (旅行用などの)マジックベルト
  • 食品用ラップ
  • ボンド

<作り方>

  1. ペットボトルのふたの中に、ボタン電池に麦球を巻きつけ、ラップでくるんで固定する。
  2. ガチャガチャの空き容器の中に、①をボンドでつける。
  3. マジックベルトに②をつけてできあがり。

「防災の観点からいうと、電気がないときの明かりとして、キャンドルを使うのはおすすめしません。火に慣れていない人が使うと火事の原因になります」(寒川さん)

エマージェンシーブランケットにくるまってみよう!

防災キャンプ:エマージェンシーシートにくるまる様子

キャンプ用品で防災にも役立つグッズにエマージェンシーブランケットがあります。防風・防寒に役立つ薄い銀色のシートで、体に巻きつけて使います。

「防災グッズとして持っていても、使ったことのない人が多く、実力を知っている人は少ないのでは。1人でくるまるのと、家族でくるまるのとで、温かさがどんな感じか体感してみるといいと思います。100円ショップでも手に入りますよ」(寒川さん)

道具に慣れておけば、もしものときにあわてない!

防災キャンプ:おうちでテント(イメージ)

テントや寝袋、ガスバーナーなど、すでにキャンプ用品をいくつか持っているのであれば、それをおうちのなかで使ってみるだけでも、子どもたちは「非日常」を感じてわくわくするものです。また使い方に慣れておけば、キャンプのときにも、災害のときにもあわてずにすみます。
「何から買っていいかわからない」という初心者の方は、まずは防災グッズにもなる寒川さんおすすめのアイテムから順次揃えていくのもいいでしょう。

<寒川さんのおすすめアイテム>

  • 蛇口付きポリタンク
  • アウトドア用浄水器
  • ヘッドライト
  • エマージェンシーシート

デイキャンプに出かけよう

防災キャンプ、デイキャンプイメージ

自宅でキャンプ体験をして慣れてきたら、ぜひデイキャンプに出かけてみましょう。
デイキャンプは、宿泊をしないので荷物も少なく、家にあるもので手軽に楽しめます。
「キャンプ用品をどこまでそろえたらいいのかわからない」という方も、オートキャンプ場であれば、レンタルして利用できます。

「今は、キャンプ用品の種類も豊富で、スタイルもいろいろ。買ってしまったら買い替えができない高額なものもあるので、まずはデイキャンプでレンタルして使ってみることをおすすめします。ネットや売り場で見ているだけではわからないことも多いので、使うことで比較検討ができます。
また、キャンプ場でほかの人がどんなキャンプ用品を使っているかをウォッチングするのも楽しいです。自分の家族構成に近いグループがいたら、何を持っているのか観察すると参考になりますよ」(寒川さん)

withコロナでの家族のお出かけは、屋外指向になりつつあります。キャンプが楽しめるようになれば、お出かけの幅も広がっていきますね!
次回はさらに防災力をアップするキャンプの楽しみ方を紹介します。

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