東京2020オリンピックから4年、いよいよ7月26日からフランス・パリを中心にオリンピックが始まります。オリンピックは、水泳やサッカーなど子どもに身近なスポーツはもちろん、今まで知らなかったスポーツにも出合える良い機会。今回は、パリ・オリンピックで行われる注目競技のルールや見どころを紹介します!
<こちらもおすすめ>
» オリンピック2024はいつ?開催地はどこ?
» 自由研究にも!オリンピックの歴史を知ろう
» パラスポーツとは?人気競技やルールも解説
遠山健太先生
株式会社ウィンゲート代表取締役。子どもの運動教室「WingateKids」の運営のほか、子どもの適合するスポーツを見つけ出す「マイスポ」も監修。ワシントン州立大学教育学部卒、現在は順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科にて「子どもの体力」について研究をしている。2児の父であり、自身の子どもとの公園めぐりの経験を生かし、パークマイスターとしても活動。「運動できる子、できない子は6歳までに決まる!」(PHP研究所)、「コツがつかめる! 体育のずかん」(ほるぷ出版)など著者多数。
※パークマイスター…公園遊びに詳しく、子どもの発育を考えて指導ができるスポーツトレーナーのこと
パリ・オリンピックで実施されるのは、全部で32競技!
オリンピックで採用される競技は、毎回同じではありません。世界中でその競技を行っている人口の多さなど、時代の流れも反映したうえで決定されます。パリ・オリンピックで行われる競技は全部で32。残念ながら、過去、日本がメダルを獲得した野球やソフトボール、空手は除外されてしまいましたが、新たに追加された競技も。まずは、どんな競技があるのか、競技の特徴をヒントにご紹介します。
新しく追加された競技
今回初めてオリンピック競技となったのがダンススポーツ「ブレイキン」。通称「ブレイクダンス」と聞くと、なじみがあるママパパも多くいるのではないでしょうか。競技会場が、パリ最古のモニュメントが置かれたコンコルド広場なことも見どころのひとつ!詳しいルールはのちほどご紹介します。
- ブレイキン
ボールを使う競技(球技)
子どもたちも学校の体育や運動あそびでなじみがある球技が多数!ぜひ親子で世界トップクラスの技を観戦したいですね。日本チームの注目度が高いバスケットボールの見どころとルールは、のちほど解説します。
- 水泳/水球
- サッカー
- テニス
- ホッケー
- バレーボール
- バレーボール/ビーチバレーボール
- バスケットボール
- バスケットボール/3×3バスケットボール
- ハンドボール
- 卓球
- バドミントン
- 7人制ラグビー
- ゴルフ
的を射て得点を競う競技
シーンとした静寂から、的に向かって一気に力を解き放つ集中力。大人も子どもも固唾をのんで見入ってしまう競技です。
- アーチェリー
- 射撃
持てる重さを競う競技
ただ重いものを持ち上げるだけでなく、実はさまざまな駆け引きがある競技。ルールや見どころをのちほど解説します。
- ウエイトリフティング
速さや着順を競う競技
速さを競う競技は、子どもにもわかりやすく人気があります。コンマ何秒を争う世界、思わず声を上げて応援したくなりますね。
- 陸上競技 ※高さ・飛距離を競う競技もあります
- 水泳/競泳
- 水泳/マラソンスイミング
- ローイング
- セーリング
- 自転車/ロード
- 自転車/トラック
- 自転車/BMXレーシング
- カヌー/スプリント
- カヌー/スラローム
- スポーツクライミング
表現力、技術力を採点して競う競技
技の美しさや正確性などを競う採点競技は、テレビ解説を聞きながら観戦するとより楽しめます。
- 水泳/飛込み
- 水泳/アーティスティックスイミング
- 体操/新体操
- 体操/体操競技
- 体操/トランポリン
- 自転車/BMXフリースタイル
- サーフィン
- スケートボード
- 馬術
1対1で直接戦う競技
手に汗にぎる各国代表選手たち戦い!親子で応援しましょう。
- ボクシング
- レスリング
- フェンシング
- 柔道
- テコンドー
複数の種目を行って競う競技
1人の選手が何種目もの競技に挑戦。まさに「スポーツ万能」ぶりを堪能できます。近代五種の競技会場は、世界遺産に登録されているヴェルサイユ宮殿なことも楽しみですね。
- 近代五種
- トライアスロン
- 陸上/十種競技
注目の競技3選!ルールと見どころを解説
競技名を聞いたことはあっても、見たことがなかった競技のおもしろさを知ることができるのもオリンピックならでは。数ある競技のなかから、遠山先生が注目する3つの競技について、ルールと見どころを教えてもらいました。予習すれば、より盛り上がれること間違いなしです!
注目競技1:ブレイキン
オリンピック競技としてパリ2024大会で初実施! 通称ブレイクダンスとしてよばれる、ダンススポーツです。
「2012年から中学校の体育でダンスは必修化されていますし、ダンスパフォーマー、アーティストの活躍で“ダンスはかっこいい”という文化が根づいてきました。道具や専用のスペースが不要で、いつ、どこでも、だれとでもできるということも手伝って、競技人口が増えてきています。
選手たちのファッションを見ると、ちゃんとしたスポーツ選手なの? 技をかっこよく決めるだけじゃないの? と思われるかもしれませんが、しっかりとした基礎トレーニングが土台にないと、世界の舞台では戦えません。今後、選手たちの練習風景やインタビューを見る機会が増えると思いますが、技を高めるための努力や人間性にも注目してほしいですね」(遠山先生)
●ブレイキンのルール
- 男女それぞれ16名の選手が1対1で直接対決。
- 音楽を担当するDJがいて、競技で流す音楽を選曲。
- 選手たちは事前に楽曲を知ることはできず、選手は即興でダンスを披露。
- その演技に応じて、相手がダンスで返します。
- 5人の審査員がダンスの「技術性」「多様性」「完成度」「独創性」「音楽性」の5つの基準に基づいて採点。総合得点で競います。
<ここに注目!>
- 若さから繰り出される瞬発力か?はたまた経験値の高さか?
10~20代の若い選手が活躍する一方、30代以上の選手も!ほかのスポーツと比べて年齢層が幅広いのもおもしろさの一つ。若い選手は音楽に合わせて演技する瞬発力、30代以上の選手は経験値が高い分、技の完成度や技術性が期待できます。10~20代VSオーバー30の戦いも見どころです。 - 勝ち進む選手の持久力
予選から決勝まではたった2日の短期決戦。トーナメント制になるため、勝ち進む選手は連続して演技することに。いかに体力をフレッシュに戻せるか、回復能力も問われます。日ごろのトレーニングで培った基礎体力が重要になってきますね。 - 解説のコメントもしっかり聞いて
オリンピックで初めて実施されることもあり、採点の決め手や点数の高い理由がわかりづらいかもしれません。まずは、解説をよく聞いてみましょう。解説者の声の大きさや抑揚は、技のすごさ、難しさを知る手がかりに。「●●選手オリジナルの技です」、「世界でできるのは●●選手だけです」というフレーズもポイントにしてみて。
●どんな基本動作が必要?
ブレイキンでは、「とぶ」、「まわる」、「おす・ひく」などの動作が基本。「とぶ」動作は、ブレイキンのようなダンス競技のほか、バレーボールやバスケットボールなど非常に多くのスポーツに必要な動きになります。また、「まわる」動作とともに、バランスをとる動きが鍛えられます。「おす・ひく」は逆立ちやバク転など、自分の体を支えたり、踏ん張ったり、押し返すための腕の力を養います。持久力も必要になるので、「思いっきり走る」、「ぶらさがる、上り下りする」ことも大切です。
【おすすめの関連記事】
» 子どもの運動能力が高まる公園まとめ
注目競技2:ウエイトリフティング
日本では重量挙げとも呼ばれ、日本人選手が世界的に活躍しているスポーツの一つです。1896年第1回のアテネ・オリンピックから実施されています。
「いかに重いバーベルを持ち上げられるかを競うものですが、時間をかけて持ち上げる競技ではありません。速く、効率よくあげる必要があり、高い技術が求められます。ボディービルディングとよく間違われますが、全く異なる競技です。なぜ今注目なのかというと、最近は多くの競技スポーツで、体の効率的な使い方を学ぶことを目的にウエイトリフティングをトレーニングに取り入れているんです。多くのスポーツで求められる能力であることからトレーナーにもその指導技術が求められています。跳躍力や走力の向上、投げる、走る、打つ動きにも繋がるので、メジャーリーグで活躍する野球選手や競泳選手など、ウエイトリフティングをトレーニングに取り入れるスポーツ選手が増えています。今やっているスポーツと関係ないように見えますが、競技力を高める目的で、ウエイトリフティングを始めるとよいかもしれませんね。子どもが実施する場合、危険に思えるかもしれませんが、負荷をかけずにできる方法もありますので、是非調べてみてください。どのスポーツにも役立つ競技だと知ると、また違う見方ができるかもしれません。」(遠山先生)
●ウエイトリフティングのルール
- 男女とも体重による階級制。
- 床からバーベルを一気に頭上まで持ち上げる「スナッチ」と、床から一度、バーベルを鎖骨まで持ち上げて(クリーン)、そこから頭上まで持ち上げる(ジャーク)、「クリーン&ジャーク」の2種類がある。
- スナッチとクリーン&ジャークをそれぞれ3回ずつ行い、両方の最高重量の合計で競う。
- 3名の審査員によって、成功、失敗の判定が行われる。
<ここに注目!>
- 持ち上げる重さをめぐり、激しい駆け引きが繰り広げられる!
持ち上げるバーベルの重さは自己申告制で、競技は軽い重量の選手から行います。また、重さは競技直前、30秒以内であれば2回まで変更が可能。
たとえば A選手は95kg、B選手は100㎏、C選手は110㎏を申告し、それぞれ成功した場合、A選手は2回目を100㎏以上にしなければ連続して上げることになり体力を消耗します。勝負をかけて一気に110㎏を申告することもできますが、失敗する可能性も出てきます。自分の調子やほかの選手がどのくらいの重量を申告するのか、結果はどうかで重量を決める駆け引きも、大きな見どころです。 - 選手と二人三脚! セコンドがポイント
ほかの選手が申告する重量をよく見ながら、選手の得手不得手、当日のコンディション、タイミングによって挑戦する重量を考える戦略がとても重要。それには選手のことをよく理解して、一緒に判断するセコンド(監督・コーチ)の存在が大事になってきます。多くの競技は、代表監督が選手に指示を出しますが、ウエイトリフティングは監督とセコンドが別のことも。オリンピックでは、バックヤードで選手とセコンドが相談をしている様子が見られるかもしれません。どんな判断をして重量申告をするのかも注目。
●どんな基本動作が必要?
重いバーベルを体に引きよせ、持ち上げる一連の動作には、踏ん張る力や柔軟性が必要です。それらを養うのは「おす・ひく」動作。さらに、「はう・くぐる」動作で、全身の部位を使いバランスをとる体の使い方も身につきます。バーベルのような道具を使うスポーツは「そうさする」動きも経験しておくと、持ち上げるときの体の動かし方に生かせます。
注目競技3:男子バスケットボール
前回の東京オリンピックでは自国開催の恩恵を受けて、44年ぶりに出場した男子バスケットボールチームですが、パリ・オリンピックでは予選を戦い抜いての出場が決定し、実力で出場を決めた注目度の高い競技です。
「これまでの流れで、今回のオリンピックが一番熱くなると思いますから、見る価値大です。バスケットボールを題材にした映画『スラムダンク』の世界的ヒットも後押ししていますね。その影響でバスケットを始めた子も多いんじゃないでしょうか。
国際競技力がそこまで…という印象でしたが、もはや八村塁選手のように世界最高峰のリーグ、NBAで活躍する選手も出てきています。NBAにはいろいろな国籍の選手がプレーしているのでどの選手がNBA所属なのかを調べておくとより楽しめるでしょう。まずは予選突破できるかが注目です。バスケットは高身長のスポーツだから日本人は弱いというイメージを払拭できると思います」(遠山先生)
●バスケットボールのルール
- ボールをもったまま走らず、パス、ドリブルなどでつないで相手ゴールに投げ入れる。
<ここに注目!>
- 試合の流れを変える! 3ポイントシュート
注目したいのはゴールから離れた3ポイントラインの外側からボールを入れる3ポイントシュート。一気に3点が入り、多く決まれば高得点につながります。
日本には渡邊雄太選手や 富永啓生選手のようにこの3ポイントを武器としている選手がいます。両選手がどのポジションに入り、何回3ポイントを決めるか注目です! - 高身長が絶対ではない! 技術力で勝負
身長が高い選手ばかりではない日本チーム。高身長は有利ですが、それを補う技術力を持ち合わせた選手が多くいます。前述の富永啓生選手はどこからでも、どんな体勢からでも3ポイントを決められるのが強み。身長188㎝でバスケットボール選手のなかでは小柄といわれる富永選手の、体格のハンデをものともしないプレーやひたむきな姿も必見です。
●どんな基本動作が必要?
「はしる」、「とぶ」、「そうさする」動作は、シンプルにバスケットのボールをパスする、受け取る、ドリブルする、投げる、ジャンプするというすべての動きにつながります。バスケットボールに限らず、ボール遊びを多く経験しておくと、投げたり受け取ったりするときの体の使い方が備わっていきます。
子どもとオリンピック観戦するときのポイントは?
親子で一緒に観戦!
さまざまな競技のトップクラスの選手たちが、世界中から集まるオリンピック。時差の許す限りで、ぜひ「親子で一緒に」観戦してみましょう。「すごいね!」「今の技はかっこいいね」などとプレーの感想を言い合ったり、「この国はどこにあるのかな?」と地球儀で探してみたりなど、好奇心が広がるきっかけがたくさんあります。
注目競技や選手を決めておく
オリンピックの選考やニュース報道に触れたら、親子で注目競技や選手を話してみるのも、観戦がより楽しくなる方法です。
「私が今回のオリンピックで特に注目していているのは、サッカーと400mリレー。サッカーはフル代表ではなく23歳以下という年齢制限があるため、2年後に開催されるサッカーワールドカップに選出される可能性があり、世間的にはまだ無名の選手を知る機会になるからです。リレーは、短距離個人では日本の選手よりも速い記録をもつ選手が世界各国にたくさんいますが、リレーになると、個人記録のとおりにはいかないのが面白いところ。日本のバトンリレーはとても楽しみです!」(遠山先生)
子どもが好きな競技の見方
「子どもが習っているスポーツがオリンピック種目にある場合は、その競技に興味津々でしょう。すでに得意な技がある子もいるかもしれません。得意なことをより伸ばすことも大事ですが、それには、土台となる基本的な動作や技術を身に付けることが不可欠。ドリブルやバッティングなどのスポーツ的動作をやることよりも小さいときは基本的動作を体験する方がよいと言われています。オリンピックで活躍しているどの選手も、基本練習の積み重ねを大事にしていることをぜひ伝えてほしいですね。また、前述したように、ひとつの競技だけでなく、同じ基本動作を含む競技や、全く違う競技でも実は関連しているものも多くあります。プレーだけでなく、練習方法やアスリートの運動歴を調べてみるのもおすすめです」(遠山先生)
「また、身長や体格でやりたいスポーツやポジションをあきらめてしまっている子もいるかもしれません。しかし、小学生のうちはひとつのスポーツに限定する必要はありません。オリンピックは、知らないスポーツ競技にも触れられるとても良い機会です。心を動かされるような素晴らしいプレーや数々のドラマに出合えることも多いです。オリンピック観戦を通して、なによりも“スポーツの楽しさ”を親子で感じてみてください」(遠山先生)
世界の素晴らしいプレーやアスリートの姿に触れると、親子で身体を動かしたくなったり、スポーツをしたくなったりもするかもしれませんね。子どもの運動能力は、「運動が好き!やりたい!楽しい!」という気持ちがあってこそ、育まれていきます。ぜひ4年に一度のスポーツの祭典を、子どもと楽しみましょう!
<こちらもおすすめ>
»運動能力は遺伝でなく経験!8歳までのあそびが大事
»足が速くなる!かけっこ上達の3つのコツとは?
»新体力テスト 種目や実施時期は?評価の見方も