発酵って何だろう?腐るとは違う?図でわかりやすく解説!

発酵って何だろう?

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日本は「発酵食品大国」と言われていることを知っていますか? しょうゆや味噌をはじめさまざまな発酵食品がありますが、ここでずばり質問!「発酵とは一体何だろう?」。腐っているのとはどう違うの?どうやったら発酵するの?など、みなさんが毎日のように食べている発酵食品について、素朴な疑問を詳しくご説明します!

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発酵デザイナーの小倉ヒラクさん監修:小倉ヒラクさん
発酵デザイナー。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者とプロジェクトを展開。2020年4月に下北沢に店舗「発酵デパートメント」オープン。著書に『発酵文化人類学』『アジア発酵紀行』など。YBSラジオ「発酵兄妹のCOZY TALK」、Podcast「#ただいま発酵中」パーソナリティ。

<発酵戦隊キンレンジャー>コウジキーン(左)、コウボキーナ(右)

<発酵戦隊キンレンジャー>
コウジキーン(左)、コウボキーナ(右)

このふたりが発酵について解説するよ!

発酵とは?

発酵とは?

発酵とは、カビや酵母(こうぼ)、細菌などの微生物の働きによって、食べ物の栄養が分解されて、人間にとって風味がよく、役立つようになること。例えるなら、食べ物をおいしくする魔法のようなものです。

カビや微生物すべてが発酵を行うわけではありません。発酵の働きをしてくれる微生物のことを「発酵菌」といいます。発酵菌は食べ物をおいしくするだけでなく、栄養を高めてくれたり、長い間保存できるようにしたりと、さまざまなよい面をもたらしてくれます。

そして、発酵菌によって食材を発酵させたものが「発酵食品」です。私たちの周りには、多くの発酵食品があります。納豆、味噌、しょうゆ、かつお節などの日本独自の食材に加え、チーズ、パン、ヨーグルトなど、給食によく登場するメジャーな食べ物も発酵食品なのです。

どうして日本には発酵食品が多いの?

発酵食品大国と呼ばれている日本。しょうゆや味噌、みりんなど、昔から食べられている伝統的な発酵食品がたくさん存在しています。これはもともと、日本は湿気が多く、カビや菌が発生しやすい気候であったことが関係しています。
また、後で詳しく紹介しますが、日本にしか存在していない「麹菌」こそが、発酵大国を支える立役者。

麹菌は米や大豆に付着して育つため、米を主食にする日本人にとっては身近な存在でした。「播磨国風土記(はりまのくにふどき)」という奈良時代の書物、カビてしまったお米でお酒を造ったという記載があります。室町時代には麹の独占製造販売権をもつ「麹座」もあって、はるか昔から、日本人は麹菌を利用して発酵食品を作り出してきたのです。

発酵を助ける微生物や細菌

発酵を助ける微生物や細菌

発酵に関わる微生物(発酵菌)は、カビ、酵母、細菌の3タイプに分けられます。代表的な5つの発酵菌について、ご紹介します。

【麹菌】味噌やしょうゆを作っている!

アジアには広くカビで発酵させる文化があります。味噌やしょうゆなどを作る麹菌はカビの一種で、日本にしかいません。なかでも黄麹菌「ニホンコウジカビ」は、日本食に欠かせないことから「国菌」に認定されています。

麹菌は、食べ物を分解する酵素(こうそ)をたくさん持っています。酵素は、食べ物をチョキチョキと細かくする(分解)ハサミのような働きをします。この働きを分解といいます。酵素に分解された食べ物は、うま味と甘みがグ〜ンとアップ。しかも、栄養が人間の体に吸収されやすくなるのです。

  • 黄麹菌:日本酒、味噌、しょうゆ、みりんなど
  • 黒麹菌:泡盛、焼酎
  • 白麹菌:焼酎

【酵母菌】ふっくら&いい匂い〜♪

酵母菌といえばパンのイメージが強いですよね。土や水の中、植物の葉や花や実の表面、動物の皮膚など、実はあらゆるところにいる酵母。酵母菌はブドウ糖などを分解し、アルコールと炭酸ガスを作り出します。つまり、酵母菌が食べ物にくっつくと、いい匂いとプクプクとしたガスが生まれるのです。パンを発酵させると膨らむのは、酵母菌が作ったガスの働き。パン酵母のほか、しょうゆ酵母などもあります。

【乳酸菌】人間の腸の中にもいる!?

乳酸菌(にゅうさんきん)は、甘いものをすっぱく、さわやかな味にする細菌です。腸内環境を整え、体を元気にしてくれます。種類は違いますが人間の腸内にもいるんですよ。食中毒を引き起こす悪い細菌の増殖を抑える働きもあり、ビフィズス菌、シロタ菌などの名前は聞いたことがあるのでは?ヨーグルトやチーズに利用されるほか、味噌、キムチやぬか漬けなどの漬物作りにも大活躍しています。

【酢酸菌】ツーンとすっぱい匂い

アルコールを発酵させて酢酸を生み出し、お酢を作るのに欠かせない酢酸菌(さくさんきん)。空気中に浮いているほか、梅・ぶどうなどの実、柿やりんごの皮などに棲んでいます。ツーンと刺激的な匂いが特徴で、食べ物が腐るのを防ぐ働きや、悪い菌をやっつける働きがあります。お寿司やピクルスを作るときお酢を使うのは、食べ物を腐らせず長持ちさせるためなのです。

【納豆菌】ネバネバのもとは偶然見つかった!?

納豆菌は、その名のとおり納豆のネバネバや独特な香りを作るユニークな細菌です。「枯草菌(こそうきん)」とも呼ばれ、枯れた草や土の中、特に稲わらにたくさん棲んでいます。納豆菌の起源は諸説ありますが、平安時代に煮た大豆を冷まさずに稲わらに包み、馬にくくりつけて持ち歩いたらネバネバになってしまった……!そうして“偶然見つかった”発酵食品が納豆、ともいわれています。

» 茨城県の特産品おもしろ雑学|スーパーフード・納豆!おみやげきっかけで全国へ

発酵・腐敗(腐る)・熟成はどう違うの?見分け方は?

発酵・腐敗(腐る)・熟成はどう違うの?見分け方は?

微生物が増えるときに、人間の助けになる食物に変化することを「発酵」、人間の体に悪い変化があれば「腐敗」、微生物が増え終わった(発酵が終わった)後に時間をかけて味がまとまり、おいしくなることを「熟成」といいます。人間にとって良い変化なのが発酵と熟成、悪い変化が腐敗です。

発酵食品でなくても熟成は起こります。例えば熟成肉は、肉がもともと持っている酵素によって、肉のたんぱく質が分解されて柔らかくなり、アミノ酸が増えて、うま味が増したものです。

発酵食品はメリットがいっぱい

発酵食品イメージ

現在のように食材が豊富ではなく、また食べ物を保存する技術がなかった時代、「傷みやすい食品をいかに長持ちさせるか」、「不足する栄養素をいかに補うか」という問題に立ち向かい、経験から編み出された先人たちの知恵の結晶が発酵食品です。発酵食品のメリットとはどんな点でしょうか。

●保存性が高まる

微生物が持つ拮抗作用によって長期保存が可能になります。また、発酵により生まれる乳酸や酢酸、アルコールなどにも殺菌効果があります。

●栄養価がアップする

食品は発酵することで栄養価が上がり、健康効果が期待できます。例えば、乳酸菌や納豆菌は、腸内環境を整え免疫力を高めるのに役立つといわれます。

●おいしくなる

発酵によってアミノ酸の一種・グルタミン酸や核酸の一種・イノシン酸などの成分が生まれ、独特の味と香りが加わり、食材のうま味がアップします。

日本の代表的な発酵食品

発酵食品イメージ

味噌、しょうゆ、お酢、みりんなど、和食に欠かせない調味料の多くは発酵によって生まれました。万能調味料といえる塩麹も発酵調味料です。

ご飯のお供にぴったりな納豆、漬物も発酵食品。福島県の三五八(さごはち)漬け、静岡県のわさび漬け、長野県の野沢菜漬け、京都府のしば漬けなど、漬物は全国になんと600種類以上あるといわれます。

日本のだし文化を支えるかつお節も、発酵食品の一つです。ほかに、滋賀県のふなずし、伊豆諸島のくさやのような、魚介類を原料にした魚の発酵食品も豊富です。

詳しくはこちらの記事でご紹介!
» 発酵食品の代表例をマップで見てみよう!日本全国地方別で紹介

発酵食品は小さな子どもでも食べられるの?

発酵食品イメージ

栄養が強化され、味や香りもよくなり、消化吸収しやすく、腸内環境を整えてくれる発酵食品。子どもの成長や健康をサポートするだけでなく、日本の食文化を伝えるきっかけにもなります。

ヨーグルトや納豆は赤ちゃんでも食べやすく、離乳食にぴったり。しょうゆや味噌などの発酵調味料は、離乳食の風味づけに適してします。味噌汁も子どもに食べさせたい料理の一つ。3歳ごろまでは大人より薄味にして、塩分の取り過ぎに注意しましょう。

米麹と米で作る甘酒は、アルコール度数0%だから子どもの栄養補給にピッタリ。やさしい甘みとまろやかな味わいで、1歳ごろから飲むことができます。オリゴ糖など、たくさんの栄養素が含まれていることから、「飲む点滴」ともいわれています

日本だけじゃない!世界にもたくさんある発酵食品

パンをはじめ、発酵食品は世界中にあふれています。その土地の気候・風土や文化に合わせて育まれてきました。個性豊かな発酵食品を見てみましょう。

アジアの発酵食品

  • キムチ(韓国):ハクサイやダイコンなどの野菜を唐辛子、ニンニクなどで漬け込んだ韓国の漬物で、乳酸菌が豊富です。
  • ナン(インドなど中央アジア):小麦粉や強力粉に塩、砂糖、イースト(酵母)をこねて発酵させた生地を平らに伸ばし、タンドールという壺かまどの内側に貼りつけて焼いたもの。
  • ナタデココ(フィリピン):独特な食感とあっさりとした味わいがおいしい、伝統的な発酵食品。酢酸菌の一種から作られます。
    プーアール茶(中国雲南省)カビを繁殖させた発酵茶。まろやかな味わいが特徴です。

ヨーロッパの発酵食品

  • チーズ(ヨーロッパ全域など):そのまま食べたり料理に加えたりと幅広く親しまれているチーズは、家畜の乳を原料にした発酵乳製品。世界には1000種類以上あるそうです。
  • 生ハム(山岳地帯など):涼しく乾燥した地域で生まれた生ハムは、豚のモモ肉を塩漬けにして、カビや乳酸菌の力で熟成させた保存食。
  • ザワークラウト(ドイツ):千切りにしたキャベツを塩でもみ、乳酸発酵させた漬物の一つです。
  • シュールストレミング(スウェーデン):「世界一くさい食べ物」の異名をもつ。その正体は、ニシンを塩漬けにして缶の中で発酵させた漬物の一種です。

アフリカの発酵食品

  • インジェラ(エチオピア):テフというイネ科の穀物を粉にして、水と混ぜて発酵させ、クレープみたいに薄く焼いたもの。
  • ルイボスティー(南アフリカなど):ノンカフェインで美肌によいといわれるルイボスティーは、きれいな濃い赤色とスーッとした風味が特徴的。原料のルイボスは、世界中で南アフリカでしか育たない、稀少性が高い植物です。

北米の発酵食品

  • ピクルス(アメリカ):野菜を塩漬けにして乳酸発酵させた西洋風の漬物。アメリカでは小粒のキュウリを使うことが多いです。
  • キビヤック(カナダ):イヌイット民族などが作る伝統的な発酵食品。驚くのはその作り方。肉と内臓をくりぬいたアザラシの中に海鳥を羽ごと数十羽も詰め込み、アザラシのお腹を縫い合わせ、それを地中に埋めて石を置き、数カ月〜2年間ほど放置すれば完成です。

そのほかの地域の発酵食品

  • ポンデケージョ(ブラジル):ブラジルの公用語、ポルトガル語で「チーズのパン」を意味します。モチモチとした食感が印象的。これはキャッサバというイモの一種からとれるデンプン「タピオカ粉」を使うためで、サイズはピンポン玉くらいと小さめです。
  • ベジマイト(オーストラリア):ビール酵母とタマネギやセロリなどの野菜エキスから生まれる塩辛いペーストの発酵調味料。チョコレートみたいな濃い茶色をしています。

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