新型コロナウイルスの拡大防止強化のため、4月16日に緊急事態宣言の対象地域が全国へと拡大されました。より高まる緊張感のなかで、多くのパパママが戸惑いを抱えて過ごしていると思います。子どもの体調管理や、どうしても必要な外出をする際の注意点とは? 買い物、外出、通院、外遊びなど、日常生活を送るうえで必要な行動をする際のポイントや、自宅での過ごし方、子どもたちとの接し方について、ご自身も三児のパパでもある小児科医の黒澤照喜先生にお聞きしました。
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(監修)黒澤照喜先生(帝京大学医学部附属溝口病院小児科)
東京大学医学部卒業。同大学附属病院小児科、都立府中病院、わだ小児科・循環器内科医院などを経て、2017年より現職。三児のパパ。
緊急事態宣言で、より必要とされること
Q. 緊急事態宣言により、何が変わったのですか?
A.患者数の増加により、この先、感染爆発(オーバーシュート)し、医療崩壊を起こさないために、緊急事態宣言が出されました。以前と比べてウイルスや病気の性質が変わったわけではありません。
緊急事態宣言によって、行政がある程度の権限を持って自粛・休業などを要請・指示できるようになりました。ただし、現時点(2020年4月16日時点)では引き続き「お願い」が続いている状態です。
実際には、「緊急事態宣言」の言葉と内容のインパクトにより、一人一人の警戒感が上がり、自主的に3密(密閉・密集・密接)を避ける方向に働いている様子といえます。
また、集団保育・教育においては、行政が積極的に介入できるため、法律の根拠のもとで自粛・休園休校が続いています。
諸外国の外出禁止命令(ロックダウン)とは違い、緊急事態宣言は強制力を持つ命令ではないため、私たち各々が感染予防のためにできることを以前に増して考え、協力していくことが必要とされています。
自粛の線引きはどこ? 必要な外出のポイントと注意点
Q. 「必要な外出」とは、どのように考えればいいですか?
A.「最低限の生活・健康を維持するための活動」は必要な外出です。具体的にはスーパーなどでの日用品の買い物や通院はこれらに該当すると考えます。
ただし、延期可能なものは延期し、「短時間・近隣・少人数」で済ませるようにしましょう。必要かどうかを常に考え、必要な外出の際にもできる限り「3密」を避ける工夫が必要です。
<買い物でのポイント>
- あらかじめ買うものを決め、短時間で済ませる。
- なるべく近くの店に行く。少数の店で済ませる(何店も回らない)。
- 可能な限り家族総出は避け、最小人数で行く。
<通院のポイント>
- 可能な限り患者が少ない時間に受診をする。
- 定期薬は電話・オンライン診療を利用して、処方箋を発行してもらうなどの工夫を。
Q.どうしても子ども連れで外出せざるをえない場合は?
A.「3密」を避けるため、なるべく混んでない時間帯を選び、できる限り短時間で済ませることが大切です。スーパーなどへの買い物の際は、事前に買うものを決めておくとよいでしょう。
また、今の思いっきり遊べない生活では、子どもが外出できたうれしさのあまり、店内を必要以上に動きまわってしまったり、商品などにむやみに触ってしまうことがあります。「外遊びとは違う」ということを、子どもがわかる言葉を使って繰り返し伝えることは大切だと思います。
Q.子どもとの外遊びや散歩での注意点は?
A.「3密」を避ける、こまめな手洗いと咳エチケットに気をつける、ということを常に意識していれば大丈夫です。子どもの健康のためには、できる限りの散歩や外遊び、適度な運動をさせてあげたいですね。
ただし、外遊び先として最適な公園も、今は混んでいることが多いようです。行く時間をずらしたり、混んでいるときには長時間滞在しないなどの工夫をしましょう。また、子ども同士だけでなく、親同士が密集しないように注意する必要があります。”井戸端会議”の状態にならないよう注意しましょう。
また、新型コロナ感染症に限らず、体調が悪いときに外遊びや運動をすると、症状がこじれてしまうことがあります。受診が必要になったり、コロナでないか無用な心配をしないようにするためにも、体調がすぐれないときには自宅で安静にし、治すことに集中しましょう。
子どもの体調管理のために親ができること
Q.子どもの体調管理に不安がつきまとう毎日、なにかできることは?
A.上にも書いたとおり、体調不良と思われるときには無理をさせないことが大切です。
また、なんらかの症状が出現したときに、受診が必要なのか、待てるのか、信頼して相談できる場所をあらかじめ探しておきましょう。
公共のものでは#8000やこどもQQ(http://kodomo-qq.jp/)がありますし、かかりつけの医療機関も困ったときの受診の要否について、電話などで相談に乗ってくれると思います。
もともと何らかの病気を持っているお子さんの場合は、定期受診の際に、かかりつけの先生と万が一の際の対応を考えておくことも必要でしょう。
子どもが体調不良に陥らないためにも、できる限り、心身ともに通常の状態を保てるようにすることが大切です。前述の可能な限りの外遊びのほかにも、早寝早起き・バランスの良い食生活・過度のゲームやインターネットを避ける、親が子供と向き合う時間を確保するなど、できることを一つ一つ地道に続けていきましょう。
そのためにも、私たちパパママも、心身ともに少しでも健康でいたいですね。
Q.乳幼児健診や予防接種は、遅らせた方が良いですか?
A.乳幼児健診は子どもの発達のチェックや保護者の方の気がかりなことにお答えする大切な場です。予防接種は予防可能な病気(これらの病気は子どもにとっては新型コロナ感染症よりも危険であることも多いです)に対して適切なタイミングで免疫を付けるという意味で大切です。
地域の実情に応じて乳幼児健診・予防接種が延期となっていることもありますが、それ以外でしたら新型コロナウイルスの感染のリスクよりも、乳幼児健診・予防接種のメリットの方が大きいと考えます。
健診・予防接種は、風邪などの患者さんがいない時間・場所で行われることが多いです。
ご心配の場合は、事前に実施場所に電話などで確認しておくのが良いと思います。
一日一日が、子どもたちの未来に繋がる時間
Q.黒澤先生ご自身は、今どのようにお子さんと過ごしていますか?
A.子どもと向き合える時間には、さまざまな趣向を凝らすようにしています。
もともと動画を見せることはあまりなかったのですが、外出できない現状では、一緒に見ながら内容についておしゃべりをしました。
また、近くの公園で短時間でも一緒に遊ぶようにしています。
小学生の子どもには勉強を教えたり、小さい子どもには本を読んだりなど、平時と同様のことも続けています。
時間があることを逆手にとって、普段は子どもがやりたがってもできないこと(工作や料理、長編小説の読書など)をするのも楽しい時間です。
とりたてて特別なことは行っていませんが、妻と協力しあい、少しでも子どもたちのストレスが増えないように努力しています。
Q.今だからこそ、子どもに伝えられることは?
現状を目の当たりにすると、わたしたちの日常生活は、たくさんの人たちに支えられて送れていることが認識できます。また、さまざまな困難を抱えている人たちも目にします。子どもたちにも、このようなことを伝えて、感謝や思いやりの心をもてたらと考えています。
また、感染を広げないためのマナーやエチケットを教えつつ、「なぜそのようなことが必要なのか」を子どもたちの年齢に応じてわかる範囲で、一緒に考えていきたいとも思っています。
子どもだけでなく、大人にとっても、今は未曾有の状況です。大変な日々ですが、一日一日が、子どもたちの未来に繋がる時間であると考え、無理をせずに、家族で工夫をしながら過ごしていきたいと思います。
もし、なにか判断に迷ったときや困ったときには、小児科学会が一般の方向けに出している提言も参考になると思います。パパママが一人で悩まずに、ぜひ一度読んでみてください。
<日本小児科学会のおすすめページ>
- 新型コロナウイルス感染症に関するQ&Aについて
(日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会) - 子どもの皆様へ「がんばっているみんなへ ⼤切なおねがい」
(日本小児科学会/日本子ども虐待防止学会/日本子ども虐待医学会) - お⼦様と暮らしている皆様へ
(日本小児科学会/日本子ども虐待防止学会/日本子ども虐待医学会)
※本記事は、取材時(2020年4月20日時点)の状況によるものです。
新型コロナウイルスに関する情報は、日夜変化しています。信頼できる情報源をあたるようにしましょう。
<参考>
» 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」最新情報
» 文部科学省「新型コロナウィルスに関連した感染症対策に関する対応について」最新情報
<黒澤先生の記事>
» バーベキュー・キャンプwithコロナ、リスクや安全対策は?人数など気をつけること
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