共生社会の実現を目指し、誰一人取り残さないまちづくりを推進する神奈川県藤沢市。同市は障がいの有無に関係なく子どもたちが一緒に遊べるように設計されたインクルーシブな遊具の設置へ、いち早く動きました。数ある公園のなかから選ばれたのは、藤沢市北部のスポーツ活動の拠点として知られる秋葉台公園(秋葉台運動公園)。既存の遊具を改修し、誰もが遊べて誰もが楽しめる「トリム広場」が2021年3月に誕生しました。
秋葉台公園ってこんなところ!
1983年より共用された秋葉台公園はスポーツ施設が集まる総合的な運動公園です。近未来的な外観が印象的な藤沢市秋葉台文化体育館は、世界的に有名な建築家、槇文彦氏の作品としても知られています。そのほか公園には球技場や屋内屋外プール、トレーニングルームなどが整備され、多くの市民に利用されています。
見通しがよい、緑あふれる遊具広場
様々なスポーツ施設が集まる秋葉台公園で、このたびインクルーシブな遊具が設置されたのは、体育館横の「トリム広場」。一面に緑の草が茂る気持ちのいい、約2700㎡の広場です。以前からバリアフリー対応の複合遊具がありましたが、老朽化のため周辺の遊具と一緒に改修整備に至りました。
トリムとは?
ノルウェー発祥の言葉で、元々は「船体のバランスを保つ」という意味の造船用語。船体から身体に転じて、「心身ともにバランスのとれた健康づくりを目指し、元気な日々を過ごすために自分自身を調整する」ことを指します。
十分なスペースをとって、遊具を配置
秋葉台公園のトリム広場は、平坦な原っぱに遊具がそれぞれ十分な間隔をあけて配置されています。しっかり分けることで、過度な集中を緩和できるだけでなく、視覚障がいや発達障がい、知的障がいなどのある多様な子どもたちはひとつの遊びに集中することができます。また死角が少ないため、保護者が子供たちを見守りやすいのも大きな特長です。
所要:1時間
クタクタ度:★★★
おすすめの年齢:3~5歳
住所 | 神奈川県藤沢市遠藤2000-1 |
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料金 | 無料 |
時間 | 24時間(駐車場は8:30~21:45) |
電話 | 0466-50-3535(藤沢市役所 都市整備部公園課) |
定休日 | 無休 |
駐車場 | 576台(第一103台、第二310台、第三145台、第四18台)。2時間まで無料、2時間を超え3時間までの使用300円 |
面積 | 約77,000㎡ |
<パークデータ>
- ボール遊び:〇
- スケボー:△(禁止エリアあり)
- 花火:×
- ペット:〇
- おむつ替え:〇(体育館内1F)
- 授乳室:〇
- 園内売店:×
- 園内飲食店:×
- 周辺コンビニ:徒歩3分
- 周辺ファミレス:徒歩8分
おすすめのアクセス方法は?
車
インクルーシブな公園を設置するにあたり、アクセスのしやすさは大事な要素のひとつ。その点、秋葉台公園は576台分の駐車場を完備しているため、車で訪れるファミリーが多く、利便性は抜群です。
なかでも第三駐車場はトリム広場の真横に位置するので、小さな子ども連れには一番便利です。ただし夏場は屋外プールの利用者が増え、駐車場が早く埋まりがちなので注意。
電車
最寄りの駅は「湘南台」。小田急江ノ島線、相鉄線、横浜市営地下鉄ブルーラインの3路線が乗り入れています。後述の湘南台西口のバス乗り場へはB出口から地上へ出ると便利です。ベビーカーや車いすの場合、西口側のエレベーター(写真)を利用しましょう。
バス
秋葉台公園へは「遠藤」のバス停を利用するのが一般的。バス停から公園までは徒歩5分ほどです。「遠藤」には複数の路線が停まりますが、湘南台駅西口より慶応大学行き(湘23系統。写真)または慶応中高等部前行き(湘24系統)いずれかに乗車するのが本数多く、最も便利でしょう。
なお、湘南台駅東口から文化体育館前行き(湘15系統)のバスに乗って終点で下車、というルートもありますが、1時間に1本程度しかありませんのでご注意を。
おすすめの滞在プラン
トリム広場で遊ぶだけではもって1時間程度。「遊具で遊ぶだけでは物足りない」という場合は、隣接するプールも併せて訪れるといいでしょう。秋葉台公園には夏季限定の屋外プールのほか、通年営業の25mプールと幼児用プールがあります。遊泳時間、料金、利用条件等はお問合せください(秋葉台運動施設事務所 TEL: 0466-88-1811)。
秋葉台公園パークマップ
秋葉台公園は文化体育館を中心に、バラエティに富んだスポーツ施設が造られた総合公園です。子どもたちはトリム広場のほかに、バスケットボールのゴールが付いた多目的広場でも自由に遊べます。
誰でも遊べて、誰でも安全に楽しめる複合遊具を大解剖!
複合遊具は3~12歳を対象とした最新のインクルーシブな遊具にリニューアル。保護者の手が届きやすい高さの滑り台と眺めのいいデッキ、そして難度の高い登り遊具が組み合わさっています。多様な遊び要素から自分に合ったものを選ぶことができるため、誰もが一緒に同じ場所で楽しめます。
モーグルヒル(大型滑り台)
「モーグルヒル」と呼ばれる凸凹のついた滑り台は、平らなものに比べてスピードが出にくいのがポイント。幅が広いので親子や友達と並んで滑ることができます。さらに、直接滑り台へと続く階段が付いているので、スロープからの動線を使わず、ここだけを繰り返し楽しみたい子どもにピッタリです。
ローラー滑り台
複合遊具にはもう1本、ローラータイプの滑り台が付いています。長さは約4mありますが、通常の滑り台に比べて傾斜は緩やか。小さな子どもを膝にのせて滑ったり、体幹が不安定な子もゆっくり滑り降りたりできます。地上から高くないぶん、保護者や介助者もサポートがしやすくておすすめです。
バランス遊具+登り遊具
滑り台の奥側には飛び石のようなバランス遊具とボルダリング風の壁、さらにネットの登り遊具が設置されています。難度の高い遊具も、多様な子どもたちが一緒に遊ぶインクルーシブな遊具には欠かせない要素。自分が登って遊ぶことは難しい子たちは、同じ空間で楽しそうに登る子どもたちの姿を見ることで、一緒に体験しているような気分になれます。
視覚や聴覚で楽しむパネル
スロープの壁には、幼児や車いすの子どもが楽しめる高さにパネルを設置。色付きの窓を覗いてみたり、ハンドルなどの可動パーツを動かしたり、音を鳴らしてみたり、思い思いの遊びが楽しめます。
インクルーシブな遊具のココに注目!
スロープ状の動線
車いすから遊具への乗り移りが難しい子のために、乗ったまま遊べる場所を設けています。通路は幅の広いスロープにして、コーナーでは車いすが切り返せるよう十分なスペースを確保しています。
車いすからの移乗ポイント
車いすから乗り移るのがラクなよう、ローラー滑り台のすぐ横には移乗ポイントがあります。滑り台までの段差には縦の手すりを付けるなど、細やかな配慮も見られます。
カームダウンスポット
滑り台の裏側に入ると、そこはまるで秘密基地のよう。滑り台はやわらかい光が透過する材質のため、気持ちを落ち着かせてくれる空間になっています。
そのほかのインクルーシブな遊具にも注目!
回転系遊具
内向きに座るタイプの回転系遊具。車いすからの移乗が可能で、多様な子どもたちがお互いの表情を見ながら回る感覚を楽しめます。周りを囲っているのは介助者や保護者用の柵ベンチ。大人はここに座って、様子を見守ることができます。
回転系遊具にはありそうでなかった背もたれの高いシートと、おしりがフィットするくぼみがこの遊具の特長。体幹が弱くて姿勢を保つのが難しい子も、これなら安定して遊べます。さらに、座位を保つのが難しい子は、中央に寝そべってもいいほどの広さがあります。
スイング系遊具
揺らして遊ぶ遊具は、複数人が一度に乗れる大きさ。座面は固いソファのようになっていて、片方には身体を支えられるよう、手すりの付いたテーブルが備わっています。かなり頑丈な遊具なので、揺らすには力が必要。子ども同士で力を合わせて動かすと、達成感も大きいはずです。
乗り降りする部分にはスロープが付いているので、車いすに乗ったまま遊具で遊ぶことができます。もちろん、車いすの人も揺らす役になれますので、ほかの子と一緒にチャレンジしてみましょう。
3連サポート付きブランコ
バンパーシート2つと、バケットシート1つの3連ブランコ。バンパーシートのほうはロープになっていて、従来の鎖タイプのように指を挟んでしまうケガを未然に防ぐことができます。
ハーネスが身体をしっかりホールドしてくれる大型のバケットシートなら、腕の力や体幹が弱い子も安心して楽しむことができます。シートの下の部分にはゴム素材が使われており、万が一転んでシートにぶつかってしまったときのケガを防いでくれます。
なお、このシートの対象年齢は5歳からなので、小さな子どもを乗せるときは細心の注意を払いましょう。
公園の利用者に嬉しい設備をチェック!
日陰のあるベンチ
トリム広場には多くのベンチやテーブルが用意されています。大半はパーゴラの下にあるので、日陰で休憩したいときにピッタリです。一部のテーブルは車いすが入れるようスペースがあけられています。
手洗い&水飲み場
トリム広場のベンチ横には水飲み場があります。蛇口にはせっけんが付いていて、遊んだ後の手洗いに重宝します。水飲み場の片側に子ども用の足場があるのもうれしいですね。
だれでもトイレ
公園の屋外トイレは第一駐車場側です。中央にだれでもトイレがあります(おむつ替え台はなし)。ちなみに女性用トイレの個室はすべて和式なので、苦手な子はだれでもトイレを利用しましょう。
秋葉台公園のトリム広場はインクルーシブな遊具を先行的に整備し、利用していくなかで意見を伺いながら、段階的に整備を進める“進化型の広場”を目指しています。「誰もが遊べて、誰もが楽しめる場所」として、今後の動きにも注目です。