47都道府県それぞれの代表的な「特産品」をクローズアップ。【知る】【つくる】【学ぶ】の3つの視点から、特産品と各都道府県の関係をひも解きます。各地の歴史や風土だけでなく、意外な理由で生まれた特産品は、知れば知るほどおもしろい!
鹿児島県で紹介するのは、甘くて子どもも大好きな野菜「サツマイモ」。日本に広まったルーツから大人も喜ぶおいしい食べ方や栽培法まで、サツマイモの魅力に迫ります!
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【知る】シラス台地を生かしてサツマイモの量産に成功!
鹿児島県はサツマイモの最大産地。国内シェアは約30%となっています。生産の中心地の一つ、指宿市(いぶすきし)では、ハウス栽培から露地栽培まで長い収穫期間が続き、6月~翌年1月に出荷しています。
サツマイモを原料にした芋焼酎も、鹿児島県を代表する名産品。サツマイモは鹿児島県の食文化を支える重要な食材であるといえます。
薩摩から全国へ。サツマイモ・サクセスストーリー
サツマイモの日本への伝来は諸説ありますが、16世紀ごろにヨーロッパ経由で上陸しました。まず、琉球(現在の沖縄県)にわたり、続いて薩摩藩(現在の鹿児島県)へ。宝永2年(1705)、薩摩半島南部(現在の指宿市)の船乗り、前田利右衛門(まえだりえもん)がサツマイモを持ち帰り、地元に広めました。
江戸中期以降、凶作などが原因で起きた享保・天明・天保の三大飢饉(ききん)の際には、サツマイモは救荒(きゅうこう)作物として認められるように。救荒作物とは、凶作時でもある程度の収穫量が見込めるため、飢餓をしのぐために主食の代用として栽培する作物です。
享保19年(1734)には蘭学者・青木昆陽(こんよう)の進言により、江戸幕府が薩摩藩からサツマイモを献上させ、「薩摩の芋=サツマイモ」の名は一気に全国区へ。加えて、青木は江戸でサツマイモ栽培を行うなど普及に貢献し、「甘藷(かんしょ=サツマイモ)先生」とも呼ばれました。時を経て、第二次世界大戦中や戦後の食糧難の時代にも、サツマイモは人々を救って大活躍したのです。
サツマイモが鹿児島県の特産品になったワケ
鹿児島県の面積の約6割を覆うシラス台地は、噴火のときの溶岩や空中に舞い上がった軽石、火山灰などが積もって形成されています。水はけが“よすぎる土地”のため、稲作には向きませんでした。また、シラスの土は水分を保ちにくい影響から、栄養があまりありません。
そんな作物にとって不利な自然条件が、サツマイモ栽培には適しています。水はけがよい土で育ちやすく、土の栄養が多すぎると葉やつるばかりが伸びて、イモ自体が十分に育たないからです。また、鹿児島の温暖な気候も、サツマイモ栽培にプラス。米の収穫が少ない薩摩の国で、主食として盛んに栽培されるようになったのです。
サツマイモは焼酎用としても需要が拡大したため、平成に入ってから生産量が増加。さらに、スイーツなどの加工食品用や、畜産業の飼料用といった用途もあります。
ホクホク系ねっとり系など品種は60種以上!
サツマイモの品種は、なんと60種類以上。鹿児島で生産される主な品種は、焼酎などに利用される「黄金千貫(こがねせんがん)」、青果用の「紅さつま」です。また、新品種として「紅はるか」が注目されています。
食感は品種によってさまざまですが、「ホクホク系」「しっとり系」「ねっとり系」に分けられます。天ぷらや煮物などの料理によく使われるホクホク系の代表的な品種は、「紅あずま」と「紅さつま」。紅あずまは上品な甘さ、紅さつまは甘みが強く食物繊維が豊富なのが特徴です。
スイートポテトなどのお菓子からおかずまで幅広い用途がある、しっとり系では「シルクスイート」が有名。なめらかで絹のような舌ざわりが楽しめますよ。ねっとり系は焼き芋や干し芋にぴったり。「安納(あんのう)いも」は、焼き芋にすると糖度が増します。「紅はるか」は表面のデコボコが少なく、形がきれい。そして、まるで蜜が入っているかのような甘みがウリです。
【つくる】サツマイモの家庭栽培&おいしい食べ方
おうちのプランターで育てられる、サツマイモ栽培に挑戦してみませんか。電子レンジを使ったサツマイモの蒸し焼きと、子どもが喜ぶサツマイモご飯の簡単レシピもチェック!
プランターでサツマイモを栽培!
サツマイモは、やせた土地や高温・乾燥にも強く、育てやすい野菜です。深めのプランターを使えば、初心者でも自宅で栽培することができます。
ホームセンターなどで苗を購入する際には、全長が25~30cmで葉が5~7枚程度ついて、つるが太く、しっかしたものを選びましょう。
■栽培方法を紹介
- 苗の植え付け:5月中旬~6月中旬が適しています。植え付けでは、深さ10cmくらいの穴を30cm間隔で掘ります。次に苗の茎の部分を穴に入れ、長さの4分の3を目安に土に埋めます。
- 水やり:植え付け直後と植え付けから2~3日後は、多めに水やりします。ただし、湿地に弱いのが特徴なので、根が出た後は数日に1回、土の表面が乾いてから水をあげてください。
- まし土:栽培途中に土を足す「まし土」を行うと、イモが大きく育ちます。植え付けから約2週間後と、成長した根やイモが土から見えそうになるタイミングで、プランターに土を入れ、表面を軽く手で押さえます。
- つる返し:つるを伸びたまま放置しておくと、つるから根が生えて根付いてしまうことも。イモに栄養をまわすため、伸びたつるの先端を引っ張り、プランター内に納めておきましょう。
- 収穫:植え付けから約3カ月半~4カ月後、葉が黄色くなってきたら収穫適期。つるの根本部分を切ってから、イモが傷つかないよう丁寧に掘り出します。
電子レンジで簡単!サツマイモを蒸す+焼く
鍋を使わなくても電子レンジを使えば、時短調理が可能です。さらに「蒸す」→「焼く」の2段階でじっくり加熱することで、サツマイモの中心まで十分に熱を加え、余計な水分を飛ばし、香ばしさがプラスされます!
なお、電子レンジでの加熱は水分の蒸発が著しいので、加熱する際には必ずラップやペーパータオルなどを利用しましょう。
■蒸し方&焼き方を紹介
- サツマイモの皮の上からフォークで4、5カ所に穴を開けます。
- 芋を水で湿らせたペーパータオルに包んでから、ラップを巻きます。両端は蒸気が抜けるように開けておきます。
- 電子レンジの100℃以下で加熱できる「生解凍」の機能で、15分ほど加熱します。
- ラップとペーパータオルを外し、オーブンのグリル機能で20分ほど焼けばできあがり!
からいもご飯(サツマイモご飯)の作り方
出典:農林水産省Webサイト
「からいも(唐芋)」とは、サツマイモのこと。手軽に作れるので、鹿児島県では昔からよく食卓に上がる郷土料理です。サツマイモの甘みとほっくりとした食感がご飯と相性がよく、老若男女から親しまれているそう。
もち米を少し入れるとおこわ風に仕上がり、また違った食感を楽しめます。黒ゴマを振っても風味が増しておいしいですよ。
■簡単にレシピを紹介
- お米は、炊く30分前に洗って水気を切っておくのがポイント。
- サツマイモはところどころ皮をむき、角切りにしてから水に浸してアクを抜きます。
- 炊飯器に水気を切ったお米と角切りしたサツマイモを入れ、塩と水を加えてスイッチオン。炊き上がるのを待つだけです!
【学ぶ】サツマイモについて学べるスポット
サツマイモの本場だけあり、魅力的なスポットがいろいろ。イモ掘りのメジャー施設や、焼き芋が食べられる直売所を巡ってみませんか。イモスイーツ「ラブリー」も必食です!
鹿児島市観光農業公園(鹿児島県/鹿児島市)
「鹿児島市観光農業公園」は、豊かな自然の中で農業や食・環境などの体験や学習ができる施設です。体験用農地では旬の農園野菜の収穫体験を実施しており、9~10月には当日受け付けでサツマイモの収穫体験ができます。所要時間は約30分、焼き芋で人気の品種、紅はるかを多い人だと1㎏くらい掘り出せます。
施設内にキャンプ場(有料)があるので、とった芋はすぐにBBQで食べてもOK。お肉などのほかの食材は、バーベキューセットで購入できます。
住所 | 鹿児島県鹿児島市喜入一倉町5809-97 |
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問合先 | 099-345-3337 |
営業時間 | 8時30分~18時(4~10月)、9~17時(11~3月)※収穫体験の受付時間は公式サイトで確認 |
定休日 | 12月29日~1月1日 |
料金 | サツマイモ収穫体験100円(約500g)、バーベキューセット1人前2400円~※2日前までに農産物直売所きいれの杜(099-345-4141)にて要予約 |
アクセス | 公共機関:JR喜入駅からタクシーで10分 車:指宿スカイライン頴娃ICから3km6分 |
駐車場 | あり/200台/無料 |
URL |
せきよしの物産館(鹿児島県/鹿児島市)
世界文化遺産、関吉の疎水溝(そすいこう)近くにある「せきよしの物産館」では、サツマイモを一年中販売。地元の鹿屋(かのや)と知覧(ちらん)の農場から直送される紅はるか、シルクスイート、紅まさりの品種を扱っています(各900g580円)。寝かして熟成させた芋の糖度は50度前後!
「焼き芋」は1日30~50㎏が売れる人気商品、暑い日には「冷やし焼き芋」もよく出ます(各2~3本500円)。子どもには「焼き芋アイス」500円もおすすめ。
住所 | 鹿児島県鹿児島市下田町1874 |
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問合先 | 099-208-0510 |
営業時間 | 8~17時 |
定休日 | 無休 |
アクセス | 公共機関:JR鹿児島中央駅から南国交通バスで30分、バス停:関吉の疎水溝入口から徒歩8分 車:九州自動車道薩摩吉田ICから4km10分 |
駐車場 | あり/23台/無料 |
URL |
天文館フェスティバロ(鹿児島県/鹿児島市)
鹿児島県産のサツマイモ(唐芋)にこだわり、芋の風味や色合いを生かしたスイーツ作りに取り組んでいる唐芋菓子専門店です。おみやげとして評判の「唐芋レアケーキ・ラブリー(5個入り)」980円は、地元直営農場で育てたサツマイモを使用した、ひんやりなめらかでトロ~ッととろけるスイーツです。
「天文館フェスティバロ」2階のカフェでは、「ラブリー」の生地をサクサクのタルトに絞り、香ばしく焼き上げた「焼きたてラブリー」270円を試してみたいですね。
住所 | 鹿児島県鹿児島市呉服町1-1 唐芋ワールド |
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問合先 | 099-239-1333 |
営業時間 | 9~19時、カフェ11時30分~17時30分(17時LO) |
定休日 | 1月1日 |
アクセス | 公共機関:鹿児島市電天文館通電停から徒歩1分。またはJR鹿児島中央駅から鹿児島市営バスで4分、バス停:天文館から徒歩2分 車:九州自動車道鹿児島ICから5km12分 |
駐車場 | なし |
URL |
【SDGs】鹿児島県のサツマイモを自由に食べたり守ったりするために
鹿児島県で生産されるサツマイモは、環境にも配慮しながら栽培が行われています。この先も、サツマイモを変わらず自由に食べたり守ったりするためにはどのようなSDGsを意識すればいいのか、親子で話し合ったり、考えてみるといいですね。